ランス再び   作:メケネコ

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まず最初に感想においてのコーラについてお詫びいたします
設定ミスとか一番やっちゃいけいない事です…申し訳ありません
ただ、話の大筋には影響が無いのでこのままいかせて頂きます
ご指摘、感謝致します




魔人オウゴンダマ

オウゴンダマとは、最初の魔王であるククルククルの出身の種族である。

魔王という制度が作られ、最初のメインプレイヤーの敵であった存在。

それが「丸いもの」という種族だ。

しかし魔王ククルククルはドラゴンとの戦いに敗れ、新たな魔王であるアベルが生まれた。

そのアベルの時代でも「丸いもの」は生き延びた。

そしてアベルがドラゴンの王、マギーホアとの戦いに敗れ、新たな時代の一つが作られた。

その新たな時代をルドラサウムは飽き、その全てが消滅した。

新たなメインプレイヤーとして人間が作られ、メインプレイヤーの敵として新たなモンスターが作られた。

それでも「丸いもの」は消滅していなかった。

一部のムシと共に生き延び、その数を普通に増やしていった。

そしてその内の一体である「オウゴンダマ」は常々思っていた。

『何故新しく生まれた奴には、何かが生えているのだろう』と。

その新しい存在をそのオウゴンダマは何故か羨ましく思った。

そんなある日、たまたまある物を見つけた。

それこそが「魔血塊」、魔王が魔人を作り出すために必要な物。

だからその「オウゴンダマ」は躊躇いなくその魔血塊を取り込んだ。

かつて魔人だった者と精神の鬩ぎ合いはあったが、「オウゴンダマ」その意外なほどの意思の強さでそれを抑え込んだ。

気が付いた時には、自分には新しく生まれた奴のようなものが生えていた。

自分は浮いているはずだが、その時その新しく生えた器官から何かを感じた。

それは『足の裏』という感覚。

そして自分が歩いてるという感覚だった。

自覚したのは喜びであった。

魔人オウゴンダマは思った…この素晴らしい『肉体』をもっと色々な者に見て欲しいと。

自分の元に集まってきた「丸いもの」は自分の『肉体』を褒め称えてくれている。

しかし彼は不満だった。

『この肉体を同じ肉体を持つ者に見てもらいたい』

この欲求が彼を支配し、彼が向かった先にはカラーという種族がいた。

彼女達に自分の肉体を見て欲しく、その肉体をアピールしたが、帰ってきたのは無数の矢と魔法だった。

その攻撃は無敵結界によって防がれるが、オウゴンダマは悲しんだ。

『何故皆は自分の肉体を褒めてくれないのだろう?』

そんな悲しみからオウゴンダマは荒れた。

そしてこの前は攻撃してきたカラーと、『人間』という種族に対し反撃をした。

中でもその『人間』は手強く、その剣から発せられる衝撃は無敵結界すらも無視して自分に襲い掛かった。

だがそれでも自分のこの肉体には誰も傷つけることが出来なかった。

『ああ、なんて自分の肉体は素晴らしいのだろう』

そんな自分を称え、彼は己の肉体を誇示した。

生憎と誰も分かってはくれないが、何れは誰もが分かってくれる…そう信じて。

だがそんな彼に帰ってきたのは意外な言葉だった。

 

「あーもう! 無敵結界って本当に嫌になるわね! あんたのその筋肉は飾りかー!」

 

その言葉は彼に凄まじい衝撃を与えた。

そうだ、今まで自分が無傷なのはこの素晴らしい肉体ではなく、無敵結界のおかげなのだと。

だからこそ彼は一瞬無敵結界を解いてしまった。

肉体に感じたのは僅かな熱。

だがしかし、その熱すらも今の自分の肉体にはこの程度の傷しか作ることは出来ないのだと。

改めて己の肉体を誇示しようとした時、邪魔が入る。

それはムシと呼ばれる知能は低いが、優れた体を持つ強敵。

だからこそ彼はそれを迎え撃った。

ムシを倒した時には既にカラーと人間はいなくなっていた。

でも大丈夫、きっと彼女達は自分の肉体を分かってくれる…そんな期待を持って、オウゴンダマは再び歩き始めた。

そしてどの程度歩いたであろう。

自分の目の前にあるのは―――四角いジャングルだった。

その上には一人の仮面を被った『人間』が居た。

それを見た時、オウゴンダマは自分の心が強く動くのを感じた。

アレには自分が心惹かれる何かがある、と。

そしてリングの外には無数のカラーがいるが、なんと自分に与えられているのは歓声だった。

その時彼にはとてつもない喜びが体を襲った。

 

「キャーーーー!」

「ナイスバルク!」

 

色々な声援を受け、自分はその四角いジャングルへと歩いていく。

今はまだその肉体を誇示する場所ではない…そう言い聞かせ、彼は四角いジャングルに上がる。

仮面をつけた人間は自分よりも細身ではあるが、中々見事な肉体と言ってもいいだろう。

その人間が自分の体をアピールするかのように、軽快なパフォーマンスを披露する。

するとカラーからの歓声が大きくなり、その人間はそれに応えるかのように肉体をさらにアピールする。

それに対抗心を燃やし、彼も己の肉体をアピールした。

己の肉体を余すことなく見て欲しい…!

その渾身のポーズにかえってきたのは来たのは―――歓声。

『ああ…やはり自分の肉体を分かってくれた…筋肉は世界共通の言葉なのだ!』

改めて魔人オウゴンダマは感じた。

 

 

 

―――魔人オウゴンダマが現れた次の日―――

 

「がはははは!」

ランスの何時もの笑いが響く。

今、ランスの目の前にある光景は、カラー達が一生懸命ある物を作っている姿だった。

 

「ランス…本当にこんなモノが役に立つのか?」

 

ケッセルリンクは怪訝な表情でランスに問う。

 

「大丈夫だ。奴の無敵結界はこれで無効化出来る」

 

あまりにも自信満々のランスの言葉に、ケッセルリンクはやっぱり少し不安になるが、この男がそう言うのであれば賭けてみるのもいいと思っていた。

 

「だがあの格闘技能はどうする? お前とレダしか対抗は出来ないぞ」

 

ケッセルリンクのもう一つの不安は、あのオウゴンダマの格闘技術にあった。

仮に無敵結界を何とかするにしても、あの技はカラーには脅威だ。

自分でも対抗するのは不可能…つまりはランスとレダに頼るしかない。

 

「あん? 格闘技術?」

ランスの不思議そうな顔を、ケッセルリンクは疑問に思った。

 

「いや、あの肉体を駆使した技の事が」

「ああ、そうか。何か噛合わないと思ったが、お前達にはあれが『格闘』技術に見えていたのか」

「…違うのか?」

 

今度はケッセルリンクが不思議そうな顔をする。

自分の目から見れば、アレはどう見ても『格闘』という技能にしか見ることが出来なかった。

 

「私もちょっと違和感を覚えているのよね」

 

レダもあのオウゴンダマが『格闘』という技能を有しているのを少し疑問に思っていた。

『格闘』の技能を有している同僚は存在したが、その同僚が使う技とは少し違っていた気がしてならない。

最初は技能レベルの差かと思ったが、それにしてはあの魔人の行動には『無駄』が多いのだ。

「ランス…分かってるんでしょ? いい加減教えてくれてもよくない?」

「まあ別にもったいぶる事では無いな。奴の技能は『格闘』じゃない。『プロレス』だ」

 

その言葉に違った反応が返ってくる。

 

「『プロレス』とは何だ?」

「あーそうか! 『プロレス』だ!」

 

ケッセルリンクは『プロレス』という言葉に疑問を、レダはその言葉に理解を示す。

 

「ケッセルリンクは知らんのか? プロレス男というモンスターがいるのだ」

「プロレス男…いや、聞いたことが無いな」

「あーいるわね。そんなモンスター」

 

ランスも冒険者としての活動は長い。

その中でも色々なモンスターを倒して来た経験があるが、あの魔人の攻撃方法とプロレス男の攻撃は非常に似ていた。

 

「私は見たことが無いが…どんなモンスターだ?」

 

ケッセルリンクが見た事が無いのは無理はない。

本来はまだ生まれていない男の子モンスターであり、その誕生はもっと先の話だからだ。

 

「俺様も説明するのは難しいが…まあとにかく妙なモンスターだ。人間と姿はほとんど変わらんが、行動がとにかく派手で、無駄が多い」

「…それは妙なモンスターだな。しかしそれと今作っているモノには関係があるのか?」

「あるから作ってるに決まってるだろうが。後はもう一つの仕込みが必要だがな」

 

ランスの立てた計画は、ケッセルリンクとしては『そう上手くいくのだろうか?』と疑問が残るものだった。

が、今の状況ではこの計画以外には道は無い…この森を離れて、新たな森を探すことが出来るかはケッセルリンクも疑問だったからだ。

 

「大丈夫だ。絶対に上手くいく」

「この自信ってどこから来るのかなぁ…」

 

レダは少々疑問に思うが、この男なら『何かしそう』という感じもあった。

何しろ自分達エンジェルナイトをも倒したのだ。

付き合って分かるが、この男は底知れぬ何かを持っているのもレダも感じていた。

女神ALICEはそれ故に、エンジェルナイトである自分をすらも動かしたのだとも思っていた(誤解)。

 

「だが色々足りないものがあるのは事実だがな…」

「…お前の力に耐えうる剣は見つからなかったからな」

 

結局はランスの今の技術に耐えられる剣は、カラーの村の中には存在しなかった。

それだけ今のランスの技術はずば抜けていた。

 

「それは解決しそうだ。ああ、そうだケッセルリンク、レダお前も付き合え。それとレンジャー技能を持ってる奴と、魔法を少しは使える奴はいるか?」

「急にどうした?」

「なーに、ちょっとした探索だ」

 

 

 

―――魔人との決戦の日―――

 

「うーむ、見事に完成したな」

「ああ、お前の指示にしたがって作ったがこれでいいか?」

 

ランスの目の前には見事なリングが出来上がっていた。

カーボンの木で作られた4つのポスト、丈夫で弾力のある蔦で作られたロープ。

そしてそのリングの周りに置いてある沢山の椅子。

 

「アナウサ、お前も準備は出来てるか?」

「はーい! 大丈夫ですケッセルリンク様」

 

アナウサが勢いよく応える。

 

「頼むぞ。ランスの言葉ではお前の力が頼りだ」

「任せてくださいよー。私ってこういう才能あったのかな…」

 

この作戦は、意外にもアナウサ・カラーが鍵であった。

 

「私の方も準備いいわよ。ケッセルリンク、いつでも大丈夫よ」

「分かった」

 

レダとケッセルリンクにはまた別の仕事がある。

この仕事は危険であるため、カラーの中でも一番の実力を持つケッセルリンクと、やはり力がずば抜けているレダが選ばれた。

 

「あー…無理はするなよ」

「…ああ、大丈夫だ」

 

ランスの意外な声にケッセルリンクは少し驚いた。

それは本当に自分を心配してくれている声…あの普段から自信に満ち溢れているランスがこんな声を出すのか、と思って少し嬉しかった。

 

「それと、だ」

 

ランスは改めてケッセルリンクに向き直る。

 

「改めて言うが、俺様の女になれ。ケッセルリンク」

「…お前は本当にそればかりだな」

 

ケッセルリンクにあるのは呆れの表情だが、ランスの顔は本気に見えた。

(いや、この男は最初から最後まで本気なのだろうな…)

この男は本気で自分を欲している、それは十分に理解出来た。

正直、こんな関係になるとは自分でも思っていなかった。

最初の出会いからこれまで、まさに今まで生きてきた中でも、1番の衝撃だった。

中でもあの廃棄迷宮での出来事…それが一番の衝撃。

 

「前にも言っただろう。ならば魔人を倒して見せろとな」

「俺様ならば魔人を倒すくらい容易い事だ。だとすれば既にお前は俺様の女になったと

いうことだな!」

 

ランスがいつもの笑い声をあげる。

(…本当にこいつの自信はどこからくるのやら)

が、今はそんな態度が有難い。

この男には人に夢を見させる力がある、改めてケッセルリンクはそう感じた。

ならば自分も今はこの男に賭けるのが一番だ。

 

「じゃあ行くわね」

「そうだな。そろそろ行くとしよう」

 

既に魔人が現れたという報告は受けている。

そして自分たちの目的の居場所も既に判明している。

ならば後は実行するのみ…レダとケッセルリンクは森に消えていった。

 

「あの…ランスさん…」

 

女王であるルルリナは恥ずかしそうに体を震わせていた。

 

「おおー…改めてみると似合っているではないか」

「ううう…あんまり嬉しくないです…」

 

ルルリナ・カラーは普段の服とは違う、もっと過激な服装に着替えていた。

その衣装こそ、まさにきゃんきゃんの衣装と言っても過言ではない。

無論ランスが作らせたモノだが、この服装もランスには必要なものだった。

(スレンダーだが中々いいではないか…)

 

「それよりも、きちんと出来たか?」

「それは大丈夫です。でも魔人に通用するでしょうか…」

 

ルルリナは不安そうにランスに尋ねる。

 

「大丈夫だ。俺様の作戦通りなら必ず通用する。俺様には実績があるからな」

 

そう、ランスは既に経験済みだ。

魔人にカラーの呪いは通用するのだ。

 

「ランスさーん!」

 

カラーの一人がランスの元へ走ってくる。

 

「魔人の姿が確認出来ました!」

「よーし。じゃあ始めるか。おい、変態仮面」

「変態仮面じゃ無いです…」

 

ランス達の側に居た変態仮面―――勇者アーズラは密かに涙を流した。

上半身裸で、下半身は妙なタイツのようなものを履かされ、そして顔にはそれこそ仮面がつけられていた。

何故かそれは蟹を模した仮面であった。

 

「お前の役割はそのリングで魔人と戦う事だ」

「いやその何でリングの上で魔人と戦う必要が…?」

 

ランスの立てた計画の不安要素の一つ、それがレダとケッセルリンクが戻って来るまでどうやって時間を稼ぐかだ。

生半可な事では魔人相手に時間を稼ぐことは不可能…かといって、ランスが時間を稼ぐのは本末転倒だ。

最初ランスはその辺の人間を捕まえてくこればいい程度に考えていたが、ちょうどいい壁役がカラーの森に現れた。

ランスにとっては男なぞほぼ消耗品であり、カラーの役に立つなら構わないという何時ものランス的な考え。

 

「なんだ? やっぱり呪いの方がいいか?」

「…戦いでお願いします」

 

勇者は綺麗に土下座をする。

もしケイブリスがそこに居れば、どちらの土下座が美しいかの土下座合戦が始まっていただろう。

 

「じゃあ上がれ。大丈夫だ、上手くやれば死なない」

「ううう…覗き一つで何でこんな事に…不幸だ…」

(しかもあの二人は何処かに行っちゃうし…)

 

せめてここにあのレダとケッセルリンクという女性が居れば、いい所を見せようと頑張れるのだろうが…

 

「ちなみに逃げた瞬間お前にはカラーの呪いがかかるからな」

「勘弁してください…」

 

ちなみに呪いとはその蟹の仮面。

カラーの呪いがかかっているその仮面は自分で脱ぐことが出来ない。

勿論勇者であればその呪いも何とか出来るのだが、今の彼はそんな事は知らない。

渋々とリングに上がると、周りのカラー達も皆備え付けてある椅子に座る。

ランスも一際豪華に作られた椅子にふんぞり返ると、一体の奇妙な魔人が近づいてくる。

それこそがこの前ランス達が戦った魔人オウゴンダマであった。

魔人オウゴンダマは、設置されたリングの前に動きを止める。

それは何かの葛藤を感じさせ、何かの喜びに震えているようでさえあった。

 

「よし、始めろ」

 

ランスの合図で、一部のカラーが音楽を流す。

それは非常に勇ましい音楽であり、戦意を高揚させるような激しい曲。

それに負けないように、椅子に座っているカラー達は立ち上がり、

 

「キャーーーー!」

「ナイスバルク!」

 

魔人に対して声援を送る。

 

「どうでしょうか…」

 

ルルリナは不安そうな顔をするが、ランスは余裕の表情だ。

 

「なーに大丈夫だ」

 

その言葉通り、魔人オウゴンダマは、悠々とリングに上がる。

それと同時に先にリングに上がっていた覆面勇者が自分の体をアピールする。

勿論これも事前に打ち合わせ済みだ。

そのパフォーマンスが終わると、今度は魔人オウゴンダマが己の肉体をアピールする。

実に奇妙な光景ではあるが、カラー達は打ち合わせ通り魔人にも声援を送る。

そして魔人のアピールが終わると、ランスはアナウサに合図を送る。

アナウサは小さく頷くと、魔法拡声器を手にして大きく息を吸う。

 

『さーて皆様やってまいりました! 今ここに謎の覆面レスラー、蟹ユーシャと魔人オウゴンダマの一戦が始まります!』

 

その声にカラー達は一斉に声を上げる。

勿論全てはランスの指示であり、言ってしまえばヤラセである。

 

『ここでレフリーのチェックが入ります…ああっと! 蟹ユーシャからは凶器が! これはいけません!』

 

リングの上には一人のカラーがボディチェックを行っている。

ここで蟹の覆面からは凶器が発見されるが、勿論全てがヤラセである。

 

『さーてこれでぶつかるのは己の肉体と肉体のみ! 何も無いまさにガチンコ対決! さぁ始まりだぁー!』

 

カァーーン!

 

鐘の音が鳴り響き、蟹ユーシャが魔人オウゴンダマに攻撃を仕掛ける。

それは逆水平チョップと呼ばれるもので、本来であれば魔人に対しては無敵結界で阻まれるはずの一撃。

 

『おーっと! オウゴンダマ避けない! その肉体で受け止めた―!』

「「「「「おおおおおーーーーーーー!!!!!」」」」」

 

大歓声が鳴り響き、辺りが歓声に包まれる。

 

「ランスさん!」

 

ルルリナ・カラーは少し興奮した様子でランスの名を呼ぶ。

ランスはそれを見てニヤリと笑って見せた。

 

「ククク…思った通りだ。この舞台を整えれば、必ず無敵結界を解くと思ったわ」

 

ランスの立てた作戦…それは『無敵結界が解除出来ないのであれば、相手に解除させればいい』というものだった。

かつてサテラから無敵結界は任意で解除が出来ると聞いて、ランスはこの計画をたてた。

相手がプロレスで来るのならば、それで迎え撃てばいい。

そうすれば相手は『無敵結界を解除せざるを得ない』からだ。

それがプロレスという技能の業なのだ。

 

「後はレダとケッセルリンクを待つだけだな」

 

ランスは既に己の作戦の勝利を確信していた。

 

 

 

「ククク…あはは…あーはっはっはっは!!」

 

その魔人と人間の戦いを見ている者が居る。

遠隔目玉でそれを見ているのは、魔王スラル。

魔王スラルは生まれて初めて腹を抱えて笑っていた。

 

「ま、まさかそんな手段があったなんて…」

 

無敵結界をどう解除するのか、スラルはランスがどのような方法を取るのか、研究者としても楽しみにしていた。

もし解除する方法があるとすれば、それを改善しなければいけないと思っていた。

だがまさか、こんな手段を取るなんて。

誰が考えるというのだ…『無敵結界を解除出来ないならば、相手に解除させればいい』とはスラルですら考えてもいなかった。

 

「やっぱりあの人間いいわね…」

 

あんな人間、今まで見た事も無い。

(あの人間…欲しいわね)

それはガルティアを魔人にして以来の欲求。

 

「でもまだ結界を解除させただけ。ここからどうするのかしらね?」

 

でもスラルはランスの勝利を微塵も疑ってはいなかった。

むしろここからどのようにランスが動くのか、それが楽しみだった。

 




ようやく魔人戦…の導入部です
でもやる事はプロレス(八百長)
馬鹿馬鹿しい手段だとは思いますが、ハウゼルもそんな感じだったし…
次でオウゴンダマとの決着がつきます

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