私は八雲紫、木の葉隠れの忍者ですわ   作:アナンちゃん

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原作と大きく異なります。あと今までの話含め、文体変えました。具体的にはセリフ間の行間があると間延びするかなって思ったので詰めるようにしました。もし見辛くなったとかあれば言ってください(◜௰◝)
時差ボケが微妙にありますね。昼ぐらいにやたらと眠くなっちゃいます(¦3ꇤ[▓▓]


其の七 中忍選抜第二試験-2 八雲藍vs大蛇丸

 藍と顔の焼け爛れた者は対峙している。しかし、ただ焼けているようには見えない。溶けた皮膚の裏には、また違う顔があるように見えているからである。

 これから戦う際に鬱陶しく思ったのか、手で覆ったマスクを剥いだ。下から現れたのは、蛇のような目付きの印象を受ける白い男の顔だ。

 人によっては生理的に恐怖を感じる顔だろう。

 

「私のこの顔を知っているかしら?」

「知らん、つい最近この里に来たものでな」

「なるほど……道理で私が知らないわけね……」

 

 藍が自身のことを知らないことと、逆に自身が藍のことを知らないことに得心がいった。でなければ、あの自分が顔を殴られあそこまで吹き飛ばされてしまうような存在を知らないわけがないからだ。正直、あの力は尋常ではなかった。

 

「私は大蛇丸……流石に知っているでしょう?」

 

 この大蛇丸が飛ばされる……生半可な力量では不可能なことだ。単純な力で見ても、かつて同士であった綱手姫と同等以上のものを持っていると見た。

 

「どこかで聞いた名だな」

「くくく……嫌でも思い出させてあげるわ」

「ほう? それは楽しみだ」

 

 互いに不敵な笑みを浮かべた。藍はようやく歯応えのある相手を見つけ、この戦いを楽しもうとしているのだろう。

 大蛇丸はそんな様子の藍を見て苛立ちをさらに募らせる。私はあの恐怖の大蛇丸だ、楽しむなんて余裕は許さない。

 体内のチャクラを漲らせる。どこの誰かは知らないが、戦ったことを後悔させてやると彼はドス黒い感情を中に渦巻かせた。

 

「…………」

 

 サスケはこの二人の戦いを目に焼き付ける。今の自分では歯が立たなかった大蛇丸にこれほどの余裕を見せつける藍に、どれだけの力を内包しているのか興味は尽きなかった。そして自らの野望の指針を揺り動かすものになるのか。

 この二者の戦いはサスケの道標だ。

 

「さあ、行くわよ」

 

 口から剣を吐き出した大蛇丸は、それを手に握り刀身を藍に向ける。業物なのだろう、鈍い色を放ちながらも鋭い切れ味を感じさせる。

 

「これはこれはご丁寧にありがとう。何も言わずに搦手を責めてもよかったのだがな?」

「さっきから、挑発のつもりなのかしら。私はそんなのには乗らないわよ」

「挑発じゃないよ」

 

 口元に笑みを浮かべたまま首を振る。

 

「先手くらいくれてやらないと、勝負にならないだろう?」

「小娘め……その余裕を、誰に対して向けていると思っているかしら?」

 

 舐めている。大蛇丸はそうとしか思えなかった。明らかに大きく歳の下回る相手ここまで舐められることなどそうそうない。

 しかし、それは藍からすれば違った。

 

 一つ瞬きをした瞬間、何かが破裂したような音が大きく鳴り響くと同時に、大蛇丸は最初と同じように凄まじいスピードで飛んで行った。藍がまた頰を殴りつけたのだ。

 

「何度も言わせるな。別に挑発してるつもりでも、舐めているわけでもない」

 

 ようやく体が止まった大蛇丸に対し、教え諭すかのような表情で告げる。

 

「そうしないと、一方的なだけで終わってしまうだろう? せっかくのそこそこの相手なんだ、ちょっとは楽しませてもらわないとな」

「図に……乗るなよッ! 小娘が――!!」

 

 持っていた剣――草薙の剣――を振りかぶりながら藍に接近する。「まあ、小娘かどうかは置いておいて」と小さく呟いた藍はその剣をわずかの距離で見切り、横を通り過ぎていく大蛇丸に対し足を引っ掛ける。

 一瞬体勢を崩したがすぐに立て直し、血走った蛇のような目で彼女を見る。怒りからか手が震えていた。足を掛けただけで追撃してこないことに、とことんまで馬鹿にされていると感じているのだ。

 

「どこまでも……この私をっっ!!」

 

 プライドをかけ全身全霊で飛び込む。なりふり構わず、今大蛇丸の出せる本気ということが分かった。

 

「それでいい」

 

 出し惜しみしない相手と戦いたかった。大蛇丸がこの世界でかなりの実力者というのは見て分かる。だからこそ、藍はその実力を味わってみたかったのである。

 

◇◆◇◆◇

 

「なん……だってんだ、よ……」

 

 乾いた打撃音が響き続ける。

 

「おかしいだろうよ……こんなん……」

 

 時折剣が弾かれたような鈍い音も響く。

 

――ほら、今も爪で剣を弾いた。

 

「俺は……何を見てるんだ――?」

 

 先程から信じられない光景を見て、未だにそれが現実だと認識できていないような口調で一人話しているのはサスケだった。

 これまで人生、いろいろ見てきたつもりだった。だからこそ自身の力不足を呪い、自身を高みにあげるためならなんだってしてこようと考えていた。野望を達成するため、どんな苦しいことだって乗り越え、いずれ力を手にしたかった。

 

 この中忍試験だってそうだ。

 

 幾人もの強者と戦い続け研鑽を積む、こうしていればサスケはいずれ届くと考えていた。確かに焦っていた、こうしている間に野望の相手との差が縮まっているとは思えなかった。

 だが中忍試験を経て、次に上忍試験を経て、次々にステップアップを図ればいずれ届くだろうと――思っていた。

 そうして挑んだ中忍試験の初めに、とんでもない存在と遭遇した。

 大蛇丸。

 今まで戦った中で最も勝ち目がないと思った忍だ。これまで身近なところではカカシが強かった。自分じゃあまだ勝てない、ずっと思っていた。

 しかし、上には上がいた。カカシなんて目じゃない。サスケは大蛇丸に対しここまで差があるのかと絶望感を感じた。奮闘はしたかもしれない、だがそれでも差はあまりにも大きい。

 コテンパンにやられてしまった。それ以前に戦意喪失も最初はしていたのだ。

 遠すぎた。無理だ。そう感じさせた相手だ。

 

 そう感じさせた相手、だった。

 

 この光景はなんなのだ。この鳴り止まぬ音々はなんだ。

 

 かつてない絶望を味合わせた大蛇丸が……

 

――全く手も足も出ない

 

 音達は全て大蛇丸から発せられていた。

 大蛇丸は本気だ。先程サスケと戦っていた時の手を抜いた状態とはわけが違う。仮に自分があの場に立てば、瞬き一つする間も無く切り刻まれてしまうだろうと確信していた。

 なのに、かすり傷一つ藍に付けられない。

 

 大蛇丸が剣を鋭く振り下ろすも、何も気負うことなく紙一重のところで躱し、重い拳を浴びせる。

 斬撃をフェイントにし、自らの肉体でどうにか藍に攻撃しようとしても全ていなされ、最後には体が破裂してしまうのではないかと思われるような反撃を喰らう。

 剣を爪で防いだときも、そのまま体を切り裂く。まるで業物を複数同時に横薙ぎしたかのような傷が体に走る。

 

「グゥ……!」

 

 そしてまた、鳩尾に藍の膝が無慈悲に突き刺さる。

 もう何度飛ばされたか分からない。大蛇丸は全身が血まみれになり、息も絶え絶えになるまで追い込まれていた。

 

「はぁ……はぁ……ッ!」

 

 アレはなんだ。なんなのだ。

 忍者とは思えないふざけた服装をしながらこの強さはなんなのだ。

 大蛇丸はもう足元が覚束ないほどに疲弊しているにもかかわらず、藍は戦う前と何も変わらぬ状態でいた。

 息一つ乱さず、服も汚れず、何もなかったかのように堂々と立っている。

 

「くそっ……風遁――」

 

 肉弾戦では勝ち目がないと、別の活路を見出すため大蛇丸は印を結んだ。

 多少なりとも動きを止めることができればと考えていた。

 

「大突破ッ!!」

 

 暴風が藍を襲う。このとてつもない風量の前には藍がいくら強くとも、倒せはしないだろうがある程度遠くへ飛ばせるだろう。サスケは良い手だと考えていた。

 そういえばと、サスケは失念していた。あの術の放射経路は木に留められているナルトと、いつのまにか気を失っていたサクラ、また自分がいるじゃないかと。このまま藍が避けるだけだと、まず間違いなく自分たちが喰らってしまう。

 そう認識したサスケは焦るように立ち上がり、足に力を込め今すぐに駆け出そうとしたが、それを制止させるように藍が手を向けた。

 動かなくていい、そんな表情だった。

 常識的に考えたら無理だろう。この術から完全に逃れるのは至難の技だ。しかしサスケは、これまでの藍の異次元の実力を見て、どこか安心して動きを止めた。

 守ってくれる。そう思った。

 身を委ねたサスケを見てくすりと笑った藍は、迫り来る暴風に対し爪で切り裂くように、腕を鋭く横に薙ぎった。

 

 パンッ……パァァアァンッッ!!

 

 腕が見えなくなった瞬間に大きく音が鳴り響く。これは聞いたことがある、音速を超えた時にこのような音が発生するらしいとサスケは脳内に浮かんだが、その次の音は想像より遥かに大きなもので、辺りを支配した。

 音速をさらに超えたようだ。

 目眩がしてしまうような爆音を奏でた藍の腕は、暴風の中心を捉える。

 すると、暴風が切り刻まれたかのように、藍の前で霧散してしまった。無数の弱い風に分裂してしまった大蛇丸の風遁は、完全に打ち消されてしまったのだ。

 

 たった腕の一振りで相殺ッ!

 

 もし大蛇丸が藍の存在がなんたるかを知っていたら、こんな手は取らなかっただろう。伝説の存在に対し無謀であると、思考する前から答えは出ている。知っていたら別の手を講じていた。

 しかし、残念なことにまだ誰も知らない。故に、勝ち目など最初からなかったのだ。

 

「ふむ……まだなにか、あるのかな?」

 

――出し惜しみしているのなら全て出してこい

 

 一語一句違わず、大蛇丸に向けて言い放った。まるで、弟に対しお前の実力はそんなものではないだろうと言うかのような口調だ。

 先程なら舐めたことを言うなと一言や二言言い返すのだが、大蛇丸はこの自分の姿を見て、とても舐めてるだなんて言えなかった。ここまで差がつくことなど初めてかもしれない、完膚なきまでという言葉は正にこのことだと薄らと実感していた。

 しかし、大蛇丸の持つプライドはまだ終わっていない。

 

「この、伝説の三忍と言われたこの私に対してここまでとはね……」

「……ああ、聞いたことがあると思っていたら、そうか。伝説の三忍のうちの一人、大蛇丸か」

 

 木の葉の里に来てから少しずつだが情報を集めていた時に、この伝説の三忍についての文献を読んでいた。確かに、他の二人と大蛇丸の名があった。ようやく藍は頭の中につっかえていたものが取れた気がした。

 なら、と。まだ、なにか……あるだろう。

 伝説とまで言われる忍なのだ、その所以はまだ残っているはずだ。

 

「お前はまだ見せていないものがある……」

 

 藍はまだまだ面白いものが見られると期待する。

 大蛇丸がこの程度の忍なわけがないと、ある種の信用をしていた。

 

「来い」

 

 油断なく構える藍の姿を見て、いよいよ頭の中に先程から浮かんでいた突破法を行使せざるを得ないと理解する。

 まあ、いいのかもしれない。

 この場を乗り切るにはこの術しかないと大蛇丸は判断すると同時に、実験として行っても悪くないと頭を切り替える。

 

 おもむろに大蛇丸は手を合わせる。

 

「口寄せ――」

 

 今回の計画の切り札となるはずだったこの術。早く披露してしまうことになるが仕方ない。大蛇丸はニヤリと笑った。

 

「穢土転生ッ!!」

 

 手のひらを地に力強く叩きつけた。すると地面から二つの石棺が現れ、ゆっくりとその扉が開かれた。

 その中に入っていたのは大きな剣を背負った大男と、面を被った小柄な子供だった。体の皮膚はひび割れているように見え、どうも血色も悪い。

 まるで死人のようだ。

 

 二人を見たサスケが突然大きな声をあげた。

 

「そんな、なぜ……!」

 

 サスケは見覚えがあった。何故ならつい最近死闘を繰り広げた相手であったためだ。

 

「なぜ、桃地再不斬と、白がいるんだっ……!」

 

 そしてサスケ達、第七班が最期の姿を見届けた者達なのである。

 

 穢土転生――それは死者を現世に呼び寄せる最悪の忍術だったのだ。




あの術が登場しましたね。まだあの人達は出てきませんよ( ˙³˙)
あと紫はまだ当分戦わないと思います。
評価、感想よろしくお願いします(。・ω・。)

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