君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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今回より暫く自作、本当に結ばれる、ただ一つの方法と話が被さります。
設定は此方に準じるので差がありますのでご注意下さい。


本当に結ばれる、物語の作り方

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、本来は違う男の物語。

 艦娘を異性として認識せず、応援のつもりで送ったものが、のちにとんでもないトラブルを引き起こし、それを皮切りに己の認識を改め、本当に結ばれる、ただ一つの方法を探すお話。

 ……の、舞台になっているが今回は巻き添えと言う形だった。

 完全にとばっちり、どこぞの彼女とは違い、彼には今回は落ち度はない。

 強いて言うなら、その真面目さのせいで某元帥の命令に背けず断れず、背負った結果がここだった。

「ねえ、あの話……本当に受けるの?」

 相棒とする美しい黒髪の空母は男に問う。

 手元に抱える書類には、例の演習の話を聞いて、急遽彼女が調べた情報が載っている。

 正直、悪評しかない危険な人物であろうと言うのは周囲の評価で明白だった。

「受けるしかねえよ……。元帥の厳命だぜ? 断れってのか、大佐風情に?」

「……無理よね」

 男は、肩を竦めて苦笑いした。秘書を務める相棒も頷く。

 今年で数年経過するが、相手は着任して数ヵ月で大佐にまで上ったエリート女子高生。

 いや、エリートとは厳密に違うかもしれないが、この若さでは異例の出世速度。

 その経歴と戦果を軽く調べて、相棒の空母は絶句した。

 彼女には悪名轟く異名が幾つもある。

 命知らずの女子高生、艦娘殺しの提督、狂犬、深海鎮守府の女王。

 全部同じ人物の悪名だ。全部ろくなもんじゃない。

 しかも候補生時代には独房入りの期間を更新した素行不良の軍人。

 当初は反抗的だったらしいが、今ではすっかり大人しいとか。

 だが、周囲との隔絶は大きいようで、いつぞやの大本営の乱闘騒ぎでは、箝口令が敷かれているので噂程度であるが、暗殺されかけたらしい。

 要するに、そこまでの危険人物。

 で、本人も至って気にしない人物らしく、周囲が何をしようが知らん顔。

 若いわりに無駄に落ち着いており、冷静沈着を通り越し冷酷無比だと言う。

「……ねえ、提督。止めない? どうにかして、追い払ったほうが良いわよ。絶対、うちの艦娘を沈めに来るわ」

 秘書は当然のことを言う。当たり前だ。こんな危ないやつを普通は嫌がる。

 無駄と分かっても、抵抗しないわけにはいかない。

「したいけど無理なんだな、これが……。逃げるなって念入りされてる」

「あの女は……ッ!!」

 元帥相手に憤りを隠さない空母。

 嫌悪を浮かべる彼女だが、提督と呼ばれる男は諦めろと言った。

「無駄なことは止そうぜ。確かにろくな話は聞かないけど、今時珍しい、自分の意思で艦娘になった人らしい。相応の理由があるんだろ」

 彼は、もしかしたら暫く滞在するかもしれないと言った。

 驚く空母。聞いていない話だが元帥に言われたらしい。

 着任してまだ日が浅いものだから、多少の面倒ぐらい暇してんだから見ろ。

 意訳するとそういう事を言われた。

 キレる相棒。パワハラ極まりない横暴だが、彼はもう諦めていた。

 自分とは違う、今まで関わりを避けてきた人種。

 彼なりの一種の処世術としての方法だが、今回は無理矢理。

 たまには、違う人種と接するのも良いのではないか。

 などと、誰を相手にそんな能天気な事を思っていたのか。

 サイコパスにバカを思った男には、彼女の災いが降り注ぐ。

 運命の日は、刻一刻と迫っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七海はどうやら、一人で行くらしい。

 しかも、艦娘としても提督としても、言うなれば見学に近いようで。

 というか、研修? に近いものだそうで。

 自分よりも長いことやっている提督から、深海棲艦を束ねるのに必要なスキルを学んでこいと桜庭に言われた。

 幸い、能力は平凡だが人徳はあると言うので、七海は荷物をまとめて出発する。

 留守の間、代理で皆は過ごすと聞いたので、喧嘩はするなとよく言いつける。

「喧嘩の報告を聞いたら、あたしは口を利きませんよ」 

 と、脅すように言うと、深海棲艦も艦娘の一部も、戦慄したように何度も頷いた。

 笑顔で、最高の罰を与えると言い出したのだ。存在を無視する。

 唯一の認めてくれる七海が、意思を聞かなくなると言う最大の罰に、大人しくすると誓っていた。

 年上組の重巡や軽巡にも、何かあれば連絡を寄越せと言っておく。

「何かあれば五十鈴に言うのよ。絶対、助けにいくから」

 と、無性に心配する五十鈴に大丈夫と笑いかけて、七海は出掛けていった。

 

 

 

 

 

 道中、一人で電車やバスを乗り継ぎ、言われた鎮守府に向かう。

 私服にも最近、白露型の制服を着ている七海は、このデザインが気に入って幾つか手縫いしておいた。

 着替えも全く同じと言う気に入りぶりで、ボストンバッグを抱えて向かう。

 数時間かけて、海に日が沈む頃、例の中規模鎮守府に到着した。

「と、遠くからよぉ来たな……。し、暫くの間よろしゅう……」

 ここの憲兵だろう。関西弁の、中年の男性がひきつった顔で受け入れてくれた。

 ただ、七海の話は聞いているのか、やはり……引いている対応だったが。

 七海は気にしない。案内されつつ、様子を眺め歩き出す。

 姫園鎮守府にもいる艦娘もいるし、見たことのない艦娘もいる。

 人数も当然多いし、皆活気に溢れている。雰囲気は、姫園鎮守府と似たようなものか。

 向こうは、七海が騒ぎを起こすのでもっと喧しいが、こっちはそうそう問題はないと見る。

 この様子からして、七海の予想は合っている。まあ、人気はあるんだろうと。

 戦果も事前に調べた。少し、気になる点があった。

 大抵、支援や輸送任務ばかりを受け、成功している。

 ただ、戦闘を極端に避けており、同時に倒すと言う意味の戦果は最低限を下回る。

 戦いに関しては、七海のほうがずっと結果を出していた。

 更に、練度はおおよそ所属する大半が限界寸前と言う恐ろしい次元だが、それは多分逃げ回っていた結果。

 倒せるときに倒さずに、死なない優先でやっていたから、こうなった。所以の臆病者は伊達じゃない。

 チラチラと、七海のことを聞いているのだろう。横目で見てくる艦娘たち。

 大抵の表情は、険しい。警戒、敵意。針のむしろという感じか。

(…………でも、あたしにビビっていますね)

 然し少しでも睨むと途端に視線を逃がしてしまう。

 典型的な小心者のやり口だ。情けないと、七海は内心呆れていた。

 案内されて、執務室と書かれたプレートを下げた部屋の前で別れる。

 ノックして、女性の声で入れと言うので入室。

 挨拶して、入ると。そこには、男性提督と秘書の艦娘がいた。

「はじめまして、渋谷提督。ようこそ、……鎮守府へ」

 座ったまま、ここの提督がそう、微笑みを浮かべて言った。

 表情は、硬いようだが。七海も適当に合わせ社交辞令で済ませて、挨拶を終える。

 終始、秘書は七海を黙って観察していた。あまり、良い態度ではない。

 印象は悪いだろう。値踏みするように見てくる。空母、飛鷹。それが秘書の名前。

 此方の飛鷹よりも数段冷たい視線を放つ、左手の薬指に銀の指輪をはめている女性。

 成る程、彼女が件の空母か。横目で七海も観察する。

 ……数秒で理解した。こいつ、大本営で見慣れた敵意のある他の連中と同じ目をしている。

 要するに、歓迎はしてないと。まあ、当然だろうが。

 然し、それを臆面もなく出すか。仮にも客人に、その目を見せるか。

 なにか質問はあるかと聞かれて、不愉快になってきた七海は失言を申し訳ないと先に言った。 

 そして、遠慮なく指摘する。

「大佐。あなた、部下の教育、出来てませんね?」

 と言うと途端に、無表情のまま、無言で飛鷹が殺気を放つ。

 よく見れば、成る程。瞳孔を開いたような恐ろしい目で、七海を見ていた。 

 猛禽類のような肉食の目をしている。七海は無論、そんなプレッシャーには怯まない。

「特に、そこの空母。あなた、いい加減その殺気、引っ込めてくれませんか? 誰のせいで、自分の提督が悪く言われているか、自覚なさっているでしょうに」

 横目で睨み返す。ここの提督、大佐は飛鷹にやめるように言った。

 彼女は渋々、引っ込めるが刺々しい目線は変わらない。

「すみません、渋谷提督」

「……敬語はいりません。同じ大佐、何よりもあたしは若輩者。普通に喋って下さって構いません」

 堅苦しい口調で頭を下げる彼に、七海は言った。 

 その辺にいそうな地味な顔つきに、切り揃えた髪型の、平凡な顔立ちの男性。

 彼は七海の言葉に、甘えると言ってから、口調を崩す。

「そうか。悪いな、俺も堅苦しいのは苦手なんだ」

 と、苦笑して言うが……七海は未だに威圧する飛鷹を睨んだ。

「良いですよ。で、そこの空母。気に入らないと顔に書いてありますよ。あたしの評判を聞いての対応でしょうが、少しは隠しなさいな。何ですか、その様は。大人ならもう少し取り繕うぐらいしてほしいですね」

 言外にそっちがそう思うのは勝手だが、前に出すなと言って威嚇する。

 すると、今度は飛鷹も言い返した。

「……よく言うわね。どんな事情があって来たか知らないけど、私はあなたを歓迎する気はないわ」

「飛鷹、よせ」

 大佐が止めるが、聞いていないのか語彙を強め、飛鷹は七海に社交辞令さえする気はないと自分で言った。

 そういう意思のようだ。呆れたように、七海は彼女に言った。

「それは結構。どうも、聞いていた話ほどではないようですね? 人徳はあると元帥から伺っていましたが、実際は甘やかしているだけのようで。聞いて極楽見てなんとやら」

 明確に、飛鷹に言っても意味がないと分かった七海は、否定の対象を関係ない大佐に変えた。

 すると、案の定飛鷹が激昂した。一段と殺気を増して、七海を睨む。

「……なにも知らない頭がおかしい奴が、好き勝手言うじゃない。殺すわよ、あんた」

「飛鷹ッ!! いい加減にしろって言ってるだろッ!!」

 初対面で、本性を現すか。怒鳴る大佐の声も聞いてないようだ。

 七海は淡々と、そして飛鷹の殺意が本気だと分かっても、続ける。

「上等ですよ。よくわかります。どうやら、ご自分よりも慕っている人物を貶すほうが、あなたには効果的なようですし。次はどんな言葉で事実を言って欲しいですか?」

 おろおろする大佐。七海も全然退きやしない。寧ろ挑発して、飛鷹を誘っている。

 飛鷹は艤装すら、鎮守府の内部で解放しようとしていた。七海も同じだ。

 軍規を無視するような女ならば、躊躇いはない。客人だろうが、襲うなら殺してやろう。

「おいおいおい!? ええい、朝潮ー!! 加賀ー!! ヘルプミー!!」

 大佐は埒が明かないと判断して、応援を呼ぶ。

 直ぐ様、ドアが開いて颯爽と現れる二名。

「はい!! お呼びでしょうか司令官!!」

「飛鷹、何しているの。止めなさい」

 黒髪の美少女、朝潮。クールビューティー、加賀だった。

 ずかずかと入ってきて、加賀は飛鷹をぶん殴る。

 後頭部に拳が直撃し、油断していた飛鷹は一撃貰って顔面から床に倒れた。

「あらあら? 端正なお顔が台無しですね飛鷹さん?」

 ざまあみろと七海が追撃する。起き上がった飛鷹は凄い怒っていた。

 だが、七海には朝潮が介入する。

「無礼な言動は止めてください、渋谷提督。さもないと、ここでは物理的な介入も許されております」

 と、敬礼しながら警告する。どういう意味か? 

 無表情で目の前で拳を振り上げた加賀のことだろう。

「喧嘩両成敗ですので、あしからず」

 と、いきなりお仕置きと来たか。

 七海もちょっと予想外だったが。

 見え見えの拳を難なく左手で受け止める。

「!?」

 防御されるとは思ってなかったのか、その場の全員が驚いた。

 で。

「殴られる覚えはありません」

 軽々と加賀をそのまま吹っ飛ばした。

 ドアの方に豪快に飛ばして、加賀も顔面から床に激突した。

 痛そうだったが、七海は気にしない。

「本性を見せたわね……!! 上等よ!! かかってきなさい異常者!!」

「そっちも本性を見せましたか。気に食わないのでお望み通り演習の前に遊んでやりましょう」

 飛鷹が何だかお札を構えて、七海もムカついていたので襲いかかった。

 なんと着任早々、七海はそこの秘書と取っ組み合いの喧嘩をおっ始めた。

「ファッ!? なんでさ!?」  

 大佐も唖然とする。意外と七海は聞いていたよりも沸点が低いらしい。

 ぎゃあぎゃあ言いながら、飛鷹と喧嘩を続ける。

 朝潮も仲裁に入るが、朝潮すら巻き込んで大喧嘩に発展。

「二重の意味で頭にきました」

 で、復活の加賀も参戦して意味不明な戦いが始まった。

 頭を抱える大佐。なんでこんなことになったのか。

 一時間にも及ぶ激闘の末、七海は全員ぶっ倒して勝利したが。

 着任早々、波乱万丈の始まりであった……。

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