君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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ロシアの画策

 

 

 

 

 

 

 

 先ずは、存命する世界の最終兵器たちの事を語ろうか。

 彼女たちは各国が誇る最強の集団であり、同時に基本的には人格に問題がある危険人物が大半である。 

 たまたま今回来日しているのがこの面々であって、世界にはまだ強大な艦娘は複数いる。

 どれもこれも強烈な性格をしているのは、普段抑圧されるような生活を送っている、というか強いられているからだろう。

 最終兵器の良心と呼ばれる数少ない常識人、大和。

 周囲と揉め事を起こす連中をうまくまとめている、実質的なリーダーにして、彼女たちにもある意味尊敬される人物。

 あんな扱いされるのによくもまあ軍人なんぞ続けていると言う意味で。

 人間との隔絶を気にせず、使命を全うする姿勢に、憧れさえ抱かれていた。

 最終兵器の苦労人、オールドレディこと、ウォースパイト。 

 淑女とも言われるが、それは国内での振る舞いが淑女なのであって、仲間内では全く違う。

 各自好き放題に動く連中の尻拭いをしたり、サポートをしたりする貧乏クジ担当。

 ただ、そのわりに押しが強いので、下手に敵に回すと普段の行いをネタに容赦なく責めるんで要注意。

 最終兵器の被害担当、サラトガ。通称シスターサラ。

 大人しく、至ってこの個性的な面子のなかでは普通の女性にして、空母で唯一、最終兵器と呼ばれる。

 毎度アイオワに振り回されて、彼女の暴走の巻き添えを受けて謝るのがお約束。

 ドイツのデカイ暁、ビスマルク。

 甘いもの大好き。寝るのも大好き。旦那も大好き。

 最終兵器唯一の所帯持ち。こう見えて旦那が母国で提督やっている。

 兎に角ずっと旦那に甘やかされていたのでワガママで、プライドも高いが食い物で懐柔できる。

 あと褒めて欲しいときには頑張る良い娘。因みにこんなんで、今年で22になった。色々おかしい。

 ロシアの酒飲み、ガングート。非常識一号。

 アイオワとは犬猿の仲で、酒とタバコを好む危険人物。

 細かいことを気にしない、気に入ったものは何がなんでも手に入れるなどおおよそ面倒くさい性格。

 一応、最終兵器最古参なのだが……それを言うと砲弾が返ってくるので禁句。 

 平気で言うのはアイオワぐらいだ。

 で、アメリカの問題艦娘、アイオワ。

 食うことと戦いが大好きなバトルジャンキー。加減しないで吹っ飛ばした地形は数知れず。 

 懐事情もお構い無し。好きなように戦い、好きなように食うのがモットー。非常に迷惑な非常識二号。

 ラム酒をこよなく愛するアホ、ネルソン。

 基本的に人を疑わない、鵜呑みにする、話を聞いてない、気づけばラム酒で乾杯。

 と、害があるのかないのか分かりにくい非常識三号。根は善人なので、根気さえあれば多分大丈夫。

 ……とまあ、今回はこんな面子だが。まだマシな分類だったりする。

 もっと酷い最終兵器は、パスタを食わないとパワーが出なかったり、お気に入りの家具を買いに行くのを邪魔されただけで深海棲艦を一帯から絶滅させたり、護衛対象からおやつを貰わないと護衛しなかったりと、酷いものである。

 仕方ないと言えば、仕方ないと言えなくもない。

 大和である桜庭はまだしも、大半は元々民間人。

 それが突然国を一人で破壊できる存在になり、監視と幽閉の日々を強いられれば反抗もするし、暴走もする。

 共通しているのが、皆は大半母国が大嫌いである。

 自分の人生をぶち壊した人間、特に軍人には愛想など尽きている。

 従っている理由も、脅されていたり、人質がいたり、その存在ゆえに民間に戻れず、言いなりにならないと生きていけなかったり、酷い場合は言い出せないことを安全措置と称してやっている場合も有り得る。

 例えば……洗脳とか。あるいは、反逆阻止の為の爆破装置だったりとか。

 こんな扱いばかりされているから、彼女たちは……いや、彼女たちも。

 人間を、嫌悪している。深海棲艦も、嫌悪している。味方は、艦娘だけ。

 それも、同じ境遇の面々のみ。

 まあ、憎しみあっているガングートとアイオワのようなものたちもいるが。

 強者の孤独と言えばいいのか。周囲にいる多数の弱者に攻め立てられる、勝手に畏怖される日々は息苦しい。

 その反動で、彼女たちは勝手に振る舞う。都合の良いときだけ利用する連中に対する嫌がらせに。

 自分の存在を盾にして、ご機嫌を伺うように仕向けている。

 普通とは違う、圧倒的な強さに特別な存在に無邪気に憧れる子供もいる。

 そういう子供には、皆は大半、こう軽蔑を込めて言う。

 

 ――なにも知らない人間の癖に。

 

 蔑みを向ける彼女たちは、憧れと無知を酷く嫌がる。

 特にガングート、アイオワは。そういう人間を見ると本当に殺しに行こうとする。

 何度桜庭やウォースパイトが制止したか覚えていないぐらい、頻繁に起きていることだった。

 アイオワに至っては、過去のある作戦で民間人諸とも深海棲艦を吹き飛ばして殺したことも実際あった。

 避難勧告を出しているのになんの理由か、故郷から離れたくないと言う子供たちや老人がいたのだが。

 アイオワは躊躇いなく、粉砕した。深海棲艦とともに、地形を破壊して。

「バカにかける情けはないの」

 と、自分の邪魔をするお前たちが悪いと下して、謝罪もなかった。

 遺族とて、国が抱える最終兵器の前を遮ったなどと言う事実を明るみにすると、周囲から軽蔑される。

 性格は兎も角、彼女も祖国では軍部によって、英雄と祭り上げられている存在。

 黙っているしかなかった。 

 彼女たちが悪いのか。それとも、人類が悪いのか。

 きっと、頭がおかしい彼女ならば、こう言うのだろう。

「どうでもいいです」

 彼女も自分の邪魔をすれば誰であろうが既に殺す。

 そういう意味では、皆と彼女は似ていると言えなくもない。

 そんな面々が集まる鎮守府で。

 数日した頃、桜庭は改めて聞かれるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

「大和。お前、そう言えば教え子はどうした?」 

 それは、ガングートの言葉から始まった。

 隠れていた深海棲艦がアイオワにとうとう発見され、襲いかかる前にウォースパイトとサラトガが二人で押さえ込んだ翌日の、執務室。

 禁煙と言うのに聞かずにパイプをくわえるガングートは、紫煙を吐き出して聞いた。

 桜庭は黙ってキーボードを叩いていた。

 知っているのか。周囲は知らない、彼女のことを。

 桜庭が目をかけていた、あの少女を。

「ここの前任だった、深海棲艦をお前の指示で連れてきた張本人はどこに消えた?」

「……死んだわ。最近、未確認に殺された」

 一応、存在は知っていても事実は隠蔽しておくべきだ。

 事実を込めて、桜庭は淡々と答える。ほぅ、と小声でガングートは反応する。

 室内には、最終兵器全員が揃っていた。各々好き勝手に過ごしている。

「ふぅん。大和、嘘がヘタね」

 アイオワが、特大のジャーキーを食いながら言った。

 長い付き合いだからか、直ぐに見抜かれる。

「事実を嘘と言われるのは心外ねアイオワ」

「だって、そんな強い未確認、居るわけ無いじゃない。あなたの教え子よ?」

 アイオワは軽く否定する。逆に何処まで情報が漏洩しているのか。

 皆に聞くと、大体知っていると全員が答えた。

「ここ数年居なかった、期待のルーキーだったんですよ? アメリカも気にしますよ」

「えぇ。しかも、聞くところによると、あなたに匹敵する適性を持っていたとか」

 サラトガとウォースパイトも頷いた。

 何処から漏れたのやら。ガバガバな現状にため息をつきたい桜庭。

 理由を聞いてもどうせお得意の情報収集だろう。

 聞くまでもなかった。

「……で? 私たちにまで嘘言わないで良いでしょ。本当はどうしたの? 辞めちゃった?」

 誰も外にはいない、と八つ橋を食べていたビスマルクが確認してから改めて問う。

 ここで素直に辞めちゃったと聞くのがビスマルクらしいと言うか。

「ん? そう簡単に辞められたか? 余はそんな話は知らないが」

 ネルソンも首をかしげる。和みそうな雰囲気だが、ガングートは笑った。

「バカかネルソン。決まっている……逃げたんだろう? お前が隠そうとするなら、おおよそ予想はつくぞ」

 豪快にそう笑いながら告げる内容は、皆は想像していたんだろう。

 大して驚かずに、桜庭の返答を待った。

 ……どうにも、同じ境遇の皆は誤魔化せない。

 全員が修羅場を知っているような猛者。

 隠し事は出来そうになかったので、ここだけの話にと内密を約束させる。

 特にネルソンとビスマルク。口が軽い二名には、ウォースパイトが誓わせた。

 その前提で、白状した。

「……お察しの通りよ。あの娘は……渋谷さんと言うのだけどね。逃げ出したわ。ご丁寧に偽装までして」

 簡単に概要を説明すると、皆は共感できるように頷いていた。

 アイオワやガングートは、腕組みして聞いていた。

「……頑張ったようね、その子は。偉いじゃない。殺されそうになっても、直ぐに反撃せずに我慢していたなんて」

「そうだな。見所のある娘だ。故に、惜しい人材を無くしたな大和。これは、お前の甘さが引き起こした事だ」

 アイオワと同感なのはムカつくが、とガングートは言いながら桜庭の甘さを指摘した。

 訝しげに見ると、ウォースパイトやサラトガが止めろと言うのにガングートは続ける。

「悪いがやめる気はない。大和。貴様は甘すぎたのだ。我が祖国では、脱走は銃殺される。それほどの重罪を選ばれたのは……貴様の不手際。責任が無いとは言うまいな?」

「否定はしない。けど、甘すぎるって何よ? 渋谷さんを甘やかしたつもりはないわ」

 かなり甘かったことを気付いていない桜庭が反論すると、意外なことにアイオワが口をはさんだ。

 ガングートが言っているのはそれじゃないと修正する形で。

「あなたが甘いのは、周囲の人間に対してよ。本人じゃないわ。……私個人としては、その子にもう少し甘くしたほうがよかった気もするけど、それはこの際置いておく。前から言おうと思っていたけど、大和。あなたは、人間に優しすぎるのよね。人間を甘やかしているんじゃない?」

 そっちだった。

 要は、何でもっと味方をしてあげなかったのだという糾弾であった。

 桜庭は、周囲の人間たちを甘やかしているとアイオワは言っていた。

 敵対するならさっさと殺して権力で闇に葬るぐらいは最低限でもしておけと、ガングートも賛同する。

 挙げ句には。

「……言い方はあれだけど、実際大和は人間に肩入れしている気もするわね。私はほら、旦那がいるからまだしも」

「同感だな。余もろくな目に遭わないが、擁護する気はないぞ? なぜそこまで庇おうとする?」

「大和には大和の流儀があるんでしょうけど、彼らの増長を招くことになりかねると思うの。今回は、その甘さが加速させたと言っても良いわね。大和に足りないのは冷酷さ」

 ビスマルク、ネルソン、ウォースパイトですら同調している様子だった。

 好き勝手に言いまくる彼女たちに、呆れているサラトガ。

「……わたしは、なにも言いませんよ。ただ、最低でも大和。生きているなら、連れ戻す事をお勧めします」

 行方を直ぐにでも掴んで、早く連れ戻すべきだとサラトガが言う。

 逸材を野放しにして、野垂れ死にさせるのは教え子に対する事じゃないと。

「言われなくてもわかってるわよ……。けどね、日本の海軍てのは……簡単じゃないの。皆好き勝手に言うけど、出来るんなら私もやってるわ」

 暗に、元帥の権力でも同じ元帥がいる限りは難しいと、桜庭は愚痴った。

 一人では限界がある。下手に皆の手助けを受ければ、今度は外交問題になる。

 無茶を言うなと反論すると。

 

「ほう、そうか? ならその小娘、ロシアが貰おうか」

 

 とんでもないことを、ガングートは言い出した。

 話を聞いてないのかと驚く桜庭に、ガングートは不敵に笑った。

 確認すると、渋谷七海という少女はもう戸籍上は死んでいる。

 軍も除籍された幽霊の状態。つまりは、早い話が深海棲艦と逃げた死人だ。

「だったら良いだろう。死んだ人間に法もクソもない。所詮は死人さ。日本で言うなら、死人にくちなしというやつだ。……丁度良い。その娘、私が貰おう。なに、戸籍ぐらいは此方で用意してやるし、何なら深海棲艦も受け入れてやろう。ロシアで私が死ぬまできっちり面倒見てやるさ」

「ハァッ!? あんた、何言ってるの!?」

 豪快に笑ったガングートに噛みつくアイオワ。

 流石に周囲も絶句したり唖然としていた。

 突然何を言い出すかと思えばこの女。

 逃げ出した七海を欲していたのだ。

「黙れアイオワ。貴様も言っているだろう。私もそろそろ引退が近いのだ。後継者探しをしようと思っていたんだが……大和が取り逃がした教え子なら満点だ。私の跡継ぎに相応しい素質もあるようだしな。調べた限り、戦力としては最終兵器一歩手前という感じか。あれは、磨けば輝くぞ……。貴重な人材を飼い殺しにする国には些か勿体無い。我がロシアが、その娘貰おうか」

 信用はできると思う。

 意外と亡命などにも寛大なロシアだ。言う通り、受け入れる気概はある。

 桜庭も少し考える。悪くない提案だった。

 ……確かに、この無理解な日本や限界のある自分よりも、融通の出来るガングートのほうが、彼女の為には良いかもしれない。

「……そうね。渋谷さんの意思も勿論尊重するのよね?」

「愚問だな。何度でもアプローチかけてやろうじゃないか。私は暇だから何度でも行こう。首を縦に振るまでな」

 七海、知らぬところでスカウトがかかっていた。

 ガングートの申し出も、信頼できる間柄。

 自分では守れなかった教え子の行方を問題があるとはいえ、再び人間の世界に連れ戻せるなら。

 同じ境遇で、人間を見限った彼女たちとなら。少なくとも、普通よりはうまくいくかもしれない。

「……相手は深海棲艦連れてるのよ? ガングート正気?」

 信じられないという顔で、アイオワは訊ねるが、ガングートは鼻で笑った。

「だからなんだアイオワ。全ての深海棲艦が敵と決めつけるカビの生えた古臭い思考の貴様では無理な話だろうな」

「ぶっ殺すわよ!?」

 アイオワが怒鳴って立ち上がる。

 アメリカは恐らく無理だろうが……ロシアは受け入れる気持ちはあると示した。

 サラトガも、微妙に嫌そうな顔をしている。

「うむ……ウォースパイト。我が国はどうだ?」

「難しいと思うわ。事情が事情だもの」

 ウォースパイトも、ネルソンも無理だと話している。

「……大和。何なら、うちの旦那に聞いてみる? 大丈夫なら、最悪うちで引き取っても良いわ。なんとかできると思うし」

 もしもダメならドイツが引き取ると、ビスマルクは前向きに言ってくれた。

 因みにビスマルクの旦那はドイツ海軍の実質上の最高責任者だったりする。

 なので、一応可能と言えば可能らしい。

 小声で言い寄ってきたので、保険としてお願いすることにした。

 ……何やらキナ臭い話になってきた。

 とりあえず。七海はえらい物に、巻き込まれることになっていた……。

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