Tales of Coruscantia   作:撥黒 灯

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自由行動日・前日 Ⅰ

 

 

 

 むくり。と蒼い髪の少女がベッドから起き上がった。

 アンジュ・セレーナ。Ⅷ組の生徒である。

 

 

「よいしょっ。さて、と……」

 

 

 日が出てから数分という時間帯。4月という暦ではまだ肌寒い早朝だったが、アンジュが布団の誘惑に負けることはなかった。

 隣で寝ているルームメイトを起こさぬよう気を配りながら、顔を洗い、髪を纏め、薄く化粧を施す。

 服装は部屋着から赤い制服へ。着替える際、少し体型を気にするような仕草をしたが、またすぐに動き始めた。

 

 ……士官学院に入ったんだし、普通にしていれば痩せる……わよね?

 

 なお、その思考は入学の翌日から毎日繰り返されている。希望を持つことは大事なことなのだろう。

 

 

 身に纏った制服は入学初日と比べ、既に安定した着心地となっている。初めて袖を通したのはたったの2週間前だが、それでも毎日着ていたのだ。

 体格の情報が制服に集積されることで、形状を記憶され、最適化されていく。

 恐らく聞き込みをすれば、かなりの人数が制服に慣れたと解答するだろう。

 

 さて。アンジュが早朝から制服を着てどうするのかといえば、まずは外出。行き先はトリスタの礼拝堂。

 門前で出会う同学年の少女と2、3言葉を交わしてから礼拝堂の中へ。空の女神エイドスに祈りを捧げ、礼拝堂を後にする。

 その後、まだ活気のない街並みをふらふらと巡った後に、学生寮へと戻った。

 

 

 ――トールズ士官学院・第三学生寮。

 

 特科クラスⅦ組とⅧ組が共同で使う寮で、2階を男子、3階を女子が使用している。男子と女子の寝床が近すぎる気もするが、アンジュの知る限りでは今のところ、問題も起きたという事実はない。

 部屋は2人1部屋。所謂ルームメイトがそれぞれいる。

 原則、一部屋にⅦ組とⅧ組1人ずつ入ることになっており、人数差の関係で1部屋のみ一人部屋にはなったが、こちらもアンジュの知る限りでは特に問題にはなっていないようだった。

 なお、部屋割りはくじ引きによる公正な結果だ。

 アンジュと相部屋なのは、Ⅶ組のアリサ・R。金髪赤目。少しつり上がっている目が、出来る女感を滲ませている少女。

 アリサのフルネームを、アンジュは知らない。けれど、何かしらの事情があるのだろう。自己紹介のときに浮かべていた、罪悪感ありありの表情を思い出すと、問い詰める気にもなれなかった。

 

 

 

 ルームメイトの顔を思い浮かべていると、学生寮の入り口に戻ると、丁度1組の男女が出て来た。

 アスベル・ラントとエレノア・ヒューム。お互い武器を携えていることから、訓練なのだと推測ができる。

 無視する理由もなかったので、アンジュは話し掛けることにした。

 

「おはよう、エレノア。アスベル君も。朝から鍛練?」

 

「ああ、おはようございます。ええ、後からラウラも来ますよ。アンジュもどうです?」

 

「そうねえ……」

 

 

 その提案に、アンジュは指を顎に当てて考える。

 

 

「朝の運動は身体に良いかもしれないけれど、辞めておくわ。疲れちゃうだろうし」

 

 

 アンジュはまた、痩せるための第一歩を盛大に踏み外した。

 

 

 

 

 第3学生寮へ戻り、喉が渇いたなぁ、と食堂へ立ち入る。

 扉の開く音に反応したのか、顔を上げた黒髪のクラスメイトと目が合った。

 

 

「あ、アンジュ、おはよう。今帰り?」

 

「ええ。ジュード君もまた朝から勉強? 努力するのは良いけど、あまり無理をしないようにね。あまり寝てないんでしょう?」

 

「ありがとう、大丈夫だよ。勉強はしたくてやっているわけだしね。睡眠時間のことを考えるなら、僕より遅く寝てる人も早く起きてる人もいる」

 

「他人と比較したとしても、蓄積されている疲労の量が違うから意味ないと思うけれど……」

 

「はは、まあ気にしないで。無理そうだと思った日には身体を休めるから」

 

「本来なら、今日をその日に当てるべきなんだけれど……まあ、ジュード君の言うことを信じるわ」

 

 

 トールズ士官学院には、軍轄学校としては珍しい安息日が設定されている。

 文字通り、何をしても良い日だ。部活に打ち込むも良し、遊びにいくも良し、帰郷しても良し、勉強しても良し、寝ていても良し。それが著しく風紀を乱すような行いでもなければ、基本は許される事だろう。

 

 だからこそ、しっかり休息をとるべきだというのがアンジュの意見。

 だからこそ、気が緩みすぎないよういつも通りを崩さないのがジュードの意見。

 

 見方によってはアンジュも自身にとって、いつも通りの行動を取っている。どの口が言うのかしら、と彼女自身も自虐した。

 とはいえ、アンジュがジュードの言い分に理解を示したように、ジュードもアンジュの理論を正しいと思う。単に、自分をそこに当て嵌めて考えていないだけだ。どちらが正しいという話でもない。

 

 

「……良かったら、何か飲む?」

 

「え、そんな、悪いよ」

 

「私が飲みたいついでよ。気にしないで」

 

「……じゃあ、珈琲で」

 

「ええ、少し待っていて頂戴」

 

 

 勉強の邪魔をしてしまったお詫びに、と律儀にも心の中で考え、アンジュはキッチンへと立った。

 

 

 

────

 

 

 

「せいっ、はっ、せやぁあああっ!」

 

「甘いっ!」

 

 

 エレノアの振るった槍をバックステップでかわすアスベル。着地の姿勢を整えてから抜刀。続いて放たれる槍を弾き返し、空いた隙にアスベルが抜き身の刃を向ける。弾かれた槍先を戻すことを諦めたエレノアは、すかさず槍の柄を彼へと向け牽制。アスベルの追撃を防いだ彼女は後ろに飛び、距離を一旦開けた。

 

 

「やりますね、アスベル」

 

「そっちもな、エレノア」

 

 

 互いの力を讃えるようにして、両者武器を収める。

 その手合わせを少し離れた所から見ていた少女が口を開いた。

 

 

「ふむ、エレノアのリーチの長さは脅威だな。軽い助言としては、もう少し突きの制度を上げると良いだろう。私も槍の扱いに長けている訳ではないがな」

 

「なるほど、勉強になります」

 

「アスベルは攻撃の回避が上手い。が、回避に頼りすぎている所が見受けられるな。あとその、抜刀術だったか。一回一回鞘に剣を納める動作は何とかならぬのか? はっきり言って隙が多すぎる」

 

「そう、だな……防御するときは剣を収納した状態で防ぐ癖が付いているから、それを直すのが先か……」

 

「対策が分かってるのなら良い。修練あるのみであろう」

 

「ああ。ラウラにそう言ってもらえると、励みになるよ」

 

「そうですね、他にも何かあったら教えて下さい」

 

 

 ──ラウラ・S・アルゼイド。クロイツェン州のレグラムを統治する伯爵家の一人娘。アルゼイド流という、帝国における三大剣術流派の1つの師範を父に持つ、武家の令嬢。

 Ⅶ組の剣士の中では、やはり群を抜いている。学院の中でも1位か2位の実力者だ。それでいて研鑽を怠る様子もなく、今のアスベルやエレノアにとっては高い目標となっている。

 

 アスベルもエレノアも、武器の扱いは殆どが自己流だ。参考にしたものはあるといえ、納刀と抜刀を自在に変更して剣技を繰り出すアスベル。導力魔法を交えつつ鋭い連撃を放つエレノア。

 どちらも修行中の身。だが、自己流に寄っているからこそ、ラウラも彼らとの打ち合いで学ぶことは多い。だからこそ、こうして交代交代であるが、毎朝共に訓練をしている。

 

 

「そういえば、Ⅶ組は他に参加してくれそうな方はいないんですか?」

 

 

 汗を拭き、水分を補給した後にエレノアが尋ねる。

 可能であればもう何人かを含めて鍛練がしたい。色々な立ち回りを研究できるからだ。

 

 

「ふむ……生憎女子でできそうな生徒はおらぬな。居るとしたら男子──リィンやユーシスなどだが……」

 

「誘ったけど、両方断られたよ。何が理由かは分からないけど」

 

 

 以前にも似た会話は彼らの中にあり、その際、男子生徒はすべてアスベルが誘う運びとなった。しかし、それで捕まった同級生はいない。

 

 リィン・シュバルツァー、Ⅶ組に所属する剣士の1人で、彼も有名な剣術の使い手だ。

 その流派の名は、八葉一刀流。

 剣の道を辿るものなら誰もが知ることになる名で、かつその独特な継承システムから、多くのものが触れることのない流派 。

 

 ユーシス・アルバレアはラウラやリィンと異なり、名門剣術を習得しているという訳ではない。が、彼も立派なⅦ組の剣士である。

 修めているのは、宮廷剣術。貴族階級の男子ならば大抵の者は幼少期より習う、伝統的な剣技だ。

 

 断られた理由は分からないが、無理に誘う理由もない。そこに踏み込むには、少し時間が足りていなかった。

 

 

「そういうⅧ組はどうだ? 何人か武術経験者はいるのだろう?」

 

「そうですね、ジュードにレイア、あとリオンにスパーダもそうですが……なんというか、誘いづらくて」

 

「一応レイアはそのうち参加してくれるって言ってくれたんだろ?」

 

「ええ。ですが今は勉強を優先するとのことですし、ジュードも同様に早朝から勉学に励んでいます。スパーダは逆に起きないので……」

 

「スパーダ・ベルフォルマ、か。あの名高きベルフォルマ家の者と剣を交わせると思ったが、あの有り様ではな」

 

 

 あの有り様。その単語に、同じクラスの2人は渦中の人間の顔を思い出した。

 まあ確かに、擁護できそうな振る舞いはして……ないかもしれないが、それでもフォローはしておこう。とアスベルは口を開く。

 

 

「まあ、スパーダにも色々あるんだろう。実家のこととか」

 

「ふむ。ベルフォルマ家の……だとしても、あの態度の悪さはどうにかならぬものか」

 

「……まあ、不良だなんだと言われてるのは事実ですしね」

 

 

 入学してからの彼はといえば、不良と噂されたも仕方のない振る舞いをしている。

 話し掛けられればガンを飛ばし、事あるごとに悪態を吐き、目上の人に敬語すら使わない。

 まあ最後の部分はもう1人ほど該当する人間に心当りがあったが、アスベルは置いておいた。

 

 

「それで?」

 

「うん?」

 

「うん? ではない。もう1人いるだろう。リオン・マグナスはどうだったのだ?」

 

「「あー」」

 

 

 アスベルとエレノアが遠い目をする。

 

 

「なんというか、話し掛けづらくてな」

 

「ふむ。言われてみれば確かに、他人を遠ざけようとしている節があるな」

 

「基本口喧嘩以外で長話はしないよね」

 

「……例外があるとすれば同室のエリオットだな。距離は置いているみたいだが、それでも他の奴よりは断然近い」

 

「だからと言って気軽に誘えるわけでもないのですけど」

 

「……だが、話題に出したものの誘わないというのも気分が悪い。試しに私から声を掛けてみるか」

 

 

 朝食の席でにべもなく断られたラウラを見て、だいたい想像通りの結果になったな。と彼らは思った。

 

 

 

────

 

 

「全員揃っているな。ホームルームを始めるぞ 」

 

「起立、礼」

 

 

 学級委員であるマルタの号令で、全員が立つ。ちなみに学級委員は入試時点てでのクラス内最高得点者が任命される。

 Ⅶ組の学級委員は、エマ・ミルスティン。入学時の試験で学年首席を取った少女で、Ⅷ組が前述の通りマルタ・ルアルディ。非公式ではあるが、入学席次3位である。なお、今年度次席は首席と同じくⅦ組の生徒──マキアス・レーグニッツが取っていた。

 

 生徒各々が座席から見える景色に慣れてきたように、教卓から座席を見る教官たちも、生徒たちの顔を見ることに慣れてきた。

 割と順風満帆……とまではいかないが、目立ったもんだいもない……わけでもないが、なんとかここまでやってきたⅧ組教官のマリク・シザーズは、生徒たちの顔に疲労の色が少ないのを見てから、話を始める。

 

 

「各自、学院生活には慣れてきたようだな」

 

 

 その言葉に、否定的な反応は見られない。マルタを始めとする女子たちは顔を向けあって笑い、男子は各々が各々独特な反応をしているが、まあ不満そうではないな。とマリクは断じた。

 

 

「明日は念願の自由行動日だ。訓練するも良し、交流を深めるも良し、ハメを外すも良し。まあ節度は守ってもらうがな」

「自由行動日……?」

「って何ですか? 」

 

 

 級友たちと異なる反応をしたのは2人。ルドガーとレイアだ。

 

 

「そうか、留学生の2人には馴染みのない風習なんだな」

「ううん、違うわよアスベル君。自由行動日はトールズ独自の伝統とはいえ、入学前に配布されている案内には書いてあるもの。ね、マルタ、ジュード君」

「うん、書いてあったよ」

「え、う、うん! そうね、書いてあった! ……かも」

 

 あ、コイツ読んでないな……? という猜疑の視線がマルタを襲う。

 マルタは涙目だ。

 

 

「……ほらね、ダメよ2人とも。渡されたものには目を通さないと」

「「ごめんなさい」」

 

 

 2人の他に小さな声で謝罪の言葉が呟かれていたが、皆触れない。2週間で培われた優しさだった。

 

 

「そこら辺にしておけ、アンジュ」

「はい、すみませんでした。教官」

 

 やれやれ、とマリクは髭の生え揃った顎を触る。触り心地に違和感はない。マリクの少し気分が良くなった。

 2週間が経って、叱るもの、叱られるもの、叱られないものの区別が付くようになったクラスでは、あまり珍しくない光景だ。マルタが叱られるもの側にいるのは珍しいが、パワーバランスというものだう。

 

「自由行動日とは、その名の通り、自由に行動していい日のことだ。授業はないが学習してもいい。鍛練はないが自主練してていい。基本は部活動に所属して、活動に励む生徒が多いがな」

「なるほど……って、部活動?」

「ああ。士官学校としては珍しいと言われるが、トールズには数多くの部活動が存在する。何なら今日中にでも見回っておくと良い」

 

 部活動かぁ。と数人が考え込んだのを察したマリクは、注意を戻すために両手を数回叩く。

 

「さて、ここからが本題だ。自由行動日明けだが、“模擬試験”を実施する。またその際に、諸君ら“特科クラス特有のカリキュラム”も発表するから、心するように。──以上でホームルームを終わる。委員長、号令を」

「起立!」

 

 

 マリクが出席簿を始めとする書類を持ち、教室を後にする。最初から張りつめていたわけではない空気がさらに弛緩し、生徒たちは一部を除いて集まり、談笑を始めた。

 

 

「皆は部活をどうするのか決めてるのか?」

 

 ルドガーの問いに、それぞれが思い思いに首を振る。

 

「もう決まっている人もいるのか……」

 

「そう言うルドガーは決まってないの?」

 

「得意なことを活かすなら料理ができるところなんだが、せっかくだから出来ないことを学ぶのも良いかと思って」

 

「へえ、真面目だねえ」

 

「そういうユーリは?」

 

「ま、もう少し見てから決めるさ」

 

「あっ。なら一緒に見て回らない?」

 

「お、良いぜ」

 

 

 ユーリとジュードが約束を結ぶ。それを皮切りに、数人が明日の予定を組始めた

 

 

「……スパーダとリオンはどうするんだろうな」

 

 

 アスベルがふと溢した言葉に、全員が思考を巡らせる。

 今集まっている面々は、彼が挙げた2人を除く全員。逆を言えば、彼らだけが此処にいない。

 リオンは入学初日から孤独を選び、積極的に他者と関わろうとはしていない。

 スパーダはリオンと違い、友好的といえば友好的だが、ふとした拍子には居なくなっていることなど日常茶飯事で、今日のように放課後はとっとと居なくなってしまっていた。

 その為ここに集っているメンバーの誰もが、彼ら2人のことをいまいちよく分かっていない。 

 

 

「まあ、あいつらも子どもじゃねえんだ。自分で何とかするだろ」

 

 

 考えるのを止めたユーリは、肩を竦めながらも話を切り替える。

 

 

「ま、どうしても気になるってんなら、夜にでも部屋を訪ねればいいじゃねえか」

 

「スパーダはともかくリオンは、『貴様には関係ないだろう』で一蹴されそうだけどね」

 

「……かもな」

 

 

 全員仲良く、はまだまだ先の長い話である。尤もそれを目指しているメンバーは2人くらいだが。

 

 

「それより模擬試験と、特有のカリキュラムってのが、俺は気になったな」

 

「──そうね、一体なんなのかしら?」

 

 

 男子が集まるグループと、女子が集まるグループとで話の輪が分かれていたが、密かに聞き耳を立てていたアンジュの介入によって──いないメンバーを除いて──クラス全員の話し合いへと変わる。

 

 

「模擬試験、というと、色々考えられるしね。学力試験、戦闘試験」

 

「学力…… 」

「戦闘……」

 

 レイアとマルタが沈んだ声を出した。

 

 

「まあ、苦手な人には苦手な人向けの評価基準が用意されてるんじゃないか?」

 

「もしくはグループ演習での総合点で評価されるか……どちらにせよ初回だし、そこまで無理のないテーマが用意されるんじゃないかな」

 

 アスベルとジュードがフォローに回り、2人のモチベーションを回復させる。急に落ち込んだ分、2人の立ち直りは早かった。

 だが、疑問の種は尽きない。

 

「模擬試験もだが、特有のカリキュラムというのも気になる」

 

 眉を寄せるルドガーの発言。

 Ⅷ組特有のカリキュラム。つまりは、彼らがⅧ組である理由もそこに含まれてくる。

 何のためのクラス編成で、何のための特別なカリキュラムなのか。

 始まって2週間が経った学校生活で見えてこなかったものを掴める機会が、唐突に与えられた。

 

 

「こればかりは、推測のしようがないわね」

 

「ですが、どんな課題が来ても、全力を尽くすだけです」

 

「あー……そう、だね」

 

「うー……緊張するなぁ。でもワクワクもしてきたかも!」

 

 

 女子の反応はまちまちだ。

 アンジュは困ったように眉を寄せ。

 エレノアはいつも通りの真面目な姿勢を見せ。

 マルタは少し気落ちしている表情で。

 レイアが目をメラメラと燃やしていた。

 

 対する男子は──全員がいつもと変わらない様子だった。

 言うなれば、やれることは限られてるし、なるようになるか。くらいの精神である。別名行き当たりばったり主義。出たとこ勝負根性とも言う。

 尤も腹の内に潜めたやる気には個人差があるが。

 

 

「とにかく、悔いの残らない休日にしよう」

 

「だね」

 

 

 その会話を最後に、彼らは解散し、それぞれ思い思いの場所へ散っていった。

 

 






 ~溜め息(女子編)~
マルタ「はぁ」
エレノア「……? お口にあいませんでしたか?」
マルタ「え? あ、ううん、そんなコトない……ってあれ、今日の当番ってエレノアだっけ?」
エレノア「いいえ。本当なら今朝はアリサさんのはずでしたが、寝坊してしまったようで変わってるんです」
マルタ「……そう、お疲れ様。ありがとう、美味しかったよ」


エレノア「ため息……何か悩み事でしょうか」
アンジュ「そっとしておいてあげた方が良いんじゃないかしら」
エレノア「!? アンジュ、いつからそこに?」
アンジュ「ふふっ。……それで、マルタだけれど、本人が言い出すまではあまり深入りしない方が良いと思うわよ。見てた限り、ホームシックとかそういった症状ではなさそうだしね」
エレノア「……」
アンジュ「どうしたの? じっと見つめて」
エレノア「アンジュは優しいですね。マルタのこと、気にかけていてくれたんでしょう?」
アンジュ「私は当然のことをしているだけよ。……あ、そろそろ用意しないと。じゃあまた後でね、エレノア」
エレノア「ええ。また後で」


アンジュ(……とはいえ、もう少し続くようであれば、話してみる必要があるかもしれないわね)



 ~訓練のお誘い~
アスベル「あ、ユーリ!」
ユーリ「アスベルか。どうした?」
アスベル「明日の朝、一緒に鍛練しないか?」
ユーリ「あー……すまねえな。そういうのは他の奴を誘ってくれ」
アスベル「そうか……気が変わったらいつでも言ってくれ」
ユーリ「変わったらな」

アスベル「ジュード、少し良いか?」
ジュード「どうしたの、アスベル」
アスベル「朝、自主練しようかと思うんだが」
ジュード「へえ、良いんじゃない?」
アスベル「それで、ジュードも一緒にやらないか?」
ジュード「あー……ごめん、朝は勉強してるから、ちょっと」
アスベル「そうか。それなら仕方ないな」
ジュード「本当にごめんね」
アスベル「いや、良いさ。そっちも頑張ってな」

アスベル「スパーダは起きてこないし……あ、リオン!」
リオン「……」
アスベル「あっ……行ってしまった」


アスベル「……俺、人望ないのか? いや、まだ出会って間もないし、親しくなればまた変わるかもしれない。……よな? はぁ、今日は寝て明日また考えよう」

ルドガー(……あれ、誘われなかった)

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