ランス再び   作:メケネコ

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対抗策は…

「黒部!」

 ランスの手を掴んで引き上げるのは、妖怪王であり今は藤原石丸に仕えている黒部だ。

「話は後だ! 魔人が来たってんならとっとと引き上げるぞ!」

「お前が仕切るな! …まあいい、とにかく今は退くぞ! お前ら遅れるなよ!」

「「「はい!!!」」」

 何はともあれ、ランスは魔物大将軍を倒したという大戦果をあげたにも関わらず、苦い顔でこの場を去っていく。

 魔人の参戦…それはカオス無しでは絶対に勝つ事が出来ない相手。

 過去にランスも大いに苦しめられた存在である魔人が、再びランスの前に立ちふさがった瞬間だった。

 

 

 

「あーーー…酷え目にあったぜ」

 崖から落ち、少しの間動かなかったレキシントンだが、その顔には確かな笑みが浮かんでいる。

「があっはっはっはっは! 見事に儂から逃げおったわ! 中々楽しい喧嘩になりそうだな!」

「ご機嫌だねえ。レキシントン」

 そんな主に嬉しそうな笑みを浮かべるジュノーに対し、

「だ、大丈夫ですか? レキシントン様!」

 アトランタは心配そうにレキシントンを見る。

「無事に決まってるだろうが! 今すぐお前とやれるぐらいにな!」

 レキシントンは豪快に笑いながら起き上がる。

 その股間はギンギンにいきり立っており、アトランタはそれを見て笑みを浮かべる。

「流石レキシントン様!」

「があっはっはっはっは!」

 盛り上がる魔人と使徒を尻目に、生き残っている魔物達が恐る恐るレキシントン達に近づいていく。

 そして意を決したように、1体の魔物隊長がレキシントンに声をかける。

「あ、あの…レキシントン様。これより我等はどうすればいいのでしょうか。今回の事で全ての魔物将軍を失いました」

 確かに魔人レキシントンという存在は大きいが、それでも魔物大将軍以下、全ての魔物将軍がこの戦いで戦死してしまった。

 魔物兵の弱点として、魔人や魔物大将軍、そして魔物将軍がいなければ魔物は軍としても行動が一切出来なくなる。

 魔物兵を200率いるのが精一杯の魔物隊長としては、これからどのようにすれば良いか分からなかった。

 もしこの場に魔人レキシントンがいなければ、魔物隊長のスーツを脱ぎ捨ててどこかに逃げてしまっていてもおかしくは無い。

「ああ!!?」

「ひいっ!」

 しかしレキシントンの言葉は魔物隊長の望んでいた言葉ではなかった。

 鋭い眼光で自分を睨み付けるレキシントンの姿が非常に恐ろしい。

 今にも自分は殺されるのではないかという勢いに、魔物隊長はただただ震えるしかなかった。

「まあまあ落ち着いてよレキシントン。人間達を追う前にちょっと休憩してもいいんじゃないかな?」

「あん? …まあそうだな。酒も切れてきたことだしな…よし、一旦戻るか」

 今にも魔物隊長に殴りかかりそうなレキシントンをジュノーは諌めると、魔物隊長の体を叩く。

「そういう訳だから案内をするように。でも…レキシントンの邪魔をしたらただじゃおかないよ」

「は、はい…ジュノー様…」

 普段から飄々として、捉え所の無い部分もあるジュノーだが、その声の圧力は本物だ。

 つまりはレキシントンの楽しみを邪魔をすれば、その使徒に殺される…その恐怖から魔物隊長の言葉は震えに震えている。

「で、魔物大将軍が死んだけどさ、ザビエルの所に戻るのかい?」

 先程の低い言葉を発した者と同一人物とは思えない程の明るい声色でジュノーが問いかける。

 そのギャップに魔物隊長は慌てながらも、

「い、いえ…今はカミーラ様がいらっしゃっています」

「………」

 その魔物隊長の言葉にジュノーは無言になる。

「はあ…また巨乳か」

 そして憂鬱そうにため息をつくのだった。

 

 

 

 カミーラのテント―――そこでは二人の使徒がカミーラの前に跪いていた。

「カミーラ様。ランス様が魔物大将軍バートリーを倒しました」

 そういうシャロンの言葉には明るさは無い。

 シャロンとしても、ランスが生き延びたことは素直に嬉しいし、主であるケッセルリンクもこの戦いでランスが命を落とすのは望まないだろう。

 しかし、あの魔物大将軍以上の危機が今まさにランスに迫っているのは紛れも無い現実なのだ。

「代わりに…という訳ではないでしょうが、魔人レキシントン様が現れました」

 パレロアの言葉にも喜びは無く、その声は硬い。

 魔人が戦場に現れる…この意味を使徒であるシャロンとパレロアは嫌と言うほど知っている。

 そして現れたのは、よりにもよってあの魔人レキシントンなのだ。

 パレロアの言葉を聞いて、流石のカミーラも表情を動かす。

「まさかレキシントン様が…」

 七星もその報告には苦い顔をする。

 魔人レキシントン…それは魔王ナイチサが作った魔人の中でも非常に強力な魔人だ。

 鬼の魔人であり、その強さはカミーラも認める所であり、魔人四天王には入ってはいないが間違いなく上位に入る強さを持つ魔人だ。

 何よりも非常に好戦的であり、あのトッポスとも長時間戦うという程だ。

 よりにもよってその魔人が現れて、ランスに目をつけたようだ。

「…気に入らんな」

 カミーラがそう言うだけで、周囲の気温は間違いなく下がる。

 それだけで使徒であるはずのシャロンとパレロアも自然と体が震えてくるほどだ。

「カミーラ様、如何致しましょうか。ここでレキシントン様が来たという事は、間違いなくザビエル様の要請でしょう」

「ザビエルがな…魔王に忠実なあいつがやりそうな事だ…」

 魔王ナイチサの忠臣とも言えるザビエルならば、藤原石丸の抹殺の邪魔をする者は絶対に許さないだろう。

 そしてその役目をこの場にいるカミーラに任せないのは、ナイチサがカミーラが自由に動くのを好まないためだ。

「七星…」

「はっ!」

「JAPANの動向を注視しろ。藤原石丸、そして月餅が死んだらそれを急いでナイチサに知らせろ…」

「は…?」

 カミーラの言葉に思わず七星は疑問の声を出す。

 それだけカミーラの命令が奇妙なものに思えたからだ。

「ナイチサはその二人が死ねば必ず兵を退かせる…」

「わかりました。急ぎJAPANに兵を向かわせます」

 カミーラの言葉を聞き、七星は急ぎ走っていく。

 これは時間との勝負であり、もし長引けばそれだけランスの命は危険にさらされる。

(ランス殿はカミーラ様のモノ…手を出させる訳にはいかぬ)

 もし今回の魔王の命令が無ければ、カミーラは自らが赴いてランスと戦っていただろう。

 しかし今回はこれが出来ない…カミーラの内心は七星には完全には分からないが、それでも分かっているのはランスを倒すのはカミーラでなければならないという事だ。

「お前達はランスに伝えろ…時間を稼げとな。レキシントンならば兵を率いるという事は無い」

「かしこまりました」

「では参ります」

 カミーラの命令を聞き、シャロンとパレロアも急いで行動を開始する。

 一人になったカミーラは、苛立ち気に自分の座る椅子を握る。

「私が動けぬときに限ってランスが表に立つか…ままならぬな」

 ランスが先頭に立って戦っている時に限り自分は動く事が出来ない。

 それがもどかしくもあり…

「だが…奴が強くなるのもまた良しか。このカミーラの力を見せ付けるのには十分か」

 同時に嬉しくもある。

 戯骸を倒し、魔物大将軍を倒した。

 そして今は魔人レキシントンと争おうとしている。

「ククク…レキシントン、貴様には渡さんよ」

 カミーラは一人笑い続ける。

 いずれ訪れるであろうランスとの戦いを楽しみにしながら。

 

 

 

「ここまで来ればもう大丈夫だろ」

「そうね。魔物大将軍も死んでるし、いくら魔人が居たとしてもそんな簡単には攻めては来れないでしょ」

 ランス達はようやく一息つける場所まで逃げてくる。

 本来は魔物大将軍を倒した事で大勝利…となるはずだったが、まさかの魔人の参戦は予想以上に人類の神経を削っていた。

 ランス、レダ、大まおー、ベゼルアイ、そして合流した黒部を除いて皆が倒れ伏している。

 ランス達に付き従う者達はJAPAN、大陸の猛者である事は間違いないのだが、それでも今回は限界に近いようだ。

「軟弱だな」

「ラ、ランスさんが異常なんですよ…」

 エルシールも激しく深呼吸をしながらランスを軽く睨む。

 ランスが異常に強いことは知ってはいるが、昔よりもより強くなっている。

 ランスと自分の強さを比較することは間違っているとは思ってはいるが、より一層その差が広がっているのが嫌でも実感出来る。

「黒部!」

「おう、スラル! 久しぶりだな!」

 そしてスラルはランスの剣から姿を現すと黒部に向かって抱きつこうとして、その手がスカる。

 それにスラルは少し悲しそうな顔をするが、黒部は気にしないようにかつてのように笑ってみせる。

「ランス、お前もな」

 同じようにランスに向かってその牙を見せ付けるように笑い―――

「何が久しぶりだ! このアホが!」

 

 ゲシッ!

 

「何しやがる!」

 ランスキックが黒部に決まるが、黒部の巨体はそんなものでは揺るがない。

「やかましい! 今まで何していやがった!」

「あん!? それをお前が言うか! お前こそ俺を置いて勝手に消えやがって!」

 ランスと黒部がしばらく睨み合うが、

「まあいい。で、何でお前がここにいる」

 珍しくランスの方から引き下がる。

「あ、それ私も気になります。黒部さん、石丸様の所にいましたよね? それに黒部さんがここに居るという事は…」

 与一の言葉に黒部は苦い顔をする。

「…天満橋まで追い込まれた。そこまで来たら妖怪達も俺の側にいる必要はねえからな。だからよ…石丸の奴が言ったのさ。俺はここに行けってな」

「…そうですか」

 黒部の言葉に与一、そしてほのかが目を伏せる。

 与一もほのかも藤原石丸に仕えていた故に黒部の言葉を理解してしまった。

(…もう無理か)

 勿論石丸は最後まで諦めないだろうが、状況はとうとう最悪にまで達してしまった。

 何とか魔物大将軍を撃破する事は出来たが、まだ肝心の魔人は残っているのだ。

 それに魔人ザビエルに加えて、魔人レキシントンまで出てきてしまった。

「とりあえずは戻りましょうか。体を休める必要があります」

 巴が疲れた顔で放つ言葉に誰もが頷く。

 今回は色々な事が有り過ぎ、全員が疲れきっている。

「ランス、取りあえずは戻りましょう。黒部も…あなたにも色々聞きたいし」

「…フン、帰るぞ」

 ランスも普段からは考えられないくらいに真面目に、そして少し不愉快そうにしている。

 そんなランスを見ながら、スラルはある決意を固める。

(あの魔人は今までのカミーラとは違う…無敵結界がある限り、ランスでも魔人には勝てない)

 それは人間にとっては当たり前のことであり、いかにランスが強くとも…例えあの藤原石丸と共に戦おうとも魔人を倒すという事は出来ない。

 カミーラはプラチナドラゴンとしての自分に屈服させるため、あえて無敵結界を使用していないだけに過ぎない。

(ランスも知らないこの剣の力…人間が使うには危険かもしれない。でも…それ以外には方法は無い)

 スラルは意を決して、ランスの剣の中の深層に潜る決意をする。

 全てはランスが生き残るために。

 

 

 

 魔軍陣営―――

「ぐわっはっはっは! 酒だ! もっと酒をもって来い!」

「きゃー! レキシントン様ー!」

「相変わらずだねえ、レキシントンは」

 豪快に酒を飲むレキシントンをアトランタが杖を振って応援する。

 ジュノーもそんなレキシントンを見て嬉しそうにしている。

 そして大変なのはレキシントンに酒を運ぶ魔物兵達だ。

「うう…もう飲めない…」

「おえええぇぇぇぇぇ!」

 魔物隊長をはじめとした魔物兵達も、レキシントンに付き合わされて酒を飲まされている。

 それもレキシントンが、

『儂に何か言いたければまず酒を飲め』

 と言ってきたたため、魔物隊長達は酒を飲まなければならない。

 最早自分達を纏める魔物大将軍バートリーはいないし、魔物将軍ももう残っていない。

 本陣に戻れば魔人カミーラも居るし、魔物将軍キャロットも居るのだが、そもそも自分達は魔人カミーラに追い立てられる形で出陣した身だ。

 魔人カミーラが魔物大将軍バートリーを疎んじていた事は明らかだし、そんな自分達がその人間達を倒さずに本陣に戻ったとあっては、カミーラに何をされるか分からない。

 そうならないためには何としても人間を倒さなければならないが、問題なのは魔物将軍も、魔物大将軍ももう存在していないことだ。

 つまりは魔人レキシントンに縋る以外に他は無いのだ。

「しかしあの人間…中々楽しめそうだな」

 レキシントンは自分の体を撫でながら嬉しそうに笑う。

「そんなにかい? レキシントン?」

「おうよ! あの人間の一撃はこの儂にたたらを踏ませた…人間がだぞ。トッポスと戦って以来か、こんな衝撃は」

 魔人レキシントンはあのトッポスとも激闘を繰り広げた戦闘狂とも呼べる存在だ。

 流石のレキシントンもトッポスを倒すことが出来ず、またトッポスも無敵結界を持つレキシントンを倒すことが出来ず、長期に渡って戦いは続いたが結局はナイチサの召集があって終わってしまった。

「戯骸を倒したっていうのも嘘じゃねえな。楽しい喧嘩になりそうだぜ」

 レキシントンは笑うと再び酒を飲み始める。

 その目には確かな喜びが浮かんでいた。

 

 

 

 そしてランス達人類軍…魔物大将軍を倒したにも拘らず、その顔は沈んでいた。

 あらたな魔人の参戦はそれほど重いものであり、魔物の一軍よりも魔人1体の方が恐ろしいのだ。

 自分達の大将の藤原石丸の力をもってしても、無敵結界の前には無力…それは今の人類は皆知っている。

 どれだけ強かろうとも、例え帝であろうとも魔人の前には悲しいほどに無力なのだ。

 魔人ザビエルだけでも人類軍は壊滅寸前にまで追い詰められているのに、そこにあらたな魔人が来たとあってはまさに絶望するしかない。

 誰もが押し黙る中、それぞれはとりあえずの休息を取る。

 黒部だけは同僚の人間と話し込んでいるようだが、それ以外の者はとりあえず解散してそれぞれ休んでいる。

 そしてランスは自分の部屋で考え事をしている。

 勿論それは新しく現れた魔人に対してだ。

「ランス…どうするの? ここにはカオスは無いし、カミーラみたいに無敵結界を解除してくれる訳じゃなさそうよ」

「うーむ…」

 レダの言葉にはランスも唸るしかない。

 レダの言っている事は事実であり、いくらランスでもカオスの力無くして魔人には手も足も出ない。

 以前に戦ったホルスの魔人であるメガラスとの戦いでもそれは嫌でも理解している。

 カミーラは無敵結界を使わずに戦っているのはカミーラ自身の矜持に過ぎない。

(カオスが無かった時何かした記憶はあるんだがな…何だったか)

 ランスは過去にカオスを持つ前に魔人に対して何かをした記憶はあるのだが、それを思い出すことが出来ない。

(えーとそうだ。シィルがサテラに囚われて…あ)

「そうだ。セルさんが使った魔法があるではないか! レダ、お前使えるか!?」

「…セルってだれ? 具体的な名前を言ってくれないと私分からないんだけど…」

 初めて出る名前にレダは困惑するしかない。

「えーと確か…なんつー名前だったか」

 ランスが思い出したのは、かつてシィルがサテラに捕まっていた時にセル・カーチゴルフが使用した魔法だ。

 人類がカオスと日光以外に魔人に対抗できる唯一の方法。

 しかしランスはその仕組みまでは覚えていない。

「確かリーザスの聖防具を使ってなんかやってたな…」

 その時はリーザス聖剣、聖鎧、聖盾を使用していた事までは思い出したが、肝心の魔法が思い出せない。

 魔法にはあまり詳しくないランスは、どんな魔法なのかは思い出したが、肝心の名称までは思い出すことは出来ないでいた。

「リーザスの聖防具って言われても…正直私にはさっぱりなんだけど」

 レダも一般的な魔法…ヒーリングや防御魔法は知っているが、ランスの言いたい魔法が何なのかまではさっぱり分からない。

 ランスが言いたいのは魔封印結界という魔法なのだが、エンジェルナイトであるレダにはそれが分からない。

「あ…どっちにしろだめか。聖なるアイテムとかが必要だったな。今そんなものは無いからな」

「そうなんだ。正直私には何の話かさっぱり分からないけど」

「ぐぬぬ…」

 ランスは内心では結構焦っていた。

 あのうるさい下品な剣が無ければ、例えランスがどれほど強くなろうとも魔人に勝つ事は出来ない。

 いや、それ以前に戦うことすらも出来ないのだ。

 ゼスの時もあれほど魔軍に攻め込まれても何とかなったのは、やはりランスが魔人を倒したからなのだ。

 その時もカオスがあったからランスもそれほど焦らなかったが、今はその手元にカオスが無い上に、カオスがあるであろうホルスの戦艦にはなんと魔王がいるという。

 これでは到底カオスを探すなど出来る訳が無い。

 だが、そもそもこの時代にまだカオスが存在していない事をランスは知らない。

 その時誰かがランスの部屋をノックする。

「誰だ」

「私です。ランス様」

「その声はシャロンか! おう、入っていいぞ」

「失礼します」

 ランスの部屋に入ってきたのは、ケッセルリンクの使徒であるシャロンとパレロアの二人だ。

「…大変な事になりましたね」

「全くだ! 何で魔人がきやがる! ザビエルだけじゃなかったのか!」

「落ち着きなさいよランス。シャロンとパレロアに言っても仕方ないでしょ」

 怒るランスをレダが嗜める。

 ランスもそれを分かっているのか、不貞腐れたようにベッドに腰を下ろす。

「で、どうなっとる。来ていたのはカミーラじゃなかったのか」

「そのはずでしたが…どうやらそのザビエル様がレキシントン様を呼んだようなのです。ランスさんが使徒戯骸を倒したことで、警戒をされたのだと思います」

「次から次へと…」

 戯骸を倒し、魔物大将軍を倒したにも関わらず、状況は好転していない。

 とりあえず軍としての魔軍は退いたようだが、魔人がいるのであればより悪くなっているとも言える。

「その魔人レキシントン様の事ですが…ランス様はレキシントン様の事を知っていますか?」

「知らん。どっかで聞いたことあるような気がしないでもないが。あ、だけどアトランタは知ってるぞ。魔人の使徒なんだろ」

「はい。アトランタ様はレキシントン様の使徒です。そしてもう一人の全裸の男性が、同じ使徒であるジュノー様です」

「全裸の使徒? アトランタ以外にそんなのいたか?」

 ランスは男の裸という見苦しいものの記憶を完全に消してしまっている。

 だから、使徒であるジュノーの事は全く覚えていない。

 例えそれが先程出会った存在だったとしてもだ。

「とにかく魔人レキシントン様は…強いです」

 シャロンの言葉にランスは無言になる。

 その言葉の意味はランスも嫌でも理解してしまっている。

 あの魔人は相当に強い…それが今回刃を交えたランスの感想だ。

 それが無敵結界を持って襲い掛かってくるのだから、人類としてはたまったものではないだろう。

「ですが…単独で動かれる方です。ですので、軍を率いて襲ってくるという事はあまり無いと思います。カミーラ様の命で、残った魔物将軍は動けませんから」

「それは…あまり慰めにはならないわね。魔人は単体で強いからこそ厄介だし」

 パレロアの言葉を聞いても何の慰めにもならない。

 結局は魔人を止める手段がランス達には無いのだ。

「ええ…私達もそれ以上の情報はありません。ですが…」

「ですが、何よ」

「その…レキシントン様は結構単純な方です。真正面から相手に向かっていく…そんな方です」

「ふーん…」

 ランスはそれを聞いて、非常に悪い笑みを浮かべる。

 相手が単純な相手…そんな奴はランスはこれまで何度も倒してきた。

 それは仲間に卑怯だの卑劣だの言われているが、全ては勝ってこそだ。

 卑怯だろうがなんだろうがランスにはまずは勝つ事が全てなのだ。

「まあ何とかなる…はずだ。それよりも…」

 ランスはベッドから立ち上がると、二人のメイドに抱きつく。

「がはははは! お前達! 久しぶりにやるぞ!」

「別に構いませんけど…お疲れではないのですか?」

「余裕だ余裕! まさか断らないだろうな」

 ランスの視線を受けて、シャロンとパレロアは笑う。

「断りませんよ。私はランス様に受けた恩を忘れません」

「私もです…それに私はあの時ランスさんに何も言えずに分かれてしまいましたから」

「うむうむ、いい心がけだ。ではやるぞー!」

 ランスは上機嫌にシャロンとパレロアをベッドに押し倒す。

「レダ、お前も来るか」

「冗談。私ももう寝るわ」

 ランスの言葉にレダは笑うと、そのままランスの部屋を出て行く。

「ではやるぞー! とーーーーーっ!!」

 そのままランスはシャロンとパレロアの体を一晩中楽しんだ。

 

 




中々話が進まない…PCの前に座れる事が少ない上に文も進まないという悪循環です

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