君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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空が爆ぜる日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後先考えずに突撃していった一行であったが。

 取り敢えず鎮守府に到着。全員に紛れて七海も侵入。

 浮遊要塞は風呂敷の中だ。

 深海棲艦に囲まれて詰め所を通りすぎて、兎に角執務室を目指す。

 で、道中艦娘たちがとうとう深海棲艦と一部がクーデターを起こしたと勘違いして桜庭に報告。

 疲れたように書類を終えて一休みしていた桜庭に悲劇が襲う。

 ばーん! と豪快に扉を開いて、堂々と名乗る。

 

「どうも! 桜庭さんお久し振りです! 完全復活したんでお礼参りに来ました! 覚悟してください!」

 

「一体何事ォ!? えっ、何なの本当に!? 渋谷さん!? 何で鎮守府に!?」

 

 仰天の彼女に、七海は皆に命じた。

 あの人が放置した恨みを晴らすべし。

 嫌がらせしてやれと。

「帰ってきて早々何しようってのアホ深海棲艦共ォッ!! 止めんかァ!」

 三々五々散っていって、悪事を働き(いたずらだが)、胃痛と頭痛に悩むがいいと、皆様全力で悪乗りしていた。 

 怒鳴る桜庭が追いかけるが然し七海が立ちはだかる。

「記憶が回復したのを知らせに来たの!? って言うか方法あったでしょ!? 自分の立場わかってる!?」

「MIAですよね? その辺はあたしのいない間に鎮守府の居心地悪くした桜庭さんへのお返しとして、任せます! 頑張ってください!」

「ちょっ、ちょっと待って……!」

 混乱する桜庭に、ノリと勢いで逃げ出す七海。

 背中を見せて、走り出す。

 お礼参りに、鎮守府に混乱を招くのだ!!

 

「このクソ忙しいときに追加するの止めてえええええ!!」

 

 悲痛な桜庭の叫びが、幽霊騒ぎに発展する姫園鎮守府に響くのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で。

 簡単にその後の流れを整理しよう。

 七海、悪乗りしていたが事情を聴かれ捕縛されて大本営に直送。

 七海はあくまで既に民間人。許されるのは深海棲艦のみ。

 艦娘の指揮はできないと桜庭が怒って、それを聞いたお嫁さんが。

「そんな理屈は! 如月が! 許しません!」

 と、どこぞの榛名のような事を言って浮遊要塞に目の前で喰われた。

 桜庭の言うことよりも七海を優先すると言い出して、真っ先に同じ方法を選びやがった。

 制止する前に実行、一口で丸飲みされて、絶叫する桜庭。

 艦娘が喰われたのだから、当然だが小春が徐に工厰から持ってきていた高速建造材を口の中に放り込む。

 時短してまあ落ち着いてみていろと示した。

 んで、おぎゃる浮遊要塞。誕生する深海棲艦。

「はい! 艦娘如月改め、深海棲艦如月です!!」

「何でさああああ!?」

 頭を抱えて苦悩する桜庭。理解不能なことが続く。

 吐き捨てられて床に転がり、元気なまま立ち上がる如月改装、深海モード。 

 角が額に二本、左に三本生えて、七海によく似た純白の髪の毛と色白の肌。

 目の色も紫に変容しており、それ以外は普通の如月である。

「これで自他共に認める深海棲艦! 司令官のお嫁さんよ!」

 意識もハッキリしており、自分は艦娘よりも深海棲艦であると主張する。

 元通りになるのか心配する桜庭だが。

「如月、おいで」

「はい?」

 手招きしている七海に無防備に近づき、何と!

「ちゅっ」

「ひあ!?」

 皆の目の前で頬にチューしよった。七海が。 

 驚く如月。

 で、一瞬で顔が真っ赤になって一発元通り。

 何となくチューしたら戻るかなという思い付きでやったら戻った。

 皆さん絶句するなか、羞恥で怒る如月。ニヤニヤ笑う七海。

 いつも通り百合しているイチャイチャ空間であった。

 これで問題ないと言い切る七海も七海であるが。

「ママにしかあたしは従わないもん!!」

「弥生も……七海姉と一緒がいい!」 

 鎮守府にいた娘と妹も参戦。

 桜庭の命令は聞かないと止めるも無視して同じく喰われた。

 そして流れ作業で高速建造材を放り込む小春。

 またも吐き捨てられて床に転がる。

「ママ! あたしも深海棲艦になったよ!!」

「弥生も……! 七海姉と妹だから……!」

 で、二人も深海棲艦に変異してしまう。 

 色素の抜けた髪の毛は同じだ。

 山風は角がないが目の色が真っ黒になり、弥生は角の代わりか背丈が少し大きくなった。

 色白の肌も健在で、七海にチューされるともとに戻るようだ。

「そんな……ラブコメみたいな展開が……!?」

 わかる範囲を超えて頭痛がする桜庭。兎も角全員大本営に直送する。

 これ以上は深海棲艦になるなと厳命していく。そうしないと量産されそうな勢いだった。

 こうして見ると、七海は好かれる艦娘と深海棲艦にはとことん好かれるらしい。

 七海のためなら元帥にすら平然と歯向かう一同の目付きは本気であった。

 あれは、下手なことをすると漏れなく皆は裏切るだろう。

(渋谷さんのハーレムには手出ししないほうが賢明だわ……。被害が甚大になる……)

 割と笑えない規模の戦力でハーレム築いていた七海。

 桜庭は大本営で、出来る限りの事をしておいた。

 同時に、七海の母には記憶が回復して、そのせいかどうも復帰したいと願っていると正直に説明した。

 本人が何やら、戦う気満々で、しかも周囲の部下たちが躍起になっている。

 なので、正式な提督には復帰できないが予備隊のような感じで就職してもらうと。

 そう語ると……。

「……あれが、私の知らない海軍での七海ですか」

 一度顔を合わせた母は、そう呆然と桜庭に言った。

 ある軍の病院で色々と検査している待ち時間に丁寧に説明していると、そう言い出す。

「……元気ですね。あの娘が、あんな風にはしゃぐのは……あの人と遊んでいる小さい頃以来です」 

 見ている窓の外では、七海が五十鈴に追われていた。

 五十鈴にトラック運転手とからかい、怒らせて笑いながら逃げている。

 あの人、とは恐らくは亡くなった父親だろう。

 事故で亡くなっているらしいのは知っている。 

 七海を見ている母の顔は、穏やかなものだった。

 検査の結果は、母には言えないが完全な深海棲艦。

 如月たちは一時的な変異だが七海は手遅れであった。

 分類は浮遊要塞に近い、姫レベルの強大な能力を有する。

 新種と断定されたが、何分戸籍のある人間が変異したもので、対応は慎重にやった。

 一応桜庭の助言ありで現状維持になった。

 周囲の艦娘たちの名目が監視になったぐらいで、あとは変化なし。

 させると、次は人類に牙を向くと脅した結果だ。

 実際可能性はあり得るだろう。

 貴重なデータの損失も踏まえると失う価値は大きいとして、過度な接触を控えるぐらいには収まった。

 尽力した甲斐もあって、平穏は最大限確保している。

「七海はきっと、あの人達と戦うために選んだのでしょうね」

 前の七海なら有り得ない理由だと母は言った。

 他人に無関心で排他的な少女が、誰かの為に再び、今度は自分の意思で戦いにいく。 

 七海の気持ちを尊重すると、母は言った。強制ではない今回は、自分からだ。

 ならば、それが七海の決めたことなら異論はないと。

「……海軍の生活は、嫌なことばかりでも無かったみたいで、良かったです」

 嫌がっていた当初と違い、五十鈴に胴体に腕を回され締め上げられるなどの、じゃれあいをする相手がいるのは良いことと母もわかる。

 由良が慌てて助けに入り、白目を剥いて泡を吹いている七海を見て何故そう思うのかは別として。

 母は言った。これからも、七海を宜しくお願いしますと。

 海軍は嫌いだが、七海の周囲にいる人々は七海の味方と、接していて分かった。

 桜庭も、礼を言ってから七海に伝える。

 母が帰ったあと、顔をあわせてから。

「深海棲艦になったことは、言ってはダメよ。渋谷さんは人間なんだから」

「はい。覚えておきます」

 まだ人間として見てくれるらしい。

 素直に、それには感謝する七海。

 再び日常に戻っていく。今は、平穏に暮らしたいと七海は言った。

 戦うのは、作戦予定日までないから。

 そう、桜庭も思っていた。

 ……そんなわけが、無いのだが。

 作戦予定日は、あくまで人類の予定であり。

 深海棲艦には、なんの関係もないのだ。

 後日。今まで通り生活している七海たちに。

 戦時という事を思い出す、最悪の事態が引き起こされた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、平日のことだった。 

 学校の授業中、七海は普通に授業を受けていた。

 見慣れた風景。平和な時間。

 それは……唐突に壊される。

 突然、けたたましく鳴り響く警報が学校どころか、街全体に響き渡る。

 皆は何事かと周囲を見回す。すると、乱暴に教室の扉が開かれる。

 血相を変えて青ざめる生活指導の教師が駆け込んで叫んだ。

 

「み、皆さん早く避難してください! 空襲です、空襲が来ます!!」

 

 ……突然鳴り響くのは、空襲警報だった。

 深海棲艦の艦載機が、本土に上陸して、空爆を行っているらしい。

 既に隣の町は空爆の餌食になっている。早くシェルターに避難しろと。

 訓練か? と生徒たちは首をかしげるが。

 一名が、携帯が死んでいると驚いて叫ぶ。

 通信が破壊されて連絡できないと知って、各々慌てて調べると、緊急避難速報という別途のものが届いていると違う生徒が叫ぶ。

 即ち、訓練ではない。本当に空襲が来ると。

 知らせに来た教師は既に隣のクラスに向かっていた。

 教師は慌てずに早く避難をしろと誘導するが。

 ……自覚をしたのであろう、途端。

 

 ――うわああああああああ!! 

 

 生徒たちは、間近に死ぬという実感を感じて、パニックに陥りながら一斉に逃げ出した。

 真面目に訓練を受けても、非常時に冷静とは限らない。

 ここはそれなりに海から離れている立地。空爆などされたことはあるのだろうか。

 無いから、他人事と思うからこの反応なのだろう。

 今のご時世、余程内陸でもない限りは平和ではないのに。

 平和ボケした高校生など、自分が化け物に殺されると思うとパニックになるものだ。

 教師が誘導する前に一目散に逃げ惑っていく。

 対して、七海は?

 

「……ふぁああ」

 

 能天気に欠伸をしていた。

 鳴り響く空襲警報をまるで気にせず、教師の声などまるで無視。

 勝手に判断して勝手に動く。

 非常時に備えて、海軍の無線機を持ち歩いている。

 一応これでも外部協力者。これぐらいは持っている。

「渋谷、何している!? 早く逃げろ!!」

「先生が逃げてください。あたしは引退してますが一応軍人やってたんです。取り乱す前に、民間人は避難していてください」

 成る程、七海には役目があるのかと判断して、教師は健闘を祈るとか言ってマジで逃げた。

 我が身かわいさだろうが、生徒を置いていくとは……。

 七海はそっちのほうがやり易い。

 生徒と教師の怒号と悲鳴が聞こえる中、一人になった教室で無線機を起動。

 取り敢えず鎮守府に連絡すると。

「この周波数……七海!? 聞こえる!?」

 イヤホンから入る声は……五十鈴?

 家にいるはずの彼女がなぜ鎮守府に? 

「例の決戦の話! 連中、予定よりも早く仕掛けてきているのよ!! 五十鈴も今から急いでハゲのところにいくわ! そっちは……嘘っ!? 今そこ、空爆されている!? 別動隊ってこと!? バカ、何無線なんかしてんの!! 避難しなさい七海!!」

 ああ、そう言うことか。

 大体分かった。七海は、指示は多分出ていっている桜庭に従えと言う。いつもの癖で。

 空爆警報が喧しいが、全く気にしない七海は家に今、浮遊要塞はいるかと聞く。

「浮遊要塞!? 多分いるんじゃない!? 確か、小春と村雨と春雨、あとは何時もの三人がそっちにいると思うけど!」

 本来なら、島村の支援にいく三名もこっちにいたか。

 それは、不味い。色々と。

 焦る五十鈴が言うにはもう桜庭は向かっているし、大慌てで皆が迎撃に出ているとも言う。

 だから無線していないで、早く逃げろと急かす五十鈴。

「お嬢様、大丈夫!?」

 で、無線していると窓から小春がいつもの格好で、大きな風呂敷抱えて現れた。

 どうもどさくさ紛れで侵入してきたようだ。

「あー……小春来たんで、こっちは何とかしますね」

 時間もないので手短に、七海は五十鈴にこう言った。

 まさかの台詞だった。

 

「こっちの艦載機は、あたしが何とかしますので。終わったら合流しましょう。座標、送ってください」

 

「はぁ!?」

 

 言いたいことだけ言って、勝手に切った。

 避難などするわけない。だって、七海は戦えるから。

 空爆している艦載機風情、敵じゃない。落とせばいいんだろう。

「お嬢様、必要と思って浮遊要塞連れてきた」

 風呂敷から浮遊要塞を取り出して、冷静に働く小春。

 流石の働きに、べた褒めの七海は上機嫌で笑った。

 もう少しで学校付近に艦載機が到着すると、道中見ていた小春が言った。

「で、えっちメイドと春雨イドは?」

「こんなときまで誰がスケベですか!! 怒りますよ!?」

 噂してたら追ってきたのか窓から村雨と春雨、嫁と娘と妹も全員来た。

 警報が鳴ったので全員で、七海を助けに来たらしい。浮遊要塞持ってきて。

 怒る村雨に愉快そうに七海は言った。

「まあまあ、村雨。そう可愛らしいお顔で怒らないで下さいな。鼻血が出そう」

「この人は……!」 

 マイペースに浮遊要塞を撫でて、頭が痛い村雨達を見て、説明した。

「そんじゃ、あたしの家や学校が吹っ飛ばされる前に応戦しましょうか。決戦が早まりました。このまま、全員で応援に行きます。……車とか使えないので、鎮守府までは頑張って走りましょう」

 武器は浮遊要塞に仕舞ってある。

 非常時と言うのに全く動じない彼女たちの、決戦が……始まろうとしていた。

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