先日、数多くの任務を終えた私達は、早くもCランク任務を遂行している。
短時間でCランク任務を任されるっていうのは凄いらしいわね。他の忍者からも驚かれただとか……、警戒する人は当然出るかな? まあ構わないけどね。別に隠れて暗躍しようとしてるわけじゃないし、正々堂々と里に貢献してやってるんだから、感謝こそあれ、疑われる筋合いはないわ。
仮に、疑われたところで痛くも痒くもない。ただの暇つぶしだもの。
そしてCランクを今現在やっているのだが、今までと比べ多少時間がかかることが増えた。Dランクはまだ足の速さだけでよかったけど、Cランクから護衛任務が混じってくるから、多少時間が掛かってしまうのだ。
護衛と言っても、戦闘らしい戦闘はない。あるとしても夜盗とか、ただのならず者よ。退屈ったらありゃしない。
護衛の他にも、まだ配達系統のものは数多くある。重くて運ぶのが大変な物を、違う町に送り届けたりする任務ね。スキマには重さとか関係ないから、こういう任務を優先的に請け負っている。だって数分で終わるし。
その後帰宅するたびに火影が疑問の声を上げている。「いくらなんでも早すぎるじゃろ……」と言った具合に。
まだスキマの秘密は教えてないから(別にバレていいけど)、適当にはぐらかしているわ。「ヒ・ミ・ツ!」と言いながら、投げキッスしてる。
その度に藍が「うわぁ」と言っているが、あと何回引っ叩けば気がすむのかしら。
それで任務を始めてから大分経ったわけだ。一ヶ月もやった。
私にしては凄いほうよ。藍も感激してるもん。普段もこのくらい働いてくれれば文句ないんですがね……、と。
呆れてるんじゃないかって? うん、多分そう。いやでもね、働いてるのよ、この私が。これは快挙よ、讃えてもらってもいいわね。幻想郷を作り上げた頃からそんなに仕事してなかったし。
依頼数もD以外に相当数こなし、Cもそろそろ三十くらいに差し掛かる頃だ。というか越えてるかもしれない。
もうBランク入っちゃうんじゃない? というか早くやってみたい。もう少し忍者っぽいものがしたいのよ。
「任務完了。火影室に帰りますか」
「そうね。さっさと戻りましょ」
いつも通り任務を完遂し、その報告の為火影室へと向かう。ちなみに今回の任務も配達だった。
配達の場所は里内だったが、荷物が今までに無いくらいに重かった。忍者といえど子供にやらせるものではないと思ったくらい。下手したら虐待よ。
まあ私は楽々と運べるから問題なし。だから火影も頭を捻らせてるんだけどね。
里内の任務だったので、今は木の葉隠れの里にいる。火影室のある建物も歩いていける距離だ。久しぶりに普通に向かおうかしら。
突然火影室の前に出て来て、誰かに目撃されたら説明がメンドイしね。
今更だけど。
「あら? なんか起こってるわね」
帰ろうとした矢先、私の目に映る遠い光景に何かが起こっていた。喧嘩かしら?
片方は見たことある顔ね。ナルトくんみたい。
「どうしましょう、間に入りますか?」
藍がはっきり言ってどうでもよさ気な感じね。藍にとっちゃ『アレ』がナルトくんとは教えてないから当たり前か。
でも教えたら……一気に藍の興味が惹かれるはず。言ってみるか。
「あのオレンジの子……いるわよね。あれが前に言ったナルトくんだったらどうする?」
「……へぇ」
目を細めた。
藍にとっては、『アレ』が自分と似たような存在なのだからね。
「……私としては、接触しておきたいというのが本音です」
「いいんじゃない? 喧嘩を止めるという口実もあるし、近付いても不自然じゃないでしょう。
他の『下忍仲間』も見てみたいし、異論はないわ」
私が下忍になってからそういえばナルトくん以外の子に会ったことがない。そろそろ、多少なりとも交友を広めてもいいかもしれない。
「普通に止めますか?」
「基本的には成り行きに任せるけど、あまりに度が過ぎそうだったら止めるかもね。まあ多少の小突き合い程度なら丁度いいわ。なにか心配でもあるかしら?」
「いや、紫様のことだから、また変なことを仕出かすんじゃないかと思いまして……」
「貴女は私を何だと思ってるのよ……」
「愉快犯?」
「よし、スキマツアー一週間の旅ね」
「そんなことして困るのは紫様では? 一週間も私がいなかったら何も食べれませんねぇ、ああ、家事もやる人がいないから洗濯とか掃除も紫様がやるんですか。
それはいいですね、紫様が家事も学ぶというのなら喜んで一週間何もしません。心行くまで料理を堪能してください。随分前に出来た暗黒物質よりかはマシなことを祈ってますよ。
私の仕事を全部やってくれるとのことなので、今から仕事を教えますね。ええ、掃除、洗濯、幻想郷の結界の修復、橙の世話、そしてその猫達の世話、一日三食の料理、あ、掃除は隅々までやってくださいね。部屋がたくさんあるので少し面倒ですが、まあ紫様なら大丈夫でしょう。それから――」
「ああーー、ギブギブ! 悪かった、私が悪かったわよ!」
「ええ? やらないんですか? 日々の私の苦労を理解してもらおうと思ったのに……」
「今更だけど藍がいて良かったわ……。今度油揚げでも買ってあげるわよ……」
「ここの里のもお願いしますね、食べ比べしてみたいので」
「はいはい……お好きなだけ食べて……」
「ありがとうございます。じゃ行きましょうか、喧嘩を止めるのでしょう? ささっ、紫様が前に出ないと始まりませんよ!」
まったく……あんな笑顔で喋られたら何も返せないじゃない。相変わらず反則的な可愛さね。いや、綺麗なんだけどね。
あ〜あ、それにしても簡単に言いくるめられちゃったなぁ。藍も手に負えなくなってきたわ。
精々毒入り油揚げでもプレゼントしてやろ。な〜んか癪だし。
なんで後ろから私を押してるんだか。何故にノリノリ? ああ、油揚げか……。
やっぱり今度スキマにたたき落としてやる。
ドレスを翻し、扇子を小さく扇ぎながら優雅に歩き始める。
今のところ見えるのは、小さい子が三人と、ナルトくんくらいの年代の子が四人。
何やら小さい子のうちの一人がなにかを仕出かし、黒い男の子の機嫌を悪くしたようだ。襟元を持ち上げ、宙吊りにして苦しそうにしている。
ぱっと見悪そうなのは男の子だが、後ろの仲間のような女の子が、呆れた顔して溜息を吐いている。
手を離せと叫んでいるのが、ピンク色の髪をした女の子と一緒にいるナルトくん。
以前見たときから違わず、相変わらず慌ただしい性格のようだ。本当に忍者には見えない。
よく分からない状況だが、敢えて私はど真ん中に入ろう。 単純に面白そうだからね。
◇◆◇◆◇
「離せ! この、ブタ!」
ナルトの制止を求める声が響き渡る。自分の幼き友人である木葉丸に暴力を振られ、多少棘のある言葉を発している。
木葉丸の襟元を掴んでぶら下げている黒くずめの男、カンクロウはナルトの声に顔を苛立ちの色に滲ませた。
「うるさい餓鬼じゃん。殺してやろうか?」
『!?』
一見残虐に聞こえる発言に、ナルトだけではなく、桃白色の髪が特徴的な少女、サクラも息を飲んだ。
ぶら下げられている木葉丸も恐怖で一杯になり、上手く動揺を隠せていない。助けの呼び掛けをナルトに微かに送るが、ナルト自身も動揺していた。
簡単に人を殺すという、その行為に躊躇も何もないと思わせる残忍な性格。本来、忍者の性格としては良いのかもしれないが、ナルトは理解出来ていなかった。
二人の木の葉の忍びは静まり返ってしまった。
そんな空気の中、紫は現れた。
「なに喧嘩してるの? 暴力は駄目よ〜」
胡散臭い顔を扇子で隠しながら、一同の中に割り込んでいく。藍は一応後ろに付いていくが、なるだけ目立たなくしようとしている。端にちょこんと立っているだけだ。
面識のあるナルトは当然、紫に声を投げ掛ける。
「ゆ、紫の姉ちゃん!? どうしてこんなとこにいるんだってばよ!?」
ナルト以外は紫の顔を知らないので、サクラや木の葉の子供達、カンクロウも胡乱げな視線を紫に向けていた。
取り敢えず紫は、首を吊られて苦しそうな木葉丸を抱えて降ろしてあげる。カンクロウは手を無理矢理解かれたので、更に不機嫌な表情へと変わるが、紫は特に気にしなかった。
「なにしやがるんだ」
「ちょっと待ってね」
カンクロウが文句をつけようとするが、紫は制止し、木葉丸に声をかける。
「気をつけなくちゃダメじゃない」
地に足を付けることが出来た木葉丸と同じ目線へとしゃがみ、妖艶な笑みで優しく頭を撫でた。
「あ、ありがとうだな、これぇ!」
顔をほんのり朱に染めて、紫の美しい表情に見入ってしまった。その気恥ずかしさで言葉を慌てて繕うことから、幼い虚勢を張るのがまた愛らしい。
立ち上がり体勢を整えると、次に紫に声を掛けたのはナルトだった。
「紫の姉ちゃん、木葉丸を助けてくれてありがとうだってばよ!」
「ふふふ、同業者は助けなくちゃね」
「同業者? それってどういう意味……」
ナルトの視点は紫の顔から、その肢体を辿り二の腕あたりに移った。そこで目に入ったのは、しっかりと縛られている、よく目にしたことのある木の葉の額当てだった。
目が自分の額当てに向いていることに気付くと、紫は微笑みながら楽しそうに声を弾ませる。
「火影様に忍者にしてもらったのよ。君と同じ、下忍にね」
「マジかよ! 紫の姉ちゃん忍者だったのか!?」
「違うわ。元は旅人のようなものだけど、火影様の配慮で下忍で扱ってもらえるようにね。ちょっと任務がつまらないけど」
「だよなぁ〜、ホント下忍の任務ってつまらないぜ。もっと難しい任務とかさぁ、激しい任務がやりたいんだってばよ!」
「気が合うじゃない。私ももうちょっと難しいのやりたいわ。あんまり強い敵もいないし、ただの盗賊程度じゃあ張り合いがないもんね」
「そぉそぉ、ホントつまんねえぜ。ってか紫の姉ちゃんも戦えるのか?」
「まあ旅人だったしね。そこら辺の人なら余裕よ。ナルトくんも倒せちゃうかもね?」
挑発するような言動を取る。その挑発を分かってて、敢えて乗ったのか分からないが、ナルトは屈託のない笑みで、紫に向かって好戦的な口調へと変化させた。
だが、その声色も大して力を入れてないことから、ナルト自身もそこまで本気じゃないらしい。
「へへ〜ん! 流石に紫の姉ちゃんには負けないってばよ〜!」
「さぁて、どうかしらね。割と強いかもよ?」
「あんまりそうは見えねえけどなぁ。そういや、紫の姉ちゃんは一人で任務やってんのか? スリーマンセルとかの班じゃないの?」
「一人じゃないわ。スリーマンセルでもないけど。私達は二人で班を作って行動してるの。そこにいるわよ」
紫の指先は、端っこでちょこんと立っていた藍を指していた。その指に気付いた藍は、ナルトの全体像をよく観察しながら、紫の側まで寄って来る。
微かに口元に笑いを含ませながらも、普通にしていれば全く気付かれることのない表情でナルトの正面へと立つ。
ナルトは新しく現れた女性を見るも、その美しい容姿に見取れていた。その視線を感じつつ、藍とナルトの初めての会話は幕を開けた。
「……君がナルトくんかな?」
「お、おう、そうだってばよ」
「先日、紫様が君から食事を御馳走してもらったらしいじゃないか。私からも礼を言わせてもらうよ、ありがとう」
「別にいいってばよ。俺も額当てを拾ってもらったし、それのお礼と考えれば安いもんだぜ」
「そうか……。私の名前は八雲藍。紫様の従者をやらせてもらっている。よろしく」
「じゃあ、藍の姉ちゃんと呼ばせてもらうぜ。それにしても……なんでそんなに俺の顔をジロジロ見てるんだってばよ? ゴミでも付いてんの?」
藍の、内を探る眼に気付いた。内心見すぎたかと思う藍だが、あくまで平静を装う。
「いや、なにもないよ。少し、君が気になっただけさ」
「?」
ナルトは一瞬意味が分からなかったが、すぐに思考を放棄した。相変わらず考えるのは苦手のようだ。
「藍の姉ちゃんって紫の姉ちゃんの従者……召使いなんだよな? なんでそんなんしてんだ?」
純粋な子供の疑問なのだろう。しかし、それを語るには少々ナルトには早過ぎる。それに話も長くなり過ぎる。
適当に、簡潔に答えた。
「まだ君には分からないよ。私と紫様の関係は長いからな。まあ色々と困らせてくれるが、そこそこに楽しいよ」
「ふーん……、色々あるんだな。まだ俺には分かんなそうだ」
手を後頭部で組み、既に思考を止めて怠そうにしていた。どれほど考えるのが苦手なんだろうか。
藍とのファーストコンタクトを終えたのを確認した紫は、話題を転換させる。
「そういえばこんなとこで何してたのかしら? 挙げ句の果てには絡まれたりして」
「んなもん俺が知るかよ! いきなりコイツらが手ェだしてきやがったんだ!」
指をカンクロウに向けながら、事の発端はコイツだということを必死に説明している。確かに、少し小突いたくらいでここまで怒ることはないだろう。短気な性格と言えばそれまでだが、ナルト達よりかは年長者なのだから譲歩するくらい出来なかろうか。
とは思うも、木葉丸が何もしてなかったら怒らないのも事実。向こうの言い分も聞いておくのが得策か。
「君はどうしてこんなことをしたのかしら? どうやら怒っているようだけれど」
黒づくめの少年カンクロウは手を無理やり紫に解かれたときの不機嫌さそのままで、紫に対してイライラしながら答える。
「ガキからぶつかったのにも関わらず、謝らずにその上馬鹿にしてきてるんだから当然じゃん。それより、テメーは関係ねぇだろ」
(ただの子供のケンカね。忍者と言っても、大して変わらないものなのね、やっぱり)
「一応仲間みたいなものだしね。見知らぬ者に絡まれてたから、仲裁に入ったに過ぎないわ。面倒ごとになるのも嫌でしょう? それにあの子達よりは年長者なのだから、それぐらいの譲歩はしてあげないと」
「ケッ」
尚、不機嫌な様子。後ろにいる巨大な扇子を持った少女も面倒臭そうな表情をしていた。
だが、その少女の顔は一転。いきなり焦りを含む顔になり、今すぐ静止の声をかけようとしていた。
カンクロウが、背に背負っていた包帯でぐるぐる巻きにされている何かを前に出し、今すぐにでも襲いかからんとしていたからである。
「本当にイラつくじゃん。殺してやろうか?」
「やめろカンクロウ! カラスまで使うつもりか!?」
カラスという存在が、カンクロウの武器なのであろうことが容易に想像がつくが、この状況で紫は呑気にくだらないことを考えていた。
(カラス……? 鴉? なに、あの子は天狗でも使役しているかしら? ……なわけないか、包帯でぐるぐる巻きにされた天狗なんていたら哀れ過ぎて笑っちゃうわね。そういえばこっちにも新聞はあるのかしらね)
紫の全くどうでもいいことを考えている姿を見て、怖気付いたんだとカンクロウは勘違いしてしまった。優位に立てていると思った彼は、不敵に笑い、攻撃に移ろうとしたが、またもや邪魔が入ってしまった。
思ったより不幸体質なのだろう。因果応報と言い換えた方がいいのかもしれないが。
「痛っ!」
木の上から石が飛んできて、カンクロウの手にヒットした。素晴らしいコントロールである。
一同が木上を見ると、ナルトと年齢が変わらぬ少年が石を手に持ち、枝に座りながら地を眺めていた。
「よそんちの里で何やってんだテメェらは」
「キャーサスケくんカッコいい!!」
サスケという少年のことをカンクロウは睨み付けた。ちなみに、ピンク色の髪の少女はサクラ、巨大な扇子の少女はテマリという。
「失せろ」
「ムカつく奴らが湧いて出てきやがって……」
紫とサスケを交互に見るが、サスケはともかく、紫に至ってはまだ考え事をしていた。勿論、どうでもいい内容なのだが。
(木の上から態々石を当てなくてもいいのに……まあカッコつけたいお年頃だもんね。でもコントロールはいいわね)
結構失礼なことを考えていた。言葉にしたら間違いなく顰蹙を買う(何名かは賛同するだろうが)ので、本心は口にはしない。無駄に相手を貶すような真似をしないのが大妖怪の礼儀。一部例外は除く。
「ガチで殺してやるよ……!」
今度こそ本気でかかってくるようだ。殺気が今までと段違いである。
カラスの包帯を解こうとするが、またもや邪魔が入り、それは叶わなかった。
「やめろカンクロウ……里の面汚しが……」
そろそろぐるぐる巻きの鴉……ではなく、カンクロウが哀れに思えてきた紫だった。事の発端は、どちらが悪いのか紫は知らないのだが、少し可哀想に思えてきた。
(今出てきたあの子……目付き悪いわねぇ。それに、おっきい何かを、ナルトくんと似たような何かを持ってるし……藍も気づいたようね)
木の枝にぶら下がるように出て来た瓢箪を背負った少年。間違ってもあの瓢箪に酒は入ってないだろう。どこぞの鬼とは違い、妙に砂っぽい。
そしてとてつもなく目付きが悪い。物凄い寝不足にしか見えない。目の下の隈が物凄いことになっている。
気づいたのは紫と藍だけだが、この少年にもナルトと似たような存在が秘められていた。
「が、我愛羅……」
名前を我愛羅というらしい。にしても、カンクロウは怯えすぎではなかろうか。紫は思う。
(恐怖政治ってや〜ね〜、私みたいに身内には優しくしとかないと反逆者が出てきちゃうわよ……私は言えるはず、うん、大丈夫よね)
「ち、違うんだ。あいつらが先にやって……」
「黙れ。殺すぞ」
「!!」
我愛羅の言葉に、テマリとカンクロウは恐れながら答える。確かに、我愛羅の放つ殺気は、先程のカンクロウの殺気とはまるで桁が違った。幼い子供ならば、その殺気に震え上がっても致し方ないだろう。
「ご、ご、ごめんね、お姉さん達が悪かったから……」
「わ、分かったから、俺が悪かったじゃん」
今までと打って変わり、我愛羅に対して平伏するような態度になってしまった。まるで蛇に睨まれた蛙ようなという状況にふさわしい。
我愛羅はナルト達に声をかけた。
「君たち、すまないな」
ぶら下がっている状態から、消えるようにして地上へと降り立った。木の上にいるサスケは動揺を隠し切れない。我愛羅の力の一片を感じ取れたためである。
「なんのために木の葉に来たのか分かっているんだろうな? 遊びに来たわけではない。行くぞ」
「待て、お前の名前を教えろ」
三人が立ち去ろうとしていたところ、木から降りてきたサスケが呼び止めた。その目は我愛羅に興味を写していた。
「……砂漠の我愛羅。俺もお前に興味がある……」
「……うちはサスケだ」
「あのさ、俺は、俺は!?」
「興味ない」
哀れ、ナルト。
我愛羅はそのまま視点を反対にせず、紫と藍へと向ける。
「うちのカンクロウが失礼した」
「あらあら、ご丁寧にありがとう。別に気にしてないわよ」
一見切れたナイフのような印象を受けたが、なかなかどうして礼節を弁えた対応している。中の存在の悍ましさと正反対のような対応が、ある種の不気味さを醸し出している。
我愛羅は紫達に対して思案していた。
(カンクロウが殺気を放った時もまるで動じていなかった……できるな、この二人)
「お前達の名前も聞かせてもらっても構わないか」
紫と藍の佇まいを見て、只者ではないと予測をつけた我愛羅は、二人に対して名を尋ねた。
「こらっ」
ぺちっ。
「なっ!?」
名前を尋ねられた紫は突然我愛羅の額を扇子で軽く叩いた。その一連の行動を見たカンクロウとテマリは顔に驚愕の色を浮かべた。
紫は出来の悪い子供を諭すように話し始めた。
「初対面の年長者に対してお前なんて使わないの。言葉遣いはしっかりしないとダメよ? 今はまだ子供だからいいけど、もう少し大人になってからはちゃんと使い分けなくちゃいけないんだから」
指を立てながら先生のように指導している。
額を叩かれた我愛羅は額を軽く触りながら、ほんの少しだけ呆然としていた。まず軽く叩かれたことに対してもそうだが……、なぜ叩けたのかがまず疑問に思ったのだ。
我愛羅には秘密がある。その秘密があるにも関わらず、なぜ叩けたのか。
あと不思議と苛立ちがない。そうされても立場的なものなのか不明だが、無意識に受け入れてしまった。
「ああ……すまない。そちらの名前を教えてくれないか」
我愛羅の訂正した問いに満足したのか、紫は笑顔で答えた。
「ふふ、偉いわね。
私は八雲紫、最近忍者になったものよ」
「私は八雲藍、紫様に同じく、最近忍者になった」
「そうか……中忍試験を受けるのか?」
「ええ、私たちは二人だけだけどね」
紫達の名を聞いた我愛羅はその二人の名前を刻み込むようにして覚えた。中忍試験の楽しみが増えたということでもあろう。
我愛羅は満足したかのように、その場を立ち去ろうとする。
「ではそろそろ行く」
「ええ、お互いに頑張りましょう」
笑顔で紫は答える。紫もまた、面白くなりそうだと楽しみが増えていた。
ナルトの中のものと、我愛羅の中のもの、そして忍者の能力、紫にとって面白そうなことはたくさんあった。この世界に来て正解だと内心考えていた。
我愛羅達が去ったあと、ナルト達は紫達に話しかけていた。
「なんだ、紫の姉ちゃん達も中忍試験受けんのか。楽しくなりそうだな!」
「本当に綺麗な人たち……」
ナルト、そしてサクラは各々先ほどのやりとりに関し感想を言っていた。特にサクラは、紫達に羨望と尊敬の念を込めた目で見ていた。
しかし、その時サスケは紫達のことを鋭く見つめていた。
「最近忍者になったと聞いたが、何者だ?」
サスケもまた我愛羅と同じく、紫達が只者ではないと感じていた。あの我愛羅に対して全く物怖じしない態度、余裕。最近忍者になったと聞いて、より得体が知れないと考えていた。
「元々は旅人みたいなものだったんだけど、木の葉隠れの里に定住したいと思ってね。力はある程度あったから忍びにさせてもらったのよ」
「……まあいい」
あまり納得してなさそうだったが、どうせ中忍試験で分かるだろうと考え、ナルト達に声をかけた。
「おい、行くぞ」
少々不機嫌そうに踵を返した。ナルト達は紫達の方を向き、手を振りながら歩いて行った。
「じゃあまたな! 紫の姉ちゃんと藍の姉ちゃん! 中忍試験で会おうぜ!」
紫は立ち去って行くナルト達に手を振っていたが、遠くなっていくサスケを見て一つ思うところがあった。
「なんだか余裕ないわね、サスケくんっていう子」
「そうですね、強さを求めている感じでしょうか」
サスケの雰囲気を見て、何かに取り憑かれているように感じた。長く生きた二人にとって、そういった者はごまんと見てきた。
サスケがなんらかのために力を追い求めているのは明白だった。
「あまり変な方向に進まなきゃいいけど」
老婆心から少々心配したが、紫達もその場から離れ、帰路に着いた。
近いうち中忍試験が始まる。これから様々なことが起きてくれそうで、紫はいつになく楽しそうにしていた。
そのまま自宅もとい幻想郷の自宅に帰ろうとしていたが、
「あ、火影室行くんでしたよ、元々」
「うわ、そういえばそうだ。だるいなぁ」
帰路に着く前に、ぶつくさと文句を言いながら火影室へと方向を変えた。
あと少しで中忍試験が開催される。
◇◆◇◆◇
「おい我愛羅」
「……なんだ」
あの場を去ったあと、ずっと静かだった三人組だが、先程の出来事について尋ねるためにテマリが声をかけた。
「さっきの八雲紫という女……何者だ?」
先の場で起きたことはこの集団の中では信じられないことなのだ。我愛羅の秘密を知るこの二人は、紫がとった行動に対して疑問符でいっぱいだった。
「……さあな、中忍試験で分かることだろう」
テマリ達に対して取りつく島もない。ただ、我愛羅の心中は様々なことが回り回っていた。
(あの額への小突き……まるで反応できなかった)
あの瞬間、正直何が起こったか把握できてなかった。少し経ったあと、やっと状況を認識したほどだ。
我愛羅は歩きながら、口元に笑みを浮かべていた。
(思ったより面白くなりそうだ……)
数多の人が来る日を楽しみに待っている。
フランス旅行行くのでここから更新がある程度遅くなります、すいませんm(_ _)m
感想および評価など是非お願いします(๑•̀ ₃ •́๑)‼
そういえば原作ではこの機会にナルト達は中忍試験の存在を知ったんですよね、本作品では少し入れ替えました(¦3ꇤ[▓▓]