殺伐とした別世界に、突如として変態なる国家が並行世界より来たる 作:ELDIAN
_帝都上空、竜兵隊
帝都防衛基地から離陸し、編隊を組んだ精鋭竜兵隊120騎は最大速力で帝都上空を悠々と飛行する敵の迎撃に向かって居た。
「お前ら!悠々と飛行している蛮族に鉄槌を下してやれ!」
『オォォォ!』
帝都上空を飛行する総勢120騎にも及ぶ竜兵隊の隊長は魔導電信機越しに言う。
「全騎火球発射準備!いつでも撃てるようにしろ!」
聞けば今回の敵は飛行しているという。護衛の竜兵隊がいる可能性を危惧した隊長の指示の元、竜兵達の乗るジルニトラが口を開き、その中に火球が生成される。
「よし!全騎突撃体制を作れ!・・・ん?」
隊長が先頭に突撃体系を整えた時だった。
シュゴォォォォォォォォ...ドォォォォォンッ!
「ッ!?何が起きた!?」
隊長の目に白い尾をひく光の矢が入った瞬間、すぐそばを飛行して居た竜兵などが一斉に鮮血と肉塊を散らして爆散した。
「ぜ、全騎散開!回避行動を取れ!早くしろ!」
隊長は味方騎にとっさに回避行動をするよう指示する。
ドォォォォォンッ!
「ま、またかッ!」
100騎全てが花びらのように一斉に回避行動を開始した矢先、又しても光の矢が味方騎を穿ち一瞬にして爆散し、次々と消えていく。
「い、いったいどうなっているッ!?」
降下する合間、上空を見渡す。だが空には、何も居ない。
「どうする・・・どうする・・・」
隊長は必死に考える。
『ま、また来たぞぉぉぉぉッ!』
魔導電信機越しに味方騎の悲鳴が伝わる。
「あ、あれか!」
降下する合間、必死に回避行動をとる味方騎を確認する。
「よ、避けろぉぉぉぉぉッ!」
上からやって来た光の矢を、急上昇により味方騎は見事に回避した___はずだった。
「な、なにっ!?」
避けたと思った矢先、光の矢は進路を変更し又しても味方騎へと向かう。避けたと思って居た味方騎はどうすることもできず又しても爆散する。
「い、いったいどうなっている!?あ、あれじゃ神話の・・・!」
そう言いかけた時だった。
ゴォォォォォォォォン!
巨大な風切り音とともに、不可思議な形をした何かが数十個散開した竜兵隊たちの間を通過した。
「あ、あれか!全騎あれを追え!敵討ちだ!」
隊長はとっさに言う。
『了解!』
隊長の指示を聞いた竜兵隊たちは仲間の仇を討つという復讐心に燃え、下へと真っ逆さまに落ちていく何かを追う。
『た、隊長ッ!一向に追いつけそうにないです!』
魔導電信機越しに部下が言う。事実、現在絶賛降下中の敵を数十騎にまで減った竜兵隊が追っているが、一向に距離が縮んでいる気配がない。と言うよりも、引き離されているようにも見える。
「そ、速力でこちらを上回っていると言うのかッ!?」
隊長は驚愕する。少なくとも第五文明大陸においてジルニトラ以上に速度のある竜種はあの帝国以外は存在しないからだ。
「く、くそっ!好き放題にやられてたまる・・・ん?」
ふと6本の白い線を引く未確認巨大飛行物体が複数目に入る。おそらくあれが本命だろう。そう思った隊長は反射的に魔導電信機を手に取る。
「全騎目標変更!あのデカブツを落とせ!」
『了解!』
竜兵隊たちは追尾を諦め編隊を組み直すと、再度上昇しデカブツに向かっていく。
「全騎火球発射準備!射程に入ったらすぐに放て!」
『了解!』
隊長は不吉な笑みを浮かべていた。
_帝都上空、スカラベ0-1
「ききききき機長!まずいですよこれ!」
レーダーを見て居た副操縦士は、こちらに敵航空戦力が向かって来ているのを見て戸惑う。
「・・・まずいな」
正直機長も、ここまで敵航空戦力多いとは思って居なかった。
「どうすればいいかなぁ・・・」
機長は考える。
「とにかく速力あげて護衛機が来るまで逃げるぞ!」
「りょ、了解・・・」
副操縦士はスロットルを上げる。その合間機長は無線機を手にとった。
「全機進路変更!遊覧飛行は終わりだ!スロットル上げて一直線に第一目標まで向かえ!」
機長は焦った声で言う。
『りょ、了解・・・!』
「機首右に向けるぞ!」
「わ、わかりました!」
機長と副操縦士は同時に操縦桿を右に倒す。それに呼応するかのように機体はゆっくりと右に向く。
「あ、そうそう。副操縦士くん」
機長は何か思い出した様子だ。
「い、一体なんですか!?」
一番忙しい今口を開くということは、それほど重要なことなのだろう。
「俺、この作戦が終わったら結婚するんだ」
「・・・は?今なんと?」
「だからさ・・・結婚するんだ」
副操縦士は内心『あぁこれダメなやつだ』と思った。
「そ、そうですか・・・」
その時だった。
ビィィィッビィィィッビィィィッ!
「っ!?熱源感知!?」
コックピット内に熱源感知のアラームが大きな音を立てて鳴り続ける。副操縦士と機長は慌ててレーダーを見ると、そこには驚愕のものが写って居た。
「き、機体正面・・・敵です!」
コックピット内が静まる。機体正面には無数の敵航空戦力と、火球のみが写っていた。
「・・・そうか。いい人生だったな」
機長は諦めた声で言う。
「い、いや!まだ間に合いますって!すぐに回避行動を!」
副操縦士は操縦桿を力強く握る。操縦するために機体正面に顔を向けた時だった。
ガコンッ!
「ッ!」
機内に大きな衝撃が加わる。
「ひ、被害状況報告!」
機長は我に戻ったのか、汗水を身体中から垂らして言う。
「だ・・・第二エンジン及び第四エンジン被弾・・・。出火確認・・・」
副操縦士は絶望した様子で言う。
「・・・そうか」
機長は諦めた声で言うと、静かに消火装置を起動させた。
「・・・鎮火する可能性に賭けるしかないな」
エンジンから出火したスカラベ0-1は、徐々に高度を下げていった。