私は八雲紫、木の葉隠れの忍者ですわ   作:アナンちゃん

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6年ぶりくらいにリハビリ兼ねて書きます。昔はドラゴンボールの悟飯が東方Projectの世界で活躍する二次創作を小説家になろうに投稿していました。今回こちらにお世話になります。よろしくお願いいたします。


其の一 八雲紫

 幻想郷と、八雲(やくも)紫(ゆかり)という名はご存知だろうか。

 

 幻想郷――それは過去に猛威を奮った、妖怪、幽霊や亡霊、そして魔女、はたまた吸血鬼、そして更には神。現代社会において、その存在が脅かされてきた者達が集う、幻想の楽園のことである。

 

 そう、そこは正に魑魅魍魎が跋扈する、という表現が最も似合う場所だ。

 ただの人間が入れば、幻想郷の森に迷い込み、いずれは妖怪に喰われる。妖怪とは、人間を遥かに超えた能力を持ち、昔は――妖怪の全盛期は平安時代である――常に人間と対立してきた存在だ。

 並の者が立ち向かうのならば、それは自殺行為に他ならない。

 

 そんな化物達が平和に暮らす園、それが幻想郷だ。

 

 そして八雲紫。

 彼女はその幻想郷の創設者であり、長。齢千歳を優に超え、圧倒的な力を保持している、幻想郷最強クラスの大妖怪なのだ。

 

 一般には、『妖怪の賢者』と呼ばれているが、彼女の強力無二の能力故に、別の二つ名がある。

 彼女の能力……それは、【境界を操る程度の能力】である。

 その力による、彼女の移動手段。空間の境界を弄ることで発生する歪(ひず)み、そこを通ることだ。

 簡略して説明すると、目の前の空間を弄り、目的地の空間と繋いでしまえば、すぐそこには目的地がある。そういうことである。

 

 その空間の裂け目。

 彼女はそれをこう呼んでいる、『スキマ』と。

 つまり、彼女のもう一つの二つ名は、『スキマ妖怪』というものだった。

 

 大仰に紹介したが、実は彼女の性格は、非常に妖怪のソレとは違った。

 人間の思う妖怪の性格とは、横暴であり凶暴。見境無しに、人間を食い殺したりする化物というのが、普通の人間の見解だろう。

 

 しかし、この八雲紫……に限らず、幻想郷の主要妖怪達の性格は、恐らく人間の想像とは掛け離れている。

 

 確かに、人間を問答無用で襲ったりする妖怪もいる。頭のない妖怪に限って。

 だが、幻想郷の掟は無闇に人間を襲わないことにある。少ないながらの規律があるため、幻想郷に住む人間は、あまり妖怪に襲われたりしない。下手に生息地に迷い込んだりしなければだ。

 

 そのため、意外と温和な妖怪も多いのだ。

 人間を相手にして商売する妖怪もいれば、逆に、妖怪を相手にして商売する人間もいる。この幻想郷に来る妖怪は、確実に丸くなるのだ。

 平和な環境に馴染んでしまった妖怪。良く言えば、安全な妖怪。悪く言えば、平和ボケした妖怪。

 

 八雲紫も、それに該当していた。

 彼女はその妖怪達と一線を画して、友好的。人間にも普通に接する、寧ろ人間に友人がいるくらいだ。

 

 しかし、彼女の性格には大きな穴があった。

 彼女の巷での噂。要約すれば、神出鬼没な妖怪だ。

 加えて、何を考えるのか分からないのだ。何がしたいのか分からないと言ってもいい。

 

 彼女の行動は気まぐれで決まる。

 

 諸説には、様々な地を巡り歩いているとか、冬眠しているだとか。誰も確かめようが無いため、今ではもう半分諦めているのだが。

 

 彼女を詳しく知る者は殆どいない。つまり、今どこで何をしているのか、そんなことは誰も気に止めなくなった。

 いつの間にかいなくなっていて、いつの間にか帰ってきていた、それの繰り返しである。

 

 今回も、その気まぐれが作用した行動。

 彼女は、暇を満たしたかった。

 

◇◆◇◆◇

 

「さぁて、ここはどういう場所かしらね?」

 

 そう呟くは、金髪が陽に反射して輝き、髪を靡かせながら悠々と歩いている女性。

 

 紫色のドレスを身に纏い、白いナイトキャップを被った、扇子を扇いでいる美人だ。

 身長は女性にしては高い。体型は、どんなモデルさえも眩んでしまうほどの、美貌の持ち主。

 胸は非常に大きく、女性が羨むパーツを何一つ欠かしていない。

 

 彼女こそが、八雲紫。

 

「それにしても……暑いわねぇ……」

 

 今の季節は、太陽が容赦なく熱気をたたき付ける時期だ。紫の額には欝すらと汗が滲む。

 これは堪らないと、自らのスキマから日傘を取り出し、使用する。スキマは物置としても重宝するのである。

 

 日傘を差しながら、扇子を扇ぎながら歩く美女。それは妖艶な姿を作り上げていた。

 

 紫の目に映るのは、列を成してる民家だ。比較的、赤い色の屋根が多いか。

 この熱さを象徴しているふうにも思えた。

 

 所々に書いてある文字。それをチラリと見ると、漢字や平仮名の表記。

 ここは日本と何かしらの縁がある場所らしい。

 

 とにかく、日本語が通じる場所であることを確認した紫は、次にどんな生物が生息しているのか調べてみることにする。

 

「…………」

 

 歩いていると、紫の脇を通り過ぎて行く人間が数名ほど。

 その者達は奇怪そうな目付きで紫を見てくるが、紫もその者達を同じ目で見ていた。

 あまり見たことのない服装。なんという表現をすればいいのか。

 取り敢えず率直な意見は、こんな熱いときに何でそんな厚着なのだろう、というものだった。

 上も下も、見た感じジャージに近い。それにポケットが異常に多い服、ぐらいにしか見えない。

 靴はサンダル、そして全員共通することは、

 

(おでこにマーク……額当て? この里のシンボルみたいなものかしらね)

 

 額当てである。

 紫はある程度の推測を立てた。

 

(全員が持ってたあのポーチの中身……手裏剣ね。ということは……ここは忍者の世界?)

 

 手には手裏剣が握られていた。すれ違いの際に、スキマで掠め取っていたのだ。

 手裏剣と言ったら、やはり忍者。これしかない。

 いつになく、紫は期待する。

 

(忍者……ね。これは面白そうだわ、それなりの暇潰しにはなりそう。でも、もうちょっと詳しい情報が欲しいわね……)

 

 どうやって情報を集めようかと、思案に耽っていると、紫は足元に違和感を感じた。

 

 カチャリ。

 

 鉄が擦れる音。

 下を見ると、先程の忍者らしき者と同じ額当てが落ちていた。

 手で拾い、紫はそこに描かれているマークを観察する。

 

(……これは何を表しているのかしら。ちょっと特徴が掴みにくいわ)

 

 額当てのマークの意味していることを予想するが、全くもって分からない。

 しばらく額当てと睨めっこをしていると、やんちゃそうな男の子の声が聞こえた。どうやら紫へと呼び掛けているようだ。

 

「あ〜! 姉ちゃん! それ、その額当て俺のだってばよ!」

 

 その声のする方を見ると、これまた奇妙な服を着た少年が現れた。

 金髪の短髪で、顔には左右共に三本ずつ髭のような跡。身長は大分小さく、歳は十代前半あたりだろう。

 そして服装は、夏場なのに冬着ってなんだよ、と言いたくなるほど厚い、上下全部オレンジ色のジャージだ。

 

 この少年には、額当てが付いていない。どうやら額当てを落としたようだ。

 そして、たまたま紫がそれを拾った、それを見付けた少年が慌てて呼び掛けた、そんなところだろう。

 

 ということは、この小さい少年も忍者。

 こんな幼い子供も忍者ということは、誰でも忍者になれる、そう予測を立てることが出来た。

 紫はこの世界の情報を探るべく、中身を掘り出すように対応する。

 

「あら、そうなの。落ちてたから拾ったのよ。大切な物ならもっと大事に扱いなさい」

 

 手に持つ額当てを前に差し出しながら、それを取りに来る少年を観察する。

 

(この足取り……この年代の子なら良い方だとは思うけど、さっきの忍者とは力量の差が激しいわ。

 忍者は忍者でも、歳は歳のようね。

 だけど――)

 

「へへ……! 悪いってばよ姉ちゃん。これからはもっと大事にするぜ! ありがとな!」

 

 屈託のない笑顔で受け取る少年。普通に見れば年相応の表情だ。紫にもそう見える。

 だが、紫は少年の内に秘めている、得体の知れない禍々しい何かを感じ取っていた。

 

(この子の中にあるもの……何か訳ありのようね。それに……ふふふ、もっとこの世界に興味が湧いたわ。まさかこっちにも、同じ存在がいるとわね)

 

 内心で笑う。

 この少年の中に秘められている力。その力は、紫としてもよく知る力だった。

 

「ええ、気をつけなさいな。私は八雲紫、ちょっとした旅人よ」

「俺はうずまきナルト! 将来火影になる、スッゲー忍者なんだってばよ!」

 

 少年は、うずまきナルトと名乗った。

 ナルトの話の内容には、耳慣れない単語があった。興奮して話しているあたりから、その単語の存在はとても重要みたいだ。

 

「火影?」

「おう! 俺は木の葉隠れの里で一番強い男になって、自分の力を認めさせてやるんだ!」

 

 差し詰め、火影とはこの里……木の葉隠れの里で、一番強い者の称号。この里の一番の実権を握る者ということか。

 正しく子供が目指す、夢のような肩書きだ。

 

「今からラーメン食いに行く途中だったからさ、紫の姉ちゃんも一緒に食いに行こうぜ? そこのラーメンがまた美味くてさぁ!」

 

 情報収集するには恰好のチャンスだ。

 この機に色々なことを聞いておきたいが、しかし、一つ問題があるのだ。

 

「誘ってくれて嬉しいわ。でも手持ちが今なくてね。残念だけど、ラーメンを食べれるようなお金は持ってないのよ」

 

 まず、この世界の金の単位が分からない。

 円やドル、ユーロ辺りならまだ対応出来るのだが、ここは忍者の世界。そんな最新の通貨単位は無いはず。

 円はまだ可能性があるが、それもやはり新しい。その線は極めて低いだろう。

 

 そんな心配があったが、ナルトが解決してくれた。

 

「じゃあ俺が奢ってやるってばよ! 額当てを拾ってくれたんだ! それぐらいのお礼はしなくちゃな!」

「あら、いいの? じゃあお言葉に甘えさせていただくわ」

 

 紫はナルトから、なるべく多くの情報を聞き出す為に、ラーメン店『一楽』へと共に歩き出した。

 額当ては既に、ナルトの額へと戻っていた。余程大事な物らしい。

 そこの所もなるだけ詳しく、ナルトから聞き出すことを決めた。

 

 しめしめと内心ほくそ笑みながら、胡散臭い笑顔でナルトの隣を歩く。間違いなく、紫は何かをするつもりだ。

 

 大妖怪、八雲紫は動き出した――

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