ランス再び   作:メケネコ

117 / 367
NC戦国ランス⑭

 妖怪王黒部と藤原石丸の帝レースは徐々にではあるが石丸たちが優勢になっていった。

 それは当初に石丸が予想した通り、兵の質であったり錬度の差だった。

 確かにランスと黒部、そしてレダは個々の戦闘では非常に強い。

 一度やられても復活し、直ぐに戦線に復帰できる妖怪も恐ろしく厄介だ。

 だが、それでも有利なのは最初から一つの軍団として動けている藤原家だった。

「ラーンスあたたたたーーーーっく!!」

 ランスの一撃に無数の鬼達が吹き飛ぶ。

 人を超える鬼ではあるが、それでも今のランスには足止めにしかならない。

 が、藤原家にとってはその足止めだけで十分なのだ。

「次の鬼を出せ! 足軽も前へ! 陰陽隊! 目標は異人だ!」

 将軍の声に、相手は一糸乱れずに隊列を整える。

 最初はランスの一撃の前に混乱していたが、もうその混乱も無い。

「むぅ…疲れたぞ」

「ランスが疲れたと言うなら相当ね。で、どうするの?」

 放たれる陰陽の攻撃をレダが魔法と持ち前のガード能力で防ぐ。

「っと…流石にここまで数が揃うときつくなって来たわね」

 エンジェルナイトのレダは物理にも魔法にも高い耐性を持つが、流石にこの数が相手だと人間相手でも辛くなってくる。

 そもそもエンジェルナイトは魔人級の強さを持ち、さらには空を飛ぶというアドバンテージを持つ上に何よりもその膨大な数で地上を浄化するのだ。

 その力は、かつてこの世界のメインプレイヤーだったドラゴンを絶滅寸前にまで追い込むほどだ。

 しかし今のレダは一人のため、下手をしなくても人間にやられる可能性は十分ある。

 実際に、ランスは二人のエンジェルナイトをあっさりと撃退してしまっているのだから。

「ランス、ここはもう例の計画を実行するしか無いと思うわよ。タイミングが遅くなれば、その策が嵌ったとしてもジリ貧になってしまうわ」

「うーん…まあスラルちゃんがそう言うならそうするか。よーしお前等、とっとと退くぞ」

「おう!」

 ランスの声に、妖怪の重鎮である窮奇が返事をする。

 これまではランスと黒部が一緒に動いていたが、今は分散させている。

 その分攻撃力は落ちるが、相手も完全に部隊を二つに分けているので意味はあるのだろう。

 ただ、相手の物量がランス達の想像を遥かに超えているのだ。

「また例の巨大な黒い鬼が出たって話もあるし。無茶は絶対ダメよ」

「わかっとるわ。どーせ最後に勝つのは俺様なんだからな」

 スラルの言葉にランスは少し面白くなさそうにしながらも、レダと共に窮奇の背に乗ると一目散に逃げ出す。

 その撤退は、かつてヘルマンの名将である、レリューコフ・バーコフを唸らせた時と同じように最低限の損害で見事に撤退する。

「どうしますか!?」

「追うな! あの異人を無理に追う必要は無い! 我等の目的はあくまでも妖怪王黒部だ!」

 藤原軍は目標を妖怪王黒部と定めている。

 確かに異人は恐ろしく強いが、必ずしも倒す必要は無い相手だ。

 だが黒部は帝候補のため、どうあっても倒す以外に道は無い。

 無理に異人とはぶつからない、これが藤原家のやり方だ。

 そのやり方は功を奏し、異人の攻撃をある程度抑える事に成功している。

「後は石丸様が黒部を倒すだけなのだが…そうもいかぬだろうな」

 将軍の顔には決して明るさは無い。

 確かに被害こそ抑えてはいるが、それでもまだ妖怪王黒部を倒す事が出来ていないのだから。

 

 

 一方の黒部はランス以上に押されていた。

「ったく! しつこい奴等だぜ!」

 黒部の爪が相手を切り裂き、その巨大な腕で吹き飛ばし、その巨躯で相手を蹴散らす。

 しかしそれでも相手の兵は退かない。

 それどころか、果敢に黒部へと向かって来る。

(最初に比べれば随分と被害が少ねえな…対策を練ってるって訳か)

 黒部ももう決して人間を見下してはいない。

 ランスを初めとする自分を帝にしようと戦っている人間、そしてランス以外に自分とまともにやりあえた藤原石丸。

 そしてその藤原石丸と帝にしようと自分に戦いを挑んでくる人間。

 確かに個々の強さでは妖怪は人間に勝るが、この集団での戦いは人間が有利だと思い知った。

 隊列も何も無く、ただただ好き勝手に暴れる妖怪に対し、人間は統制を保ち色々な戦術で黒部を追い詰める。

「ククク…まさかここまで楽しめるたぁな。中々楽しくなってきやがったぜ!」

 黒部はその後も暴れ続けるが、それでも相手は中々減らない。

「黒部さん! ランスさんが撤退したようです! こっちも退きましょう!」

「ランスがか!? 分かった! おうお前等! 退くぞ!」

 エルシールの言葉に妖怪、そして人間の部隊は一斉に撤退を始める。

 その撤退の指揮をしているのは綾とエルシールであり、特にエルシールは意外にも妖怪を上手く統率して見せている。

 そのまま無事に撤退は出来たものの、既に状況は最悪と言っていい段階にまで来ていた。

 数で劣るのは分かってはいたが、まさかここまでの差があるとは黒部も思っていなかった。

 自分を帝にしようとしてくれる妖怪達が団結し、更には人間の協力が有って尚自分達は押されている。

 もしランスが居なければ、もっとあっさりと帝レースは終わっていただろう…黒部の敗北という形で。

 妖怪軍、そして妖怪王が撤退していくという事実に藤原軍は雄叫びを上げる。

「やったぞ!」

「将軍! 今すぐ追撃の時です!」

 退いていく黒部を目に、己の部下が進言する中、将軍は難しい顔をする。

「駄目だ! 相手は総崩れして逃げ出した訳では無い! 今ここで追撃しても各個に撃破されるだけだ!」

 今回も黒部軍は戦いに敗れて無様に敗走をしている訳では無い。

 大将の黒部を相手に大きな被害こそ出していないが、同じように黒部に対して有効な一撃を与えている訳では無いのだ。

 名のある武士が確かに黒部の体を傷つけはしたが、それは黒部にとっては大した一撃では無かった。

 その傷はあっさりと塞がり、武士は黒部によってあっさりと首を跳ね飛ばされた。

「それに…相手は平森盛だ。奴の事だ。数々の罠があってもおかしくは無い」

 一度は平家の名軍師である平森盛の罠に嵌り、調子に乗って落ち武者狩りをしていた軍が一度壊滅させられた。

 そのため、この撤退も平森盛の罠ではないか、という疑いが将軍の頭からは落ちる事は無い。

「今は着々と相手の陣地を削っていければそれでいい。無茶をする必要は無い。それにそろそろ石丸様も戻ってこられる。それからが本番だぞ」

「はっ!」

 将軍の言葉は徹底され、黒部達への追撃は行われない。

 自分達の主が妖怪王を倒す…これが一番の目的だからだ。

「本音を言うと…妖怪はともかく、同じJAPANの民とこれ以上戦いたくは無いからな。早雲殿が相手に呼びかけているのもそうした思いからだろう」

 相手の力を削ぐためには決して戦の強さだけが全ての決める訳ではない。

 色々と策略を巡らせて相手を離反させようとしているようだが、残念ながらそれは実を結んでは居ないようだった。

「しかし思ったより相手の結束も固いようですね」

「ああ…向こうについたのは呪い付きの家族を持つ者が多いらしいからな。もし裏切れば、再び呪い付きにされると怖がっている…と早雲殿も言ってたからな」

 呪い付きという言葉に皆の顔が沈む。

 呪い付きを解除するためには、呪いをかけた妖怪を倒すしかないのだが、中には己の命を使って呪いをかけてくる妖怪もいる。

「私の同僚も…呪い付きの親を治すために黒部の元へと行ってしまいましたから」

 藤原家の中でも呪い付きの家族を持つ者は少なからず存在していた。

 北条家が何とかしようと色々と試みてはいたが、やはり妖怪の呪いとは一筋縄にはいかないようだ。

「まったく…本当に妖怪の呪いは厄介なものだ。だが、その妖怪王が呪いを解く様に命じたおかげで助かっている者もいるのは事実だ…」

「やりきれませんね…でも石丸様が帝になれば…」

「ああ。このJAPANから争いは消え、妖怪の呪いに苦しむ者もいなくなるだろう。そのためにも、何としても石丸様を帝にする!」

「「「おおーーーーーーっ!!!」」」

 武将の言葉に皆が勢いづく。

 確かに、決着の時は着々と迫っては来ていた…それも誰もが意図せぬ方向へ。

 

 

 

 黒部軍の陣営では、ランスと黒部、そしてレダを除いた皆が疲れ顔をしていた。

 それもそのはず、数で劣る黒部軍は確実にその領土を減らしていっていた。

 確かにランスと黒部がいる部隊は勝利するが、その他の部隊はそうもいかない。

 敗戦に敗戦を重ねる結果となっていた。

「皆、大分疲れてきたみたいね。いや、ランスと黒部とレダは別みたいだけど」

「フン、だらしない奴等だ」

 スラルの言葉にランスが鼻を鳴らす。

「…ランスさんが異常なんです」

「ランスさんは本当に人間ですか?」

 そんなランスを恨めしそうに綾と与一がジト目で睨む。

 ランスとレダは自分達よりも遥かに多く出撃しているが、まだまだ余裕すらも感じられる。

「うーむ、俺様もすこぶる調子が良いな。まあ俺様ならば当然といった所か」

「ランス殿とレダ殿の余裕はいいモリが…やっぱりもうジリ貧モリね」

 疲れ切った皆を見て、軍師である平森盛が卓上の駒をいじりつつ唸る。

 ここまでは予想通りと言えたが、ランスと黒部の対抗策を見つけるのが森盛の予想よりも大分早い。

 やはり藤原家の力は森盛の予想を上回っているようだ。

「そうなると例の作戦を実行するしか無いモリが…問題はどうやってそこに誘き寄せるかモリね」

 この場に居る全ての者は、ランスとスラルの例の技をこの前見せてもらった。

 それは確かに一発逆転となる技を持ってはいるが、同時に制御できなければ自分達を巻き込む諸刃の剣で有る事も理解していた。

 だからこそ、万全の態勢で作戦を実行する事が必要となる。

「がはははは! そんなのは簡単だ!」

 ランスが何時もの様に自身に満ちた笑い声をあげる。

 その声を聞いて、黒部は嬉しそうにランスを見る。

「今度はどうするってんだ?」

「うむ、こういのはストレートにやればいい。黒部、お前が石丸に対して挑戦状を叩き付ければいいのだ」

「挑戦状?」

 ランスの言葉にレダが首を傾げる。

 エンジェルナイトである彼女には、どうしてもそういった人間の心理等が今一つ分からない。

「あの藤なんちゃらとかいう奴は黒部とは自分の手で決着をつけたいと考えているからな。だったらそれを利用してやればいい」

「利用って…具体的にはどうするの?」

 ランスの言葉の意味が今一つ分からず、スラルも首を傾げる。

「実に簡単だ。この場所で決着をつけるだの何だのと言えば良いのだ」

 ランスの指の先には、かつてランスが毛利元就から挑戦状を受けた地が広がっている。

 その地では、毛利元就を始めとする毛利てる、吉川きく、小早川ちぬといった者達と総力戦があった。

 結果としてランスは勝利し、毛利家を制圧する大きな一歩となった。

「待ってくださいランスさん。確かに黒部さんが書状を送れば乗って来るかもしれませんが、それだと私達は間違いなく負けますよ」

 エルシールの言葉は最もで、現状での勝利は正直言って望めないと誰もが思っている。

 ましては総力戦となれば、戦力的に向こうが圧倒的に有利なのだから。

 だが、そんな意見をよそに平森盛の目がギラリと光る

「成程…それはシンプル過ぎて考えていなかったモリ。それなら問題無くこちらの思惑通りに事が運べそうモリね」

「ちょっと待ってください。それに藤原石丸は乗るでしょうか?」

 綾の疑問は最もであり、普通はこんな申し出は罠だと考えるだろう。

 ましてやここに平森盛が居る事は既に知られている。

 相手が無視する可能性は非常に高い…普通ならば。

「…大丈夫だと思いますよ。藤原の殿様は何よりも一騎打ちが好きだったりしますから。それに決闘とか決戦とかいう言葉も好きですからね」

 与一の何処か呆れたような声に、綾は思わず与一の方を見る。

「与一…あなた、昔藤原家に仕えていたの?」

「んー…まあ。一応那須家の嫡男でしたから。呪いを受けた時から追い出されましたけど」

「そうだったんですか…」

 突然のカミングアウトに綾は眉を落とす。

 名家の者が呪い付きになる…それはそれで家を追い出されるには十分な理由になる。

 ましてや嫡男となれば尚更だろう。

「全く…突然妖怪が告白してきたから、散々貢がせてからネタばらししたら凄い怒っちゃって…それで呪いをかけるなんて酷いと思いませんか」

「「「「「それはお前(あなた)が悪い(です)」」」」」

 その場にいる誰もが与一に突っ込みを入れる。

「完全に自業自得じゃないですか」

「いやねえ…中には僕が男でも構わんとか言って来る人も多くて」

 エルシールの言葉に与一は過去を思い出しているのか、腕を組んでうんうんと唸る。

「僕も流石にその時は女の人の方が良かったから、叩きのめして晒し者にしてたんですけど…女になったらなったで今度は無理矢理手籠めにしようとする輩が増えて大変だった」

 与一は懐かしむようにうんうんと頷いているが、

「綾殿…もしかして与一殿が家を追い出された理由は…」

「…言わないで上げましょう。彼にも名誉というのがあると思いますから」

 綾とトオトヨは顔を見合わせてため息をつく。

「それからも中々大変でした…そこで妖怪王の噂を聞いて、いい加減この体を何とか出来ないかと思ったら…僕は本当の愛を見つけたんです」

 そこで与一はうっとりとした顔で頬を染める。

「うがーーーっ! そんな目で俺様を見るな!」

 ランスキックが炸裂し、与一は椅子ごと倒れる。

「あんっ。素直になれないランスさん…萌・え♪」

「ストーップ! 剣を抜いたら駄目よランス!」

「お、落ち着けランス!」

 とうとう剣を抜き放ったランスを黒部とレダが必死に止める。

 二人には分かる…ランスは本気で与一を叩き斬るつもりだと。

「スリープ!」

「ぐがっ!」

 スラルがランスの剣から顔を出し、強制的に眠らせる。

 こういう精神系の魔法がランスに通用するのは有り難い。

「という訳で黒部が直接書くのが重要だと思うわよ」

「俺が直接書く…って言ってもよ。俺は生まれてこの方字なんて書いたことはねえぜ」

 妖怪である黒部には、人と同じ字を書くという習慣はが無かった。

 そんな黒部に、スラルは非常にいい笑顔を向ける。

「練習しなさい。いや、しろ」

「お、おう…」

 今のスラルにはあの地獄でハニー達にコロッケを作っていた姿が重ねられる。

 あの時の迫力はまさに魔王…黒部は直接魔王に会った事は無いのだ、その圧力は凄まじい。

「そういう事なら任せるモリよ。こう見ても書道には自信があるモリも。文章に関しては黒部殿が思うように書けばいいモリよ。元となる文章は用意するモリよ」

「…マジか?」

 割とノリノリの平森盛と、ギラリと目を光らせているスラル。

 そして自分の部下の妖怪ですらも何かを期待するように自分を見ている。

「…マジか」

 黒部はため息をついて、自分の手には明らかに不釣り合いであろう筆を手に取った。

 

 

 

「違うモリも! 一体これは何を書いているモリか!? 誰がるろんたを描けと言ったモリか!?」

「これのどこがるろんただ!?」

「どこからどう見てもるろんたモリよ! ここはこう書くモリよ!」

「お前こそ何で沢山のにょ~を描いてんだよ!」

「これのどこがにょ~モリか!?」

 黒部と森盛が激しい言い合いをしているのを、ランスは呆れた顔で見ていた。

「で、何をやっとるんだ?」

「ああ…黒部はロクに字を書いた事無かったみたいでね。しかも森盛が随分とやる気になってりみたいでね」

 レダもランス同様に呆れた様に黒部達を見る。

「ふーん…まあどうでもいいか。どーせしばらくは動けんだろうしな」

 ランスは一瞬で興味を無くすと、これからの事を考える。

 これからというのは勿論JAPANの事…などでは無く、誰とやろうかという実にランスらしい考えだ。

「レダもいいがエルシールもいいな…いや、いっそ3Pでもいいかもしれんな」

「どうでもいいけど、口に出して言う事でも無いと思う。ちなみに私は構わないけど」

 レダは口元に少し笑みを浮かべている。

 それは以前にランスに襲い掛かってきた小馬鹿にしたような笑みでは無く、何かを期待するような笑みだ。

「…お前、実はセックスが気に入ってるだろ」

 そんなレダを見て、ランスは少し考え込む。

 レダとの付き合いも大分長くなってきたが、レダは基本的にランスを拒まない。

「まあ…そこそこ」

 少し顔を赤く上気させているレダを見て、ランスは何時もの様に笑みを浮かべる。

「がはははは! レダも大分素直になって来たな! よーし、ここは初めてレダとやった時の様にやるとするか!」

「初めてやった時って…」

 ランスの言葉にレダは少し複雑な顔をする。

 最初にランスに犯された時は、自分の同僚のエンジェルナイトと共に無様にも人間に負けてしまった時だ。

(その時は確か…ああ、そうだ。ネットで動けなくなってから犯されたのよね…)

 ハッキリ言って、エンジェルナイトが人間に負けた挙句に犯される…これはエンジェルナイトにとってこの上ない恥だ。

 事実自分も、そして同僚もその事は誰にも言えなかったし、あの時見つけたはぐれ悪魔も結局見逃す形になった。

(…あの時からかなぁ。私が変な感じになっちゃのは)

 ランスに犯された時、何と自分はもう少ししてもいい…そんな事を口走っていた。

 実際に少し名残惜しいものを感じていたし、第1級神ALICEにランスを守る事を命じられた時は、陳腐な言葉かもしれないが運命みたいなものを感じた。

「がはははは! そういう訳で早速するぞ! お、エルシール! お前も来い!」

「ええっ!?」

 ランスはそのままレダとエルシールを抱えて自分の魔法ハウスへと駆け出す。

 その日、魔法ハウスには一日中レダとエルシールの嬌声と、ランスの笑い声が響き渡った。

 

 

 

「で、結局は出来たのか?」

「おお…ランスか。まあ何とかな」

 次の日、ランスがレダとエルシールを存分に堪能したランスが上機嫌で会議として使われているテントへと足を運ぶと、そこには憔悴した様子の黒部が座っていた。

 黒部が指差した先には、彼が書いたと思われる書状が置かれている。

「…何で大量のにょ~とクロメが書かれてるのだ」

「字だよ字! スラルと森盛の奴に一晩中書かされてたんだよ!」

 憔悴した様子の黒部は、突然立ち上がるとランスに詰め寄る。

「おいランス…スラルは本当は脳筋なんじゃないのか?」

「たまにそう思うこともある。基本的にドジだしな」

 常にかっこつけていたが、自分のマントを踏んづけてこける等、生前の彼女を知っているランスとしては黒部の言葉に同意せざるを得ない。

 確かに色々な知識もあるし、基本的には頭は良いのだが、ランスはスラルからほのかに漂うチルディ臭を感じていた。

「まったく…おかげで徹夜しちまった。まあ徹夜自体は別にいいけどよ…頭を使って徹夜するなんざ初めてだぜ。頭が悲鳴を上げてるぞ」

「お前も十分に脳筋だからな。普段頭を使わないからだろ」

「それは同意するけどよ。まあお前は普段から女の事で頭がいっぱいだろうしな」

「どーいう意味だ」

 憮然とするランスを見て黒部は笑う。

「とにかく書状は出来たぜ。こっからどうすんだ? 俺からの書状って奴を相手は受け取るのか?」

 人間同士の事には今まで興味が無かったため、こういった事も黒部には良く分からないのだ。

 そんな黒部を見てランスは何時ものように笑う。

「大丈夫だろ。なんか日本人はそういった所は妙に律儀だからな」

 ランスがJAPANを統一した時も、宣戦布告からの戦争と必ず手順を踏んでいた。

 上杉の時も、謙信をこちらに差し出して和平を図ろうと使者をよこしたりもした(勿論ランスはそのふざけた使者を殺したが)。

「問題は誰を使者にするかだが…」

「それは私に任せてくれませんか?」

 ランスが考えていたとき、綾が入ってくる。

「私は北条早雲とは顔馴染みです。私が行けば、決して無碍にされることは無いでしょう」

「うーむ…まあそれが一番手っ取り早いか。じゃあ綾、行って来い」

「はい。それでは…」

 綾は黒部の書いた書状を大切に筒に詰め込むと、そのまま早足で駆けていく。

「いいのか、ランス。捕われたりはしないのか?」

「大丈夫だろ。おいほのか、レダお前達もついていって綾が捕まるような事があったら助けて来い」

「承知しました」

「私も? まあいいけど」

 かなみのようにランスの事を見ていたほのかと、ランスに散々犯されにも関わらず余裕の有りそうなレダが頷く。

 そしてそのまま二人も姿を消した後、

「よーし、後は奴等が罠にかかるのを待つだけだな。おい黒部、俺様が頼んだ物は用意は出来てるんだろうな」

「ああ、それは抜かりねえよ。それにしても…お前は本当に面白いことを考え付くよな」

「俺様からすれば当然の事なのだがな」

 黒部の言葉にランスは渋い顔をする。

 ランスはこの世界では非常に不便な思いをしている。

 何しろ、普段からランスの周りにあったのものがこの世界に存在していないのだ。

 世色癌、竜角惨、帰り木…ランスにとっての冒険の必須アイテムとも言えるこれらのアイテムも見つからない。

 帰り木はたまに見かけはするが、世色癌、竜角惨に関しては影も形も見当たらない。

 お帰り盆栽も探してはいるが、それもまだまだ見つからない。

 常に冒険を好むランスとしては、それらのアイテムがどうしても必要となる。

 ランスは冒険のおいては決しては手は抜かないし、必要な事だとその体が理解している。

 そしてもう一つ…ランスにはある目的がある。

「しかし俺様も知らないモンスターが色々といるものだな。これはこれで楽しみだな」




時間は少しは作れるようになりました
が、まだまだ予断を許さない状況でして…
それなのに話が全然進んでいないというジレンマ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。