ランス再び   作:メケネコ

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NC戦国ランス 22

 ランス達一行はすぐさま動き出す。

 まだ相手は動く事が出来ず、それはランス達とて同じなのだが、こうした少人数での行動はランスならではの行動力だろう。

「で、ランス。今からどう動くのよ」

 こうした戦略等にはまるで関心が無く、また必要としないレダがランスに尋ねる。

 確かにここに居るのはレダの目から見てもそこそこの腕で有る事は間違いない。

 問題なのは、これからどのように相手を倒すか、ただそれだけなのだ。

「そうですよランスさん。確かにこの少人数なら目立たないで移動は出来ますけど、移動方法の問題も有りますよ? 窮奇だけじゃこの人数を運べませんよ」

 与一も普段とは違い、至極真面目にランスを見る。

 確かに精鋭を集めて行動するというのは理解できるが、それを活かすためには移動手段、拠点の用意など考えればきりがない。

 勿論ランスが無策でそんな事をするとは与一は思っていない。

 だが、それでも気になるのは仕方がない事だ。

「フン、本来はお前たちなどに使わせる気はさらさらないのだが…おい、エルシール」

「はい」

 ランスに呼ばれ、エルシールが大切にしている袋から一つの小さな家の模型を取り出す。

 エルシールはそれを地面に置くと、その小さな家の模型がどんどんと大きくなっていく。

 それを見てランス一行を除いた全員が驚愕の表情でその家を見上げる。

「凄い…小さな模型が立派な家になった…」

 普段から表情を顔に出さないほのかも呆然とその家を見る。

 与一と綾も驚きで声も出ないようだ。

「…すげーな」

 窮奇も黒部からランスがこのようなアイテムを持っているのを聞いてはいたが、それでも実際に聞くと見るでは大違いだ。

 ランスは驚いている皆を尻目に魔法ハウスの中に入ると、バイクを持って魔法ハウスから出てくる。

「うむ、いいぞ」

「わかりました」

 ランスの声にエルシールは返事をして魔法ハウスに触れると、魔法ハウスが元のミニチュアサイズの模型へと戻っていく。

「戻った…」

「すごいでちね…」

 綾と段蔵が小さくなった魔法ハウスを見て感心したように声を出す。

 実際にこんな道具があるなど想像もしていなかったのだろう。

「………(俺はこれが気になる)」

「これは何?」

 元康とナクアはランスが取り出してきた奇妙な物体に注目している。

 確かに魔法ハウスには驚いたが、ランスが持ってきた物は魔法ハウス以上に訳の分からない物だった。

「全く…スラルちゃんがもっと早くに決断してればこんな苦労をする事も無かったんだぞ」

「それはごめんなさい。でも使うべきでは無いと思っていたのも事実なのよ。もしこれの存在が知れれば、人間達は挙って奪いに来るはずだもの」

 これまでランスが魔法ハウスとバイクをこのJAPANで使ってこなかったのは、これまでの経験から来る事だ。

 大陸ではこの魔法ハウスを奪うために何人もの命知らずの人間が襲い掛かってきた。

 スラルもこのJAPANでも同じ事が起きていたため、なるべく魔法ハウスの使用は控えてきた。

 黒部が妖怪達を集めてからは使っていない。

 無用な争いは避けるべきだったし、何よりも黒部の勢力が小さいうちは魔法ハウスが狙われる事で、黒部が狙われるのを防ぎたかった。

 ランスは非常に不満そうだったが、スラルが何とかランスを納得させたのだ。

「よーしお前等もとっとと準備をしろ。早速奴等をぶちのめしに行くぞ」

「いえ、準備と言われましても…」

「ランスは言葉が足りないのよね。ランスの過去の冒険歴は聞いたけど…一緒に居る人達は皆苦労してたのでしょうね」

 端的にした言葉を発しないランスに対してスラルは呆れてしまう。

 過去の冒険はスラルからすれば滑稽無稽な話であり、普通に考えれば嘘にしか思えないだろう。

 が、スラルは勿論ランスの言葉を全て疑っている訳では無い。

 それにセラクロラスのような神が関わっているのであれば尚更だ。

「とにかく移動の用意よ。私が話してた通りに準備して」

 スラルの言葉に皆が困惑しながらもその通りにする。

 ランスのバイクにはレダとエルシールが座り、窮奇の背には綾と与一が座る。

 残りの者は用意してあるうし車に乗り込む。

「がはははは! 行くぞお前等!」

 ランスは久々にバイクのスイッチを入れると、バイクが静かに震えたと思うとそのまま凄いスピードで走り出す。

「な、なんだありゃ!?」

 窮奇も驚きながらも急いでランスのバイクを追い始める。

「こちらも急ぐでちよ!」

「まーおー!」

 何故か御者台に座っている大まおーが大きなうし車を動かし、ランス達を追い始める。

 こうして最後の戦いが今始まった。

 

 

 

 藤原石丸の陣地―――

 そこでは兵士達が警備のために見回りをしている。

 ランス達はそれを遠目で見ていた。

「本当に仕掛けるんですか?」

 綾はそれを見ながら、腕を組んで偉そうにしているランスを見る。

「当然だ。そのためにここまで来たんだろうが。それとも何か言いたい事でもあるのか」

「あなたには色々言いたい事は有りますが…いくら小さい砦と言っても、この人数で大丈夫なのでしょうか」

 綾の言葉に与一がうんうんと頷く。

 確かにここにいるメンバーは黒部軍の中でも選りすぐりの猛者ではある。

 しかしこの数でここを制圧出来るかと言われれば疑問が出る。

「そんな下らん心配などするな。俺様のやる事に間違いは無い」

 綾と与一の疑問をランスは斬り捨て、意外にも慎重に隙を伺っているようだ。

 その顔には何時ものような笑みが浮かんではいるが、その目は獲物を狙う猛禽類のように鋭い。

「もう少しで交代の時間のようです」

「こちらに援軍が来るような気配も無いでちよ」

 偵察に出ていたほのかと段蔵が戻って来る。

「そうか。だったら交代が終わったら攻め込むぞ」

「了解。エルシールも魔法の用意はしていなさい。私はまだ初級魔法くらいしか使えないから、今回は少し足手纏いかもしれないけど」

「は、はい。分かりました」

 スラルはまだ魔力を上手く練る事が出来ない自分の腕を見て苦い顔をする。

 あの一撃は効果は大きいが、その後で自分が役立たずになってしまうのが一番の欠点だ。

 それならスラルの持つ大きな魔力の許容量を活かして、高レベルの魔法を使う方がよっぽど効率が良い。

 ランスの剣に魔法を付与するのは、まさに相手を一撃で倒す必要がある時の切り札として使用するしかない。

「へへっ…黒部が聞いたら羨ましがるだろうな」

「違いない。せいぜい黒部殿に自慢してやろう」

 窮奇とナクアからは存分に暴れられる高揚感に溢れている。

 この戦いに参加出来ない黒部が本当に可哀そうだと思っているほどだ。

「これだから戦闘狂はいやでちねえ…それに比べてたぬーは非常に温厚でちよ」

 そんな窮奇とナクアを横目で見ながら段蔵は呆れた様に声を出す。

「そうでちよね、元康」

「………(俺はやるぜ!)」

「…お前もそっち側でちか。元康」

 目を輝かせながら己の体を震わせている元康を見て、段蔵はその元康の頭の上でため息をつく。

「交代が終わったようです」

「よーし、突っ込むぞお前ら。作戦なんぞいらん。目につく奴等を全部ぶちのめせ!」

「了解です」

「おー!」

 ほのかの合図でランス達は一斉に突っ込む。

「行くぜ!」

「………!(突っ込むぜ!)」

「さーて、こちらはこちらでやるでちよ!」

「…行く」

 妖怪達がランスの後ろに続き、

「まあこれくらいならランスもやられる事は無いと思うけど…」

 レダも先頭を走るランスに呆れながらもその口元には笑みが浮かぶ。

「…今更ですけど、とんでもない事に巻き込まれていますよね…私」

 エルシールも意を決して突っ込んでいく。

 ランスの集めたメンバーは、臆せずに藤原の兵達に突っ込んでいく。

 今ここに、ランスと藤原石丸の第2の戦いが始まる。

 

 

 

 藤原家の砦―――

 藤原家は先の戦いでもまだ少しの余裕があった。

 黒部との決戦の時も、藤原石丸は敢えて全兵力の投入はしなかった。

 本来はそんな事をする必要は無いのだが、それが藤原石丸のある種の美学であった。

 しかし今回はこれが功を奏し、藤原石丸が率いる精鋭部隊の一部が全滅はしたが、それでもまだ兵力がある。

 今現在藤原石丸は治療中だが、先の戦いに参加しなかった部隊、そして先の戦闘で殆ど傷を負わなかった者達がこの砦を守っている。

 この砦の兵達も流石は藤原家の兵だけあり、そこにはだらけた空気は存在しない。

 だが、兵士達の心には少しの余裕が存在したのも事実だ。

 確かに一部の部隊は全滅してしまったが、全体的な被害はそこまで大きくは無く、むしろ被害が多かったのは黒部が率いる軍で有った事は明確だからだ。

 しかも藤原石丸はほぼ一騎打ちの形で黒部を撤退させ、北条早雲も強敵である異人を押さえる事に成功していた。

 大局的に見れば、あの決戦は藤原軍の勝利に終わったと言っても良い。

 最後には藤原石丸が命からがら逃げだしたのは事実だが、それでも死んでいないのだ。

 今は大将は動けないが、それは相手も同じ―――藤原家はそう思い込んでいた。

「どうだ。何かあるか?」

「いいえ、何もありません。静かなものです」

 この砦を任されている侍大将が自ら足を運び足軽を労う。

 そんな気さくなタイプの侍大将だからか、足軽の言葉もどこか軽い。

「そうか。滅多な事は無いとは思うが、それでもモンスターが襲って来る事もある。妖怪達は動けないとは思うが、油断は禁物だぞ」

「はっ!」

 そういう侍大将の声も何処か少し軽い。

 彼は平清盛の時との戦いから参加しており、それから妖怪王との戦いにも参加している。

 だからこそ、ようやく一段落がついた…その事が彼の気を少し緩ませていたのかもしれない。

 そして彼のもう一つの不運は、末端の部下をも気遣うその性格だったのかもしれない。

「…なんだ?」

 見張りの一人がこちらに向かって来る集団を発見する。

 一人の男を先頭にして、その後ろには妖怪の姿も見える。

「よ、ようか…」

 報告をしようとした男の額に矢が突き刺さり、男は声も上げる事無く絶命する。

 周囲がその異変に気づき、急いで合図をしようとしたとき、その首に手裏剣が突き刺さり合図を送る前に倒れる。

 その時になってようやく門番の足軽達はこちらに向かって来る集団に気づく。

 最初はそれが何なのか分からなかった。

 またモンスターが襲ってきたのではないか、そうも思ったがそれはこちらに凄まじいスピードで襲い掛かってくる獣のような妖怪の姿を見て己の過ちに気づく。

「きゅ、窮奇…妖怪だ!」

 妖怪窮奇…妖怪王黒部程ではないが、彼同様に人を襲い呪いをかけてきた大妖怪だ。

 そしてその横を走る男がこちらに向かって跳び上がって来るのが、彼が見た最後の光景だった。

「ラーンス…あたたたたたーーーーーーっく!!!」

 ランスの剣が光り輝き、凄まじい一撃が藤原軍を飲み込む。

「もう一発じゃー!」

 そしてそのまま返す刃でもう一撃ランスアタックが放たれ、今度は部下を労いに来ていた侍大将すら飲み込む。

 ランスアタックの衝撃に飲み込まれた侍大将は悲鳴一つ上げる事が出来ずに体がバラバラになる。

「行くぜ! 覚悟しやがれ!」

「倒す」

 ランスの一撃で侍大将が死んだことがまだ理解できていない足軽達に、窮奇とナクアが襲い掛かる。

 窮奇の爪が足軽達を切裂き、ナクアの前足が鎌のように足軽の体を蹂躙する。

「し、閉めろ! 門を閉めろ!」

 正気に戻った侍の指示で門が閉められる。

 混乱しながらもそのスピードは見事なものだが、まだ閉め切らない内に巨漢の妖怪が突っ込む。

「………(どっせい)」

 まるで体当たりでもするかのように肩口から突っ込んだ元康の重量に耐えられず、門を閉めようとしていた足軽が吹き飛ばされ、門が完全に開かれる。

「がはははは! お前ら全員ぶったーす!」

 その日、一つの砦が藤原家の領地から姿を消した。

 

 

 

 藤原家―――

「どうだ、石丸」

「ああ。特に問題は無いぜ。もう剣を握っても問題は無い」

 藤原家の城の中庭で石丸が剣を振るう。

 あの時異人の一撃を受け、その体にはまだ痺れが残っていたが、それもようやく抜けてきた所だ。

 その事を早雲は素直に喜んだが、肝心の石丸の顔に喜びが無いのが分かる。

「…黒部は何か言ってきたか?」

「いや、何も無いな…だからと言ってこちらから使者を出す訳にもいかない」

「そうだな…」

 石丸が気にかかっているのは、勿論自分を庇って恐らく黒部達に捕えられたか、殺されたかしたであろう巴の事だ。

 彼女と部下のおかげで石丸は今ここに立っている。

 石丸が最後に見たのは、異人に向かって行く彼女の姿だった。

「まあ…異人は女好きだと聞いている。殺されてはいないと思うぞ。ただ貞操に関しては保証は出来ないが…」

「だろうな…」

 異人が女好きである事は石丸達も把握している。

 だからこそ、もし彼女が生きていたとしても、その貞操は奪われてしまっているだろう。

「さて…ここからどう動く。これからの事を決めるのはお前だ。俺達はお前を信じてついて行くだけだ」

「そうだな。俺達の被害も少なくなかったが、相手の被害は俺達以上のはずだ。まずはそこをついて巴を交渉で戻せるかどうか試してみるか」

 今回の被害は藤原家よりも黒部達の方が大きい。

 妖怪はともかく、人的被害は相手にはどうしようもない事だろう。

 そこを付けば、僅かな休戦と共に巴の身柄を返してもらえるかもしれない。

 もし仮に死んでいたとすれば…その時は石丸本人としては不本意な結果になるが、敵討ちとして相手に攻め入った時の士気の向上になるだろう。

「試してみるさ。まあ時間はあるからな。さて、誰を動かすか…」

 石丸の言葉に早雲が頭を捻っていた時、

「大変です!」

 足軽の一人が慌ててこちらに向かって来る。

 その顔は真っ青であり、自分でも何が起きているか分からない…そういった事を思わせる顔だ。

「どうした。騒々しいぞ」

「まずは報告をしっかりしてくれよ」

 突然の事にも二人は慌てずに兵士を諌める。

 兵士も石丸に言われて少し落ち着きを取り戻したようだが、それでもその荒い息は止まらない。

「く、黒部軍が動きました!」

「何だと!?」

「まさか!?」

 その報告に石丸と早雲の顔は驚愕に染まる。

 今回の戦の藤原軍の利点はその数だ。

 自分達より遥かに遅く行動を開始した上に、人食いの妖怪であるという黒部には妖怪しか部下はいない…はずだった。

 確かに異人の行動は大きく、もしもっと早く帝レースが行われていれば、今の藤原家に有利はつかかなかったかもしれない。

 そして前の戦にて黒部達の被害は大きかったはずで、そんな簡単に軍事行動を起こせるはずは無い…というのが石丸と早雲の見解だった。

「どういう事だ。まさか黒部がもう前線に出て来たというのか?」

「い、いえ…出て来たのは黒部では無く、異人です!」

「異人…ランスか」

 異人と聞いて、石丸の顔が歪む。

 あの異人だけは本当に何を起こすか分からないというのが石丸の本音だ。

 だからこそ面白いと思ったのだが、こうして敵に回すとここまで厄介な存在だとは思ってもいなかった。

 前回の戦いも、石丸という大将を倒すための罠にまんまと嵌ってしまったのだ。

 自分が生きているのは、部下と藤原巴が身を挺して助けてくれたからだ。

「だが今なら数は少ないはずだ。何処に居る。俺が奴を倒す!」

 今ならばまだ本格的な軍事行動は起こせないはず…と石丸は確信している。

 どれだけあの男が…そして自分が強くても、一人では何も出来ない。

 ならば、今の内ならば何とかなる…そう考えていたのだが、足軽の報告は石丸の想像の斜め上だった。

「そ、それが…僅かな手勢と共に、砦を落としてまして…そこから行方不明です!」

「な、何?」

「全く足取りが掴めないのです! しかもその行動は異常に早くて…何とか防衛したとしても、今度は別の場所に現れるという次第で…」

「…どういう事だ」

 報告が正しければ、異人は僅かな手勢で砦を落としただけでなく、その砦を無視して別の砦へと攻撃をしかける。

 その砦が無理ならば、今度は別の砦に攻撃をしかけているという事になる。

「そんな事が可能なのか? 僅かな手勢だとしても、そんな簡単に移動が出来る訳でも無いだろう」

「理由はわかりません…ですが、あの異人が率いる部隊があちこちに攻撃を仕掛けてきまして…前線が保てぬ状況になっているのです!」

「おいおい…嘘だろ」

 理由が分からずに異人が何度も攻撃を仕掛けてくる…それは前線にいる兵士にはこの上ない恐怖だろう。

 あまり公にはしていないが、あの石丸達を壊滅させたあの一撃が異人のもので有る事は上の者は知っている。

 あれは正に異常で有り、あんなものを連発されれば城だって長くは持たないだろう。

「た、大変です!」

 石丸と早雲が驚きに顔を歪ませていると、今度は別の足軽が息を切らせて現れる。

「今度はどうした!?」

「黒部が…妖怪王黒部が動きました!」

「「はぁ!?」」

 

 

 

 黒部の陣地―――

「で、これで良いのか? 森盛」

「いいモリよ。これで相手はそう簡単に動けないモリよ」

 妖怪王の陣地…ではあるのだが、そこには黒部を中心とした少ない手勢しかいない。

 妖怪達が頑丈とはいえ、まだまだ動くのには時間がかかるし、人間達もそう簡単には動けない。

 だからこそ、黒部は僅かな手勢を率いて、かつて人間達が使っていた陣地に陣取っていた。

「それにここは平が使っていた陣地の中でも、守りに秀でた陣地モリよ。ここが残っているのは幸いだったモリよ」

 この地はかつての平の領地であり、平の守りの拠点であった地だ。

 生憎と藤原家の戦いでは利用は出来なかったが、こうして今は役に立っているのだから運命というのは分からないものだと森盛は思った。

「ここでランスの動きをカバーするって訳か?」

「そうモリよ。ここならば報告を受けるのも容易モリよ。後は黒部殿が奴等に少しちょっかいをかければそれでいいモリよ」

「ちょっかい?」

「それも黒部殿が移動しながらが良いモリね。ちょうどランス殿と同じ様に、僅かな手勢で仕掛けるのがいいモリよ。あちこちに陣地が残っていたのは幸いモリよ」

 ランスの作戦を元にスラルと森盛が考えたのは、相手の戦力を完全に分散する事だ。

 そのためにランス達には精鋭を送り、黒部の所には残りの者を投入している。

 その中でも、黒部が独自に動くための機動力を備えた部隊を作り、陣地を一定させずに相手に攻撃を仕掛ける事だ。

 あくまでも本命はランス達の部隊であり、黒部の部隊はいわば囮でしかない。

「総大将の黒部殿の強さと、ランス殿の強さがあって初めて出来る作戦モリよ。正直こんな突拍子もない事を思いつくランス殿は凄いモリよ」

「そうだな…で、ここが最終拠点になるって訳か?」

 黒部の言葉に森盛は頷く。

「もうこれしか手は無いモリよ。正直これが打ち破られたらもうその時点で負けモリよ。後はランス殿に任せるしかないモリよ」

「ケッ…それで俺が囮とかよ…窮奇や元康は向こうに居るってのによ」

 黒部が気に入らないのは、ランスの作戦に自分が側に居ない事だ。

 ランスと共に居れば退屈も無く、思う存分に暴れられるというのに今回は別行動だ。

「仕方ないモリよ。この戦いはあくまでも黒部殿と石丸の戦い…ランス殿が身軽だからこそ、この策が取れるモリよ」

「分かっちゃいるが気に入らないだけだ。俺の苛立ちは全部あいつらで解消させてもらうぜ」

 黒部の目がギラリとひかり、その口には笑みが作られる。

「さーて、もう一度奴等の所に行くとするか。ランスもグズグズしてたら俺が奴等を食い破るぜ」

 

 

 

 魔法ハウス―――

「…で、何でお前がここに居るんだ!」

 そこではランスは不機嫌な態度を隠す事をせずに怒鳴っている。

 普段はランスとスラルとレダ、そしてエルシールに大まおーだけがいるという空間が大所帯となっている。

 勿論この魔法ハウスはランスがゼスの動乱の時に譲られた魔法ハウスよりも遥かに広く、15人程人が集まっても何も問題は無いだろう。

 さらにはパイアールの手も入り、人が暮らすには快適すぎる空間が用意されている。

 その空間には、ランスが望まない男が沢山いるのだから、ランスからすればたまったものでは無い。

「落ち着きなさいよ。まさか外に放り出す訳にもいかないでしょ。今回は迅速な行動が必要なんだから」

 スラルが何とかランスを窘めるが、それでもランスの不機嫌さは変わらない。

「俺様のハーレムを築く家に、何故男共が入っているのだ…俺は世界一不幸だ」

「まあ…それはね。ほら、今回の騒動が終わればね」

 スラルも目の前の光景には少し唇が歪んでる。

 何かの天麩羅を片手に酒を飲む窮奇と元康と段蔵。

 天井に張り付いているナクアと、正直不気味な事この上ない。

 食事も中々大変であり、料理が不慣れなエルシールの代わりに大まおーと綾と与一が作った。

 その後の掃除はエルシールが器用にこなしているが、ランスにとっては非常に不快な光景であるのは間違いなかった。

「やはり男が俺様の所にいるのは我慢ならんな。よし、殺そう」

「落ち着きなさいよ。ずっと続く訳じゃ無いんだから」

 レダが剣を抜こうとしているランスの手を押さえる。

「その…申し訳ありません、ランス殿」

 綾は少し申し訳なさそうにしながらも、柔らかいクッションの上でお茶を飲んでる。

 与一もソファーの上でだらけており、灯りの下で気分が悪いのかほのかの顔色が青くなっている。

「綾はいい。ほのかもいい。だが他の奴等は駄目だ」

「ランスも少し落ち着いてよ。それよりもこれからの事を教えてよ。どうするの?」

「む…」

 スラルに上目遣いで見られ、ランスも少し気持ちを抑える。

「そうですね…これからの事は私も気になります。こうする事で本当に勝てるのでしょうか?」

 綾がランスに問いかけたところで、少しだらけた空気にあった魔法ハウスの空気が突如として変わる。

 元康と段蔵も酒を手にしながらも顔は真剣そのものであるし、窮奇も寝そべっていた体を起こしてランスを見る。

「おう。正直俺達妖怪にはお前のやってることがさっぱり分からねぇ。だけどそれで勝てるってんなら構わねぇよ」

 窮奇の言葉に妖怪達は頷く。

 妖怪達がランスを信じているのは、その圧倒的な強さと妖怪にも気に入られる何かがあるからだ。

「とにかく奴らの弱いところを徹底的に叩く。そうすれば奴らの大将も出てくるだろ。出てきたところでぶっ潰す。それだけだ」

 ランスは事も無げに言うが、勿論そんな簡単に事が上手く運ぶとは限らないだろう。

 しかしランスにはそれを成し遂げられるだけの実力、そして何よりも圧倒的な幸運がある。

 ランスは自分の考えが間違っているとは微塵も考えていない。

 今まではもっと大変な目にあってきたのだ。

 それを考えれば今の状況など困難のうちには入らない。

「がはははは! 次こそ奴をぶっ潰す!」

 




改めてランス10のデータを見てましたが、やっぱりバランスブレイカーの力って凄いと思った
それを三つも持ってる帝ってやっぱり凄いよな…
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