メトロイドvsプレデター ―サムス クロニクル―   作:ぷるぷるゼラチン気質

5 / 10
Nei'hman-deという名前は1994年の小説Aliens vs. Predator: Preyに出てくる主人公プレデター・Dachandeの腹違いの弟です。原作では速攻で死ぬキャラです。

ダチャンデの弟がメトロイドワールドに来た、でも良いしご先祖様と同じ名前を貰った、でもどっちでもいいです。

ダチャンデは強くてかっこいいですよ!映画AVPのスカーの元ネタでもあります。ダチャンデが出てくる日本語訳のエイリアンVSプレデター・ブラッドタイムも発売されてます。皆、買おう!(ダイマ)


チャプター05 日常

 (プレデター)は彼自身が持つ知識や情報をチョウゾに齎してくれるわけではなかった。特にマザーブレインは彼から聞きたいことが多くあったのに、何を聞いてもつれない反応で『憤慨』という感情を発露させていたという。

 多くのチョウゾは彼が早々にこの惑星を後にすると思っていた。しかし意外なことに彼はゼーベスを去らなかった。詳しい理由は誰にも分からなかったが、サムスだけは自分がいるからだと根拠無しに胸を張っていた。

 

「おじさん、お名前なんていうの?」

 

 マザーブレインの監視の元、行政区画(ツーリアン)の大型コンピューターを操作し何事かを調査しているのが最近の彼の日課だったが、いつも彼の背中へよじ登ってくる少女が今日はそう尋ねてきた。

 

「…」

 

 黙ったままコンソールを両手で操作しているプレデター。それに対して少女は柔らかな頬を膨らませてあからさまな怒り顔を見せつけて意思表示だ。

 

「もー、また無視する!初めて会った時からずっとお名前教えてって頼んでるのに……私の言葉も分かってるくせに…。おじいちゃんにもグレイにもマザーにも紹介したんだから、もう他人じゃないでしょ?ね、改めて自己紹介しよ!私、サムス!おじちゃんは?」

 

「……………………………………………Nei'hman-de」

 

 たっぷりと沈黙の時間があってまたも無視かと思ったら、その後に聞こえてきた顫動音混じりの低音で紡がれた不思議な響きの単語。超人化処置を受けているサムスだから辛うじて唸り声ではなく一定のパターンのある言語なのだと理解できた。普通の地球人種なら言葉とすら思えないに違いない。

 マザーブレインならばテレパシーによる意思疎通や、言葉による意思疎通までも出来るようになるだろうが、それには地道な言語パターンの蓄積がモノを言う。なのに肝心要のプレデターはマザーブレインに全くデータを開示してくれないし、どういう方法か不明だがテレパシーに対してもプロテクトを掛けていて精神干渉を寄せ付けない。なので未だ会話一つままならないのだ。マザーには…というよりチョウゾに未だ心を開いていないのだろうが、彼は今、サムスに対して己の名前らしきものを示した。やはりサムスには恩義を感じているらしく、義理堅い個体らしいというのは多くのチョウゾが理解する所である。

 

「…ねい…まんで…?それがおじさんのお名前!?」

 

 サムスのあどけない顔がパァッと明るくなった。ようやく名前らしき言葉を彼の口から聞けた。少女の心は厳しい冬が明け雪解けした春のように麗らかだった。

 

「わぁ!〝ねいまんで〟…うん、すてきなひびき!キレイな名前ね、おじさん!」

 

 正しくは発音出来ていないが、別に彼は気にしていないようだ。

 

「Rrrrrr」

 

 右肩にまでよじ登っていた少女が、プレデター種のドレッドヘアーのような太い頭髪(のように見えるが肉の管だ。切ったり千切ったりすると血が出る。自分の意志で動かせない尻尾のようなものだ)を掻き分けて顔を首筋に埋めてくる。彼の種は湯浴みやシャワーなどの文化が無いと言われ、独特のキツイ獣臭がするが、採掘コロニーK-2Lで大量の焼ける人肉と死臭の中を彷徨った経験のあるサムスは獣臭程度で顔を背ける少女ではない。それどころか彼のこの体臭を鼻いっぱいに吸い込みながら笑顔があった。あどけない少女が将来、何らかのフェティシズムに目覚めないか懸念される。

 

「ねいまんで…えへへ…サムスとねいまんではお友達ぃー」

 

 しつこくスリスリしてくる少女に、プレデターは「Krrr!」と鋭く唸って頭を振った。どうも「くすぐったい、やめろ」といった類のボディランゲージのようだ。言語が通じずとも、例え相手がバカでも最低限の知能が有れば分かるようにと大げさにやったのだろうが、それに気付いても少女はずっとスリスリと頬を彼の首筋に擦り付けてくる。

 

「ねいまんで…うーん、ねぇおじさん!〝ネイ〟って呼んでいい?」

 

「……」

 

 もう彼は諦めたのか、なすがままになって作業を続けるのだった。サムスは沈黙を是と解釈してどんどんと話を進めていくが、それも彼は気にしないようだ。

 

「うん、じゃあネイ!今度からネイって呼ぶね?私のことはサムスって呼ぶんだよ。言ってみて、〝サムス〟って!」

 

「……………………………SAMUS」

 

「うーん、ちょっとたどたどしいな~。サぁ・ムぅ・スぅ。さん、はい」

 

 少女が大きく口を開けて発声練習の先生を気取っている。調子に乗った子供は無敵になるのは世の常だ。

 

「……『サァ・ムゥ・スゥ・サン・ハイ』」

 

 作業の手も止めず、目線をずっと大モニターを向いているが、無感情な電子音声が少女の声をリプレイする。何だかんだで相手をしてあげている彼は義理堅い。

 

「えぇ!?さん、はいまで真似しないでいいよぉー、ネイったら…ふふっ」

 

 その日はずっと彼の方にへばり付いていたサムスなのであった。

 

 彼らをずっと監視していたマザーはその光景を眺め続け、以前ならば下らないと認識していただろうに「面白い」と思うと同時に「温かい」と形容される感情が沸き立つのを自覚していた。

 マザーブレインにも緩やかな変化が始まっていた。

 

 

 

 

 

∴∴∴

 

 

 

 

 

 サムスとネイが互いの名を呼び合ってから約2年が経過した。

 プレデター(パーソナルネーム:ネイマンデ)はチョウゾの古代ログ保管庫でデータを閲覧したり、ゼーベス各地を彷徨って獰猛な原生生物を狩ったり等気ままに過ごしている。当初はツーリアンのコンピューターで調べ物ばかりしていて、その度に何やらイラついている様子だったが最近は訓練を抜け出したサムスと一緒に地下岩窟及び密林エリア(ブリンスタ)等で原生生物を狩っている姿がマザーにより目撃されていた。

 

「ネイマンデ。サムスはまだ幼く訓練期間中です。危険で獰猛な原始生命体が多数生息するエリアに連れ出すのは早すぎます。こちらにも彼女の訓練スケジュールがあるというのに部外者の貴方に勝手な真似をされると――」

 

 当然、マザーブレインが見咎めた。浮遊端末が、ツーリアンの隣接区画を歩いていたプレデターと、今日も彼の金魚のフンをしているサムスの周りをウロチョロしながら延々と説教をしていると、

 

「―あっ!何をするのです、やめ…」

 

低電圧のプラズマ弾が浮遊端末目掛けて彼の肩からノーモーションで発射され、感電したマザーの端末はそのまま機能を麻痺して地に落下した。

 

「何ということを。私の端末もタダではないのですよ。無為な破壊行為は止めて下さい」

 

 即座に館内放送に切り替えてマザーが文句を言う。その間、ずっと彼の足に引っ付くように歩いていたサムス少女はバツが悪そうな顔で俯いていたが、やがて顔をあげて

 

「あの…ごめんなさい、マザー。ネイが私を連れ出したんじゃなくて……その…私が勝手に…無理やりネイについてったの…」

 

とうとう白状した。

 

「…サムス………アナタという人は…」

 

 感電麻痺からやや回復した浮遊端末がヨロヨロと再び宙を飛び、サムスが罪悪感からかそれをキャッチして胸の前に抱く。大人しく抱きとめられたマザーの端末からは呆れた、という感情が滲む声で叱責が飛んでくるのだった。

 そんな場面にもう1人、登場人物が加わる。

 

「そんな所にいたのか、サムス。とっくに訓練の時間になっているぞ。早く地表部(クレテリア)に来て………ん?どうかしたのか?」

 

 グレイヴォイスが未来の銀河の守り人を迎えに来たのだが、場の様子を見て何かが有ったとすぐに察した。事情を聞くと、

 

「なるほど…最近休憩時間の度に大幅遅刻してくるのはそういう理由が…。銀河の守り手になる為の訓練をサボる自覚の無さはおいおい矯正していくとして……それにしても仕方のない子だなキミは。(ネイマンデ)の迷惑を考えたまえ。好きだからとあまりしつこく付き纏うと逆に嫌われることもあるぞ」

 

「えぇ!?ガーンっ!うぅ…はんせいします」

 

 5歳の少女がガックリと肩を落とした。興味なさげに場を眺めていたプレデターだったが、もはや自分は当事者ではないと思ったのかそこを去ろうとし、そんな彼の背を寂しそうに見送るサムスを見て…親心の発露かグレイヴォイスが、

 

「ふむ……ネイマンデ、少し待ってくれ」

 

プレデターの名を呼び、引き止めた。

 

「何か目的があってゼーベスにいるのだろう…それは知らぬし聞きもしない。だが、今は暇を持て余しているのだろう?良ければこの娘(サムス)の訓練を手伝わないか?キミの種が狩りと戦いを生き甲斐としているのは知っている。サムスはこう見えて強い。既に身体能力は200Kg級の猛獣を捻じ伏せられるレベルなのだ。彼女との手合わせはキミをも楽しませられる…と思うのだが」

 

「わぁ!それいい!さんせーさんせー!ネイ、お願いします!ネイ先生!」

 

 グレイの提案にサムスはぴょんぴょん跳ねているが、プレデターは少女とチョウゾを少し見てそのまま立ち去ってしまった。その態度だけだとどうにも判断し辛いが、恐らくは彼は乗り気ではないようだ。サムスがまた項垂れた。

 

「…ま、仕方ない。さぁ訓練にいくぞサムス」

 

 少しでも義理の娘にやる気を出させ、そして友人と信じている存在の側に置いてやりたいというグレイの親心だったが、こうなっては仕方ないとションボリ顔の少女の手を引っ張ってクレテリアへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 そんなことがあった日から数日後、プレデターはゼーベスからいきなり姿を消した。クレテリア谷間の毒の花畑-今は焼き払われて消え失せてしまった-に放置されていた銀の宇宙船も消えていた。彼がいつの間にか宇宙船の修理を完了させ、惑星外へ飛び立って行ってしまったのは明らかでサムスは大変なショックを受けた。グレイヴォイスに先日言われた事がまだ記憶に新しく、彼女は「自分が付き纏い過ぎたせいで嫌われた」との思いが強くなった。彼がいなくなったと判明した日の晩は特に酷く、青い顔をしながら狼狽し涙も流れない程に茫然自失となって死人のように居住区をフラフラしていた。グレイヴォイスはグレイヴォイスで酷く落ち込んでいるサムスを見て、彼へのあの提案は「馴れ馴れし過ぎて不味かったか…?」と少々後悔していた。

 

「マザー、(ネイマンデ)がどこへ行ったか分かるか?」

 

 落ち込み過ぎな義娘の為、グレイは惑星ゼーベスを掌握し、のみならず銀河連邦の領土内の星々すら把握しているマザーブレインに尋ねるが、

 

「…申し訳ありません、グレイ。彼は私の監視をすり抜け、そして痕跡も残しておらず追跡は困難です。私もショックを受けています。…気が付いた時には彼と彼の船の姿は既に無く…あぁ…チョウゾの全盛期と同等級の知的生命体(ヒューマノイド)の存在をこんなあっさり見失ってしまうとは……いえ、それ程の能力を持っているからこそ見失うのは必然と言えますが。彼から碌に情報も得ていないのに……こんなことなら彼をどんな手段を使ってでも拘束しておくべきでした!いや、拘束程度では脱走される可能性が…彼の生命活動を停止させてでも彼を私の手許に置いておくのが最良だった可能性も…あぁ」

 

 ゼーベスの頭脳も中々酷い有様だ。

 オールドバード達にも念の為聞いてみたが、やはり何時も通りに「彼が去るのを引き止めることは出来ない」という無為自然を旨とした意見が出るのみだった。しかしグレイヴォイスはサムスやマザー程では無いが不満に思っていた。

 

「…一言もなく去るとは…思わなかったぞ」

 

 僅かな時間とはいえ真剣勝負による命の遣り取りをしたグレイにとって、ネイマンデとの関係性は既に薄情なものではないと思っていたのだ。サムスの静止で自分を助命したこのプレデターは、血に飢えるだけのケダモノではないと確信し、彼の人格を認めていた。それに、詳しい素性や年齢などは未だにさっぱり分からないが、グレイヴォイスの観察眼は「自分と彼は同年代なのでは」と推定していた。彼の立ち振舞から滲む雰囲気はオールドバードのように熟成されていないし、かといって若過ぎるという程に未完成でもない。グレイヴォイスは、チョウゾと同レベルの種であるプレデターの戦士・ネイマンデを…まるで同族同世代の、いつしか対等の友人になれる男と見ていたようだった。義娘同様、彼もまた同世代の友人に飢えていたのかもしれない。

 

 その日、惑星ゼーベスの人口は1、減った。

 

 

 

 

 

∴∴∴

 

 

 

 

 

 あっという間に時が過ぎ、プレデターがゼーベスを去ってから4年後…。

 

「っ!?ネ、ネイ!?ネイっ!!!」

 

 10歳になり美少女と形容できる程に成長していたサムスが突然、居住区大広間の奥を凝視しながら叫んで走り出した。それを見ていたグレイヴォイスとオールドバード、その他のチョウゾ達は、一瞬「あぁサムスがここまで思いつめていたなんて」と義娘の頭を心配したが、サムスは虚空にジャンプし飛びつくと虚空はサムスを()()()()()支えたものだからチョウゾ達はびっくり仰天である。

 

「あっ、あれは…」

 

 グレイヴォイスが目を凝らすと、サムスを支える空間はすりガラスのように空間が僅かに歪んでいた。バリバリと青白いスパークが景色に生じると、そこにいたのは当然プレデター…ネイマンデであった。ネイマンデはふらりと帰ってきたのだ。

 

「ネイぃ~~!!なんでっ、ど、どこ行ってたよぉ!!わたし、わたし見捨てられたかと…!もうアナタが帰ってこないんじゃないかって!!!」

 

「Rrrrrr…『サムス』」

 

 サムスが彼の厚い胸板に頬をこれでもかと擦り付け、懐かしき()()()彼の体臭を鼻いっぱいに吸い込み、堪能する。少女はご満悦だ。

 そんなサムスを少し首を傾げて眺める巨漢のヤウジャ…というこの光景も懐かしさを感じるな、とグレイヴォイスは思う。

 

「私の名前っ!ちゃーんと言ってくれた!!忘れてなかったのね!ふふっ、あ~、この匂い…ネイだぁーえへへ!ネイ~!」

 

 頬が削り取れても止まらないんじゃないかという勢いのサムスを捨て置き、

 

「急にいなくなって急に戻ってくるのだな、オマエは。一々詳細を知らせろとは言わぬしその義務もオマエには無いが、4年も音沙汰が無いというのは困り物だ。いなくなったら心配する者も…この通りいるのだし今度からは消える前に我らに知らせてくれるとコチラとしても無駄な心配をせずに済むのだがな」

 

 眉間に皺寄せるムッツリ顔でグレイヴォイスが淡々と言う。感情を抑制しているようでいて、思い切り不満な表情と口調が漏れていた。

 

「……」

 

 プレデターは知性としてはグレイの話を理解しているだろうが、ちゃんと耳を傾けて内容を飲み込んだのか不明な態度で沈黙している。しかし、抱きつくサムスを片腕で抱き直すと、おもむろにグレイヴォイスへゆっくりと近づき、

 

「む…?」

 

グレイヴォイスの、羽毛に覆われた眉へ拳を緩く当てた。今のは何だ、とグレイの脳内に疑問が浮かぶ。

 

「今のは、『わかった』って意味のジェスチャーなんだよ。ね?」

 

 その疑問には巨漢の腕に座るように抱えられすがりついている義娘が答えてくれた。

 

「ほう?…ふむ、そうか」

 

 思えば、グレイヴォイスとプレデターとの友好的で積極的な意思疎通は今のが初めてかもしれない。そう思うとグレイの口角は自然と釣り上がりそうになるが、頑固で真面目なグレイヴォイスはそれを表には出さない。…が、彼と親しい人物なら見れば、彼が嬉しそうなのは一目瞭然だろう。つまりこの場の誰もが「グレイは嬉しそうだ」と理解できてしまっていた。そんな、和やかになりつつあった広間に慌てて駆け込んできた者が1人…いや、物が1体。

 

「グレイヴォイス!大変です!居住区内に生命反応が突如出現し――」

 

 マザーブレインの視覚デバイスだ。彼女が言っている反応は当然、この場で透明化(ステルス)を解除したプレデターのことだろう。

 

「――!?ネイマンデ!帰還したのですか!!」

 

 チョウゾが誇るスーパーコンピュータは随分と嬉しそうな声でそうはしゃいでいた。彼女もまた、サムス同様、順調に()()しているように見える。

 

(…やはりこの御仁は、これからのチョウゾに必要な方かもしれぬ。彼との接触はサムスやマザー、若きグレイヴォイスにまでも良い刺激を与えたようだ…我ら老いたチョウゾでは出来ない強く新しい刺激を…。かつてチョウゾを滅ぼさんとしたプレデターが、今滅ぼうとするチョウゾの新たな()()()となりつつあるとは…)

 

 そんな彼女らの様子を見るオールドバードの目は、とても満足気なものだった。

 

 この日、惑星ゼーベスの人口が1増えた。

 

 

 

 

 

∴∴∴

 

 

 

 

 

 サムスとの訓練(子供の面倒)が嫌で出ていってしまったと思われていたプレデターだったが、実はそうではなく違う理由があったらしい。プレデターは帰還してすぐに、翌日からサムスの訓練に顔を見せるようになっていた。

 サムスは彼が留守にしていた4年間の動向をとてつもなく聞き出したい衝動を抑えて、今はクレテリアの崖に片膝立てて腰掛け自分を眼下に据えて訓練風景を観察している彼の姿を見て満足する。彼の横にはピョンチー、マザーの端末、オールドバード、そしてグレイヴォイス…いつもの『家族』もいた。サムスにとって嬉しいこの光景は、もう2週間も続いている。夢のようだと彼女は思う。

 

「ネイ、見てて!私、この4年間で強くなったんだから!3秒で片付けるわ!」

 

 ガッシャガッシャと2本の足で重々しく歩く重装甲の作業用ロボット群へ、異次元から展開したパワードスーツを身に纏いながら走り向かい、少女は大声で言った。右腕と一体化し半融合したアームキャノンから幾筋もの光線が放たれると、直線状のビームが弧を描きまるで誘導されているかのように作業用ロボ達へ向かっていく。ビームが爆発を発生させ、見事全弾命中。……とはなっていない。

 

「あれ!?」

 

爆煙が風に流されると、ビームが命中して倒れたロボは1体だけ。他の全ては元気にガッシャガッシャ歩き続けている。装甲に煤一つ付いていなかった。

 

「サムス…いい格好を見せようと戦うのは銀河の守り手として正しい姿勢ではない。華麗にまとめて倒さずとも良いのだ。1体1体を確実に倒すよう心掛けたまえ」

 

「うー…この前は成功したのに…」

 

 グレイヴォイス先生の指導にバツの悪そうな顔をする生徒。何もネイの前でダメ出ししなくても…と思い、チラリとその(プレデター)を見るも、

 

「…」

 

彼は常通り、無言でサムスを見ているだけだ。

 

(呆れられた?幻滅された?…うぅ、どうしよ)

 

 うーうー唸っているサムスを流しつつグレイヴォイスは次の授業へ進める。

 

「では、次はキミの大好きな組み手だ」

 

「ッ!やったー!」

 

「やれやれ、現金な奴だな…頼めるか、ネイ」

 

「…」

 

 2週間前から組み手の授業の相手はプレデターの狩人が務めている。

 返事代わりに立ち上がって了承の意思を示したネイマンデが、10m以上はある崖から飛び降りると事もなげに砂地に着地し、肩のプラズマキャスターを外して少女の前へ歩み出ていく。

 

「よーし、今日はネイの仮面はがしてみせるから!」

 

「Grrrr…」

 

 言うやいなやジャンプしたサムスが左手をマスクへ伸ばす。先日は慎重に様子を見て、ネイマンデへペースを渡してしまい惨敗を喫した為、本日は速攻を仕掛けた。その速さは既に地球人種の目で追える物ではない。だがネイマンデは体格差も活かしてスルリと避けてしまうと、伸びたサムスの腕を掴んで彼女の勢いままに放り投げた。

 

「えぇ!?…くっ」

 

 空中で猫のようにくるりと身を捻ったサムスがそのまま華麗に着地を決める…ところに彼の乱暴な蹴りが襲ってきた。「うっ!」と呻いて弾き飛ぶサムス。

 

「…Rrrr」

 

 プレデターは構えもせず、走りもせず大股で無造作に彼女へ近づいていく。

 

「もう…!ちょっとは手加減してよ!」

 

 パッと飛び上がり、文句を垂れつつ素早いタックルでネイの足を取ろうとするが、それもタイミングよく飛び出てきた彼の蹴撃によって弾かれた。パワードスーツ越しとはいえ、ヤウジャ製の脛当てが顔面に直撃した上での数十mの飛翔は中々痛そうな光景だ。実際痛いし、衝撃でサムスの頭はクワンクワンと揺れて少女の目の奥は星が瞬いていた。その数秒の意識朦朧は実戦では命取りだろう。グレイが一本の判定をした。

 

「ふぅ…まだまだ課題は多いな。それまで!10分休憩しよう」

 

 組み手1戦目はこうしてあっさり終わってしまった。

 

「もー、なんでネイは私の動きが分かるの?未来予知ができるとか?」

 

 パワードスーツを解除し、健康的な肢体を包む薄ピンクのタンクトップ型インナースーツ姿で砂地にどっかと胡座をかくサムス。すっかり伸びた金髪ロングの髪を掻き上げてネイマンデを恨めしそうに見上げた。

 

「…」

 

 何も言わずにサムスを見つめてくるプレデターに、思わずサムスは頬を染めてプイッと目線を反らした。多感な年頃になってきたようだ。

 

「代わりに私が答えようか?」

 

 そんな寡黙な彼に代わり、崖から重力制御式個人用垂直離着陸機(グラビティフライイングプラットフォーム)で降りてきたグレイヴォイスが嘴を開く。

 

「キミの動きは素直過ぎる。身体能力では既に私や彼と並びつつあるのに、体の使い方が直線的で経験豊かな者からしたらとても相手にしやすいのだ。私から見てさえそう見えるのだ…狩り(戦い)の経験豊富なネイマンデからすれば、見た目通り子供扱いだろう…さっきのようにな」

 

 グレイの指摘に難しい顔になるサムスはそのまま背を投げ出して寝転んでしまう。それを溜息をつきながら見るグレイ。オールドバードにマザーもサムスを見守っている。そして彼…プレデターのネイマンデも側にいる。

 少女は密かに笑った。

 自分が歯が立たないくらい強い人がいて、その人が側にいてくれる。小言は多いが、導いてくれる人がいる。暖かく見守ってくれる人がいる。それを今サムスは実感していた。寝返りをうったサムスの顔はとても幸せそうだった。

 

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