君と結ばれる、物語の作り方   作:らむだぜろ

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空爆の裏側 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は、七海を学校に送っていった後から始まる。

 一度野暮用で鎮守府に戻ると、五十鈴は送っていってから直ぐに出ていった。

 ちょっと取りに行きたいモノを思い出して、向かった。

 その後、自宅では母は仕事で留守であり、残っている面子はメイドと三人娘。

 他は鎮守府にいる順番であった。 

 自宅で一通り家事を終えた皆は好き勝手に過ごしている。

 小春が同人誌を読みふけて、村雨はやはり一流のスケベとか意味のわからない事を言い出してキレる村雨が、だったら自分である証拠を出してみろと口喧嘩をする見慣れた光景。

 春雨はのんびりお茶を啜り、三人娘は七海のベッドでにおいに包まれ二度寝をしていた。

 そんな平和な時間は、簡単に破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず、五十鈴の視点では。

 鎮守府にある程度時間がかかったが到着。

 皆に野暮用と既に知られているので気にせずに準備をしている頃。 

 突然警報が鳴り響いた。何事かと慌てて五十鈴が執務室に向かうと、もう桜庭は居なかった。

 代わりに秘書をしていた由良が教える。

「し、深海棲艦の巨大連合艦隊が……日本中に同時に出現したって……」

 呆然と呟く由良は、頭が追い付かずにパンクしていた。

 何でも本来此方から仕掛けるはずの拠点から次々雑魚の群れが現れて、本土に侵攻しているらしい。

 予定よりも、連中が早く動き出した。監視をしていた艦隊から通達があり、全国の担当する鎮守府では現在迎撃中とのこと。

 もう桜庭が出撃して、一番近い艦隊を移動がてら撃滅して次に向かっているという。

(流石規格外、後手でも迅速ね……)

 由良のように動じずに予め準備してあった装備ですっ飛ばして向かっていったという。

 冷静沈着。そこは流石は元帥。伊達じゃない。

 ただ、由良たちの鎮守府では大半は留守番である。

 残っている深海棲艦は、七海の指示を待っているが……七海は現在学校だ。

 連絡しようと由良が自分の携帯で電話をするが何故か通じない。

 仕方無く五十鈴が待っていられないと、待機中の皆に通達。

「あんたたち! 話は聞いてるわね!? 準備だけでもしときなさい! こっちはハゲに連絡するから!」

 と、自己判断で命じて共同任務の島村に無線で確認をする。

 コール一回で彼は出た。

「此方姫園鎮守府、軽巡五十鈴です! 島村提督、聞こえますか!?」

「おお、五十鈴か! 私だ! そちらはどうなっている!?」

 応答した島村は、焦りを感じさせる声で、状況を聞いた。

 こっちは現在桜庭は出撃中、七海は学校だが連絡が何故か通じないと。

「何だと!? だが、遅れは取り戻そう! 現在、此方でも敵艦隊と交戦中! 聞こえるか、陽炎! 不知火! 第一艦隊、第二艦隊は貴様らに任せる! 応援が到着するまで持ちこたえろ! 全員奮起せよ! 絶望するな! 諦めるな! 決して死に急ぐな! 私も応援を連れて必ず向かう!!」

 と、力強く指示を出している。

 どうやらもう足止めと時間稼ぎはしているようだ。

 足の速い駆逐艦と高速空母で無理矢理足を止めていると言った。 

 相棒の武蔵も重量編成で出撃していると言うので急ごう。

「今は私にも敬語はいらん! 五十鈴、どうにか渋谷さんに連絡をつけろ! 私はヘリコプターで今すぐそちらに合流する!」

「了解! うちの深海棲艦にも先に向かわせるわ! 五十鈴も準備してあの娘たちと一緒に向かう! ヘリの給油も明石にやらせるから! 戦っている座標はどこ!?」

 権限などないが、本来の代理である秘書の由良が小春たちにも通じないとパニックになっていた。

 一度通話しながら、片手で由良の頭を拳骨で殴る。

「痛ぁ!?」 

 落ち着けと睨んで、涙目になりながら由良は頷き、一度工厰に向かうと出ていった。

 準備を手伝ってもらうために彼女は留守番の艦娘たちに声をかけにいく。

 一方五十鈴は座標を聞いて、通信を終える。

 自分の装備を代わりに準備してもらいつつ、此方も代わりに全体に指示を飛ばす。

 大丈夫。まだ、遅れは取り戻せる。焦りは禁物。

 冷静になりながら、準備を慌ただしくやっていると、無線が鳴った。

 表記の周波数は……なんと七海で。直ぐ様出る。

 彼女はやはり学校にいるようだった。

 同時に、駆け足で戻ってきた由良がドアを開いて五十鈴に叫ぶ。

「五十鈴、大変だよ! 街が……七海ちゃんのいる付近の街が空爆されてるって!! 今、大騒ぎになってる!!」 

 一般の電話が死ぬわけだ。地形ごと吹っ飛ばされたんだろう。

 空爆をされていると聞いて、五十鈴は納得する。

 海軍の無線は特殊な経由をするため、多少のことじゃ通じなくなることはない。 

 由良がやっていたのは普通の携帯。そりゃ無理がある。 

 別動隊が居たらしい。早く避難しろと言うが……。

「はぁ!?」

 聞き返す前に、無線を切られた。

 何か、浮遊要塞がいるかと聞かれ、居るなら小春たちと空爆をどうにかすると言っていた。

 出来なくはないだろう。彼女たちは全員深海棲艦。

 陸上でも対応可能な装備もあるし、出来るのは分かる。

 しかも、突破して合流するから後で座標を教えろとか言い出す。 

 本来なら島村の鎮守府で指示を出す手筈が、戦えるからって七海は直接来る気満々だった。

 やはり五十鈴含めて皆が居るなら、自分も戦うつもりか。

 その為に深海棲艦になったのだ。おかしい話でもないか。

 仕方無い。七海がそう言うなら、任せる。

 七海は言い出したことは大体実行する。今回も、あのハゲと一緒に前線に出る。

(まったくもう! 兎に角、急がないと!!)

 動ける皆はさっさと出して、自分も出撃する。

 後方支援のリセと翔鶴とパクチーは、島村操るヘリから艦載機でカバーする。

 二名ほど海の上では戦えないので妥協した結果だが、島村操るヘリは航空機をざっと1000は放つ戦力になる。

 正直あいつが潰されると一気に瓦解する。命綱は島村なのだ。

 三人ほど足りないが、五十鈴がなんとかしよう。

「軽巡五十鈴、出るわ!!」 

 ありったけの燃料と弾薬を詰め込んで、深海棲艦と共に五十鈴は抜錨していった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 何も知らない、電話が通じないことも知らない皆は。

 突如鳴り響いた空襲警報に、ビックリしていた。

「これは……!?」

 小春は持っていた同人誌を仕舞ってから外を見た。

 村雨は慌てて立ち上がろうとして足が縺れて無様に両手を広げるように顔から転んだ。

 スカートのなかの白い下着が見えた。

 流石本作スケベ担当。シリアスの裏側の焦るときも色気を振り撒くのを忘れないあざとさ。

(何か分かんないけど殺すッ!)

 顔をあげて虚空に殺意を向けるがそれは無視して。

 丁度スカートの中身が見えた春雨は、

「ぶふーっ!?」

 驚いてお茶を霧にして吹き出した。汚い。

 三人娘は揃ってベッドから転がり落ちた。

「空襲警報!?」

 如月が真っ先に行動する。

 起き上がって以前聞いていたリビングに向かい、棚に入っていたラジオを起動。

 すると、ここいら近辺に空爆が来ると言う情報が流れていた。

 沖合いに突如現れた空母がかなりの数の艦載機を陸地に向かって放ったらしい。

 時は遅く、隣の都市部は空爆の被害を受けている。

 陸軍が出動して応戦しているが、戦況は悪いだろう。

 慌てず避難を誘導する放送を途中で乱暴に切り、部屋に戻る。

 おろおろする山風と弥生。初めての内地の空襲にパニック状態になっている。

「淫乱メイド! この非常時にパンチラして妹を悩殺する暇があるなら準備して!」

「誰が淫乱……ああもう、分かってるわよ!!」

 咳き込む春雨を擦りながら、村雨も怒鳴る。

 小春はプカプカ浮いて寝ている浮遊要塞を叩き起こして、告げる。

「弥生、台所行って火の元消してきて! 山風、戸締まり! 春雨、必要なものを持って! 村雨は……取り敢えず色目を使わない!!」

「事故にも因縁つけるなァ!! 真面目にやってるって言ってるじゃない!!」

 各々、我に返って素早く動いて準備をする。

 携帯を取り出す村雨に、小春は怒る。

「バカ雨! こんなときに携帯なんて無意味! どうせ回線が死んでるから通じない!」

「バカって言うな! 一応念のために持っていくだけよ!」

 色々機能があるでしょ、と怒鳴り返して全員戻ってくる。

 風呂敷に浮遊要塞を包んで首から背中に回して背負う。 

 バタバタと皆で玄関に向かって出ていく。

 鍵は村雨が持っているので施錠。

「お嬢様の高校に行く! 助けに!」

「鎮守府じゃないの!?」

 小春は七海を助けに行くと言っていた。

 春雨も驚いて叫ぶも、無視して小春は逆方向に走り出してしまう。 

 本来の任務である七海の護衛を優先して、他はどうでもいいと判断したのか。

 あるいは、空襲で七海が死ぬのを恐れているから真っ先に助けに行くのか。

 どっちにしろ、事情が分からない。非常時の無線を持ち歩くのは七海だけ。

 七海のところに向かうのは、当然とも言えると落ち着いて考えて皆は納得する。

 考えてみれば、見る限り遠方の隣の都市部はもう一目瞭然で破壊されていた。

 あれでは電車なども使えない。つまりは、向かうに向かえない。

「もう! 提督ばっかり優先して! そんなに提督が好きなのかしら!?」

 悪態のように言うものの、村雨が次いで走り出していた。

 続いている三人娘や妹がそれを見てぼやく。

「村雨だってママが好きなくせに。もうそろそろ素直になれば?」

「スケベとかエロいとか淫乱とか……。あれは単に七海姉の愛情表現だし……」

「そうそう。事実でも良いじゃない? ちゃんと司令官は愛してくれるわよ村雨ちゃん」

 この溺愛されて既に愛情で洗脳されている娘と妹と嫁がそう言うし。

「姉さん、ご主人様は皆大好きだし、愛してるよ? 姉さんだって感じるでしょ?」

 最愛の妹メイドにすら言われて村雨は困った。

 わかってはいるけど、どうにも……。

「……分かっているけど……。村雨のプライドが、ね? 許せないって言うか、ボケを放置するなっていう謎の使命感が提督には働くのよ。村雨だけ何時までも淫乱メイドとか言われるの納得できないし、あんなセクハラ紛いの愛情表現よりはもう少し優しくしてくれないかなって思うんだけど」

 否定はしない。結局村雨も七海のメイド。

 毒されているし、とっくに親愛ぐらいある。

 けど、納得できない。

 謎の村雨嬢とか淫乱村雨イドとか、言いたい放題毎度言ってくれる。

 最早ぶれないお約束になっているのがムカつく。

「多分村雨に好きって言っても聞かないから、ママはセクハラするんだと思う。村雨、ツンデレだし」

「ツンデレ!? そんなものないけど!? 新しい属性の付与も止めて!?」

 山風が何か言い出したが、それも言い掛かりである。

 至って真面目でツッコミで苦労人。そういうポジのハズですが……。

「兎に角、漫才している間に司令官を迎えに行きましょ!!」

 如月の言う通り皆は急ぐ。

 彼女の安全を確保するため、懸命に走るのだった……。

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