君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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答え

 

 

 

 

 

 

 

 作戦は至ってシンプルだ。

 憲兵は皆殺し。艦娘はなるべく捕らえる。

 無理ならば始末も可能。情けと躊躇いは捨てろ。

 最強の怪物は居ないのだから怯む理由もないのだ。

 全力で、迅速に、外部に漏れる前に。人間は等しく皆殺しに。艦娘は各自に任せる。

「行きますよ」

 人間しか想定しない憲兵は恐れるに足らず。

 七海の声に頷いて。

 それぞれ武器を構えて、マントを被った彼女たちの、作戦が始まった……。

 

 

 

 

 

 

 細かいことなど考えない。

 軍事施設の近くなど民間人は居ない。

 要するに外部には逃げられない。助けも呼べない。

 真っ先に七海がマントを翻して突撃する。

 残像の見える瞬発力で、警備をしている門番をいきなり真正面から、勢いをつけて蹴り飛ばす。

 正門に汚い血の飛沫とゴキブリを叩き潰したような音を、二人いた門番は聞いた。

 聞いただけで、対応はしない。後続の如月が、新装備のカットラスで、豪快に頭を叩き割った。

 反応する前に、接近した二名による制圧。スイカを割るような気持ち悪い生音をさせ即死。

 さっさと二人は侵入して、支援する弥生と山風、メイドたちが続く。

 最後尾のリセ、静香は目撃者がいないように見張りつつ、手早く死骸を回収して、適当に隠す。

 初手は二名が機動力を武器に近寄って殺害する。

 警報を鳴らされる前に、春雨と村雨が、機械系統を麻痺させる。

 彼女に教えられたブレーカーを探して、落とした。

 鍵などは強引に破壊して、どんどん進む。

 憲兵の詰め所に侵入。何事かと驚く前に、全員を数秒で皆殺しにした。

 斬殺と、撲殺。切り殺して、殴り殺す。

 出来の悪い映画のような惨事をぶちまけて、進んでいく。

 内部では停電か? とお留守番の艦娘たちが騒ぎに気付かず復旧を待っていた。

 こういう場合は、憲兵が何とかするのがいつものこと。

 悪い意味で平和ボケしていた。

 その間に制圧は広がる。悲鳴をあげることなく憲兵は暗殺され、沈黙する。

 あまりの機動力に、人間の感覚では七海も如月も追い付かない。

 陸上だとしても、圧倒的な加速は健在。地力が違うのだ。

 呆気なく詰め所を制圧して、個人行動に切り替えて散り散りになった。

 後は警備に歩き回る連中を襲って殺害していく。

 如月と春雨を引き連れ、電探を頼りに気配を探って片っ端から殺していく。

 手早く、瞬間的に殺すため悲鳴をあげる間もない。静かに死体を増やしていく。

 気分は暗殺者のようなもの。七海は気にせず、血塗れのマントを纏って暴れていく。

 艦娘たちはそれぞれ過ごしているが、電探で察知されているので動きは丸わかり。

 殺した憲兵から奪った無力化用の装備を使って、闇討ちして確保していく。

 意気消沈している者もいた。手分けして殺して、倒して、捕まえて。

 配属する人数も少ないからか、憲兵もこう見ると少ないものだ。

 ものの数分で、大体大騒ぎにならずに終えてしまった。呆気ないものだ。

 内部構造を知り尽くした七海が相手だ。

 工厰などの人の多い場所は避けていたゆえ、最低限の鎮圧は知られずに完了。

 捕まえて気絶している艦娘たちは、適当に部屋に放り込んで、放置。

 七海は工厰に向かい、如月たちは執務室に、春雨たちは食堂に向かう。

 それぞれ、大本営の遣いである大淀、明石、間宮を始末するためだ。

 この三名は必ず殺せと七海は言った。

 通じている艦娘は敵でしかないので、確実に殺れと。

 数回、悲鳴が聞こえたがすぐに止む。厨房が、執務室が深紅に染まった。

 工厰では、明石を殺し終えた七海がなんと妖精まで片っ端から捕まえて、釜茹でを通り越して灼熱地獄に落とすように、溶鉱炉に妖精を一人で放り込んでいた。

 結構な数の妖精が襲撃に右往左往しているうちに踏み殺されて、握り殺され、叩き殺され、蹴り殺され、逃げ惑う彼らを皆殺しにしようとしていた。

「おめえ!? 一体何のつもりだ……ぐわぁ!?」

 散々今まで揉めてきた髭も犯人に気付いて叫ぶが、まるでハエ叩きで人間が鬱陶しいハエを殺すように、七海が問答無用で楽しそうに笑って蹴り飛ばし殺害した。

 赤黒い染みになって、髭は死んだ。

 烏合の衆とはこの事か。予想できない襲撃に戸惑ううちに、彼らは全部居なくなった。

 残ったのは惨劇のあと。猛獣が餌を食い散らかした、血祭りの阿鼻叫喚。

 そしてマントを捨てて、大嫌いだった妖精を皆殺して憂さ晴らしした、含み笑いをして去っていく一人の少女の姿だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間後。特に外部に漏れることなく、制圧完了。

 留守の間に、憲兵は25名程殺して、艦娘は一先ず全員確保した。

 但し、深海棲艦が外で航空支援をしていたらしく、リンゴが気づいたような素振りをして騒ごうとしたので七海が、三人纏めて蹴っ飛ばして気絶させた。

 で、捕獲された。手元に集中していたせいで後ろの反応に遅れていた。

 現在、大淀の死体を溶鉱炉に捨ててきた七海が、解体を経験して嫌そうにしていた。

 人間も熔解できると、死骸は全部溶鉱炉に投げ捨てた。これで取りあえずは時間を稼げる。

 監視カメラも全部回収して投げ込んで、執務室の器機も無線以外は破壊した。

 スイッチを入れていると、戦場の桜庭が支援が来ないと文句を言っているが、此方には戻れない。

 中枢棲姫が全力で暴れている以上は、穴を空けられない。

 で、久々に戻ってきて提督の椅子に座る七海は上機嫌であった。

 目の前には、捕縛されて黒い鎖で縛られ、口にはガムテープをされる艦娘たちが、床に転がり七海や嘗ての仲間を見て驚愕して、混乱していた。

 なぜ生きている。なぜ襲われた。なぜ捕まえる。なぜ憲兵を皆殺しにした。

 様々な分からないことを表情で浮かべるが、七海は椅子に座って、皆を眺めていた。

 見張りをする如月たちに外を任せて、五十鈴と由良を連れて漸く口を開いた。

「お久しぶりですね。元気そうでなりよりです」

 本物の七海だと知るや、何やら叫ぶように抗議を始める一同。

 怒りや憎しみ、悲しみを浮かべては七海に聞こうとしていた。

「戻ってきたのは、言うまでもない。桜庭さんを殺すためです。皆には、人質になってほしいんです」

 今までの経緯を説明して、最後にそう纏める。

 皆はまだ騒ぐ。試しに、嘗ては仲が良かったヴェールヌイのガムテープを剥がすと。

「七海ッ!! 何てことをしたんだ君は!? 人を殺したんだぞ!?」

「ええ。だからなんですか?」

 怒りよりも困惑するヴェールヌイに、涼しい顔で七海は聞き返す。

 害があるから始末した。それが何か問題でも? そう聞いたのだ。

 愕然とするヴェールヌイ。七海はもう、殺人に躊躇いがないと彼女も理解したようだった。

 七海は立ち上がり、ヴェールヌイに近寄る。恐怖で悲鳴をあげるヴェールヌイに、七海は聞いた。

『怖い? あたしが、怖いヴェールヌイ? でもね……あたしをこんな風にしたのは、あの連中。人間の悪意には、もうたくさん。ずっと、我慢してきたんだから……殺しても、良いでしょ?』

 ロシア語で語りかけると、日本語で叫ばれた。

「ふざけるな!! その気持ちは確かに分かる、けど殺してなんになるんだ!? 無関係だろう!? 個人を見ろと私に言った七海が、なぜそんなことを決めつける!?」

 個人的に恨みがないのに殺したのは何故だ。

 そう問われて、七海は個人的に邪魔になるから無関係でも殺したと言った。

 個人を見たさ。自分と言う個人を。

 その結果、人間は個人的に邪魔だから見境なく殺したいと思っただけだ。

 だから、個人的に邪魔になるなら、ヴェールヌイも殺すとあらかじめ言っておいた。

「ひぃ!?」

「……楽に殺してあげますよヴェールヌイ。ただ……折角戻ってきたのです。殺すのは……したくないんですよ。暴れないでください。もう、加減ができません。選んだ以上は……もう、止まらない。ヴェールヌイ、お願いです……静かにして。あるいは、一緒に来て。それが、あたしの本音です……」

 ……初めてであった。

 七海は、ヴェールヌイに向かって、懇願するようにお願いしていた。

 笑顔だったのに、今は凄く辛そうに、苦しそうに、悲しそうに表情を歪めて言い続ける。

 自分でも決めたからには、足は止めない。止められない。

 好きだった皆を殺したくはないから、大人しくしていてと。

 あるいは、一緒に来てくれればなにもしない。

 持てる全てを行使して、必ず守ると。七海は皆に言うのだ。 

 桜庭さえ居なければ、後を追う者も取りあえずは消えるのだ。

 平穏に過ごしたい。だから、最初で最後の攻勢に出た。

 追いかける敵を始末したら、大人しく帰るから、逆らわないでと。

 最後には、七海は……皆の前で、一筋の涙を流していた。

 七海が、初めて、泣いた。泣いて、お願いしていた。

 殺したくない。離れたくない。失いたくない。

 未練を浮かべて、それでも選ばないといけない。

 決めているからこそ、行動しているからこそ。

 元々の提督として、仲間を消したくないのが本心なのだ。

 五十鈴が七海を抱き締めて、首を振った。七海は、五十鈴の胸を借りて、泣いていた。

 嫌なのだ。殺すと決めたはずなのに、寸前で迷う。躊躇う。

 好きだった艦娘と深海棲艦を殺そうとする自分を止めたくて。

 けれど、甘えはついてきた皆を不幸にするから、躊躇できない。

 七海は葛藤しているように、静かに泣いていた。

「……ねえ。七海は、頑張ったわ。もう、この娘は限界なのよ。これ以上は、人の側には居られない。これでも妥協して、我慢して、必死にやって来た。……あんたたちは、誰に従うの? 七海? それとも……人間?」 

 五十鈴が皆に聞いた。

 七海は七海で、限界を超えている。その結論が逃走だったと。

 好きにすればいいと、五十鈴は言った。同時に。

「歯向かえば殺すわ。五十鈴が、代わりに。七海を苦しめる人間に味方するなら、あんたたちも敵よ」

 由良も頷いた。深淵のような深い闇を湛えた二人に睨まれ、彼女たちは暫し考える。

 真っ先に返答したのは、衣笠だった。むーむー言うので、ガムテープを剥がすと。

「……良いよ。衣笠さんは、七海につく」

 衣笠は、唖然とする周囲を尻目に、七海についていくと言い出した。

 真意を確認すると、衣笠は言うのだ。

「何だかんだ……やっぱり、心の何処かで引っ掛かりはあるの。七海をあんな風にした連中の言いなりになるのは。ほら、衣笠さんは七海の味方だったからさ。今の涙を見て決心できたよ。七海、衣笠さんも七海と生きるよ。安心して、もう……泣かなくて良いから」 

 衣笠はそう、苦く笑って七海に言った。

 彼女もいつも目立たないが、七海を見守った姉だった。

 置いてけぼりにされて、寂しかったし、当然戻ってくれば嬉しい。

 一緒が良いと言うならば、愛想もないし、七海につこう。

 衣笠の拘束を五十鈴がほどいた。彼女は本気だと目を見て思ったからだった。

 更に続く、七海に味方する艦娘たち。

「七海さんが泣き出すのは初めてですよね? 私、泣いてるのは見たくないです。だから……古鷹も、ご一緒で良いですか?」

 古鷹も。

「……疑問があったんです。人間を守る自分自身に。けど、漸く答えが出ました。私も、行きます……共に」

 羽黒も。

「オッケー。ななみん、鈴谷もそっち行っても良いよね? ほら、鈴谷はななみんの友達じゃん? 覚悟は決めたよ!」

 鈴谷も。

「ん……。ぶっちゃけさ、元帥って厳しくて息苦しいんだよね。ねえ渋谷、そっち行けば夜戦し放題とか特典ない? あったら私も行きたいな。正直、今の鎮守府の空気も嫌いだしさ」

 意外に川内まで。

 まさかの親しい艦娘全員裏切りコースだった。

 そして、他にも。

「真実を知ったから……もう、あたしも迷わない。お姉ちゃん、あたしも行く」

 イムヤも、一緒に来てくれた。

 何だかんだ、彼女も仲良しだった一人。

 結局、結構な数が七海個人に味方した。

 言葉を失う周囲に、解放された彼女たちは、本当に人間を見捨てるらしい。

 ……説得に応じない艦娘たちと、何やら考えている深海棲艦。

 果たして、彼女たちの答えとは……。

 

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