ランス再び   作:メケネコ

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NC戦国ランス⑩

 某月某日―――今ここに、JAPANにおける帝レースの最終戦が始まろうとしていた。

 東の藤原家、西の黒部軍…二人の帝候補が今ここにぶつかろうとしていた。

 その緊迫した空気は両軍のみならず、このJAPAN全体を飲み込んでいる。

 今ここにJAPAN最大の英雄と、はるか先の未来の最大の英雄であり、後にその世界を手中に収めた男の戦いが始まる。

 

 

 

「始まるな…」

 妖怪王黒部はどこか感慨深げに相手側の旗と自軍の旗を交互に見る。

「どうしたよ黒部。まさかこんなんで満足してるってのか」

 妖怪窮奇がからかうように黒部の肩を軽く叩く。

 そんな窮奇に対して黒部はその牙を剥き出しにして笑う。

「んなわけねーだろ。ただよ…まさか俺がこうして人を率いているって事が今でも不思議でよ」

「そりゃそーだな! 俺だって…いや、誰もこんな状況になるなんて考えちゃいねーよ」

 二体の妖怪は豪快に笑う。

「で、どうなの。妖怪王のあなたとしては」

 そこに金色の髪をした絶世の美女が入ってくる。

「おお、最高の気分だぜ。全く…最初にランスやお前と会ってからこうなるなんて思ってもいなかったぜ。レダ」

「ランスに関しては普通の考えが当て嵌まるなんて考えたらダメよ。言っても信じられないかもしれないけど、アンタ達には想像も出来ないくらいの濃密な人生を送ってるわよ」

 エンジェルナイトである自分ですらランスという男の生には呆れるばかりだ。

 魔王と出会い、魔人と出会い、三魔子と出会い、2級神と出会い1級神とも出会いそれでも尚生きている。

 それどころか、魔王ともセックスをするというとんでもない男だ。

 その行動原理が全て女性にあるというのだから始末に負えない。

 そして全てを成し遂げる力があるのもだ。

「そんな奴だからよ…一緒にいて退屈しねぇ」

 もしランスと出会わなければ、帝レースにも全く興味は無かっただろう。

 今までどおりにただただ暴れ、人を喰う毎日を送っていただろう。

 それが今では自分を慕ってついて来た妖怪達、そしてこんな自分を帝にしようと集まっている人間。

 人間とも普通に話し、人間と軍略の話をする…そんな日が来るなんて過去の自分に言っても鼻で笑うだけだろう。

「で、どんなもんだ、森盛? お前の見立てとしてはよぉ」

 黒部の言葉に、今まで相手の陣を見ていた平森盛は難しい顔をする。

「やっぱりこっちが不利モリ…正直言うと、ランス殿とスラル殿の策が嵌るかどうかが全てモリよ」

 軍師である森盛は決して楽観視も悲観的な見方もしない。

 ただただ現実を見て策を練るだけだ。

「不利か…ま、それも楽しそうだがな」

 軍師の言葉を聞いても黒部の不敵な笑みは変わらない。

 圧倒的な力で相手を倒すのもいいが、こうして不利な状況を乗り越えるのも嫌いでは無くなっていた。

「しかしこうまで人と妖怪が揃うと圧巻ですね…」

「そうですな…少し前の私からすると信じられない光景ですな」

「これを大陸の人間であるランスさんが成し遂げたんですからね…大陸の人ってみんなそんな感じなんですか?」

 綾、トオトヨ、そして与一も遠くにある藤原の旗を見て、そして自分達の頭上にある黒部軍の旗を見る。

 数は明らかにこちらが少ないだろうが、不思議とその顔には不安は無い。

 妖怪王黒部、そして人間側の代表とも言えるランスの実力を嫌というほど知っているからだ。

「で、そのランスさんは…」

「エルシールと一緒に消えたと言えば分かるでしょ」

「「「あー…」」」

 レダの言葉に全員が納得する。

 既に皆が分かり切っている事だが、ランスは度を超えたスケベである。

 ランスの好みの女性には片っ端から声をかけ、その手は女性型の妖怪にも及ぶ。

 拒否したくらいで止まるランスでは無く、どんな手を使ってでも女性とセックスをしようとする。

「綾さんはランスさんを頑なに拒んでるんですよね」

「…ランスさんも悪い人では無いのですが。それ以上に私はまくらをどうにか目覚めさせないといけませんから」

 綾も当然の如く声をかけられているが、ランスの事を拒んでいる。

(ただ、まくらの事が何とかなれば…本当にどうなるか分かりませんね)

 ランスは絶対に引き下がらないだろうし、まくらを目覚めさせるためにはどんな手段でも取りそうだ。

 それが怖くも有り、同時に頼もしくも有る。

 女性とHをするためならばどんな無理難題でもこなす、それがランスという人間なのはもう嫌でも理解させられている。

「がはははは! そろそろ時間か」

 丁度良くランスが現れる。

 その後ろには、顔を赤く上気させ、ふら付く足でランスのマントを掴んでいるエルシールが現れる。

 彼女を見れば、今まで何をされていたかは丸分かりだろう。

「で、動きはあったのかしら」

 ランスの剣から離れられないスラルは、もうランスがセックスをしていても慣れてしまっている。

 最初こそ慌てたりしていたが、何時もの事だと考えるのを止めた。

 と、言っても密かにその場面を見てやきもきしている所もあるのだが。

「まだ動かないわね。相手も同じように私達の動きを探ってるんでしょ。ほのかが戻って来るまで待ってもいいんじゃない」

「そうか」

 レダの言葉にランスは相手の陣を見る。

(うーむ…こういう光景を見るのも久々だな)

 こうして軍を率いて戦うのは、JAPANを統一した時以来だ。

 ヘルマン革命の時は無法者を率いていたが、その時は20名にも満たなかった。

「で、どうよ。勝てるのか? 数じゃあ不利だぜ」

「勝てるに決まってるだろ。俺様が居れば負ける事などありえんからな」

 黒部の言葉にランスは自信満々に答える。

 実際にランスはこれまで常に勝ち続けてきた。

 まあ局地戦においては負けたりはしているが、最終的には全ての戦いに勝利してきたのだ。

 だからこそ、今回の戦いも勝つものと信じて疑っていない。

「ヘッ! 上等だぜ」

 ランスの言葉を聞いて黒部も楽しそうに唇を歪める。

(…いつまで続くか分からねえけどよ)

 

 

 

 この決戦の少し前―――

「黒部、いいかしら」

「おう、どうした。スラル」

 黒部はスラルの姿を見て珍しいものだと内心で感じる。

 ランスの持つ黒い剣からは離れられないと聞いており、実際に今確かにランスの剣がスラルの側にある。

「…ランスはどうした?」

「レダと一緒。あなたと話がしたいと言ったらここに置いておいてくれたのよ」

 悪魔との契約で得たランスの剣は、ランスが呼べばすぐさまその手に戻る。

 だからこそその手に剣が無くても特には問題は無い…とランスは考えているのだろう。

(そこは少し考えないとね…)

 それを過信し過ぎるのは危険だとスラルは考えており、また別の剣が見つかればいいなと考えている。

「黒部…今から大事な話をするわ」

「何だよ」

 スラルの顔を見て、黒部はただ事じゃないと判断する。

 普段のスラルは真面目ぶっててもどこか抜けてる所が有り、クールなように見えて実際には喜怒哀楽が結構激しい。

 だからこそそんなスラルを見て退屈しないのだが、今のスラルの顔には黒部にも感じられる迫力があった。

「…もしかしたら、私達はこの戦いの結末を見られないかもしれないわ」

「あん? どういう事だ? まさかランスが負けるってのか?」

 黒部の言葉にスラルは首を振る。

「私達はこの時代に生きる者じゃない…私達がJAPANが出来る前から生きてるって言ったらあなたは信じる?」

「突然だな…まあ胡散臭え話だとは思うぜ。お前の口から出た言葉にしてはな」

 スラルはその言葉に苦笑する。

「前にも話したけど…私達は聖女の子モンスターであるセラクロラスを探している。そして…そのセラクロラスが私達の前に現れれば、ランスと私とレダは間違いなくここから消えるわ」

「…そうか」

 スラルの言葉にも黒部は短く答えるだけだ。

「…ちょっと意外。そんな短く答えられるだけだなんて思ってなかった。あなたならそんな訳無いだろって笑い飛ばすと思ってた」

「普通ならそう言うかもしれねえけどよ。ただランスの奴を見てるとありえそうだと思ってよ」

 ランスという人間と出会ってから黒部は色々な事を体験した。

 初めて人間であるランスに負け、部下に誘われ、そして自分でも気持ちが分からないままランスを探したりした。

 自分を全く恐れないランス、スラル、レダ、エルシールと共に行動し、共に地獄を探検した。

 そこでは鬼と出会い、魔人と出会い、ハニーと出会い、そしてカラーとも出会った。

 全てが新鮮で、黒部はこの時間が非常に楽しかった。

 そして帝レースに参加者として、人間をも味方につける事にも成功した。

 それも全てはランスと言う人間に出会ったからだ。

「それは何時かわからねぇのか?」

「分からないのよね…それがどれくらい先になるか。もしかしたら明日かもしれないし、何十年後かもしれない。でも確実に言えるのは、必ず別れる時が来るって事よ」

 黒部にはそう言うスラルの顔が何処か寂しげに見えた。

「おいおい。勝手な事を言ってんじゃねーよ」

「…悪いわね。でも私にも…多分ランスにもどうする事も出来ないのよ」

 黒部が自分を責めるのは分かる。

 確かに無責任な事を言っているとは自分でも分かっている。

 でもそれでも…黒部には誤解をしてほしくは無かった。

「そういう事じゃねーよ。何で自然に俺が省かれているんだよ」

「黒部…」

 黒部の言葉にスラルは黒部を見る。

「妖怪なんてのは好きに生きればいいんだよ。俺だって好きで帝レースに参加しちゃあいるが…」

 黒部はその言葉の続きを飲み込む。

(俺が帝レースなんてのに参加してるのは…ランスとお前のためなんだからよ)

 これまでランス達と共に行動して、妖怪の自分でも明らかに分かる事がある。

 何よりも、あの時地獄で奇妙なハニワと出会った時、そこには確かにスラルの体が存在していた。

 その後は正直思い出すのも辛い地獄の光景が繰り広げられはしたが、その時にあったスラルの顔。

 妖怪の自分にすら分かる、ランスに向けられるスラルの笑顔。

(…ランスの奴もよ、そんなスラルのために色々探してるんだろうしな)

 スラルの体に触れる、セックスをする、ランスは常日頃からそう言ってるし、それは本心なのだろう。

 だがそれでも、全てはスラルのためにランスは動いているのだ。

 そんな二人だからこそ、黒部は自分に出来る事は何かあるのかと考えた。

 そこでランスは自分に帝になれば良いと言ってきた。

 最初は驚いた…正直帝なんてものにはあまり興味は無かった。

 でもそれでも、この二人にしてやれる事は無いかと考えた結果、自分が帝となれば二人が探すものが見つかるのでは無いかと思ったのだ。

 単純な考えかもしれないが、黒部にはそれくらいしか思いつかなった。

「まあいいか。とにかくよ、お前達が何処か行くってんなら俺も連れてけ。そっちの方が面白そうだしな」

 黒部の言葉にスラルは笑う。

「ランスが良いって言えばいいんじゃない? でもランスはあなたの事を結構気に入ってると思うから、問題無いんじゃないかしら」

「そいつは嬉しいな。ま、あいつの口からは絶対に出てこない言葉だろうけどな」

「それはそうよ。ランスは稀代の女好きだもの」

 

 

 

 黒部はスラルと話した時の事を思い出す。

 到底信じられる言葉では無いはずだが、不思議とランスならばと納得している自分がいるのが分かる。

 そういう星の元に生まれた人間だと納得している自分がいる。

(まあスラルの話だとそれが何時なのかはわからねぇって事だしな。それに…例え俺がいなくても、何れは会えるだろ。何しろああいう奴だしな)

 ランスという男は非常に目立つ。

 だからこそ、ここで離れても必ず会える…黒部はそう思っている。

「何だ。男のくせに俺様に妙な視線を向けるな」

「そんなんじゃねぇよ!」

 人間と妖怪、異なる種族が互いに顔を突き合わせる光景は人間にとっても、そして妖怪にとっても本来はあり得ぬ光景だ。

 だが今まさにその光景が目の前にある。

(人間に呪いをかけた妖怪と共にいるというのに、皆はもう妖怪と共にいるのを当たり前の様に考えている…これもランスさんの持つ何かなのでしょうか)

 綾は黒部と軽く言い合っているランスを見る。

 ランスの意図は今はもう完全に理解している。

 呪い付きを解放するというあの言葉は、間違いなくランスの言葉だろうし、何よりも手っ取り早く戦力を集めるための手段だ。

 普通はそんな考えは思い浮かばないだろうし、そもそもあの妖怪王にそんな発言を出来る人間なんていないだろう。

 だがそれによって助かった人間はいるだろうし、結果的に人間と妖怪の溝は少し埋まったように思える。

 それこそが、この人間と妖怪の混成軍なのだから。

 綾が少し笑っていると、ほのかと彼女が率いる忍者達が戻って来る。

「黒部殿、ランス殿。藤原が動きました」

 ほのかの言葉にランスと黒部が同じような笑みを浮かべる。

 それはこの戦場には全く似つかわしくない楽しそうな不敵な笑みだ。

「ようやくか…」

「フン、あんな連中は俺様の一撃でぶっ潰せばいいだけだ」

 そしてランスと黒部が先頭に立ち動こうとした時、

「ちょ、ちょっと待つモリよ! 目的は分かってるモリね!?」

 平森盛が慌ててランスと黒部を止める。

「いくら黒部殿とランス殿が強くても、流石に限界があるモリよ! だから…絶対に無理はしないで欲しいモリよ」

 森盛にとっては今から行われる戦いは決戦では無い。

 前哨戦みたいなものであり、今この場で決着がつくはずが無いと考えている。

 そして、この戦いはランスとスラルの持つ戦況を一撃で覆す事が出来る技が前提で行われるものだ。

 森盛としてもまだ見ぬ技に運命を託すのは避けたかったが、当の妖怪王黒部が認めたとあってはもうそれしか手段は無いのだ。

「…普通に考えればいくら黒部殿とランス殿があっても勝てない戦いモリ」

 軍師である森盛にはこの圧倒的な戦力差は埋めるのは難しいと思っている。

「でも…二人は諦めないモリね」

「当たり前だ。やってもいない内に諦める馬鹿がいるか」

「生憎と俺はそんな簡単には諦めねぇよ」

 二人から帰ってきた言葉に森盛はむしろ安心する。

 それでこそ、自分がこの地に来た意味があるというものだ。

「よーし、行くぞお前等!」

「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!」」」

 ランスの言葉に全ての妖怪、人間が雄叫びを上げる。

 ランスと黒部を先頭に、黒部軍は動き始めた。

 

 

 

 藤原家陣営―――

「さて…ようやくか」

 鎧を着込んだ藤原石丸が遠くに立つ黒部軍の旗を見る。

 最初の黒部軍とのコンタクトから少し間が開いてしまったが、ようやく戦う準備が出来た。

 最もそれは相手も同じの様だが、それでも石丸は負けるだなんて微塵も感じていない。

 頼りになる家臣、友に恵まれ、さらには妖怪退治のスペシャリストも自分達に協力を申し出てくれた。

 そして何よりも、このJAPANに色々な知識や術を授けてくれた月餅も居る。

「真正面からでも勝てるとは思うが…なるべく犠牲は出したくないな」

「そうだな」

 早雲の言葉に石丸は頷く。

 この戦いの勝敗は本来であれば決まりきっている。

 領土、数において藤原家は黒部率いる妖怪軍を凌駕している。

 人材に関しては相手も相当なモノだろうが、それも負けている訳では無いと石丸は信じている。

 だからこそ…妖怪王黒部を含めた、全ての人材が欲しいとも感じている。

 今の石丸の目標はJAPANを統一し、争いを無くす事だが彼には誰もが持つ野望がある。

 それこそが『世界最強』と『世界征服』だ。

 子供みたいな事を考えているのは百も承知だが、男として生まれたからには誰もが一度は夢見るものだと思っている。

(俺は確かにこれまではJAPAN最強と言われていた…だが)

 自分は最強の人間…その考えは異人の男によって打ち砕かれた。

 あの異人は間違いなく今の自分よりも強い。

 純粋な剣の腕ならば自分が一歩…いや、半歩くらいは上だろうが、根本的な部分では自分は負けているような気がする。

(もしあの異人が本気で俺を殺す気だったのなら…)

 あの面倒くさそうな異人の顔は今でも忘れることが出来ない。

 自分に全く興味を持っていないという事は、これまで生きてきた中では一度も無かったような気がした。

 だからこそ、あの異人を真正面から打ち負かし、配下に加えたいと思っている。

「問題は俺にその器量があるかどうか…」

「何を言っている。お前ならば出来るさ…と、言いたいところだがあの異人はな…」

 早雲は勿論石丸が何を考えているかは分かっている。

 今でもあの異人…そして妖怪王すらも自分の配下にしたいと考えているのだろう。

 そして当然の如くその異人…ランスという男を調べさせたのだが、これもまあとんでもない人物としか言いようが無かった。

 勿論恐るべき相手だという事は分かっている。

 黒部は確かに人から恐れられる大妖怪なのだが、それでも『妖怪』という種族の王に過ぎなかった。

 しかし今ではその妖怪王黒部を帝にするべく動いている『人間』がいるのだ。

 そして妖怪王黒部の軍をここまで大きくさせて来たのは、あの異人という報告があがっている。

(そんな事が俺に出来るかと言われれば絶対に無理だろうな…あの異人は俺達とはかけ離れた人間だ。俺はそれに石丸が飲み込まれそうで怖い…それになあ…)

 何よりも早雲が危惧しているのは、あの異人が極度の女好きだという事だ。

(石丸も十分すぎる程女好きだからな…)

 英雄色を好む、その言葉は例外なく石丸にも当て嵌まり、多数の女を囲っている。

 勿論その女性達からも文句は出る事も無く、上手く行っているのだが…それを考えるとやはりあの異人は危険すぎる。

 石丸の器量を持ってしても、あの異人は手に負えない…その考えは今でも変わっていない。

(何よりも…危険すぎる)

 あの異人は妖怪王という存在があったにしろ、何も無い状態からJAPANの民すらも味方につけた。

 石丸でも同じ事は出来るとは思うが、世界にそれほどの力を持つ英雄が二人いるというのは、早雲にとっては危険だと感じている。

 石丸も、あの異人も互いに互いの下に付くなど認めないだろう。

 その場合は、命の取り合いで決着を付けるしかない。

「石丸、俺は今でもあの異人と争うのは危険だと思っている。忘れるな。お前の本当の相手は妖怪王黒部だという事を」

「分かってるさ。あの異人に関しては完全に俺の我侭だ。やる事は忘れていないさ」

 そう言う石丸の顔は、普段にも増して真っ直ぐな目をしている。

 その目を見て早雲は一先ずは安心する。

 目的を見失ってはいない、実にいい目だ。

「さて…こちらも動けるか?」

「準備は万端だ。いつでも仕掛けられる」

 早雲の言葉に石丸は頷く。

(とうとうここまで来たか…)

 ただの一領主の息子…それも本来は跡継ぎでは無かった自分がとうとうここまで来る事が出来た。

 このJAPANの英雄的な存在であった平清盛を倒し、三種の神器のうちの二つを手にする事ができた。

 後はただ一つ、帝リングを手にすれば自分は帝となる事が出来る。

 そのためには妖怪王黒部、そしてあの異人を倒す以外に道は無い。

(そして…俺は大陸へ出る)

 それは昔から月餅に言われていたこと。

 JAPANとは大陸の一番東に存在し、非常に小さい島国だという事だ。

 流石の石丸も、天満橋を超えて大陸へと行った事は無かった。

 だからこそ、石丸は大陸に大いに興味を持った。

 もし自分に家督が回ってこなければ、そのまま大陸で一旗上げていたかもしれないとも感じるほどに。

 そして一番は…大陸に居ると言われる『魔王』と『魔人』という存在。

(それらを倒して初めて人は本当の意味で争いから解放される…)

 JAPANにも当然魔物の脅威はあるのだが、それは大陸よりは格段に低い。

 極東の地には流石に魔物将軍を初めとした魔軍は押し寄せては来ない。

 魔王ナイチサも確かに残虐で、人の命を虫ケラのように扱う非道な魔王だが、そこまで人間に興味がある訳でもない。

「こんな所で躓いて世界の統一が出来るかってんだ」

 藤原石丸はただ只管に前を見る。

 全ては人類統一という目的のため、石丸は前へ進む。

「よーし行くぞ! まずは妖怪王を倒す!」

「「「おおおーーーーーー!!!」」」

 今ここに、人類を統一できる器を持つ英雄の戦いが始まる。




石丸は実際に月餅をどう思っていたのか…その逆もまた気になります

個人的な見解ですが、ランスと石丸は分かり合えない存在なのでは無いかと思います
石丸がモテモテで沢山の妻がいる時点でランスと仲良くなれる未来が全く見えない
ランスは確かにアレな性格ですが、エロゲの主人公だし仕方ないのかもしれません

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