話しは少し巻き戻り…石丸から決戦の承諾が得られた後。
「この辺がいいモリね。相手を引き寄せやすく、尚且つ相手が最も戦いやすい地モリよ」
ここは見通しが良く、だだっ広い広場だ。
野戦には向いているだろうが、罠を設置するにはあまり良い場所とは言えず、かと言って伏兵が身を潜められる場所でも無い。
こんな所で戦えば間違いなく数に勝る石丸軍が勝利する…そんな場所だ。
「しかしランス。本当にこんな所でいいのか? 俺はそっちの知識は無いけどよぉ」
黒部はその巨体で周囲を見渡す。
このJAPANにこんな広大な地があるのかと思わせる程広い。
生憎と黒部は自分が策を練る事に向かない事を思い知っている。
そんな黒部でも、数に勝る藤原家に対してここで戦うのは不利だと思っている。
「構わん。こんな所だからいいんだ。場所が狭いと酷い目に合うからな…」
ランスは少し苦い顔で過去を思い出す。
そんなランスの顔を見て、スラル、レダ、エルシールが同じような顔で頷く。
「アレはちょっとね…ケッセルリンクが居なかったら危なかったわね」
「貴重な帰り木を無駄にした瞬間だったわ…」
「もう二度と思い出したくありません…」
それはランス達がまだJAPANに来る前、ラ・バスワルドとの戦いの後での事。
ランス達はあれから少しの間普通に冒険を続けていた時、あるダンジョンに立ち寄った。
勿論ランス達ならば何も問題は無かったが、それでも冒険というのは予想外の事が多々起きるものだ。
無数のモンスター…それもランケンや雷太鼓、お断りマンやベベター等の強敵をバトルノートが指揮していた事があった。
狭い部屋でモンスターに挟まれた時、ランスとスラルはこの状況を打破するために一撃を放った。
その一撃は確かにモンスターの群れを消滅させ、危機は乗り越えた。
が、問題なのはその後、洞窟がランスの一撃に耐えられず崩壊し始めたのだ。
落ちてくる岩は幸いにもケッセルリンクが居たため無敵結界で何とかなったが、もし彼女がいなければ帰り木の使用が間に合わず、ランス達は大岩に潰されていただろう。
「強すぎるのも問題だな」
「どちらかと言うと制御できない私達が未熟なだけだと思ったわ…」
ランスは自分が強すぎるのが悪いと思い、スラルは未だにその技を制御できない自分達が悪いと責める。
(まあ一週間に一度くらいしか使えないから、そもそも特訓するのすら大変なんだけど…)
何しろこの技はまさに切り札だ。
それも一度使ってしまえば、一週間は使えない上に、少しの間スラルが役立たずになるという代物。
この技を使うくらいなら、スラルが戦闘に参加して魔法を使った方が効率が良い…そうとすら感じられるものなのだ。
まさに一撃必殺であり、それこそ魔人や神、悪魔が相手で無ければスラルも無暗に使おうとは思えない。
「でもこれだけ広いと十分ね。問題となるのはどうやってここに誘き寄せるかなんだけど…」
スラルは自分でも頭が良い方だと思っているし、実際にその知識量は幾度となくランス達を助けてきた。
(私…意外と力押しの傾向があるのよね…)
それは無敵結界を手に入れた反動か、スラルは物事を力押しで何とかするという考えが根付いてしまっていた。
勿論それはスラルが世界最強の魔王だった事も原因ではあるのだが。
「その辺は私もさっぱりね」
レダに関しては考えるのも無駄だと言わんばかりに堂々としている。
実際エンジェルナイトに策など必要無い。
その無限とも言える数でこの世界を蹂躙すれば良いだけなのだから。
確かに中には自分達を倒せる者はランスを初めとして多くいるだろう。
だが、エンジェルナイト…神が本気を出せば例え魔王だろうとどうする事も出来ないのだ。
「私も思いつきませんね…」
エルシールも周囲を見渡して首を捻る。
ランス達と行動を共にして色々事を学んだつもりだが、こうした戦争に参加するのは初めてだ。
自分に人を率いる才能があるのにも驚いたが、流石に戦争で知識を出せる程の技能が有る訳でも無く、何も思いつかないのが本音だ。
「そんなの単純だ。やられた振りをして奴等を誘き寄せればいい」
「そうモリね。これまでの藤原家のやり方を考えれば、叩けるときは叩くという傾向があるモリよ。だったらそうするのが一番効率がいいモリよ。ついでに相手の油断が狙えるモリね」
「………」
「何モリか?」
ランスの言葉に平森盛が同意し、注意深く周囲を観察しているのをランスは憮然とした顔で見る。
「可愛い女の子ならともかく、お前みたいな奴が言うのはなんかむかつく…」
「相変わらず失礼モリね…ランス殿は」
「はいはい、そこまでよランス。こうした軍師が必要なのはあなたも分かってるでしょ」
スラルの言葉にもランスは憮然とした態度を崩さない。
「大体可愛い女の子が俺様の側に居ないのがおかしいのだ。俺様の計画では既に専用のハーレムが出来ているはずだというのに…」
「あれだけ女性に手を出してまだ足りないモリか…」
ランスの言葉に平森盛は呆れた様にため息をつく。
英雄色を好む、それは森盛の父清盛も同じだったが、ランスはそれ以上だ。
「ランスも落ち着きなさい。それよりも今はここでどうやって相手を倒すかよ。ただ誘き寄せただけじゃ足りないかもしれないし」
「フン、まあ少しは真面目にやってやるとするか」
ランスは自分を見ているスラルの頭に触れようとして、その手が通り過ぎる。
通り過ぎた手を見て鼻を鳴らすと、その周囲を見る。
ランスの目から見ても何も無い、ただのだだっ広い平野だ。
ここはまさにランスがかつて毛利元就と一戦交えた地なのだが、ランスは勿論それには気づかない。
「スラルちゃん。全力でアレをやるとしたらどれくらいになる」
「うーん…下手すればここ一面に被害が出るくらいにもやれると思うけど、ランスも私もあの時より強くなってるから具体的にどれくらい…とは言えないわね」
スラルの言葉を聞いてランスは考える。
何も相手を全滅させる必要は無く、藤原石丸を倒せば済む話なのだ。
ランスが藤原石丸を直接倒す…というのはスラルも難色を示していたが、それよりもまずは勝利が必要なのだ。
負けては何にもならないし、藤原石丸をランスが倒した時に帝レースがどうなるのかは、その時になって考えればいい、それがランスのスタンスとなっていた。
正直そこまで余裕も無い…それはランスも十分に理解していた。
「おい、お前の作ったアレはどれくらい持つ」
ランスが見たのは先日ランスに頼まれて捕獲ロープの試作品を作った大きな蜘蛛の妖怪だ。
蜘蛛の妖怪の纏め役とも言える大蜘蛛の妖怪は少し考えると、
「二日くらいしか持たない。それを過ぎてしまえば粘着性が無くなる。縄に染み込ませたものとは違う」
「二日か…まあそれだけ持てば充分だろ」
その言葉を聞いて、ランスの顔が楽しそうに歪む。
それを見てスラルもランスが何かを思いついたのだと確信し、目を輝かせてランスの顔を覗き込む。
「何か思いついたの?」
「がはははは! 当然だ。よーしお前ら俺様の指示通りに動け!」
「このくらいでいいのか?」
「うーん…どうかしら? 私の計算だとこの深さで合ってるんだけど…私は直接触れないのよね。レダ、どんな感じかしら」
「穴の深さとこの変なのの大きさを比べると…うん、これくらいの大きさだとすっぽり嵌るんじゃないかしら」
綾が穴を掘り、そこに奇妙な白い物体を入れていく。
深さはそれほど深くも無く、成人した人間の膝辺りまでの深さの穴だ。
それをなるべく広げていく。
人間の妖怪も一丸となってこの作業に没頭していた。
例外は勿論見ているだけのランスと、力仕事には不向きなエルシールだ。
「ランスさんは手伝わないのですか?」
「こういう地味な仕事は俺様がやる事では無い。こいうのは下っ端がやるのが当然だ」
「…まあ間違ってはいませんけど」
エルシールはランスの言葉にとりあえずは納得する。
実際に貴族等の地位の高い者がこのような事はまずしないだろう。
「ランスー! これくらい?」
スラルがランスを呼ぶ声が響く。
「スラルちゃんが良いと思ったらそれでいいぞ!」
「わかったー!」
ランスはスラルの声に応えると、スラルはそのまま作業に没頭していく。
こういう細かい作業はスラルにとってはお手の物で、きっちり正確に穴を広げていく。
どれくらい時間が経っただろうか、ランスはそのままエルシールの膝枕で横になっている。
「ぐがー! ぐがー!」
大きなイビキをかいて寝ているランスの頭をエルシールは優しく撫でる。
「…ランスさん、これまで随分と忙しかったですからね」
エルシールはランスがどれだけ戦っているかを知っている。
面倒臭がりのランスではあるが、黒部と共に最も戦場に立ったのがランスだ。
知らず知らずに内に疲労が溜まっている事は誰もが知っている。
「忙しいにも関わらず、する事はするんですけどね」
気楽そうに眠るランスの頬をエルシールは起こさないように軽くつつく。
どれほど忙しくても、どれほど疲れていてもランスは決して女性と夜を共にするのをやめない。
むしろHをする事で元気になっていってるのではないかと錯覚してしまう程だ。
「本当に…遠いところまで来てしまいましたね…」
自分の父親が言われなき罪をなすりつけられ、そこをランスとレダとスラル…そして魔人ケッセルリンクに助けられた。
そしてカラーと出会い、魔人カミーラとも出会った。
もし父親が捕まらなければ、自分はどうしていただろうか…という事を考えてしまう。
父の薦める相手と婚姻し、家を残すために子供を産んでいたかもしれない…そんな思いが頭をよぎる。
「JAPANに来て…戦争をして…」
まさかこんな所に来た挙句、戦争に参加するなど考えもしない。
それもこれも今自分の膝の上で呑気に眠っている男の所為だ。
とんでもないトラブルメーカーで、この戦争も実質はランスが起こしたようなものだ。
「全く…人の気も知らないで」
エルシールは一度大きなため息をつく。
何だかんだ言っても、自分は彼に救われ色々な事を経験させてもらった。
そこだけはちょびっとだけ感謝してもいいかもしれない。
でも何回もHされているのだから、やっぱり感謝は必要無いとも思った。
エルシールが複雑な思いを巡らせていた時、
「ランスー! 終わったわよー!」
スラルの声が響く。
「ランスさん、終わったそうです」
エルシールはランスを揺すると、
「む…何だ」
ランスは意外にもすんなりと起き上った。
「ランスー! こんな感じでどうかしらー!」
「今行くからそんな大声を出すな…」
ランスはエルシールを伴ってスラルの所へ向かう。
そしてそのままその罠の部分を見渡す。
「…意外と少ないな」
「時間が足りなかった。我々が全力を出してもこれが限界」
それは確かにランスが希望を出した通りの罠となっていたが、想像してたよりも小さくなってしまっている。
「何とかならんのか」
「無理なものは無理」
蜘蛛の妖怪の代表であろう者にそう断言されると、ランスでもそれ以上言いようは無い。
「全く…お前は声は女なのにどうして可愛い女の子では無いのだ。それだけでも許せんというのに」
「そんな事を言われても困る。このナクアの何処が気にいらない」
「全部だ全部! どう見ても巨大な蜘蛛にしか見えんのに、声だけ聞くと美少女にしか思えん所だ!」
「私はメスだ。生まれつきの声に文句を言われても困る」
蜘蛛の妖怪―――ナクアに詰め寄るランスだが、当然の事ながらナクアからは何の表情も伺えない。
「そんな事よりもどうだ。いけそうか」
黒部が真剣な顔でランスを見る。
ランスもそれを受けてはか知らないが、何時もよりも真剣な顔…のように見える。
「………とーーーーーっ!!」
「もり!?」
突如としてランスが平森盛を蹴飛ばす。
森盛は白い粘液にうつ伏せで倒れる。
必死で起き上ろうとするが、粘液が身体に纏わりついて体を上げる事すらままならないようだ。
「お、起き上れないモリ…」
「まあこれくらいなら大丈夫か」
「大丈夫か、じゃないです! 何てこするんですかランスさん!? ああ…私の力じゃ助けられない…」
エルシールは非難するようにランスを見て、倒れている森盛を助けようとするが、そもそもエルシールの腕力では巨体の森盛を助ける事は出来ない。
エルシールがおろおろしている時、彼女の肩を優しく叩く巨漢の妖怪が現れる。
まるでたぬきの様に見えるその妖怪は、エルシールに向かってぐっと指で自分を差すと、そのまま森盛の腰帯を掴んでそのまま力任せに引き上げる。
「おおー…」
その様子にスラルは思わず幽霊の身でありながら拍手をする。
「…なんかこいつ見た事があるような」
ランスはその巨漢の妖怪…たぬーの妖怪を見てその体に起きた嫌な記憶がよみがえる。
それはマッサージと称した人体破壊行為。
「お、お前忠勝か!?」
巨漢のたぬーの妖怪を見て、普段は男の名前など覚えていないランスだが、流石にあれほどのインパクトを与えた妖怪の事は思い出した。
「………」
「違うでちよ。こいつは元康でちよ。ちなみにボクは段蔵でちよ」
たぬー―――元康の頭に乗っかっていた小さなたぬーがランスに挨拶をする。
「………半蔵?」
「段蔵でちよ」
「そういやランスにはまだ紹介してなかったな。たぬーの妖怪の元康と段蔵だ。中々強い奴だぜ」
黒部の紹介にランスは思わず徳川家の事を思い出す。
かなり特徴的な連中のため、ランスも流石に彼らの事を覚えていた。
この元康と段蔵と名乗る妖怪は、ランスが知る本多忠勝と服部半蔵によく似ていた。
「………(俺はやるぜ)」
「たぬーは妖怪でも相当に強いでちよ」
その二体の妖怪の前にランスは取り敢えず無言だ。
(男は気に入らないって話だったが…大丈夫か?)
ランスは女性以外には相当に厳しいため、少し不安を感じた黒部だったが、
「まあいい。だったらせいぜい俺様の役に立て」
ランスはそう言うだけだ。
「…少し意外ね。ランスの事だから男はいらんって言いそうなものだけど」
「意外と可愛いものが好きだとか…?」
「アレ、可愛いの?」
「…可愛くありませんか?」
レダはエルシールの言葉に少し考える。
ランスと同程度の身長だが横にも大きい元康と、非常に小柄な段蔵を見てそれは可愛いというのだろうかと疑問に思う。
(いや…私の同僚には人間の作ったデザートが可愛くて好きって言ってたのもいるし…でもこれは可愛いと言うのだろうか?)
と、そんな事を考えていた。
「あー、酷い目にあったモリ…」
森盛は粘りついた白い粘液を剥がしながらもその目はギラリと輝いている。
「でもこれは使えるモリよ。後はここに上手く奴等を誘き寄せる手段を考えればいいモリ」
勿論森盛には考えがある。
伊達に何度も藤原石丸と戦っていた訳では無いのだ。
(…だとすると、後は色々な仕込みモリね…黒部殿には腹芸は出来そうにないモリから…ここはやっぱり人を使うのが一番モリか)
平森盛は軍師だ。
そして軍師とは勝つためにあらゆる手段を考える必要があると思っている。
そのためには、己の大将すらも囮として利用する事も辞さない。
「スラル殿。後で人を…そして黒部殿に何時もついてる部下を集めて欲しいモリ。黒部殿には内緒で」
「…別にいいけど。ランスにも内緒?」
森盛は自分の部下を改めてランスに紹介してる黒部を見ながら、スラルに小さく耳打ちする。
スラルも森盛の知識や軍師としての才能は認めている。
その森盛が自分にだけ話すという事は、恐らくは黒部にも話せない事なのだろうと。
「ランス殿はあんまり関係ないモリ。でも、石丸の事は一番詳しいモリ。だから任せて欲しいモリ」
「分かったわ。じゃあ後でね。ランスには私から話しておくから」
「黒部は近づいてきてるのか」
「はい。藤原石丸を先頭にこちらへ向かってきています」
「順調ね」
ランスは見晴らしが良く、隠れる所が到底無いと思われる場所で黒部を待つ。
「ランス、私達は配置につく。後は任せる」
ほのかの報告を聞いてランスの側に控えていたナクアとその配下の蜘蛛の妖怪達が一斉に動き出す。
それを見てランスは今隠れている場所…地中から頭を出して様子を見る。
するとナクアを始めた妖怪達が予め用意されていた穴に潜ると、そこから足を使って器用に土を被せる。
「スラルちゃんも準備はいいか」
「ええ。もう始めてる」
スラルは意識を集中し始める。
この技はまだまだ未完成な上、敵だけでなく味方…それどころか使用者であるランスにも影響を及ぼすほどだ。
「魔法使い隊、やる事は分かっていますね」
「は、はい!」
ランスと共に隠れているエルシールを含めた魔法使い隊も、緊張の面持ちで声をだす。
今回の戦いでは魔法使い隊を出さなかったのは、敵にぶつけるよりもランスの一撃から黒部を守る意味合いが強い。
万が一もあってはいけないため、魔法使い達は全力でバリアを貼るのが仕事だ。
「ふぅ…」
エルシールも強い緊張から何度も深呼吸をし、意識を集中させる。
ランスが魔人と協力して神と戦った時は、足手纏いになる事から自分とパレロアは参加はしなかった。
しかし今回は違う。
人と人との争いであり、尚且つ自分は魔法使い隊という部隊を任されているのだ。
援護が主とはいえ、これまで何度か戦場には出てきたが、この決戦とも言うべき戦いには流石に緊張を隠せない。
「ほれ」
「きゃあ!」
唐突に胸を揉まれ、エルシールは小さく悲鳴を上げる。
「ラ、ランスさん! 何するんですか!」
慌ててランスの手を引き剥がし、顔を赤くしたエルシールがランスを睨む。
「落ち着け。お前が戦う訳じゃない。やるのは俺様だ。エルシールは俺様のかっこいい所を見てればいい」
「…緊張を解してくれただけだとは思いますが、他にやり方は無かったのですか」
「これが俺様のやり方だ」
エルシールの非難など何処吹く風という風にランスは笑う。
そして穴から少し顔を出すと、その顔には笑みが浮かぶ。
(………本当に楽しそう)
エルシールから見てもランスは、何処かこの戦いを楽しんでいるかのようにも見えてしまう。
決して戦闘が好き、という訳では無いのはエルシールも良く知っている。
だが確かにランスはこの瞬間笑っていた。
何時ものような不敵な笑みで、自分に出来ないことは無いと確信しているような笑み。
「来ました!」
ほのかの声が響くと、ランスは少し身を乗り出す。
するとランスの視界に黒部が跳んでくるのが見え、さらにはその耳に大きな声が入ってくる。
ランスは注意深く見ていると、黒部が着地をした後バランスを崩す。
見れば黒部の体は傷だらけで、満身創痍であるのは間違いなかった。
そして石丸達が黒部を追って、無造作に突っ込んでくる。
するとランスの計画通りに連中は罠にかかり、石丸は足首まで粘液に埋まり、他の者は粘液にとらわれて倒れる。
そして連鎖的に相手が倒れているのを見て、黒部が地に潜んでいた蜘蛛の妖怪達に指示を出すと、妖怪達が一斉に糸を吐き出す。
それによって更に動きを封じられるが、そんな中石丸だけは凄まじい剣業でその糸を全て断ち切る。
「がはははは! まんまと罠にかかったな!」
ランスはここが好機と見なし、穴から出てくる。
「ランス…!」
石丸が強い目でランスを睨む。
そこからは罠にかかった自分の迂闊さ、この状況を何とかしようと模索している姿が見て取れる。
「石丸様を助けろ!」
「陰陽隊は壁を!」
大将である石丸を庇うべく、足軽達が足をとられるのを承知の上で飛び出し、陰陽師達が必死に障壁を作ろうとしている。
だがランスはそれでも全く構わないと言わんばかりに剣を向ける。
その剣は既に青白い光を放っており、さらには空中で放電もしている。
「な、何だアレは…」
「た、大陸の魔法なのか…!?」
見れば藤原石丸ですらも驚きで目を見開いている。
「行くぞスラルちゃん!」
「準備はOK! 遠慮なくやっちゃいなさい!」
「がはははは! こいつで吹き飛べ!」
ランスは剣を構えて、勢いよく跳び上がり、剣を振り下ろす。
「ラーンス…あたたたたたーーーーーーっっっっく!!」
「雷神…雷光!」
スラルがランスの剣に与えたのは、魔法LV2が無いと使えない雷神雷光だ。
今まではライトニングレーザーが限界だったが、これまでのランスとスラルの成長、そしてここで決着をつけるという強い意志で全てをランスに託した。
そして振り下ろされたランスの剣から、凄まじいまでの青白い光が放たれたかと思うと、それはまるで意思を持つ獣のように藤原家を蹂躙する。
「やっぱりイメージって大事ね…!」
スラルは幽霊でありながらもランスの剣の中で思わず目を覆う。
それほどまでの凄まじい光が藤原の兵達を襲っているのだ。
稲光は無数の獣…まるで黒部の頭部ような形をとり、相手を飲み込む。
「ぎ」
悲鳴を上げることも出来ず、ランスの剣から放たれた獣が兵達を消し炭にしていく。
その一撃の前には陰陽師達のバリアも意味は無く、バリアごとその手を喰らい、飲み込んでいく。
そしてその光が藤原石丸をも飲み込もうとした時―――ランスは一人の女性が藤原石丸を力ずくで引き抜いて覆いかぶさる。
「む!」
ランスは一瞬その女性の顔がハッキリと見えたが、それは間違いなく美女だった。
「あ…」
だがランスの放った一撃は無常にもその女性と藤原石丸を飲み込む。
荒れ狂う獣は一つにまとまると、まるで天を突く柱となる。
「…あ、やばい」
それを見てランスは思わず声を漏らす。
「…やり過ぎた」
スラルも思わずあんぐりと口を開ける。
「全員防御! 気を抜くと死ぬわよ!」
「皆さんバリアを!」
「は、はい!」
レダを先頭に、エルシールたち魔法使い達が一斉に魔法バリアを貼る。
そして天を突いた柱が消えたと思うと、一斉に地を目掛けて落ちてくる。
それは相手だけでなく、技を放ったランスすらに牙を向く。
「やりすぎよ! ランス!」
レダはランスの前に立って盾を構える。
前にも同じ事があったが、今回は規模が違いすぎる。
荒れ狂う雷が何度も大地を蹂躙し、落ちてきた雷が大地に穴を開ける。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
魔法使いの悲鳴も落ちてくる雷の音にかき消される。
エルシールにはそれが永遠のように感じられたが、やがてその衝撃も落ち着いていく。
「…終わったのですか?」
エルシールが意を決して目を開いた時…目の前にあったのは荒れ果てた大地と、恐らく人であろう黒い炭が転がっているだけだった。
今回はランス達視点の話
いきなりネームドの妖怪が出てきましたが、これからの話の展開上どうしても必要でした
もうそろそろJAPAN編も終わるから技能とかはいらないかなぁ…
レギュラーになるという訳では無いですから
唐突ですが、第一次魔人戦争に参加した魔人は15人ですが、誰が参加したのでしょうね
まだまだ先の話ですが、それでも考えておかないと…道筋は出来てるんですけどね
ランス10を改めてプレイして、大きな壁になったので…
とりあえず
本編等から参加確定
ノス、レイ、レキシントン、パイアール、ガルティア、バボラ
参加が示唆されている
ジーク、ワーグ
不参加確定
ホーネット、サテラ、ザビエル、ますぞえ、カイト
不明
ケイブリス、カミーラ、ケッセルリンク、メディウサ、ハウゼル、サイゼル、シルキィ、メガラス、レッドアイ、バークスハム、アイゼル
ワーグに関しては何処かで非魔法使いの反旗に参加してたような事を聞いたような…もしかしたら間違いかもしれません
ワーグに関してはかなり好きなキャラだけに非常に悩みます…