東風谷早苗の初体験 ーわたし不思議なクスリでトんじゃいます♥ー   作:夢野ベル子

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前編

 東風谷早苗が空を翔べなくなったのは、いつごろからなのか彼女自身も詳しくは知らないのだ。

 

 というのも、彼女自身、毎日という頻度で翔ぶわけではない。

 

 山の頂に社をかまえていることから、人間の参拝客こそ少ないものの、天狗たちは毎日のように参拝しにやってくるし、そこで食べ物やら、生活に必要なものやらは手に入るので、早苗がわざわざ山を降りて、なにかしらを手に入れるということは必要ないのである。

 

 つまり、生活のため、生きるためにさほど翔ぶ必要はなかった。

 

 だからこそ発覚が遅れたともいえるのであるが。

 

 早苗が、自身の変調に最初に気づいたのは、ほんのわずかな足の重さを感じたことからだった。

 

 中空に足を浮かせるときに感じたわずかな重み。

 

 いつものふわりとした感覚が、水の中で動くときのように、少しばかり鈍重な感じがした。まるで足をつかまれてるようなそんな感覚。そんな違和感。

 

 もちろん、透明人間が掴んでいるというようなこともない。妖怪の気配ぐらいはさすがにわかる。つまり、ただの自然現象というか、自然とそうなったというようなレベルで、早苗の身体はわずかに萎縮していたのである。

 

――太ったのかな。

 

 そんなふうに軽く考えた程度だった。

 

 しかし、それから、数日もしないうちだろうか。

 

 早苗が野暮用で人里に向かおうとしたときに、空をまったく飛べなくなっていたことに気づいたのである。

 

「先生、どうしてなんでしょうか」

 

 早苗の声は昏い。

 対する永琳の顔は、まったく揺らぎのない機械のような表情だった。

 

「そうね。検査した結果は特に何事もなかったわね。霊力の乱れもなければ、霊圧も一定、念のために何かしらの呪いの類も考えてみたのだけれども、特に反応はなかったわ」

 

「先生にも原因が特定できないんですか」

 

「いいえ。逆に原因が特定できたともいえるわね」

 

「よくわかりません」

 

「肉体的に問題がないということは、答えとしては心因性ということよ」

 

「特に精神的には問題ないように思うのですが」

 

「それは自覚症状があるかないかの違いに過ぎないわ。あなた自身がどう思っていても、心は嘘をつかない。そういうものよ」

 

「では何が原因なんでしょうか」

 

「単純に飽きちゃったのではないかしら」

 

「は?」

 

「あなたは、空を飛翔するという行為に飽きちゃったのではないかしら」

 

「そんなことありません!」

 

 早苗は椅子から立ち上がって反論した。

 

 数秒後には、まるで子供のような自分の態度が恥ずかしかったのか、しなびた植物のように力なく座りなおしたが。

 

「まずは受け入れることが必要なのよ。事実として、あなたの心は空を飛びたがっていない。したがって、空を飛べない。そういう単純な構図があるの」

 

「そんなふうに思ったことは一度もありません」

 

「本当に?」

 

「本当です」

 

「これはずいぶん根深いわね」

 

「先生、原因なんてどうでもいいんです。私は空を飛べないと困るんです。どうにかならないんでしょうか」

 

「どうして空を飛べないと困るの?」

 

「私は風祝として、妖怪を退治しなければならないんです。そのために空を飛べないと困ります」

 

「べつに、空を飛べないからといって妖怪を退治できないわけではないわよ」

 

「制空権がないのに、勝てるわけないでしょう!」

 

「それも思い込みね。火力が高ければなんとでもなるでしょう」

 

「人間は妖怪には火力では勝てません。回避力でなんとかするしかないんです」

 

「博麗の巫女は地対空戦でもかなり戦えると聞いたことがあるわ」

 

「私は霊夢さんとは違います」

 

「そう……。それはそうね。あなたは半分神様であり、博麗の巫女とは違う」

 

「はっきりと言ったらいいじゃないですか。私は霊夢さんより弱いって」

 

「そんなに風船みたいにほっぺた膨らませないの。べつに何も策がないわけじゃないわ」

 

「ほんとですか!」

 

 ジャンプするような勢いで永琳にすがりつく早苗。

 さながら瞳の中は星を飼ってるかのように輝いている。

 永琳は少し長めの呼吸をした。

 

「はっきり言えば、肉体というものもひとつの機械に過ぎないわ。あなたも外の世界から来たのであれば多少はわかるでしょう。心の病はおクスリで治せるの。もちろん万能ではないけれど」

 

「わかります。鬱病だって、クスリを飲めば緩和できますもんね」

 

「ええ。そう。だからあなたが空を飛ぶことに『飽きてしまった』としても、クスリでそれなりに緩和することができるわ。物理的にね」

 

「好奇心を刺激するおクスリですか?」

 

「そうね。ある意味ではそういえるかもしれない。けれど、このクスリは、ある意味では好奇心を殺す薬かもしれない。死んで生まれ変わるのよ。まるでどこぞの不死人のようにね」

 

 永琳が棚から取り出したのは、白い錠の入ったきれいな瓶だった。

 表にはラベルが張ってあり[FE]と書いてある。クスリの名前だろうか。

 

(それにしても……。好奇心を殺す?)

 

 早苗は永琳の言っている意味がわからなかった。

 

 なにかの危ないクスリなのかなとも思ったが、しかし、毒や呪いには一定程度の耐性があるのが神様である。

 

 特に、東風谷早苗は呪いの権化ともいえる諏訪子の子孫である。

 

 たとえ永遠を冠する蓬莱人の作ったものであっても、たいした効力はないだろうという思いこみがある。自分という存在に対する自負だ。

 

「私があなたに求める行動は三つ」

 

 永琳は指をみっつ立てている。

 

「ひとつ説明書がついているから必ず一読すること。ふたつこのクスリには副作用はないけれど用法用量を守って正しく服薬すること。みっつクスリの処方について私の言うことは必ず聞くこと」

 

 ひとつずつゆっくりと指を折って、永琳は早苗に言って聞かせた。

 

「わかりました」

 

「お大事にね」

 

 案外にやさしげな言葉に、早苗はきれいに一礼した。

 

 

 

 2

 

 

 

 自室で、早苗は鼻孔から溜息を吐き出していた。

 和室に短足テーブルが置いてある小さな部屋である。

 緊張と期待がないまぜになった複雑な表情をしている。

 ごくりと唾をのみこみ、手の平に持った瓶を眺めてみた。

 

 白い錠剤がたくさん入っている。

 永琳の作ったおクスリは普通なら粉末状のものが多い。

 錠剤の形をしているのは稀で、なんだかとても化学的な感じがする。

 

 それは、きっと錠剤という形が完璧だからだろう。

 

 円のようにまるく、柱のように屹立としていて、つまりは円錐のカタチなのであるが、まるで小さな卵のよう。

 

 ラベルにあるクスリの名前――FEが何の略かはわからないが、名前も悪くないと早苗は思う。

 漢方のようなわけのわからない漢字の羅列よりは、ずっと現代寄りの感性をしていて、きっとよく効くだろうという確信がある。

 

 ただ、永琳にはっきりといわれたことが気になっていた。

 

――心因性。

 

 早苗が翔べなくなったのは、その精神が原因だといわれた。

 

 自分にはそういう気配はみじんも感じないが、現代知識として、心に病を持っていると自己診断すらもうまくできなくなるというのは理解できる。

 

 だいたい何かに没入していると、周りが見えなくなるのが人間だ。

 

 酔っ払いほど酔っ払ってませんよと言うのと同じ。

 

 病になるということは、そういうことなのだ。

 

 だからこそなのであるが、正直なところ早苗は怖かった。

 

 自分の『心の病』なるものが顕わになり、白日のもとに晒されるのが怖かったし、それを物理的にクスリで治すという行為に洗脳めいた印象を受け、それもまた恐怖を引き起こした。

 

 別にぞっとするほど怖いというわけではない。

 

 あえて言えば、底の見えない沼に足を踏みいれるような、海辺で遊んでいたら、不意に自分がいる場所が、ずっとずっと黒いほどに昏い深海につながっているのを意識するような、そんな怖さだ。

 

「でも……、翔べないのも困りますし」

 

 いや本当のところは、飛翔すること自体に生存的な意味あいはほとんどない。妖怪退治は縁側でお茶をすすっている紅白巫女がいるし、自分が出張る必要なんてほとんどない。人里の人間達は妖怪の特性を理解しているし、誰かが守ってやらねばならないほど弱いわけでもない。

 

 そして、冒頭でも述べたように、最近では信心深い妖怪達がいろんなものを奉納してくる。

 

 確かに人里に行ったり、どこかに行ったりするときに飛翔できなければ不便になるものの、致命的になにかができなくなるというわけではないのだ。

 

 でも――。

 

 早苗が忘れられないのは、ここ幻想郷に来たときに虚実の境目が曖昧になり、ゆえに、地から足が離れた感覚である。

 

 初めて空を翔んだときの感動が忘れられない。

 

 空を再び目指しているのは、単純にそれだけの理由だった。

 

 瓶の中には小さく折りたたまれた説明書が入っている。清潔な白色をした紙。幻想郷の人里で売ってるような黄ばんだ色ではない。

 

 その紙を丁寧に取り出し、読み始める早苗。

 

「えっと……、FEは一日一粒。食後に服用してください」

 

 なるほど、これは現代のお薬と同じだ。

 

 奇怪なるは、効用・効能。

 

 ここ幻想郷にあるクスリは、効用すらも幻想的であった。

 

 FEはあなたの好奇心を刺激します。

 

(好奇心を刺激する?)

 

 あるいは好奇心を殺すと永琳は言っていた。

 

 その意味するところはなんなのか。

 早苗はつらつらと説明を黙読する。

 永琳が指示を出したのか、その文章は平易そのものであり、その意味するところを理解するのは容易かった。

 

 成分やらなにやらは分からなかったが――。

 

 要約すると、この薬は記憶や意識自体に手を加えるわけではないということだ。

 ただ始原感応を呼び起こさせるだけ。

 

 始原感応とは何か。

 よく分からなかったが、長い注釈を見ると理解できた。

 

(初めての感動を思い出させるような感じ?)

 

 人間は生まれてからどんどん経験をつんでいくわけだが、その好奇心というものは宇宙に広がりを見せる触覚の先端のようなものだ。

 

 人は好奇心という触覚を広げることで、未知を踏破していく。

 

 ただの混沌にすぎなかった宇宙に、名づけをおこなうことで秩序系を創出する。

 

 つまりそれは――。

 

 識る悦び。まっしろい雪原に足跡をスタンプしていくような気持ち。

 

 しかし、それは単に知識が増えるということを意味しない。

 

 雪を始めて踏んだときの、キュムという音。

 

 その音に対する感動は、おそらく最初しか味わいえない。

 

 そうやって子どもは大人になっていく。

 

 そうやって大人は老いていく。

 

 ささいなことであるが[FE]とは、なんのことはない。

 

 初体験《First Experience》のことである。

 

 

 

 3

 

 

 

 準備はよろしいでしょうか?

 

 内なる声が聞こえた気がした。朝の早い朝食後、既にFEは服用しており、早苗は境内に静かに立っている。目を閉じて静かに。

 

 特段、自分の意識が変わったという感覚はない。

 

 あえて言えば、インフルエンザの時にクスリを服用したら、まだ一分も経ってないのに治るという確信を得たような、そんなプラシーボ効果はあったかもしれないが、身体自体にはなんの変わりもない。

 

 そもそも、肉体的にはなんの変調も感じてなかったのだから、当たり前ではあった。

 

 それでも、理性的に考えて緊張もする。

 これでもまだ空を翔べなかったらどうすればいいのか。

 

(私は翔びたい……。また、霊夢さんと)

 

 ふとそんなことを思う。

 

 早苗にとって、博麗霊夢は初めてのライバルであり、初めての友達であった。

 

 霊夢は自然体だった。こちらに気を使うでもなく、しかも居てもよいのだと思わせてくれた。言ってみればおひさまのような存在だ。

 

 それは現世において神様のように扱われ、人によっては不思議少女に思われ、あるいは化け物扱いされたこともある早苗にとっては初めての体験だった。

 

 ただの少女として見られたことは――。

 

 ただの人間として見られたことは――。

 

 初めてだったのである。その感動をおそらく霊夢は知らないだろう。

 

 早苗は、うっすらと目を開けた。

 

 境内の灰色。見上げると、彩度の高いスカイブルー。

 

 白と青が織り交ざったような中間色。クリーム色に溶かされた朝の陽光に、早苗は自分の精神が優しくなでられているような感触がした。

 

 360度。

 

 早苗はくるりと回転しながら、空をみまわす。

 

 広がる青の世界。ミルフィーユのように折り重なる青と白のグラーデーション。視線で世界で貫くことが、こんなにも征服欲を満たすのだと初めて理解できた。籠の中の鳥が空へ飛び立つのを恋焦がれるように、早苗は自然と青空に手を伸ばしている。

 

 無意識の所作。

 

 頭から背筋にかけてゾクゾクとするような快感がせりあがってくる。

 

 青い世界が広がる。私はどこにだって行ける。

 

 そんな万能感。

 

 子どもの頃、好きなことをしているときは無限に集中力を発揮していた。

 

 それはきっと、自分が世界になり、世界が自分になるような忘我の境地だったのだろう。きっと、それは悟りの境地にも似た陶酔の感覚。

 

 いまではもう二度と手に入らない、最高に純粋な瞬間。

 

 それが、今、早苗の手元にあった。

 

 幼子が求めるように、グーとパーを繰り返し、首が痛くなるのも忘れて、早苗は空を見つめる。

 

 赤ちゃんは――、いやすべての人間は、生まれて初めて朝焼けに山間が満たされるのを見て、きっと笑っただろう。

 

 クリーム色をしたお月様がどこまで行っても追いかけてくるのが不思議で、それが空の彼方に浮かんでいると聞いて、お月様に会いにいきたいと考えたのが旅の始まりだろう。

 

 ふわりとした感覚。

 

 足が地を離れ、早苗は浮いた。

 

(翔ぶ)

 

 空を翔ぶ。それは理性的に考えれば、まったくもって反現実であり、幻想的な現象であるが、早苗はいままさに空を翔んでいた。

 

 頬を切っていく風が気持ちいい。

 

 鳥のように手を広げ、その所作にはなんの意味もないけれど。

 

 自由に。感覚が。広がって。

 

 端正な顔立ちは、ぽかんと口を開き、それから自然と微笑むかたちになる。

 

 楽しい! 楽しい! 楽しい!

 

 ――。

 

「ナイスな笑顔。いただいちゃいました」

 

 ふと横を見ると、併走するように翔んでいた射命丸文に写真を撮られていた。

 

 早苗はムスっとした表情になる。

 

「勝手に撮影しないでください。肖像権違反ですよ」

 

 もちろん、それだけが理由ではない。

 

 早苗の顔がリスみたいにむくれているのは、もちろん水を差されたからに他ならない。こんなにも感動的な経験を途中で裁断されたのだ。

 

 怒らないほうがおかしい。

 

「幻想郷のアイドルである早苗さんに肖像権なんてないですよ」

 

「え、アイドル……へへ。あ、違う。違います。そんな言葉に騙されません」

 

「そんなことより――」

 

 切り替えの早さはさすがは天狗。

 

「早苗さん。心配していたんですよ。また翔べるようになったんですね」

 

「……ご心配をおかけしました」

 

 早苗が翔べなくなったことは、公然の秘密だった。

 公に翔べなくなったと言ったわけではないが、子煩悩な神奈子や諏訪子は死ぬほど心配していたし、早苗自身もダークサイドに落ちたかのようにダウナー状態だったのだ。

 

 参拝客が多い天狗勢に知られるのは早く。

 そこから噂は広まったのである。

 

 妖怪の山の中腹には、大きな岩が突き出すように飛び出ており、そこに二人は腰掛けた。

 

「取材してもいいですか?」

 

「かまいませんよ」

 

 マスコミを操るのも仕事のうちというのが神奈子の考え方である。

 早苗にもその思想は染みている。

 先ほどから胸の高鳴りは抑え切れないほどである。

 誰かと、この感動を共有したいという思いもあった。

 

「つまり――、空を翔ぶのに飽きちゃってたから翔べなくなってたんですか」

 

「うーん。自分でもよくわからないんですけど、永琳先生はそうおっしゃってましたね」

 

「なるほどなるほど……ところで、先ほどから顔が赤いですけど大丈夫ですか」

 

「ええ、大丈夫です」

 

「ご自愛くださいね」

 

「はぅ……、はい」

 

「なんだか、早苗さんが今日はものすごくかわいいですね」

 

「ふぇぁ。あ、ありがとうございます」

 

 会話をするのが楽しい。

 誰かと意思を疎通するのが楽しい。

 それは始原的には、赤ん坊のときに母親が絶妙のタイミングで自分にかまってくれたときのような、そんな感動に近い。

 

 呼応してくれる文の顔が、とても好ましく母親のように思えてくる。

 愛しい。

 刷りこまれちゃう。

 

(どうしよう。好き。好き。好き。好き……いやいや)

 

 FEの効用はあくまで感性の始原遡行にある。つまり理性や記憶には一切の改鋳はないのであるから、早苗は自身の感情の揺らぎについて、完全に把握していた。正体はわかっているが、回避不可の弾幕のようなものだ。

 

「あ、あの……」

 

 早苗は自分自身の躰の火照りを冷ますために声を出した。

 

「なんです?」

 

「妖怪って、翔べなくなったりしないんですか?」

 

「え、うーん……ないと思いますよ。そもそも、妖怪にとって翔ぶのって、手や足を動かすのと変わりありませんから」

 

「人間よりもずっと自然な行動なんですね」

 

「そうです。だから飽きるとか飽きないとかの次元じゃないんですよね」

 

「妖怪は飽きたりしないんですか?」

 

「しますよ。生きている以上は当たり前でしょう」

 

「うーん。じゃあ、数千年も生きてるなかでどうして生きるのに飽きてしまわないんでしょうか」

 

「それは可塑性の問題でしょうね」

 

「可塑性?」

 

「変わりやすさといいますか。妖怪は事物に対して適応する度合いが人間よりも低いのだと思いますよ」

 

「妖怪は変化しにくいってことですか」

 

「そうです。逆に言えば、人間は成長しやすいともいえますね。いやぁ、私達妖怪に比べて10分の1も生きてないくせに、めちゃくちゃ強い人間がいたりするじゃないですか。それって可塑性の問題だと思うんですよね」

 

 文はにこやかに笑った。

 彼女は人間が好きらしい。そもそも天狗的属性としてロリショタをさらうのが趣味な連中でもある。

 

「逆に言えば、人間って飽きやすいんでしょうか」

 

「そうですね。妖怪との比較で言えばそうじゃないですかね。いや、そもそも生きている時間が少ないから、いろいろとやってみなければと思うんじゃないですかね」

 

「いろいろと?」

 

「そうですよ。花の命は短くて……恋せよ乙女って言うじゃないですか」

 

「恋せよ乙女……」

 

 ふぅぁ。

 

 なぜか、霊夢の顔が思い浮かんでしまう早苗である。

 

 違う。これは恋愛感情ではない。おそらく始原感応による『人が好き』という感情が拡大解釈された結果だ。

 

 好きなのは間違いないけど。

 

 恋愛の好きや友愛の好きやらが未分化の状態の『好き』なのだ。

 

 まだ、キスもしたことないのだし。

 

「おやぁ。その顔は誰かを思い浮かべた顔ですね」

 

「ひゃ。な、なに言ってるんですか。そんなことありません」

 

「残念ながら、私のことではないようですね」

 

「もう。怒りますよ! あと、記事に書いたらダメですからね」

 

「わかりましたよっと。ただ、好奇心は猫をも殺すって言いますからね。人間が自分の好奇心に殺されるのなんて、珍しくもないですし、早苗さんも気をつけてください」

 

 文は明るい声ながらも早苗を心配げに見ていた。

 早苗は一礼して、翔びたった。

 もう、さきほどのような純粋な感動は()()()()




思いついたので書いちゃった系。
ゾンビなオリジナルは後回しにしちゃいました。
後編は今日の夜くらいにさっさと書きます。
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