ランス再び   作:メケネコ

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NC戦国ランス⑯

 ランスが選んだ決戦の地…そこでは今まさに一触即発の状況にあった。

 妖怪王黒部が藤原石丸に決戦の書状を送り、藤原石丸もそれを受けた形となる。

 藤原石丸は最後の決着をつけるべく、決意を固めていた。

「決戦か…柄にもなく武者震いがして来たな」

 これまでどんな敵と戦おうとも、これほどの高揚感は無かった。

 それだけの価値が目の前の敵には存在している…石丸にはそれが何より嬉しかった。

 別に戦闘狂という訳では無いが、それでも強敵を打ち倒すと言うのは石丸にとっては達成感を感じさせるものだった。

 だからこそ、藤原家の当主となる前は旅をして色々な強敵と戦い、色々な物を探し出していたのだ。

「しかし本当にいいのか? 全戦力を持ってきた訳では無いのだろう」

 横に立つ早雲が少し不安そうに石丸を見る。

 今回の決戦については石丸の要望で全兵力を持ってくることはしなかった。

 そこが早雲には不安要素となってしまっていた。

「普通に戦っていれば普通に勝っていたはずだ。だがお前は敢えてこの手段を選んだ…俺には理解出来ないな」

 もしあそこで黒部の決戦の要望を無視したとしても、誰も石丸を責める事は無いだろう。

 妖怪王黒部はそれほど強力な存在であり、尚且つ妖怪の王…言わばJAPANの敵なのだら。

「それだけ…黒部と異人に認められたいんでしょ?」

 何時の間にか石丸の横に立つ巴が何時もの様に笑いながら石丸の肩を叩く。

「ああ。これからの俺の夢のためには、多くの人が…いや、人だけじゃない。あらゆる者の協力が必要だ。俺は俺の力で妖怪王と異人に認められたいんだ」

 石丸の夢である世界の統一…そして魔王の撃破はそんな容易い道では無い。

 目の前の妖怪王と異人に認められずして、これからの偉業を達成する事は出来ない…そう感じさせるほどに。

「妖怪王はともかく、異人は難しいと思うがな…」

「そうか? 意外と話が合うと思うんだけどな」

 石丸の言葉に早雲はため息をつく。

 藤原家の当主になってから、石丸は有能な者はどんどん引き立てていった。

 これまで自由奔放に過ごしてきた石丸からは考えられないような事だが、早雲にはそれは好ましく映った。

 その甲斐あって、藤原家は今まさにJAPANを統一する最後の一歩にまで踏み出せたのだから。

「何度も言うが…俺はあの異人だけはお前とは分かり合えないと思っている」

「随分とあの異人を嫌ってるな…いや、買ってるのか?」

「両方…なのかもしれないな。何しろ相手はお前よりも早くに妖怪王に認められた人間だからな」

 異人は何よりも…誰よりも早く、妖怪王と対等の関係を築いた。

 それは石丸にも達成できたか分からないし、もしかしたらこの先誰も達成できないかもしれない偉業だ。

 確かに妖怪の中には人間と共に共存している者もいるが、その大半は人間に敵意を持っていたり、悪意を持っている者も多い。

 だが、異人はそんな妖怪達からも認められているとも聞く…それこそが早雲が異人を恐れる理由だ。

「早雲は怖いのね。その異人の持つ何かが」

「ええ…俺は石丸こそがこの世界を統べる人間だと思っている。石丸以外にそんな事が出来る奴は居る訳が無いとも。だが…もし異人がその器を持っているとしたら…」

 妖怪王に認められ、妖怪を率いて自分達と戦う…それだけでなく、その剣の腕も異常だ。

 その腕前は恐らくは藤原石丸と互角だろう。

 まさに藤原石丸と双璧を成す存在…もし相手がもう少し早く行動していれば、今の圧倒的有利な状況は作れなかったかもしれない。

「私は興味が出て来たわ。石丸が配下に迎え入れたくて、早雲が恐れる異人を」

 巴の目がギラリと輝く。

 その巴を見て石丸と早雲はため息をつく。

 石丸が良き人材を集めて活用しようと人間なら、巴はその良き人材にちょっかいを出したいというタイプだ。

 巴に目をつけられて、大変な目にあったのは一人や二人では無い。

 だが、それでも彼女の人を見る目もまた確かであり、彼女がちょっかいを出した者は皆大成している。

「さて…相手がどう動くかだな」

 石丸が黒部軍を見る。

 かつてない強敵を前に、自身が高揚するのが分かる。

 そんな時1体の赤鬼が入ってくる。

「黒沢殿」

 それは早雲が使役している鬼の内の1体である黒沢と名乗る鬼だった。

「セキメイノジュンビハイイノカ?」

「セキメイか…彼を使うのは相当に神経を使うのだがな…」

 月餅が早雲に与えた鬼であるセキメイ…その力はまさに絶大で、早雲の力を持ってしてもその制御は困難を極める。

 普通の赤鬼や青鬼といった鬼を複数使役するより、セキメイを使役する方が神経を使う。

 ただし、セキメイの力はまさに絶大で、この前の戦いでは妖怪達を見事に蹴散らして見せた。

 それだけの強さを持っているのがセキメイなのだ。

「しかし凄いな…セキメイには俺でも勝てるか分からないな」

「それは嫌味か? 俺がセキメイを制御するのにどれ程神経を使っているか…」

 早雲のため息に、石丸と巴は顔を見合わせて笑う。

 天才と呼ばれ、月餅から陰陽に関するあらゆる術を仕込まれた男だが、それでも苦労している。

「しかし鬼というのは本当に凄いな…前に地獄へ行った時も鬼には苦労したが、セキメイはその中でも飛びぬけている。それとも鬼というのは皆そうなのか?」

 石丸の言葉に黒沢は首を振る。

「セキメイハトクベツダ。ムカシハセキメイトオナジクライ…イヤ、セキメイヲウワマワルオニガイタ」

「セキメイより上の鬼がか…」

 その言葉には早雲が一番驚く。

 確かに鬼は人間よりも遥かに強いし、首を刎ねられてもまだ少しの間生きている程の生命力を持っている。

 早雲もセキメイ以上の鬼は存在しないと思っていたが、どうやら上には上がいるらしい。

「その鬼はどうしてるんだ? まだ生きているのか?」

 石丸の質問に黒沢は首を振る。

「ヤツハスデニジゴクニイナイ。サケトオンナトアラソイヲモトメテジゴクカラデテイッタ」

「なんか石丸みたいな鬼ね…」

「そうだな…」

 巴と早雲が顔を見合わせて頷く。

 そんな二人を見て石丸は苦笑いを浮かべるしかない。

 大体合ってる…それが石丸自身も分かっているからだ。

「黒部軍が動きました!」

 その時伝令が入ってくる。

 その瞬間、石丸たちの顔つきが戦士の顔に変わる。

「よし! 俺が出る! 早雲、後ろは頼むぞ」

「任せておけ。お前は何としても妖怪王黒部を倒せ。異人はセキメイで足止めする」

「私も行くわ。その異人を何としても見てみたい」

 石丸達が戦場に向かう。

 その様子を見て、黒沢は地獄から消えた鬼の事を思い出す。

 あの鬼は確かにセックスが好きで酒が好きでなによりも争いが好きな鬼で、人間の言う所の変態だ。

 だが、それでも鬼の中では親父と呼ばれて慕われていた。

「レキシントン…ジュノー…オマエハイマドコデナニヲシテイルノカ…」

 

 

 

 黒部陣営―――

 ランスが藤原軍を見ながら不敵に笑う。

 その顔には勝利の二文字しか見えていない。

「ランス。私の準備もいいわよ。この時のために魔力を練ってきたからね」

 スラルはその顔に笑みを浮かべている。

 彼女自身にも、今の自分にどれだけの才覚があるかどうかを試してみたいのだ。

 魔王であった時は全てが自分の思い通りいなってきていた。

 無論臆病で無敵結界を望むまで、誰よりもこの世界を恐れていた。

 だからこそ、この世界を思う存分に生きてみたい。

(ランスと出会わないとこんな思いも湧かなかったでしょうね)

 使徒を拒んだばかりか、魔人になる事すらも拒んだ人間。

 そんなランスだからこそ、一緒に居て楽しいのだ。

「で、準備は出来とるのか」

「問題無いわよ。全部仕込んである」

 ランスの言葉にレダが答える。

 ここ最近はランスの策を実行するために、色々と忙しかった。

 エンジェルナイトなので人間を遥かに超える体力を持ってはいるが、こんな作業はした事が無かったので変に疲れてしまった。

 しかもその後でランスの相手もしなければいけないので、更に疲労が溜まってしまった。

「オーケオーケ。だったら後は奴等をぶっ潰すだけだな」

「しっかし人間ってのは色々と考えるもんだな」

 黒部も楽しそうに笑いながらランスの横に立つ。

 黒部にとってもこれは賭けに等しい戦いではあるが、今の状況を心から楽しんでいる。

 人間に疎まれ、命を狙われていた時とは違うスリルを感じている。

 ただただ黒い感情だけを胸に暴れていた時とは違う。

 こうまで自分がわくわくするなど思ってもいなかった。

「俺はその辺は全然だな」

「まあお前は見るからに頭を使わなさそうだな」

「頭の固さには自信があるぜ」

 ランスの言葉に黒部は笑う。

 ランスもそんな黒部に対して鼻で笑い立ち上がる。

「そろそろ行くぞ。おいお前等、予定通りに動けよ」

「任せとけ。お前こそヘマするんじゃねーぞ。お前が居ないと始まらないんだからな」

「誰に言っている」

 黒部の軽口にもランスは不敵な笑みを崩さない。

 ランスの言うとおり、全ては予定通りなのだから。

 

 

 

 そして運命の戦いは幕を開ける。

 ランスと黒部が率いる人間・妖怪の混合軍、そして藤原石丸が率いる藤原軍が激しくぶつかる。

 これが最終決戦と信じる石丸軍の士気は非常に高い。

 そして錬度に関しても石丸軍は黒部軍を凌駕している。

 が、それでも黒部軍は崩れない。

「足軽隊前へ! 弓隊射てー!」

 それは一つに軍師である平森盛の存在も大きい。

 軍師として高い技能を持つ森盛が、個で人間に勝る妖怪を指揮しているのだ。

 矢次に放たれる指示も、これまでの訓練の通りに上手くやっていけている。

 何よりも、妖怪達は心から黒部に帝になって欲しいのだ。

 その決意が、人間の指示にも従ってみせていた。

「弓隊、撃て!」

 与一の指示で一斉に弓が放たれる。

 その中でも与一の弓の威力はずば抜けており、その弓は鎧を着こんでいる人間をも貫いて見せる。

 が、与一の顔は晴れない。

「…やっぱりこの程度では止まらないか」

 普通与一の弓の腕を見れば、多少なりとも混乱は起きていたが、流石は鍛えられた藤原の軍、直ぐに体勢を立て直してこちらに向かって来る。

 もしこれだけの勢いがある藤原の軍が与一率いる弓隊に突っ込んで来れば、自分は成す術も無く蹂躙されてしまうだろう。

 それだけの力と勢いが藤原軍には存在している。

「でもその藤原を個人で押さえる…レダさんは本当に凄い」

 しかしそんな藤原を一人…では無いが、僅かな手勢で相手の勢いを完全に殺している部隊が居る。

 それがレダ率いる部隊だ。

 彼女は確かに指揮能力に関しては凡庸であると言えるかもしれない。

 しかしそれでも藤原軍は彼女に足を地につける事すら出来ていない。

 それがレダという女の強さだった。

 事実前線では勢いのあるはずの藤原軍が、レダによって押さえられていた。

「…で、この程度?」

 レダはその剣を肩に担ぎながら藤原軍を見る。

「く…この異人、強い…」

「化物!?」

 黒部軍には妖怪王黒部と、異人ランスという人間こそが最大の障壁と認識されていた。

 実際に黒部軍は指揮系統が不十分で、妖怪達や一部の突出した人間こそが脅威だった。

 逆に言えば、その突出した者達をどうにかすれば勝利を収めるのは難しくなかった。

 だからこそ、ランスや黒部といった強者には負けても、戦略的には勝利を収めてきたのだ。

 だが、こうして目の前に黒部、ランスという強敵と同じくらいの敵が目の前にいる。

「我こそはなかと…」

「エンジェルカッター」

「「「うぎゃー!」」」

 名乗りを上げてレダに向かって行こうとした武士がレダの魔法で切裂かれる。

 その周囲に居た武士も纏めて切り裂かれ、その屍をさらす。

「次は?」

 レダの言葉に藤原の兵士達はただ遠巻きに見ているだけだ。

 その鉄壁の防御に加え、剣の腕、そして魔法と全てが高水準なのだ。

 それ故に近づくのも難しいだけでなく、近づいたとしてもその剣で斬り伏せられるだけだ。

 それも当然、彼女はドラゴンや魔人とも戦う事が出来る、神が創ったこの世界の番人のようなものなのだから。

 そのレダに対して立ち塞がる集団が現れる。

「我々が相手になろう。美しき異人よ」

「あら、私は妖怪じゃないわよ」

 それは源頼光を中心にした、一流の妖怪ハンター達だ。

「頼光殿!?」

「この者の相手は我らでないと務まらないだろう」

 頼光は刀を構えてレダを睨む。

 以前に窮奇を倒そうとしたところで邪魔をした異人。

 その強さはまさに異常であり、これまで数多の妖怪を退治してしてきた自分達が手も足も出なかった。

「またあんた達? まあ誰が相手でも私は構わないけど」

 レダの目には何の感情も浮かんでいない。

 ただ、目の前にある障害を排除するだけ、そんな機械的な目を向けるだけだ。

 エンジェルナイトであるレダは人間に対して特別な感情は持っていない。

 全ての人間は創造神ルドラサウムの玩具であり、全て…魔王や魔人も含めたこの地上の物は全てが神を楽しませる為の道具なのだ。

 ほぼ全ての神…人やカラーから神になった者以外は皆そんな感情を持っているだろう。

 それはレダも例外では無い。

「逃げるのであれば私は構わないわ。無意味に人を殺すつもりも無いしね」

 だが、レダは別に人間を無暗に排除しようとは思っていない。

 自分の今の任務はあくまでも人間であるランスを悪魔から守る事なのだから。

(…まあこんな戦いに駆り出されてる時点で私も完全に染まっちゃてるようなものだけど)

 この戦いは本来であれば自分には全く無駄で、関係の無い戦いだ。

 だが、それでも今のレダはその無駄な戦いをしている。

 そしてそんな自分が決して嫌いでは無い。

「異人! 何としても貴様を倒す!」

 自分に啖呵をきる人間に対してレダは薄く笑う。

 それはどこまでも酷薄で冷酷な笑み。

 だが、レダにはそれが似合う。

「来る…というのであれば、その命をあの方の元へと送ってあげるだけだもの」

 

 

 

 別の戦場では、北条綾が武士を率いて藤原軍と戦っていた。

「行け! 怯むな!」

「「「おおぉぉぉぉーーー!!!」」」

 綾の声に合わせて人が、そして妖怪が声を上げる。

 綾が率いるのは人間と妖怪の混合軍だが、それは不思議と不協和音を奏でる事無く一丸となって戦っていた。

 彼女自身、特別な力が無い事は分かっている。

 北条の家に生まれながら、自分には陰陽師としての才能は無かった。

 だからと言って疎まれていた訳でも無いし、あのまま北条に残ったとしても何も問題無く暮らせていただろう。

 政略結婚の道具となっていたかもしれないが、恐らくはその前に藤原石丸が天下を統一するだろうとも感じていた。

(それが今はこうして妖怪王の下で石丸殿と戦っている…奇妙なものですね)

 全ては自分の親友であるまくらのため…そのためならば、どんな事でもするつもりだ。

 何も悪くないまくらを勝手な都合で死なせる訳には絶対にいかないのだ。

 その強い意志を持って綾は藤原軍とぶつかる。

 綾の部隊は藤原軍とも互角に渡り合う。

 その時、綾の前に一人の女性が現れる。

「あら、久しぶり。綾さん」

「巴殿…」

 そこに居たのは先に綾が出会った女性、藤原巴が立っている。

 以前に出会った着物姿ではなく、鎧を着こみその手には薙刀が握られている。

 そして何よりも違うのはその身に纏う空気だ。

 以前に会った時は得体の知れない雰囲気があったが、今の彼女は違う。

 その顔には少し薄い笑みが浮かべられているが、その空気は非常に冷たく感じる。

「異人…ランスという人は何処にいるのかしら?」

「…ランス殿ですか」

 巴の言葉に綾は眉を顰める。

「ええ。石丸を退けたという異人の力…是非とも見てみたくて」

 そう言う巴の顔は何とも晴れやかな物だった。

 先程の空気が嘘のように弛緩し、その目はキラキラと輝いている。

「…あまりお勧めはしません」

 それでも綾の警戒心は薄れない。

 こうして戦場で対峙してようやく目の前の女性の強さを理解してしまったのだ。

 間違いなく自分より強い、と。

「凄い女好きなんだって? 石丸とどっちが上なのかしらね?」

 そう言いながら巴は薙刀を綾に向ける。

「いずれ嫌でも会えると思いますよ」

 綾も巴に刀を向ける。

 相手は自分よりも格上だが、それでも今自分は退く訳にはいかない。

 妖怪王黒部を帝にする…それが今の彼女の夢なのだから。

 

 

 

「どうした!? もっとかかって来やがれ!」

 戦場の一角では、黒部軍の大将である黒部が藤原軍相手にまさに獅子奮迅の働きを見せていた。

 その力はまさに絶対的な暴力とも言うべき存在で、百戦錬磨の石丸軍の兵士ですら防戦一方に追い込むほどだ。

「く…これが妖怪王の力か!」

「つ、強すぎる…!」

 黒部の爪が鎧ごと武士を切り裂き、その拳が足軽を貫き、その巨体からくる体当たりが鬼を吹き飛ばす。

 まさに敵無し、黒部を止める者は誰も居ないように思われた。

「久しぶりだな妖怪王」

「お前か…石丸」

 そこに藤原軍の総大将である石丸が姿を見せる。

 その顔には実に楽しそうな笑みが浮かんでいる。

「はっ! まさか総大将自らが俺の前に来るとはな。いい度胸と言うべきか馬鹿と言うべきか」

「それはお前もだろ。俺もお前も、後ろで見てるなんて性に合わないって事だろ」

「違いねぇ」

 石丸の言葉に黒部も笑う。

 互いに後ろで引っ込んでただ見ている自分が想像出来ないのだ。

「黒部、まさかお前からあんな書状が届くなんて思ってみなかったぜ」

「そうだろうな。俺も手紙なんてものを書いたのは初めてだよ。まあ中々楽しかったぜ」

「じゃあ今度こそ決着をつけようぜ」

 石丸と黒部は顔を見合わせ笑う。

 その笑いは本当に楽しそうであり、同時に非常に恐ろしい笑みだ。

 そして二人の男は再びぶつかり合う。

 

 

 

「がはははは! 雑魚は死ねーーーっ!!」

「ぐわぁぁぁぁーーー!」

 ズシャーーーー!!

 ランスの剣が武士の刀と鎧ごと両断する。

 普通であれば、そんな滅茶苦茶な強さを持つ者に誰も近づこうとしないだろう。

「怯むな! 何としても異人を倒せ!」

「おう!」

 しかし、藤原軍は全く怯まずにランスに向かっていく。

 その様子を見て流石のランスも少し辟易してきた。

「うーん、なんかめんどいぞ」

「まあ相手からするとこれが決戦なんだから無理も無くない?」

 ランスの言葉にスラルが剣の中から言葉を放つ。

 それはこの戦場には似つかわしくないのんびりとしたものだ。

「撃て撃てー!」

 動きを止めたランスに向かって、大量の矢が飛んでくる。

「フン」

 しかしランスは慌てずに飛んでくる矢を避け、当たると判断したものはその剣で打ち払う。

 それでも当たりそうなのは、スラルは魔法バリアを貼って防ぐ。

 矢が飛んでこなくなると同時にランスは駆ける。

「ラーンスあたたたたーーーーっく!!」

 そしてその弓隊に向けて必殺の一撃を放つ。

「足軽隊!」

 しかしその弓隊の前に足軽が立ちはだかり、ランスの一撃に対して壁となる。

 その一撃で足軽の体が吹き飛ばされる。

「むっ」

「これは…」

 その様子を見てランスとスラルが眉を顰める。

 本来のランスの一撃であればその必殺の一撃を食らえば人間はひとたまりも無いはずだ。

 確かに一部の者は吹き飛ばされ、打ち所の悪い人間はもう動かないが、それでも立ち上がる者も多い。

「魔法バリア…いや、違う。もしかしてこれも陰陽術とやらの力?」

 魔法に詳しいスラルがそれを見てあたりをつける。

 生憎と自分には陰陽の力はかけらも無いが、それでも理解できることはある。

「なるほどね。陰陽術でも魔法と同じ事が出来るという訳か」

「面倒だな」

 ランスは以前に同じ様な事を見ている。

 北条家を侵略した時に、大量の陰陽師と戦った。

 その時と同じような光景が目の前にある。

「攻撃してくる気配は無い…という事は、ランスの攻撃を止めるために全力で防御しているという訳ね」

 黒部にしろ石丸にしろ、最終的な決着の方法は相手の大将を倒す事だ。

 逆に言えば、相手は態々ランスを倒す必要は無いのだ。

 スラルが感心したとき、大きな咆哮があがり、巨大な何かが近づいてくる。

「な、何だ?」

「これは…」

「ウォォォォォ!!」

 ランスに向かって向かってきたのは、1体の巨大な鬼だ。

 それはランスがこれまで見てきた鬼とは根本的に違う。

 何よりも、その纏っている空気が違う。

「鬼…でもこれは…魔人級じゃない」

 スラルも流石にこの巨躯の黒い鬼には驚きを隠せない。

 魔人を生み出してきた者だからこそ分かる、相手の強さ。

「フン、何が魔人だ。俺様は魔人を何体もぶっ殺してきたんだ。敵ではないわ!」

 ランスは剣を構えて不適に笑う。

「がはははは! 貴様も俺様の経験値にしてくれるわー!」

「グォォォォォ!!」

 ランスと巨躯の鬼―――本来の歴史において戦う事が無かった伝説の鬼、セキメイとの戦いが始まろうとしていた。

 

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