ランス再び   作:メケネコ

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NC戦国ランス 25

「はっ…」

 ランスが目を覚ました時、そこではハニー達が不思議な踊りを踊りながらハニーキングを称えるという、ランスにとっては意味の分からない光景が広がっていた。

「わー! 流石王様ー! 怪獣を倒したよー!」

「わーい! 貝パーティーだー!」

 見ればハニー達が散らばっている貝を思い思いに拾っている居る。

 その光景を見て、ランスは当然の事ながらキレた。

「貴様らー! その貝は俺様のもんじゃー!」

「「「わー!!!」」」

 先程まで倒れていたとは思えない程の威力の蹴りがハニー達を襲う。

「わー! 茂野君の右手が割れた!」

「そ、そんな! これじゃあ僕はエースピッチャーになれない…」

「やかましい! そんな事は俺様の知った事か! それよりも俺様の貝を奪おうとする奴は許さんぞ!」

 ランスは血走った目をしながらその剣をハニー達に向ける。

 ハニー達はそんなランスに恐怖を覚え、皆がハニーキングの背後へと隠れる。

「ランス君も貝パーティーする?」

「するか! この貝は俺様のものだ!」

 ランスを諌めようとするハニーキングを無視して、ランスは地面に落ちている貝を見るのだが…

「…なんだこれは。殆どがハズレではないか」

 その周囲に散らばっているのは、ランスでも手を出さない特に珍しくも無い貝が散らばっている。

 一般的に多く出回っている貝であり、貝コレクターでもあるランスでも特に欲しいとも思わない物ばかりだ。

「落ち着いたかな? 見ての通り、そんなに珍しく無い貝ばかりだね。でもランス君が気に入ったのが有ればそれを持って行ってもいいよ」

「ほう。中々話が分かるではないか」

「僕は別に貝を収集する趣味は無いからねー。中身があるのは美味しく頂くけど」

「フン、雑魚の貝はお前達の好きにしろ。さーて、俺様も宝探しと行くか」

 ランスはそのまま散らばっている貝を一つ一つ調べていく。

 こういった細かい作業はランスは好きではないが、それが貝に関する事ならば話は別だ。

 自分の趣味に関しては決して手は抜かず、以外にもコレクターの仁義を守るところもある。

 ランスにとっては、貝の収集とはそれだけ価値があるものなのだ…例え周囲がゴミだと言おうとも。

「…うーん。あれ? どうなったのかしら」

 そこでスラルが目を覚ます。

「えーと…あの怪獣の姿が見えないけど」

「知らん。俺様が目を覚ました時はもういなかった。まあ逃げたんだろ」

「逃げた…か」

 スラルはそこでハニー達に称えられているハニーキングを見る。

(あいつが追っ払ったんでしょうね…あいつは本当に底が知れないわ)

 魔王の時から、ハニーキングだけはどうしても苦手だった。

 その強さはまさに得体が知れず、全てを見透かしたような事を言う事も多い。

 ハニーなので適当な事を言ってるだけかもしれないが、それでもハニーキングだけは昔から敵に回したくは無かった。

「おお! これは!」

 ランスが見つけたのは、先の戦闘でランスが斬ったダイクウマリュウカイキングの角の一部だ。

 中々の大きさと重量を持っているが、それでも戦利品であるためにランスもじっくりとそれを見る。

「うーむ…これだけだとこれが珍しい貝なのかどうかわからんな…」

 ランスが手に入れたのは角の一部…それも先端の部分のため、それを見て貝だと認識できるかどうかが疑問だ。

 姿もそれだけでは貝とは言い難く、モンスターの角と言われても納得してしまいそうだ。

「まあ取っとくか。いずれあいつを俺様のコレクションにする時のためには必要だからな」

「…ランス、まだあの貝を諦めていないんだ」

「当たり前だ。確かに強くて厄介だが、珍しい貝には違いないからな。それに中々見応えがある貝だしな」

「貝のコレクターって良く分からない…」

 スラルはランスを見て複雑な表情をするが、それはもしかしたら色々な知識を得ようとしてる自分も今のランスの様に目を輝かせているのかと思うと、やっぱり複雑な気分になる。

「む…おお! これは初めて見るぞ!」

 そこでランスは2枚の見た事の無い貝を発見する。

 それは貝コレクターのランスが書物でも見た事の無い貝だ。

 まるでエメラルドのように輝くその貝は、角度を変えてみると今度はルビーように輝いて見える。

「うーむ…美しい」

 ランスは角度を変えながらその貝の美しさに見入っている。

 そんなランスの肩越しにスラルも貝を見てみる。

「ふーん…確かに凄いわね。私が魔王だったころは貝なんて全然興味も無かったけど…さっきの貝と言い、中々興味深いわね」

 先程の巨大な貝もそうだが、こうして改めて見てみると中々興味をそそられるものだ。

 確かに綺麗な貝でもあるが、スラルはランスのようなコレクターとしてでは無く、純粋に知識を求める者として貝を見ている。

「なんだスラルちゃんにもこの美しさが分かるのか」

「ランスのようにコレクターになろうとは思わないけど…それでも綺麗だとは思うわよ」

「そうか」

 ランスは少し考えると、その貝をスラルの顔の近くに持ってくる。

「な、何よ」

「こうして見ると、スラルちゃんの目を思い出すな。今は幽霊だから目の色も分からんが」

 魔王スラルの瞳は美しいエメラルドのようだったが、ランスがスラルと戦った時は、まるで血のような深紅に染まっていた。

 この貝も見る角度によって色が変わって見える。

 その対比がまるでスラルの目のようだとランスは思っていた。

「…それって私が魔王の血に飲み込まれたっていう皮肉?」

「別にそんなつもりでは無いのだがな…まあいい。ほれ、スラルちゃん」

 ランスはスラルにその貝の一枚を差し出す。

「…え?」

「一枚やる。光栄に思えよ。この俺様が貝をやるなんて滅多に無い事だからな」

「………ランス」

 今はまだその手に直接触れる事は出来ないが、スラルはランスの手にあるその貝に手を伸ばす。

 その手は貝をすり抜けてしまうが、それでもスラルの手には確かな重さを感じたような気がした。

「今は触れないが、いつか絶対にスラルちゃんに触れるようになるからな。うむ、俺様は昔幽霊ともセックスをした事があるのだ。もしかしたらスラルちゃんともやれるかもしれん。あ、いやあの時は俺様とセックスしたら成仏してしまったな…それはいかん、スラルちゃんとはまだまだやり足りないからな」

 ランスの言葉にスラルは呆れながらも、その顔には笑みが浮かぶ。

「ありがと。確かに綺麗よね…」

 スラルはランスが自分にくれた貝を見ながらため息をつく。

(そういえば…純粋に私にプレゼントをくれたのってランスが初めてなのかな…ガルティアは色々な食べ物を分けてくれたけど)

 魔王であった時は、誰よりも長く生きているケイブリスからは色々なアイテムの事を知った。

 カミーラからは嫌われていたためあまり付き合いは無かったし、メガラスに関しては口を開く事すらも超がつくほど稀だった。

 結局は自分が作ったガルティアとケッセルリンクとばかり話していたような気がする。

 そんな過去を思い出し、改めて今目の前にある貝を見る。

(私の瞳みたいか…ランスは私の事をしっかりと見てくれてるんだ)

 魔王スラルではなく、元魔王スラルでもなく、ただのスラルとして見てくれている。

 それが何故だかとても嬉しかった。

「うわー…ラブコメしてるよ茂野君」

「そうだね、佐藤君。でも出来れば女の子がメガネをかけてくれてれば尚いいかな。でも頭よさそうだからもう少しバカっぽいといいんだけど」

「やかましい」

 

 パリーン!

 

「佐藤君!? 佐藤君の左手が!」

 ランスとスラルを見てワイワイ騒いでいたハニーの腕をランスが破壊する。

「全く。やはりハニワ臭いのはだめだな。やっぱりこいつらはぶっ殺すか」

「それについては同感だけど、流石にあのハニーキングだけはやめておいた方がいいわよ」

 ハニーに囲まれて謎の踊りを踊るハニーキングを見ながら、スラルは改めてこの戦いの結果を見る。

(惨敗ね…まさか私達が全力で戦って敵わないなんてね)

 レダと黒部は意識を取り戻したようだが、他の者はまだ気絶しているようだ。

 自分とランス、そしてレダと黒部がいて勝てないとは正直思ってもいなかった。

 間違いなく魔人級…いや、間違いなく生命体として魔人を上回っている。

 無敵結界があるので魔人が倒されることは無いだろうが、もし無敵結界が無ければ間違いなく魔人を倒すだろう。

(ハニーキングが気になる名前を言ってたけど…ククルククルって…まさかね)

 スラルはハニーキングが発した名前を思い出すが、その考えを打ち消すように頭を振る。

 あのハニーキングの事だからまた適当な事を言ってるのだろうと無理矢理納得させる。

 そう、ありえるはずが無いのだ…自分の二つ前の魔王であり、魔人ケイブリスを作った存在…それと戦った貝など冗談だろう。

「綺麗な貝ですね。こんな貝は私も初めてみました」

 目覚めた藤原巴がランスの手の中にある貝を覗き込む。

「なんだ、お前も貝を集めているのか」

「集めている…という程では無いですが、私がいた場所の近くには沢山の貝を取れる場所がありますから」

「む…おお! そうだ! 貝があるではないか!」

 ランスは今まで忘れていたと言わんばかりに勢いよく立ち上がる。

「がははははは! 俺様ともあろう事がすっかり忘れてたな。JAPANには貝があるではないか!」

 それは忘れもしない、あの強敵武田家の領地にあった一つの地。

 そこにいは大量の貝があり、ランスもそこで珍しい貝を沢山手に入れる事が出来た。

 まさにランスにとっては至高の場所であり、女を求めているランスがそこを探索するだけで十分すぎる程満足出来た場所だ。

 あれから行く機会が無かったが、もしかしたらまた珍しい貝が沢山とれるかもしれない。

 そう思うだけで俄然ランスにやる気が出てくる。

 突然やる気を出したランスにスラルは少し呆れるが、それでも良い傾向だと思い何も言わない。

(それよりも…)

 スラルが倒れている皆をみると、そこには数体のハニーが与一を介抱しようとしているところだった。

「はにほー! 可愛い子が倒れているよ!」

「どきどき…」

「あいやー! 早く助けてあげなきゃ!」

 悩ましい声で体をくねらせている与一は非常に色っぽい…ただし男だが。

「これは人助けだし仕方無いよね…」

「そうだよ。これは人助けなんだよ。だから少しくらいタッチしちゃっても不可抗力だよ」

 そう言いながらハニーが与一に触れた時、そのハニーの体がびくりと震える。

「ま、まさか…!?」

「そ、そんな…そんな!?」

 震えるハニー達が何かとんでもない物に触れたかの様に、与一から距離を取る。

「うーん…」

 そんなハニーの声に反応したのか、そうで無いかは分からないが与一が目を覚ます。

「ま、まさか…こいつ! 梅太郎か!?」

「う、梅太郎…梅太郎だ!」

「…は?」

 自分の周りで怒りの声を上げるハニーの声に目を覚ましたのか、与一が起き上る。

「うわー…べとべと」

 体についている粘液を嫌そうに見ながら、与一は自分を取り囲んでいるハニー達を見る。

「な、何よ」

「この…梅太郎が!」

「あいたっ!」

 一匹のハニーの投げた小石が与一の頭に当たる。

「何するのよ!」

「あんっ!」

 与一はすぐさま弓を放って、自分に小石を投げたハニーを割る。

 が、ハニー達はそのまま与一に感情の籠らない目を向けている…ような気がする。

 流石にそんなハニー達の迫力に押されたのか、与一は思わず後ずさる。

「王様! こいつ梅太郎です!」

「梅太郎は許されざる存在だー!」

「…梅太郎って何?」

 訳の分からない事を言っているハニー達に、与一は困惑する。

 まあハニーという存在が訳が分からないのは今に始まった事では無いが、それでもその迫力は異様だった。

「…ランス君!」

「なんだ突然」

 目ぼしい貝を拾い終えたのか、ランスは何時になく満足そうな顔で貝を袋に詰めている。

 そんなランスに対し、ハニーキングが声に怒りを滲ませて詰め寄る。

「ボクは君を見損なったよ! 君ならメガネに対する理解があると思ってたし、女の子をいじめる力も素晴らしいと思っていたのに! よりによって梅太郎と一緒にいるなんて」

「だから梅太郎って何よ!?」

 ハニーキングの言葉に与一もいい加減に我慢の限界に達する。

「梅太郎は梅太郎だよ! 梅太郎は許されざる存在なんだ! 梅太郎は粛清しなければならないんだ!」

「…一体何がハニーをここまで駆り立てるのかしら」

 ハニーキングとは嫌でも付き合いがあったスラルでも、ここまで怒りの感情を露わにした事は見た事が無い。

 相変わらず怒りのベクトルは理解出来ないが、それでもまあハニーにとっては何か許されない事なのだろうと取り敢えず納得しておく。

 だが、流石にハニーキングが相手となっては流石に難しいだろう。

 何しろ相手は自分が何度も叩き割っても、次の日…いや、数時間後には平気で自分にメガネをかける事を要求してくるような奴なのだ。

「待ちなさいよハニーキング!」

「止めても無駄だよスラルちゃん! ボクは…梅太郎を許す訳にいかない!」

 ハニーキングのボルテージが上がり、その白い陶器の体から凄まじい圧力が放たれる…のだが、相手がハニーのせいか今一迫力が無い。

「ちょっとランス、どうにかしてよ!」

「別に俺様は男がどうなろうが知った事では無い」

「…そういえばランスはそういう奴だったわね」

 何時もの様に男には非常に冷淡なランスの声にスラルはため息をつく。

(こうなったら私が何とかするしかないか…)

 ハニーキングに何か言うには少し勇気がいるが、それでも今ここで貴重な仲間を失う訳にはいかない。

 意を決して、スラルがハニーキングに声をかけようとしたとき、

「まあ…皆様御揃いで。楽しそうですね」

 突如としてこの場にはあまり似つかわしくないのんびりとした女性の声が聞こえてくる。

 スラルが声の方を向くと、そこには一人の女性が悠然と歩いてきた。

「…まさかアレはまくらちゃんか!?」

 ランスがその女性を見て驚いた顔をする。

 そこにいたのは、綾と共にランスの所に身を寄せていた女性であり、これまで一度も目覚める事の無かった少女のまくらだった。

「え、何アレ。冗談抜きで後光が差してるんだけど…」

 スラルもまくらを見てあんぐりと口を開ける。

 その姿はまさに聖人とも言わんばかりの光が放たれ、あの殺気立っていたハニー達も思わずまくらに見入る程だ。

「まくら! あなた!」

「まあ綾ったら…凄い恰好ですね。綾も女の子なのだから、身嗜みはきちんとしないと」

 綾はまくらが目を覚ました事を純粋に驚いている。

「おい綾。どういう事だ」

「ああ…そう言えば皆さん起きているまくらを見るのは初めてですよね。あれがまくら…誰もが恐れた少女です」

「…恐れただ?」

 ランスは綾の言葉に驚く。

 目の前にいる少女は確かにランスでも手を出すのが憚られる程の光を放っているが、それが何故恐れに繋がるのか全く理解出来ない。

 スラルも同様で、綾の言っている事が信じられない。

「ランスさん…あなたの魔法ハウスに仕舞ってあるコレクションの貝ですが…この前の衝撃で少し割れてしまいましたよ。管理はもっと徹底してくださいね。それとスラルさん…あなたが無くしたと思っている書物ですが、本棚の間に挟まっていますよ」

「…な、何だと!?」

「え…何で?」

 ランスは己のコレクションの貝に破損が有ると言われた事、スラルは探しても見つからなかった書物の事を言われて驚く。

「黒部さん…今まで綾を助けてくれてありがとうございます。帝レースの裏には大変な事実が隠されていますが、決して気を落さないで下さいね」

「お、おう…」

 黒部もまくらの雰囲気に押されたのか、少し引き気味になっている。

「…ねえ綾、あれって何?」

「これが起きている状態のまくらなんです。千里眼…とでも言えばいいのでしょうか。彼女は眠っているはずなのに、全ての事を知っている…だからこそ恐れられたのです」

 普段は寝てばかりではあるが、彼女にはその寝ている間でも全てを見ているらしい。

 それは正に神の視点とも言うべきであり、それ故に彼女には秘密が通用しない…それ故に人は彼女を恐れた。

 暗殺されかかったのも一度や二度では無く、その度に綾は彼女を守ってきたのだ。

 そしてその原因は妖怪の呪いにあると分かり、綾はまくらを連れて黒部を訪ねたのだ。

「ハニーキングさん」

「は、はい。何ですか」

 まくらの後光の前に、ハニーキングも思わず敬語になる。

「与一さんにあまり酷い事を言ってはだめですよ。与一さんが一番気にしてるのですから。ですので…皆様が幸せになれるようになればいいのです」

「え…」

「このJAPANにはある神殿があります…そこに与一さんを連れて行けば、皆様は幸せになれますよ」

「…そ、そうなの? じゃ、じゃあ行ってみようかな」

 まくらの言葉には何故か奇妙な説得力があるような気がして、ハニーキングもその気になる。

 もうそこには与一に対する怒りは微塵も無い。

「はにほー! じゃあみんなでその神殿に行ってみよう!」

「わーい!」

「遠足だー!」

「梅太郎も連れて行くぞー!」

「…え? 何で?」

 ハニー達はそのまま与一を担いで歩いていく。

「…何アレ?」

 レダはそんなハニー達を見て呆れた様に声を出す。

「やっぱりハニーだけは全く分からないわね…理解はしたくないけど。で、与一はいいの?」

「知らん。男がどうなろうが俺様の知った事では無い。それよりも…」

 ランスは消えていったハニー達と与一を無視し、まくらの方を見る。

 眠っていた時のまくらしか見た事が無いランスは、改めてまくらの方を見る。

 彼女のことは眠っていた時から見ていたが、スタイルに関してはまあ普通といった所だろう。

 シィルと同じくらいだろうかとランスは目算する。

 しかし何よりも他の女と違うのは、どこか近寄りがたい空気を発している所だろう。

 クルックーもAL教の法王だが、特に近寄りがたいという感じは無い。

 だが、当然の事ながらランスにはそんな事は関係無い。

 相手が綺麗な女性なら、やりたくなるのはランスとして当然の事なのだ。

「ランスさん」

「おう。俺様がランス様だ。それよりも俺様とズバッとやらんか。いや、やるぞ」

「申し訳有りません…私とするとガメオベアが大量に出現しますので、それは出来ません」

「…ガメオベア?」

「そうです。ですから私とするのはやめたほうがいいです」

 まくらの言葉にランスは全く納得がいかないのだが、

(…何故だか無性にやばい気がする)

 流石のランスも何か非常にまずいものを感じ、これ以上言葉が出なくなってしまう。

「それよりも…ランスさんはこれから大変な思いもしますし、非常に苦しい事も経験すると思います…ですが、絶対に諦めないでくださいね」

 まくらの表情は真剣そのもので、そこには余計な事を言える空気は存在しない。

 スラルですらも、その表情には息を呑んだほどだ。

 しかしこの男は全く変わらない。

「下らんな。俺様ならば何も問題は無い。大体俺様が諦めるわけは無いだろう」

 ランスの言葉を聞いて、まくらは安心したほうに微笑む。

 そして綾の方を向くと、

「綾…あなたもそろそろ自分の幸せを考えてくださいね」

「まくら…」

「…あ、そろそろ私…ふにゃあ」

 まくらはそう言うと元康に向かって倒れこみ、そのまま元康の体にしがみ付くように眠り始める。

「…なんなの、こいつ」

「妖怪耳なし猫…その呪いによって、まくらは滅多に目を覚ましません。ですがその呪いによって力を得ましたが、それはまくらにとって不幸でしかありません…」

「耳なし猫か…前も言ったが、あいつだけは俺でも手が出せないからな」

 綾の言葉に黒部も苦い顔をする。

 あの妖怪だけは、黒部でも手を出すことが出来ない妖怪だ。

 だからこそ、まくらの呪いだけは黒部の力を持ってしても解除する事は出来ない。

「で、与一がハニー共と行ったが本当にいいのか?」

「何度も言わせるな。男がどうなるが俺様の知ったことか。まあ戻ってきたらまた使ってやるか」

 男ではあるが、弓の腕は確かだ。

 ランスにとって色々と気持ち悪いが、背に腹は変えられない。

 まあいざとなればロッキーのように捨てればいいやとさえ考えていた。

 が、この考えが覆されるのはそれから直ぐの事である。

 

 

 

 藤原家―――

「ようやくだな…」

 石丸は自分が握る剣の感触を確かめてため息をつく。

 が、そこにはようやく自分が前線に立って戦えるという、戦士としての喜びもまた詰まっている。

 自分が戦線を離れている間、相手のゲリラ的な攻撃にあってこちらの前線は厳しい状態らしいが、それもここまでだ。

 早雲も準備は万全だと言っているし、何も問題は無いだろう。

「唯一の心配事は巴の事だが…」

 未だに音沙汰も無く、向こうからは何も言ってくることは無い。

 何かしらの譲歩を要求してくるかと思ったが、意外にも黒部からは何も言ってくることは無いのが不気味だが、殺されているという事は無いだろう。

 ただ、異人はかなりの女好きというのは石丸も聞いているため、純潔に関しては流石にもう諦めるしかない。

 これも戦国の常であり、彼女には厳しい事だが仕方の無いことなのだ。

「さて…そろそろ黒部との決着をつけるか。そしてあの異人…ランスともな」

 あの時は完全にしてやられたが、あの場面でも自分が生き延びたのは、月餅の言うとおり運命が自分に味方をしてくれているのだろう。

 そして今度こそ自分の力で相手を倒すのだ。

 石丸がそう決意を固めていた時、慌てた様子で早雲が走りこんでくる。

 それを見た石丸はまた何か非常に嫌な予感で冷や汗が出てくるのを止められなくなる。

「た、大変だ! 石丸!」

「…今度は何が起きたんだ」

「ハ…ハニーが…ハニーが黒部達に加勢している!」

「………はぁ?」

 早雲の言葉に、流石の石丸もただ呆然とする以外に無かった。




長い間更新が出来ませんでしたが、そもそもPCの前にも座ることが出来ませんでした
本気でまずい状況で、自主隔離を余儀なくされましたが、結果は大丈夫でした
正直生きた心地がしない2週間でした…
これから更新速度を上げていくために努力していく所存です
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