ある雪深い村の話   作:みあ

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にゃんサイド


にゃんにゃん そのさん

「ほら眠ったニャ! この隙に爆弾を仕掛けるニャ!」

 

「落ち着いて……落ち着いて……大タル爆弾をありったけ」

 

 タマはゆっくりと離れると爆弾に向けて矢を放った。

 途端に巻き起こる大爆発!

 煙が消えると同時に衝撃で起き上がっていたイャンクックがそのままゆっくりと倒れていく。

 

「やった! イャンクックをひとりで倒せた!」

 

「さっさと解体するニャ。ギルドの回収部隊が待ってるニャ」

 

 ハンターが依頼のあったモンスターを解体出来る時間はわずかしかない。

 元々ギルドも依頼を受けてモンスターを回収するから、あまりにも使える部位が少なければ儲けにならない。

 だからハンターにはそれほど旨味が無いのが現実だ。

 もっとも、ギルドが引き取ってくれるからこそ現金収入になることを考えればわずかでも解体時間をくれるのは温情といってもいい。

 もしもハンター自身がモンスターに倒されることになれば回収部隊はモンスターではなくハンターを回収することになる。

 依頼が失敗することになるが、命あっての物種だ。

 回収部隊には頭が上がらない。

 

「せっかくイャンクックを倒せたのに……」

 

「イャンクックは下級の壁ニャ。まだまだこれからニャ」

 

 それでもひとりでイャンクックを倒せるまでに成長したことが嬉しい。

 回収部隊のガーグァ車に便乗させてもらいながら弟子の成長を喜んだ。

 絶対に表には出さないが。

 

 

「そういえば、あんたって何て呼べばいいの?」

 

「ライガニャ」

 

「ライガニャ?」

 

「ニャを入れるニャ。ライガ、ニャ」

 

 俺は雷の牙、ライガだ。

 ジンオウガを倒すと決めた時に俺の名は決まった。

 何かこう名乗ると爺さんが微妙な顔をするが。

 

「ライガ、ね。オッケー! これからもよろしくね、ライガ!」

 

「ジンオウガを倒すまでニャ。それ以降は知らニャいニャ」

 

 連携しての戦闘をこなし、イャンクックが前よりも容易に倒せるようになった頃に緊急依頼が入った。

 時期が悪く、この依頼を受けたのは俺とタマのみ。

 しかも、相手はジンオウガだった。

 

「怖いニャら隠れてるニャ」

 

「ふん、そっちこそ」

 

 俺たちは準備万端とは行かなかったが再度ジンオウガと対戦することとなった。

 

 

 闇夜の草むらを巨大な脚の持ち主がゆっくりと踏み締める。

 草むらには雷光虫が飛び交い、辺りは完全な静寂に包まれていた。

 それもそのはず。

 このジンオウガはこの森に置ける最強の王者。

 音を立てればたちまち餌食になるかもしれない。

 そんな恐怖がこの森を包み込んでいた。

 だが、それも今この時まで!

 

 ガァァァァ!

 

 雷狼竜が咆哮を挙げた。

 それをもたらしたのは左の眼球を貫いた一本の矢。

 痛みにのたうつジンオウガに向かって木の上から飛び降りる。

 

「ニャおぅ!」

 

 ガツンッと衝撃が腕の先から全身へと伝わっていく。

 確かに手応えはあった。

 死角となった左側からの全力のジャンプ打ち!

 一撃とは行かないまでも痛撃を与えることには成功したはずだ。

 ふらつきながらもジンオウガは一回転、尻尾で周辺を払った。

 しかし、俺はもうそこには居ない。

 いぶかしむ奴を再び放たれた矢が襲う。

 

 グガァッ!

 

 痛かろう痛かろう。

 俺がタマに求めたのは全力を込めた一撃。

 フェイントは全て俺が請け負い、スタミナを全部弓へと込めてもらう。

 これが作戦の全てだった。

 そこからは完全に消耗戦である。

 

「ニャッ!」

 

 元々、俺一人でも苦戦しながら瀕死に追い込んだ相手だ。

 二人なら当然のことながら楽勝といっても良かった。

 逃げようと後ろを向けば矢がいくつも突き刺さり、こちらを向いても残った右目を貫こうといくつも飛んで来る。

 もちろん、俺も無傷とはいかない。

 ジンオウガの爪や尻尾を幾度となく食らった。矢も食らった。

 後頭部に集中してるあたり、わざとなんじゃないかと思わなくもない

 終わった後でまたいつもの笑顔でごめんごめんと謝るのだろう。

 随分と長い時間を過ごしたものだ。

 

 倒れたジンオウガの上に飛び乗って勝鬨を挙げながらも、俺の心はもうここには無かった。

 

 

「なーに、黄昏てんの?」

 

「ふん、こんニャもんかと思ってただけニャ」

 

 ジンオウガに勝ったという高揚感はあんまり無かった。

 久しぶりの大型モンスター退治にお祭り騒ぎで浮かれる街の連中を見ても何の感慨もありはしない。

 でも、タマの笑顔を見てると心が浮き上がるのを感じた。

 

「その……あんたさえ良ければ、私と組まない?」

 

 その誘いをどれほど焦がれたことか。

 ジンオウガを倒すという俺に着いてくる者など居なかった。

 圧倒的な孤独の中で生きてきた俺が初めて見た光だった。

 

「お前さえ良ければ、ライガを、この雷の牙を存分に使うといいニャ……『ご主人』」

 

「え、今なんって言ったの?」

 

「何でもニャいニャ! 気のせいニャ!」

 

 いたずらっ子の笑みを浮かべるタマに早まったかと少々後悔する。

 それでも、この選択はきっと間違いではないと思う。

 

「ねぇねぇ、さっき何て言ったの? ねぇ、ぶち太郎?」

 

「ニャ!? オレの本名、誰に聞いたニャ!?」

 

「あんたの爺さん」

 

 何でコイツに教えたんだ、爺さぁぁぁぁぁん!

 俺は早々に故郷を後にすると決めたのだった。

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