ランス再び   作:メケネコ

14 / 370
次は魔人戦だと言ったがアレは嘘になってしましまいました。
書きたい部分を書いていたら予想以上の長さになってしまって…
次こそ本当に魔人戦です!




勇者という存在

この世界には『勇者』と呼ばれる人間が存在する。

かつて魔王スラルはプランナーに『魔王は殺せない』という願いを叶えてもらった。

その結果、魔王の血を分け与えられている魔人もその恩恵を受ける事となった。

それこそが魔人の絶対的な優位性、無敵結界である。

プランナーという神はバランスを好む。

スラルの願いを叶えたことで、世界のバランスは圧倒的にモンスター側に傾いた。

だからプランナーは人類に対して『勇者』という存在を作った。

この世界に一人だけ存在し、条件次第では魔王すらも殺しうる可能性を秘めた存在。

だがSS期、勇者が活動したという歴史は無い。

 

 

 

ランス達が廃棄迷宮より帰還する少し前―――

 

勇者はSS期には存在していなかったという事は無い。

ただ、魔人に勝てる存在では無かったというだけだ。

 

「…で、あなたは何をしているんですか?」

 

勇者の従者―――4級神コーラス0024は今の勇者に対して呆れていた。

 

「静かにして下さい…気づかれます」

 

現在の勇者、アーズラは必死になって気配を隠していた。

今彼の視線の先には、

 

「うーん、気持ちいいー!」

「最近水浴び出来なかったら格別よね」

「まあまあ。もう完成間近だし。ケッセルリンク様達ももう少しで戻って来るわよ」

 

全裸で水浴びをしているカラーの姿があった。

ランスの指示であるモノを作っているカラー達は、ローテーションで水浴びに来ていた。

カラーは森で生活する種族なので、ランスの指示するモノを作ることもそう難しくは無かった。

だが、やはり汗はかくのでこうして水浴びは欠かさずしているのだ。

 

「カラーってやっぱり美人ばっかりだなあ…」

 

勇者は鼻の下を伸ばしてカラーの水浴びを食い入るように見ていた。

 

「……はぁ」

 

コーラス0024―――コーラは溜息をつく。

勇者という存在が作られ、自分はその勇者の従者という事で作られた神だ。

目的は創造神ルドラサウムを楽しませる事…なのだが、未だにその『勇者』の使命が果たされたことは無い。

(そもそも今の魔王が少々穏健的なんですよね)

コーラは文句を言いたいが、メインプレイヤーが作られてまだ400年と少し。

2000年以上続いた、最初の魔王ククルククルがいた時間に比べればまだまだ序の口だろう。

今のこの世界は、まだ不安定な実験的な要素が強い世界だ。

そして『勇者』というシステムが作られてまだ100年程度。

色々な『勇者』は存在はしていたが、その全てが神を満足させるほどの結果を残せていない。

(まあ今の現状なら仕方ないですが)

確かに魔人は各地で暴れてはいたが、何しろその暴れていた魔人を魔王が回収して回っているほどだ。

今の魔王は自分自身で動くことは少なく、配下の魔人にやらせてはいるがその配下の魔人すらも数えるほどしかいない。

どちらかと言えば学者気質であり、何かを知ろうとする欲求の方が強い魔王なのだ。

そんな状況では、むしろメインプレイヤー同士の争いの方が多いくらいだ。

メインプレイヤー同士の争いは神を楽しませてはいるが、『勇者』というシステムは全く機能していない。

何しろ『勇者』の力を解放する所まで、メインプレイヤーの数が減らないのだ。

『勇者』の力はメインプレイヤーの残りの魂によってその力を増す。とどのつまり魂が減らなければただの強い人間にしか過ぎない。

コーラも色々と考えてはいるのだが、その通りに勇者が動くとは限らないのだ。

自分も直接の介入は禁じられているため、計画を立ててもそれを実行するための手段が無い。

そして今まで『勇者』として認められた存在は、何れも人助けだの何だのと神の視点からすれば全く無駄な事をしているに過ぎない。

(とはいえ…少しは状況が動きそうですが)

新しく選ばれた新たな勇者アーズラは、今までの勇者と同じく普通の人間だ。

それが今カラーの森に来ているのは、ただ単純にカラーという種族を見てみたいという好奇心からだ。

しかしアーズラは知らないが、今カラーの森では大きな事件が起きていた。

一つが太古から生きる強力なムシという存在。

魔人にすら匹敵すると言われるその力は、普通の人間では太刀打ちする事は出来ない。

もう一つがこの周辺に現れた魔人。

今までの勇者は魔人と戦った事はあれど、やはり無敵結界の前には手も足も出ない。

勇者の持つ剣、エスクードソードが魔人を斬れるようになるためには、少なくとも現在のメインプレイヤーが30%は削れなくてはならない。

が、それだけの数を減らすのは、今の現状では流石に現実的ではない。

魔王が動けばあっと言う間に減るだろうが、その魔王が動かなければどうしようもない。

しかしだからこそ今の状況で勇者と魔人がぶつかるのは、コーラにとっては好ましかった。

(魔人と出会えば考えが変わるかもしれませんしね)

ここで心が折れてもそれはそれで面白いし、もしかしたら吹っ切れてとんでもない行動に出るかもしれない。

どっちに転んでもコーラには良かった。

(…そのはずだったんですが)

この勇者がやってる事と言えば、カラーの水浴びを覗く事。

 

「カラー…いいなぁ…」

 

真剣な顔でカラーの水浴びを覗いている勇者を見て、コーラは嘆息する。

今回の勇者も駄目かもしれないと。

その勇者が感動のあまり涙を流しているのを見ると、何故か神である自分が情けなく感じてきてしまった。

突然だが勇者という存在は普段は不幸である。

だからこれはその不幸な事だった。

勇者は感動のあまり涙を流していたが、突如として風が巻き起こり、布きれが自分の元に飛んでくる。

 

「ああ、ちょうどいいなぁ」

 

だから勇者はその布きれで自分の顔をふく。

その時たまたま勇者がいた場所にカエルが存在していたこと、勇者の足元に歪な形の雑草が生えてたこと、そのカエルがげこげこ鳴きながら割と大きな音をたてて水に飛び込んだこと、カラー達が一斉にその場所に振り向いたこと。

そして第一に、

 

「! もしかしてまたランスさん!?」

 

このカラーの村には既に一人の人間が住んでいたこと。

さらにその人間はスケベで、カラーの水浴びも覗いていたこと。

カラー達の視線の先には、明らかにランスでは無い一人の人間がいた。

 

「「「「あ」」」」

 

勇者とカラー達の視線が完全に合う。

 

「あ、こ、これは…」

 

勇者アーズラは突然の視線に完全にパニックになっていた。

自分に突き刺さるのはカラーの冷たい視線だが、そのうちの一人は青ざめている。

 

「あ、あなた何を手に持ってるの…?」

 

彼女が震える手で自分を指さすのは、先程飛んできた布きれだ。

 

「こ、これは突然飛んできたもので…お借りしてます」

 

アーズラは改めて自分の手元に飛んで布きれで顔から流れる冷や汗を拭く。

 

「わ、私のパンツで顔拭いてる…」

「え?」

 

良く見てみると、それは布きれではなく、下着であった。

 

「あ…」

「へ、変態よー!!!!」

「ち、違うんです!!」

 

返す返すも言うが、勇者とは普段は不幸である。

 

「どうしたの!?」

 

だからそれは本当に偶然の出来事。

水浴びをしていた彼女達はそろそろ交代の時間であったこと、その交代のためにやってきたカラー達の仕事が、モンスターに対する哨戒であったため武器を手にしていたこと。

そして何より、立ち上がろうとした勇者が足元の草に足を取られ、その場で転んだこと。

その際に手にしていたパンツがたまたま転んだ際に顔の部分に被さったこと。

更には少しぬかるんだ地面なので、そのパンツがちょうどいい形で自分の顔に嵌ってしまった事。

 

「ご、誤解なんです!」

 

その場にいるカラーは全員顔を青くしてその勇者―――彼女たちの視点から見れば、カラーの下着を顔に被っている男を見る。

 

「へ、変態だーーーー!!!!」

「ち、違います!」

「変態仮面よ! 変態仮面だわ!」

「射てーーーー!!!」

 

そして勇者にはカラーの弓が放たれ、勇者は実にあっさりと捕まった

 

 

 

「がはははは! 戻ったぞ」

「あー、ランスさん! ケッセルリンク様」

 

カラーの村にランス達は戻ってきた。

ちなみにケッセルリンクは既にランスの背中からは降りていた。

やはりカラー達の前では強がりたいらしい。

 

「どうだ? 進んどるか?」

「はい、大丈夫です」

 

カラーの集団の中から女王、ルルリナが進みでる。

 

「ランスさん、レダさん、ケッセルリンク、アナウサ、メカクレ、皆良く無事で」

「うむ、俺様ならば当然だな」

「目的の物は見つかりましたか?」

 

ルルリナの言葉にランスは腰に下げていた剣を掲げる。

 

「がはははは! 何も問題は無いわ!」

「「「「「おおーーーーーー!!!」」」」」

 

周りに集まってきたカラー達が一斉に拍手をする。

ランスが掲げた剣は、明らかにカラー達が使ってきた剣とは別物だと分かる。

魔法や呪術に長けたカラーだからこそわかる―――あの剣は普通の剣ではないと。

 

「そちらに何か変わったことは?」

 

ケッセルリンクの言葉にカラーの全員が暗い顔をする。

その様子にケッセルリンクの顔に焦りが出る。

 

「まさか…私達がいない間に何か…!」

「いえ、そうでは無いのですが…ムシと魔人には動きはありませんでしたが、代わりに人

間が…」

「人間?」

 

カラーの村に人間が迷い込むことはそう多くは無いが、特段珍しい事でもない。

時には悪意を持って襲い掛かる人間もいるにはいるが、そういった人間にはカラーの呪いがかけられる。

人間とは特に敵対している訳では無いので、大抵はそのまま村を出ていく。

ここ最近は近くに凶悪なムシが現れ始めたため、人間が迷い込むという事は無くなっていた。

あくまでランス達は例外だ。

 

「人間が迷い込んだのであれば、何時ものように処置をしていいのでは?」

 

ケッセルリンクの言葉に女王は非常に困った顔をする。

周りのカラー達もどうしていいか分からないといったような感じだ。

 

「ケ、ケッセルリンク様…」

 

一人のカラーがおずおずと手を上げる。

 

「どうした?」

「そ、その…今回現れた人間なんですが…」

「…歯切れが悪いな。その人間がどうしたというのだ?」

「ううう…」

 

突如としてそのカラーが涙を流し始める。

ケッセルリンクは突如として泣き始めたカラーに戸惑う。

(何があった…クリスタルの色は赤いから襲われたわけでは無い…いや、未遂に終わったのか)

 

「ケッセルリンク様…実はその人間は、水浴びを覗いたあげく、彼女のパンツで顔を拭き更にはそのパンツを顔に被るという事をしたんです」

「…は?」

 

一瞬ケッセルリンクは何を言っているのかが分からなかった。

 

「…つまりは変態が出たということか?」

 

ランスの言葉にその場に居たカラー達は首を一斉に縦に振る。

 

「に、人間って皆あんな事するんですか?」

「…まあ世の中には女の下着にしか興奮しない奴とかも居るが」

 

ランスの言葉にカラー達は一斉に身を抱き合う。

まさか下着にのみ興奮する特殊な性癖を持った人間が居るとは思ってもいなかったからだ。

 

「と、とにかく。まずは私がその人間を見てみよう」

「待ちなさいよケッセルリンク。私も行くわ」

「俺様も行くぞ。変態の中には意外と変な実力を持っている奴もいるからな」

 

ランスの言葉にケッセルリンクとレダは顔を合わせる。

 

「「なるほど」」

「何故俺様を見て納得する」

ランスが半眼になってケッセルリンクとレダを睨む。

 

「「冗談だ(よ)」」

 

ケッセルリンクがその変態の様子を見に行こうとした時、

 

「あ、それはそうとケッセルリンク…」

「何か?」

 

ルルリナがケッセルリンクを呼び止める。

見ればルルリナは妙に顔を赤く染め、もじもじとしていた。

 

「その…ケッセルリンク、いつの間に大人になったの?」

その言葉にケッセルリンクの動きが止まる。

カラーは処女を失えばその額のクリスタルが赤から青へと変わる。

ランス達と出かける前は確かに赤かったクリスタルが、今では透き通る青に変わっている。

しかもあのケッセルリンクが、だ。

 

「…その話はやめてくれないだろうか」

 

ケッセルリンクは顔を背けるが、ケッセルリンク側に立っていたアナウサ、メカクレ、レダにはその顔が見えている。

明らかな羞恥で頬が赤く染まっている。

(これ、あの時の事皆が知ったらケッセルリンク様羞恥で死にそうよね…)

(言わないであげるのが優しさですねー)

(私は何も言わないわよ)

三人が黙っていてあげるのがいいと判断したが、

 

「がはははは! ケッセルリンクは俺様の女になったのだ!」

 

空気を読む事をしないランスはケッセルリンクを抱き寄せる。

 

「「「キャーーーーー!!!」」」

 

それを見てカラー達が一斉に黄色い悲鳴を上げる。

 

「ラ、ランス!」

 

ケッセルリンクは抗議の声を上げようとするが、ランスの腕に抱かれていると何故かその声が止まってしまう、

 

「おめでとう! ケッセルリンク!」

 

女王はケッセルリンクのクリスタルの色が変わったのを喜び、

 

「あのケッセルリンク様が…」

 

ある者はショックを受け、

 

「やっぱり相手はランスさんしかありえないよね」

「いつも一緒にいたしね」

 

ある者は納得し、

 

「男の人って…どんな感じなんだろ」

「ケッセルリンク様に聞いてみたいけど、聞きにくいよね…」

 

ある者は興味津々と、反応は様々だ。

 

「と、とにかく! 私はその人間を見に行く!」

 

ケッセルリンクはランスの手から離れると、人間を捕らえてある牢に早足で向かっていく。

 

「待ってよ! ケッセルリンク」

 

レダもケッセルリンクを追っていく。

ランスもついて行こうとするが、

 

「ランスさん。言い付けの物は用意できましたが、それはどうすればいいですか?」

 

ルルリナの言葉に足を止める。

 

「もう出来たのか。オーケオーケ」

「ムシも魔人も今の所動きありません」

「そうか…なら予定通りに実行するか。が、その前に…」

 

 

 

「…何やってるんでしょうかねえホント」

 

コーラはカラー達からは見つからないようにアーズラの状況を把握していた。

神であるならばこの程度は造作もない事だ。

 

「まあ勇者なら自力で逃げ出せるでしょうけどね」

 

勇者とはそういう存在だ。

思わぬ幸運が発生しここから出れるかもしれないし、勇者特性から協力してくれるカラーが現れるかもしれない。

いずれにしてもここから出れる事には変わりはない。

 

「ん…?」

 

その勇者の牢に一人のカラーと、金髪の女が入って行ったが、金髪の女の方に何か違和感を感じた。

 

「まあどうでもいいですね」

 

だが一瞬で興味を失うと、その会話を盗み聞く。

 

 

勇者アーズラの前に、突如として二人の美女が現れた。

簀巻きにされて、放り投げられていたアーズラにはまさにその二人は天使に見えた。

(おお…)

一人はカラーには珍しい、ショートへアのカラー。

少しきつめの眼差しがとても印象的で、そして何よりもその服の上からでも分かる盛り上がり。

今まで見て来た女性の中でも一番大きいかもしれない。

そしてもう一人は金髪の美しい女性。

耳の形状からしてカラーでは無いのは分かるが、それでもまさに神々しいと言わざるを得ない容姿だ。

サラリと靡く美しい金髪に、鎧の上からでも分かる大きな胸。

まさに極上の美女と言っても過言ではない。

そしてその口から発せられたのは、

 

「こいつが報告にあった変態仮面か」

「下着を盗むだけでなく顔に被るとか…どうしようもない変態ね」

 

まさに氷雪吹雪…いや、スノーレーザー級の冷たい言葉だった。

 

「ま、待って下さい! 違うんです!」

 

あれは全て不幸な偶然なのだ。

 

「僕はただ皆さんの水浴びを…」

 

見ていただけなんです! この一言を言おうとして言葉に詰る。

(どっちにしろ最低な事には変わりないじゃないか!)

男の言葉に、二人の視線がスノーレーザー級からシベリア級に変わる。

 

「…ランスとは違う意味で女の敵だな」

「…ランスもランスであれだけど、下着そのものにはあまり興味ないものね」

 

二人の視線の冷たさにアーズラは顔を背けるが、二人の視線の鋭さは変わらない。

 

「どうするべきだと思う?」

「…ルルリナ様に頼んで呪いをかけてもらうか。そうだな…女性の下着を見ると嘔吐するような呪いがあったはずだ」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

女性の下着を見ると嘔吐する呪いという言葉は流石に聞き逃す事は出来ない。

何しろ彼は勇者…勇者とは意図せずして女性の下着が見えてしまう時があるのだ。

その度に嘔吐をしては、まともな生活を送る事も出来なくなる。

 

「そ、それだけは許してください!」

「女性の下着を顔に身につける変態に、許しを請う権利があると思う?」

「断じて許す事は出来ないな。命を取らないだけでも有りがたく思うのだな」

 

どこまでも冷たい声にアーズラは背筋が凍る。

このまま自分は、女性の下着を見るたびに嘔吐する、別の意味での変態に成り下がるのか…と覚悟した時だった。

 

「で、こいつがその変態仮面か」

 

その時救い主? が現れた。

そこにいたのは以外にも男…それもまだ若い。

どう見ても20歳にはいって無さそうに見えるが、何故このカラーの村にいるのだろうかと不思議に思った。

 

「ランスか。今女王に呪いをかけてもらおうと話し合っていた所だ」

「あんたも呪われたほうがいいような気はするけどね…」

「アホ、恐ろしい事を言うな。だが…」

 

ランスはそこで考える。

ランスにとって今の状況では男など必要無い。

リックやパットンといったランスにとって無害な男なら構わないが、今目の前にいるのはランスにとっては何となく気に食わない男だった。

それはランスが本能的に感じたものだったのかもしれない。

だからこそランスは思いついた。

(そうだ、こいつを時間稼ぎのコマにすればいい)

「おい、レダ。ケッセルリンク」

 

ランスはレダとケッセルリンクに耳打ちする。

 

「…成る程ね。ランスの計画の内のまだ埋まってなかった部分を埋めるのね」

「しかし大丈夫か? この変態があっさりと死ねば結局は意味が無いぞ」

 

(え? 死ぬって何?)

少し聞こえてきた声にアーズラは身を震わせる。

この男の耳打ちに、二人の女性からは冷ややかな冷気は少し消えてきているが、逆にもっと物騒な目に変わる。

(うう…この二人の目…養ウシ場のウシをでもみるかのように冷たい目だ…残酷な目だ…

「かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命だ」って感じの…)

 

「わかった」

(え? わかったって何が?)

ケッセルリンクの言葉にアーズラの体からは冷や汗が止まらなくなる。

 

「この変態仮面の命がカラーの未来を作るというのであれば、お前の案を受けよう。女王には私から話しておく」

「まあ意外といい案じゃないかな。見たところ結構強そうだし」

 

非常に物騒な言葉に少し下半身が緩みそうになる。

 

「よし、じゃあ準備をさせてくるか」

 

ランスはこの時本人にも意外な事だが、非常に真面目に魔人を倒そうと思っていた。

勿論それは崇高な目的ではなく、ケッセルリンクを完全に自分のモノにするためなのだが…

 

「そうだな。こんな変態よりも今はやる事があったな」

「そうね。まずはアイツをどうにかしないといけないわね」

 

物騒な言葉と共に三人は出て行くが、アーズラはより不安になる。

呪いをかけられるという言葉に震えたが、今はあの男が二人に耳打ちした言葉が気になる。

そしてそれを受け入れたあの二人の女性…

(い、一体何がおきているんだ?)

勇者アーズラ、本当なら特に名前も残さないまま歴史に埋もれるはずの勇者。

だが、本来ありえないはずの人間との出会いにより、勇者の運命もまた変わっていく。

 

 

 

SS420年―――

AL教団が設立されてから120年。

女神ALICEはようやく形になってきた事に喜びを覚えていた。

(これでようやく動かせるかしらね)

神は人に「神魔法」という技術を与えた。

人はそれを神の力とし、AL教団を作った。

だがそれは、この世界をより面白くしようとする神のイタズラにすぎない。

女神ALICEの意向によって、あらゆる意思決定がなされ、神による直接の運営がされる組織にすぎない。

「さて、どうすればこの世界を面白く出来るかしらね」

創造神はメインプレイヤーがもがき苦しむ事を望んでいる。

ならな自分がそのメインプレイヤーを使用して、この世界に新たな混乱を作り出すのだ。

「楽しくなりそうね」

女神ALICEは本当に楽しそうに笑う。

この本来の歴史とはかけ離れた歴史となってしまっているこの世界で。

 




まずは先に勇者を登場させるのを忘れていました…プロットに書いてあるのに
何のためのプロットだよと小一時間ほど問い詰めたい

思った以上に勇者のくだりが長くなってしまいました…
勇者が不幸なのはデフォです
さらに超幸運のランスと出会うことでさらに不幸になっていく

シリアスが続くのはどうしてもNC期以降になってしまう…
SS期は本当に動きが無いから書きやすいと言えば書きやすいですが、
やっぱりもっと何か動きがあってもいいよなあと思いましたが、
ぶっちゃけそこまで設定を考える必要もない気もしてます…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。