全てが終わり、人類の新たな歴史が、戦乱の戦いが続いていく。
それが収まるためにはこれから1000年以上の時間が必要になるのだが、神ならぬ人はその事を知らない。
JAPAN―――
「そうですか…黒部は死にましたか」
「はい…魔人レキシントンとの戦いで」
藤原巴の前に、中年の男が座っている。
男はため息をつくと、
「それよりも巴殿…あなたがあんな事をしなければ、もしかしたらあの男も石丸の配下に加わっていたかもしれない。そうなれば石丸も…」
「それは無理よ早雲。天は2つは必要ないもの。それに、ランスさんは石丸と同じく世界を統一する力は持っていたけど、その肝心の世界に興味が無い人だから」
男―――北条早雲は難しい顔をしているが、その内諦めた様に頭を押さえる。
「巴殿…本当に藤原の名を継ぐつもりは無いのですか? 今あなたが藤原を継いでくれれば私としてもいいのですが」
「生憎と私は藤原の名前は捨てたわ。今の私は武田巴。今更石丸の親族が現れました、なんて言っても余計に混乱を招くだけよ」
「…石丸の家族は壇ノ浦で消えました。妻も、子も一人残らず…だから余計にJAPANは混乱している。誰も帝になる事が出来ないのだから」
藤原石丸という絶対的な存在…帝を失い、JAPANは再び戦乱が起きる気配が燻っている。
いま誰も行動を起こさないのは、戦後の処理で誰もがそんな暇は無いからだ。
北条家も早雲が何とか生き延びたが、早雲自身自分がJAPANを治める器では無いと思っているため、どうする事も出来ずにいた。
だからこそ藤原巴に『藤原』を継いでほしかったが、彼女は藤原の名前を捨て『武田』と名前を変えた。
「それとランス殿は…」
「消えていたわ。あの時と同じようにね…だから誰も彼の事を追えない。だからランスさんの事は記録に残すべきではないわ。石丸がそうしたようにね」
「…それについては同感です。時代を超えるなど…記録に残しても誰も信じないでしょう」
ランスの事は記録に残さない事が巴と早雲、そしてあの戦いの場に居た者が決めた事だ。
勿論伝説の類は残るだろうが、公式な記録としてランスの名前は残らない。
いや、残してはならないのだ。
「それで月餅殿は?」
「…もう長くは無いと自分で言っていました。ですので、今は陰陽術…そして魔人ザビエルの封印の術を残そうと必死になっています」
月餅は魔人ザビエルを封印できたが、その代わりに自身も大怪我を負ってしまった。
その傷は深く、月餅自身も自分は長くは無いと悟っていた。
「ザビエルは…甦りますか」
「月餅の話では。彼がそう断言するのであれば、本当に復活するのでしょう」
遠い未来に魔人ザビエルは復活する…それが何時になるかは分からないが、それに備えるに越した事は無い。
「世界は…どうなると思いますか?」
「わかりませんね。しかし藤原石丸の力を持ってしても、魔人の一人も倒す事は出来なかった…それが今回の戦いの全てです。まだまだ人類は魔物の脅威からは解放されないでしょう」
魔軍は人間の領域から全て撤退したが、また何時襲って来るか分からない。
人々はその恐怖に脅えながら日々を過ごさなければならないのだ。
「私もセキメイを封印する事にしました。私にしか扱えない鬼ですし…それに『鬼』の魔人が暴れた事もありますし」
北条早雲は自分の式であるセキメイの封印を決めた。
元々早雲にしか扱えないという事も有り、今のこの戦乱の状況では更なる混乱を招きかねない。
帝の石丸が居た時のようにはいかないのだ。
「大陸は…もしかしたらJAPANよりも酷くなるかもしれませんね」
JAPANはまだマシな方かもしれないが、大陸はきっとまた争いが起きるだろう。
一人の偉大な英雄の死は、それほど大きな陰を人類に与えてしまった。
「あなたがランス殿の子を授かっていれば良かったのですけどね」
「私もそれを望んだけど残念ながら…でも将来、私の子孫がランスさんと出会うかもしれませんね」
巴は笑いながら、早雲は苦笑しながら茶を飲む。
(ランスさん…さようなら)
魔王城―――そこには二人の魔人が魔王の前に跪いていた。
「そうか…石丸は死に、ザビエルも封印されたか」
「はい。ナイチサ様」
二人の内の一人、魔人ケッセルリンクが頷く。
「如何なさいますか」
「…捨て置け。人間に封じられたのであれば、奴もそれまでの事」
魔王の言葉にケッセルリンクは内心で顔を歪める。
魔王にとっては魔人など駒の一つに過ぎないという事は分かっていたが、あのザビエルをこうもあっさり見捨てるとは流石に思っていなかった。
だからと言ってケッセルリンクには、いや、全ての魔人も魔物もあのザビエルを助けに行こうなどとは思わないだろう。
それだけ傲慢なザビエルの態度には皆腹が立っていたのだ。
「人間はどうなさいますか」
「…それも捨て置け。しばらくは奴等も大人しくしているだろう。また増えた後で殺せばいい」
「…はっ」
魔王ナイチサは非常に残忍で残虐だ。
遊び感覚で人間を殺し、如何なる手段を使ってでも人間を苦しめる。
が、ナイチサは人間を殺すのと同じくらい放置する事も多い。
今回も、魔王ナイチサの領に迫ったからこそザビエルに命じて藤原石丸を殺させたのだ。
「それよりも…全軍の撤退はさせたのか」
「はい。数が数故にもう少し時間はかかるでしょうが、魔物大将軍に任せれば問題は無いでしょう」
「ならばいい…お前達も下がるがいい」
「はっ…」
ナイチサの言葉にケッセルリンクとカミーラは立ち上がり、その場から早々に立ち去る。
二人としても、魔王ナイチサは特別会っていたい訳では無い。
だから二人はさっさと魔王の城を抜け出し、ケッセルリンクの城へと戻って来る。
「カミーラ…お前も中々に無茶をしたな。いや、させたと言うのが正しいか」
「魔物大将軍の1体や2体死んでも構わぬだろう…どうせ何も影響はない」
ケッセルリンクの使徒であるシャロンとパレロア…そして新たに使徒へと加わったエルシールが二人に上質なワインを注ぐ。
「ケッセルリンク様…」
「ああ…今はカミーラと二人にさせてくれ。お前達も自由にしてくれていい」
「「「はい。ケッセルリンク様」」」
三人は優雅に一礼すると、そのまま部屋を出ていく。
それを見届けたケッセルリンクは、早速そのワインに口をつける。
「あの女…ランスと共にいた女か」
「まさかお前が覚えていたとはな…流石のお前もランスの周りの者は覚えているか」
「下らぬ…私はお前がランスの周りの女を使徒にする事が理解出来ぬだけだ…」
カミーラの言葉にケッセルリンクは苦笑いを浮かべる。
「ランスと約束したからな…あいつは昔に私との…カラーとの約束を守った。だから私もそうする事を心がけているだけだよ」
「フン…まあ私にはどうでもいい事だ。しかしランスはまた強くなったようだな」
カミーラの言葉の響きが何処か嬉しそうな声色が混じっているのを感じ、ケッセルリンクも微笑する。
「相変わらずランスの事に関しては目ざとい…だが確かに強くなった。まさかレキシントンと戦い生き残るとはな」
「それよりも…奴は無敵結界を無視してレキシントンを斬った。ククク…無敵である事を望んだスラルの願いを、スラル自身が否定する…これほど滑稽な話は無いな」
「そう言うな…スラル様も不安の中で無敵結界を望んだのかもしれない。だが、確かにランスはレキシントンにダメージを与えた。尤も、誰もそんな事は気にもしてないがな」
何しろ魔人レキシントンはしょっちゅう他の魔人にも喧嘩を吹っ掛けるため、傷だらけになるのも珍しくは無い。
カミーラやケッセルリンクに挑んでは時たま大怪我をしているため、特に珍しい光景では無くなっていたのだ。
「次に会った時は褒美をくれてやるのもいいかもしれんな…」
「フッ…それを素直にランスに言えば、あいつも素直に喜ぶかもしれないぞ」
「喜ぶのは当然だ…このカミーラが与えるのだからな」
相変わらずの自信の塊のようなカミーラの言葉に、ケッセルリンクは苦笑する。
「とにかく…再びランスと会えるのは何時かは分からない。だが、次の時はどんな事をやるのか…私は今からそれが不安であり楽しみでもある」
「貴様も十分に奴に拘っていると思うがな…まあ暫くは退屈な日々を過ごすとしよう…」
「本当に良かったのですか? エルシール」
「いいんです、パレロアさん。私はランスさんに感謝していますが、ケッセルリンク様にも感謝していますから」
メイドの一室、そこではケッセルリンクの使徒であるシャロン、パレロア、エルシール、そしてもう一人のメイドが談話していた。
「その…ランスって人間は何なんですか? ケッセルリンク様もシャロンさんもパレロアさんもよくその人間の事を話してますけど」
「それは…一言では言えない人ですね。彼に関しては実際に会わなけば分からないですよ、バーバラ」
「…そんなものですか?」
エルシールよりも若干早くケッセルリンクのメイドとなった女性、バーバラが曖昧な顔で頷く。
彼女もまたケッセルリンクによって救われ、使徒となる事を選んだ女性の一人だ。
ただし、この中では唯一ランスとの接点が無い使徒でもある。
「あなたが捕らわれたと聞いた時は焦りましたよ」
パレロアがエルシールを見て心底安心したようにため息をつく。
「もう…パレロアさんも随分前の事を言うんですね。でももう本当に大丈夫ですから」
エルシールは苦笑しながらあの日の事を思い出す。
使徒アトランタに鏡にされたエルシールだが、その助けは予想以上に早く、そして予想外の人物によって助けられた。
「大丈夫ですか、レキシントン様」
「あん? この程度で儂がくたばる訳が無いだろ。まあ流石に予想はしたなかったがな」
レキシントンは本当に楽しそうに笑いながら自分の胸の傷をなぞる。
そこにはまだ真新しい大きな傷が出来ている。
もう血は止まってはいるが、それはアトランタから見ても痛々しい傷だ。
「でも満足してるんだろう?」
からかうようなジュノーの言葉にレキシントンは豪快に笑う。
「おう! まさか無敵結界を無視してくるとは予想すらせんかったわ! だからこそ次の戦いが楽しみよ!」
「それなのですが…人間のあの男が再びレキシントン様と戦える日が来るんですか? 人質として捕えはしましたけど、今思ったらあまり人質にはならない気が…」
アトランタの手元にある一枚の鏡には、エルシールが捕らわれている。
次の再戦のための人質という事で捕えはしたものの、相手は人間だ。
50年もすればその力は大きく衰えるだろうし、100年後には死んでいる。
そしてレキシントンと言えども、魔王の命令には逆らう事は出来ない。
つまりはランスと再び出会えるかもどうかも分からないのに、この人間が人質になるかと今更ながら疑問を抱いているのだ。
「構わねえよ! それに儂の勘だが…あの小僧とは絶対にまた会えるだろうよ」
「レキシントンの悪運と勘はすごいからね。そのレキシントンが会えると言うのなら会えるんだろうね。それに…」
そこでジュノーは唇を歪める。
レキシントンの所に近づいてきている気配を感じ、それが誰なのかを理解してゲンナリしているのだ。
「レキシントン。お前の使徒が捕えたその女性…渡してもらおうか」
「まさかお前がここに来るとはなあ…ケッセルリンク」
レキシントンは自分の前に現れたケッセルリンクを前にしても、豪快に酒を飲む。
ケッセルリンクは完全に戦闘態勢であり、その濃厚な魔人の気配はレキシントンをして鳥肌が立つほどだ。
「二度は言わない。鏡から女性を解放し、私に渡してもらう」
そう言うケッセルリンクの目は本気だ。
かつてレキシントンもケッセルリンクに戦いを挑んだ事も有る。
魔人四天王として名高い力、そして何よりも極上の美女だ。
元カラーだと言うとおり、その美しさは魔人の中でもずば抜けている。
しかし、戦いを挑んでもケッセルリンクは殆ど興味を示さず、ただただあしらわれていたのだが、そのケッセルリンクが戦闘態勢で居るというのはレキシントンにとっても僥倖だった。
「…いいぜ、アトランタ。その女を解放してやれ」
「レキシントン様!?」
己の主が他の魔人の頼み…いや、恫喝に等しい言葉を素直に受け入れたのを見て、アトランタは仰天してしまう。
「いいのかい? レキシントン」
ジュノーも驚いてはいるが、それでもレキシントンは普段と変わらぬ態度で酒を飲み続けているだけだ。
「アトランタ、お前も言ってただろ。この鏡の女は人質にはならないってな。だったら必要ねえ。まあ今ケッセルリンクと戦えないのは残念だが…まずは新しい得物を見つけなければならん」
「あ…」
そこでアトランタはレキシントンの持つ愛用の金棒が無くなっていた事を思い出す。
あの人間との戦いで、レキシントンは大きく傷つけられただけでなく、その金棒すらも失っていたのだ。
「流石に得物無しでマジのこいつとは戦える気がしねえ。だったら素直に渡しちまった方がいい」
レキシントンは恫喝に近いケッセルリンクの言葉にも何ら不快になる事無く笑う。
「それによ…あの小僧とはそう遠くない内に会えるだろうからな。だったら焦る事は無い」
「レキシントン様…?」
アトランタにはレキシントンの言っている事が分からないが、それでも主が決めた事ならばとそのまま鏡からエルシールを解放する。
「あ…ケ、ケッセルリンク様…」
「無事か、エルシール」
その二人の会話を聞いて、ジュノーは何かを察したように笑みを浮かべる。
「貰って行くぞ、レキシントン」
「構わねえよ。ああ、だがこれだけは頼んでおくぜ。あの小僧に伝えておけ。次までにもっと強くなってろとな」
レキシントンの言葉にケッセルリンクは何も答えずに、エルシールと共にレキシントンの前から消える。
「あの…レキシントン様。どういう事ですか?」
アトランタは主の態度に困惑して声をかける。
「どうこもこうもねえよ。カミーラもケッセルリンクもあの小僧の事を知ってやがるんだろうよ」
「え…?」
「理由は知らないし興味もねえ。だが、ただ分かっているのはあの小僧とは再び会えるって事だ。だったら焦る事はねえ。まずは新しい得物を見つける事から始めるか」
「楽しそうだねえ、レキシントン」
ジュノーの言葉にレキシントンは豪快に笑う。
レキシントンには今の魔物界の情勢など全く興味が無い。
カミーラの事もケッセルリンクの事も、レキシントンにはどうでもいい事なのだ。
「どれだけ先になるかは分からねえが…100年200年、いや500年先だろうが一向に構わねえよ」
レキシントンは酒樽を両手で持ち上げて、そのまま口をつけて豪快に飲み干す。
「まずは景気づけの一発だ! アトランタ! やるぞ!」
「きゃー! レキシントン様ー!」
アトランタも難しい事は完全に無視して、レキシントンとのセックスに没頭する。
そんなレキシントンを楽しそうに見ながらジュノーは一人思う。
(さて…俺も少し情報を集めておくのもいいかもしれないな。レキシントンの勘は当たるからね)
ジュノーは酒を手にこれからの事を楽しみにしながら笑っていた。
「正直魔人の使徒に捕えられた時は死を覚悟しましたけど…こうして無事でいられるのは何よりです」
「…私達よりも余程危なかったのですね」
「それもケッセルリンク様のおかげです」
シャロン、パレロア、エルシールは顔を見合わせてうんうんと頷く。
「いやちょっと待ってください。私の頭がおいつかないんですが…」
一人バーバラだけが頭を押さえながら必死で話を理解しようとする。
「シャロンさんはある国のお姫様で、処刑されそうになった所をそのランスという人間とケッセルリンク様に助けられたんですよね」
「そうですよ」
そこまではバーバラはまだ理解出来る。
「でも…その後魔人レッドアイとの戦いに巻き込まれて使徒になったのですよね」
「間違いありません」
「うーん…」
しかしそこからのぶっ飛んだ話には到底ついて行けなくなる。
「パレロアさんは…悪魔が関わっていたんですよね」
「はい…聞けばランスさん達はまたその悪魔に命を狙われたとか…無事で何よりです」
「そ、そうですか…」
パレロアの言葉にバーバラは頭が痛くなってくる。
「それでエルシールは…その…この間の人と魔人の戦争に参加してたんですよね?」
「ええ。魔物大将軍や魔人レキシントンとの戦いに巻き込まれましたけど、こうして生きています」
「………やっぱり理解出来るかー!」
そこでバーバラは頭を抱えて蹲ってしまう。
「うう…私は自分が不幸だと思ってたけど、正直この人達の方が余程辛い体験をしてそうなんですけど…魔人とか悪魔とか、私の不幸の範囲を超えてしまっている…」
バーバラにも勿論辛い過去が有り、そこから人生に絶望し死を選ぼうとしたところでケッセルリンクに救われた。
が、この三人に関しては救われたという幅があまりにも大きすぎる。
「魔人とか悪魔とか魔物大将軍とか…いや、それ以上にそれらと戦って生きているそのランスって人も気になりますけど…」
「…少し混乱しているみたいですね」
「でも嘘は言って無いんですよね…」
「バーバラの反応が普通の人の反応なのでしょう。正直エルシールが一番濃い体験をしていると思いますし」
シャロン、パレロア、エルシールはそれぞれランスと共に冒険に付き合わされていたが、エルシールはその中でもかなり濃い人生を過ごしただろう。
「あ、それと…これは気になってたんですけど、そのランスという人間とケッセルリンク様はどういう関係なんですか?」
バーバラも魔人と人間の関係は良く知っている。
バーバラも魔物と鉢合わせた経験はあるし、イカマンやぷりょくらいなら倒した事も有る。
使徒になって嫌でも理解させられた事だが、魔人の人間に対する態度は分かっている。
魔人は娯楽感覚で人を殺す…それが魔人や魔物にとっては当然の事の様に。
中にはガルティアやメガラス、そして主であるケッセルリンクのように人間にあまり干渉しない魔人もいるが、基本的には楽しんで人を殺している。
確かに主は基本的に温厚ではあるが、それでも人間を贔屓する理由は見当たらない。
「ランス様は私よりも付き合いが長いそうですから。ケッセルリンク様から聞きましたが、かつてケッセルリンク様がカラーであったころ、共に協力して魔人を倒したことがあるそうです」
「え…魔人を?」
魔人を倒した、と聞いてバーバラは驚きに目を見開く。
「それからケッセルリンク様とは縁があるようで…私の時もパレロアの時もランス様が一緒にいましたから」
「…どういう確率ですか」
シャロン達が嘘を言っているとは思っていないが、実際に見ていないと信じることは難しい。
「あ…だから今回ケッセルリンク様は…」
「そうです。ランス様が関わっていましたから、自らが伝令役を引き受けました」
「うーん…やっぱり理解が追いつきません」
頭を抱えるバーバラを見て三人のメイドは笑う。
「大丈夫ですよ。これから嫌でも出会うことになると思いますから」
人類が、そして魔軍が全軍を引き上げて約1年。
その傷跡は大きく、人類の復興はまだまだ先であろうと感じさせる光景。
無数の魔物の死体は既に消滅しているが、その平原に突如として炎が巻き上がる。
「あーーーーーっ。久々に死んだなあ」
そしてその炎は人の形を取ったかと思うと、炎は直ぐに消えていく。
そこに立っていたのは、赤い肌をした少女だ。
「…ん? しっかし何かおかしいような…」
少女は自分の声がおかしい事に気づき、改めて自分の体を見る。
「…マジか」
そして膨らんだ自分の胸を見て目を見開く。
「もしかして…」
そして自分の股間に手を伸ばし、その感触が無いことに体が固まってしまう。
「…ま、いいか」
だが、即座に気持ちを切り替えると、改めて周囲を見渡す。
しかしその周囲には特に目新しいモノは無く、アレほどの激戦を繰り広げた痕跡も見当たらない。
「どれくらいたったかね…お館様が負ける事はまずは無いとおもうがな」
少女―――戯骸は改めて昔の事を思い返しながら歩いていく。
目的は取りあえずは自分の主の目的地であったJAPANだ。
しばらく様子を見ながら進んで行くうちに、この戦争が既に終わっている事に気づく。
同時に藤原石丸は死に、主であるザビエルは目的を達成したのを理解するが、それでも戯骸はJAPANへの歩を止めない。
それは暫くは主の下に戻らなくでも大丈夫だというある種の信頼があるからだ。
そして戯骸は天満橋を超え、JAPANに入った事である話を耳にする。
それは主であるザビエルが封印されたというまさに眉唾物の話。
戯骸は笑いながら、だが好奇心も有りその場所へと近づいて行き―――呆然と目の前の物言わぬ主を見上げる。
「…お館様」
そこには銅像と化した魔人ザビエル、そして自分と同じ使徒である魔導、煉獄、式部の姿があった。
「…まさか本当に封印されてるとは。何とかは…出来るのか、コレ?」
魔人であるザビエルを封印するなどそれこそ同じ魔人でも難しいだろう。
「どうするかな…いや、迂闊に動くのもな…救援も来てないみたいだしよ」
もしザビエルを救うべく魔王や魔人が動いているのなら、ここにザビエルの像は存在していない。
にも拘らず、ここにあるという事は、ザビエルは見捨てられたのだろう。
「まあ敵は多かったからな…」
ザビエルは強さは有り、魔王ナイチサからも信頼されていたが、それ以上に敵も多かった。
そんな主を助けようとする存在は居ないだろう。
「ここで俺が帰ってもなぁ…」
魔王に報告して主を助けてもらう、という事も頭を過ったが結局は無駄だろう。
あの残忍、残虐な魔王がわざわざ主を助けにここまで来るとも思えない。
下手したら銅像ごと破壊されそうだ。
「仕方ない…待つか」
だからこそ戯骸は主が元に戻るまで待つという選択肢を取る。
最初は人間を脅して封印を解かせようとも思ったが、流石に一人では無理だ。
それよりも、ここに留まって情報を収集するのもいいかもしれない。
「…そういやランスの奴は生き残ってんのかな。まああいつの事だから生き残ってそうだけどな」
自分を初めて倒した人間であるランスの事を思い返し、
「勉強…してみるか」
戯骸はある決意をしながら、己の主の復活まで待つ事にする。
それが長い長い忍耐の日になる事は戯骸自身もまだ分からなかった。
そして時は流れる。
NC870年―――ある歴史が動き始める。
それはこれから先に起こる災害の少し前の事…ある時代の大きな変節を迎えていた。
「ヒャッハー! カラーだあ!」
「カラーは犯してクリスタルを奪え! クリスタルは金になるからなあ!」
それは人間がカラーを狩る光景。
魔軍に蹂躙された人類の復興、その前にカラーが動いた。
力あるカラーが現れたことで、カラーは人類を支配するべく君臨しようとした。
しかし、それはあまりにも多い人間の数、そしてカラーの繁殖力の少なさから瓦解してしまう。
そしてその時に偶然分かった事…それはカラーを犯してクリスタルを抜き取ることで、カラーが死ぬという事。
そのカラーのクリスタルが、凄まじい力のアイテムになる事―――その事から、人はこれまでカラーに虐げられていた恨みを持って、カラーの襲撃に力を入れていた。
「犯して楽しんで金になるんだからカラー狩りはやめられないぜ!」
「ほー、そんなに楽しいのか」
「おうよ! お前もどうだ!? 俺の兄貴はカラーの奴隷になって殺されたんだ! お前も恨みをぶつけてカラーを犯し殺そうぜ!」
「下らん、お前は死ね」
「え? ぎゃあああああああ!!」
悲鳴と共に男の首が落ち、カラーを犯していた男達が呆然と一人の男を見る。
「カラーを犯して殺すだと? 何勿体ないことをしてやがる! 貴様らは皆殺しじゃー!」
乱世の奸雄、治世の暴君―――そんな彼だが、一つだけはっきりしている事がある。
「女の子をいじめる奴は死ねーーー!」
それはピンチの女性の前に颯爽と現れ、それを解決できる事。
男の名はランス、彼はどんな時でも美女の味方なのだ。
改めてランス10をプレイしてたのですが、ケッセルリンクが死ぬシーンで、使徒が消滅する順番が使徒になった順番だよなあと…
という事はバーバラが3番目なのかなあと
あとバーバラは突っ込み属性がありそうだからあえてランスとは出会わせない方法でいきました
次はカラー編…ではなく、全てが終わった後です
まああるキャラとの出会いのために必要な話ですが、すぐ終わります
問題はその後なんですけどね…