ランス再び   作:メケネコ

162 / 456
天志教

(ううう…)

 ジルは自分の体の大切な所だけを手で隠しながら風呂に入ってくる。

「来たか。遅かったな」

 風呂の中には既に全裸のランスが待機している。

「あ…」

 そして当然の如くハイパー兵器を起立させているのを見て目を背ける。

「じゃあ早速洗ってもらおうか」

「は、はい…」

 ランスはジルに背を向けて椅子に座る。

 ジルにはそれだけでランスが何を言わんとしているのか分かる。

「んっ…」

 ジルは覚悟を決めてランスの座る椅子の後ろへと膝立ちする。

(…凄く大きく感じる)

 ランスはそれほど背が高いという訳では無いが、不思議とその背中が大きく感じられる。

 ジルはそのままスポンジを片手にランスの背中を洗おうとした時、

「おっと、そんなもので俺の体が傷ついたらどうする」

「え? で、でも他に道具は…」

「何を言っている。その立派な体があるではないか」

「………えっ」

 ランスの言わんとしている事を理解して、ジルは最大限までに顔を紅潮させる。

「そ、それって私の…?」

「それ以外に何がある。お前のその柔らかい体で俺様を綺麗にしろ」

「あ…」

『一緒に風呂に入れ』と言われた時からそういう事をされるのは覚悟していた。

 だがこれは自分の想像のハードルを遥かに超えている。

「なんだ。それじゃあまずは俺様が洗ってやろうか? 勿論俺様の手でな」

「ま、待ってください! 今やります! やりますから!」

 ジルは本格的に覚悟を決め、まずは自分の体を泡立てる。

 ランスはその気配を背中で感じながら今か今かと楽しみに待っている。

 勿論自分の女と風呂に入るのは初めてでも何でも無いが、ジルと一緒に風呂に入るのは何か奇妙な興奮があった。

 それはやはり彼女の名前がかつての魔王と同じであり、尚且つその容姿も似ていると言う事だろう。

 ランスですら対峙するのを躊躇われた、この世界を地獄へと変えた魔王であるジル。

 最終的には何とか勝ったが、もう二度とあのような事は無いだろうとランスも確信している。

 そしてその魔王と瓜二つの女性が今自分の体を洗おうとしている。

 その事でランスは非常に満足していた。

(手を出すのはまだ早いな。うむ、やはりここは初志貫徹で我慢だな。まあ時間はあるからゆっくりとやればいいか)

 そう考えていた時、ランスの背中に非常に柔らかい感触が襲ってくる。

「おほ」

「こ、これでいいですか?」

 その声は震えており、体も小刻みに震えている。

 そんな様子もランスを興奮させるスパイスの一つだ。

「おいおい、体を洗うのならそれではいかんだろうが。お前もただ泡立てるだけでは無いだろう」

「………うう~」

 ジルもランスの言っている事を嫌という程理解し、徐々にだがその体を動かし始める。

「おおー。思った通りいいではないか。しっかり綺麗にしろよ」

「は、はい…」

 ジルはただ黙々と己の体を使ってランスの体を洗う。

 恥ずかしすぎて頭がどうにかなりそうだったが、幸いにもランスの顔が見えないのは救いだった。

 どれほどそうしていただろうか、ジルも時間の感覚が分からなくなっ来た時、

「よーし、もういいぞ」

 ランスの声にジルは安堵する。

 ようやく終わってくれたようだ…と思っ時、ランスからはとんでもない言葉が発せられる。

「次は前だ」

 ジルが思わず声を出そうとする前に、ランスがジルへと向き直る。

 その時ジル目に飛び込んで来たのは、天を向いているランスのハイパー兵器だった。

「え…ええ…」

 そこでジルは顔を極限まで真っ赤に染めて止まってしまう。

 その反応を見て、ランスは怪訝に思う。

「なんだ、見た事が無いのか?」

「…い、いえ、その…こんな間近では…」

「…本当にあいつらはお前に手を出さなかったのか」

「はい…私に手を出せば商品としての価値が下がりますし、何よりもあの男は…私を本当に壊したいようでしたから」

『壊す』という言葉にランスは唇を歪める。

 人を『壊す』という事がどういう事かはランスもよく知っている。

 ゼスの銀行で見たラレラレ石の胸糞悪い映像もそうだし、ヘルマンでも似たような光景が存在していた。

 かつてはリアも誘拐した女性の命を奪った事もあった。

 リアはランスに怒られた事で心の底から反省し、きちんと償い(ランス視点)もしてある。

 何よりも、リアは反省してから同じような事は全くしていない。

「女を壊すとかアホの極みだな。ズバッとおしおきくらいが普通だろ。まったく、そんな奴等に買われなくて良かったな」

「…それについては本当に感謝しています。おかげで私は人生を諦めずに済みましたから」

 そう言うジルの顔は羞恥で真っ赤に染まっているが、それでもランスから見ても非常に明るい笑顔に見える。

「そうだ、感謝しろ。お前は俺様の奴隷なんだからな。あ、じゃあ処女って事か」

「…はい。私は経験がありません」

 ランスはそれを聞いて少し考え込む。

(うーむ、奴隷として捕らわれていたし、かなり妬みを買っていたようだから襲われたのだとばっかり思っていたが…いや、これは好都合だな)

 ランスはこの非常に美しい奴隷を、完全な自分好みの女性に調教しようと決意する。

 調教といっても、ランスにはタマネギのように完全な雌奴隷へと仕上げる技術など持っていないので、完全にランス式だ。

 もっと言えば、自分が楽しむための口実に過ぎない。

「ふーん、まあいい。一発ズバーッと楽しみたかったが、俺様は紳士だからな、約束は守ってやる。お前を頂くのは魔人を封印する方法を見つけてからだな」

「あ…ありがとうございま」

「ただーし!」

 そこで大きな声を出したランスに、ジルは思わずビクリと震える。

「お前は俺様のモノだと理解させてやる。まずは前を洗え。その体でな」

「…はい」

 楽しそうに笑うランスを前に、ジルは思い切って正面からランスに抱きつく。

 服の上からでも分かっていたが、ランスの体は非常に逞しい。

 こうして抱きついているだけでどれだけ筋肉質なのかも分かってしまう。

 そして自分のお腹に感じるランスのハイパー兵器の硬さも。

 ジルは意を決して、先程と同じ様にランスの体に自分の体を押し付け、体を動かす。

「おほっ」

 ランスが嬉しそうな声を出した事で、今自分がやっている事がどんなに恥ずかしい事か理解してしまう。

 どれくらいそうしていただろうか、ランスがジルの体を掴んで動きを止めさせる。

「ランス様…?」

「次は俺様自らが奴隷の体を洗ってやろう。俺様は優しいからなー、感謝しろよ」

「きゃっ!」

 ランスは自分の膝の上にジルを乗せると、その豊かな胸に手を這わせる。

「はう…」

 ジルは羞恥に身悶えるが、ランスはそんなジルの事などお構いなしに胸を揉み続ける。

 そしてランスの手の動きは段々と大胆になり、胸だけでなくその下半身にも伸びる。

「だ、駄目です…」

 ジルはランスの腕をなんとか掴むが、そんな事ではランスの腕は止まらない。

「大丈夫だ。約束は守ってやる」

 そしてそのままその指がジルの大切な所に触れ、それだけでジルは体を震わせる。

 そのままジルは風呂の中でランスに色々とされてしまった。

 

 

 

「で、これは!?」

「えーと、こうです。それはこうなって…」

「これでいいかしら?」

「あ、大丈夫です」

 ランスとジルが風呂から上がると、そこにはスラルと加奈代が本を片手に何やら言い合っていた。

「何をやっとるんだ君達は…」

「あ、ランス。勉強よ勉強。まだまだだけどね」

「スラルさんは凄いですねー。もうある程度話せるんですから」

「ふーん…まあいいや。でもスラルちゃん、明日は駄目だぞ」

 ランスの言葉に加奈代はニッコリと笑う。

 勿論ランスの言葉の意味は分かっている。

 ランスの隣で顔を真っ赤にしているジルの様子を見てもそれが分かる。

「じゃあこのままベッドに運んでやるか。お前達も程々にしとけよ」

「分かってるわよ。とにかく私も文字を覚えないとダメなのよ。魔法ばっかりに頼る訳にはいかないし…」

 スラルは楽しそうに加奈代に今現在の言葉を教わっている。

 その顔はランスから見ても本当に嬉しそうで、スラルという少女は本当に知らない事を知るのが好きなのだなと思う。

 だからこそ、ランスとスラルは気が合うのかもしれない。

 ランスも知らない事を知るのが大好きだから。

「よーし、じゃあ行くぞ。がはははは、奴隷を運んでやるとは俺様もいいご主人様だな」

 ランスはそのままジルをお姫様抱っこにすると、2階にあるジルが使用している部屋へと運んでいく。

「ランスさん…本当にジルさんに手を出して無いんですかねー」

「うーん…極限状態になったら多分問答無用で襲うだろうけど、レダもいるしね。ランスって目的のためには本当に全力だから」

「スラルさんは…ランスさんとはどういう関係なんですか?」

「ランスとの関係…か」

 スラルはランスとの付き合いを思い返し少し考える。

 魔王だった時は魔人へと勧誘し、拒否された。

 そして肉体関係になった末に、無理矢理ランスを魔人にしようとした後で、一度セラクロラスの力で別れる事になった。

 その後で自分が消滅しようとした時…ランスの持つ剣によって幽霊という形でこの世に留まっている。

「私としては…パートナーのつもり。ランスといると色々と刺激的だし、本当に色々な事が知れる。それが本当に楽しい」

「そうなんですかー」

 加奈代はスラルの言葉に嘘は無いのだろうとは思う。

 が、実際にはもっと複雑な関係なのは想像に難くない。

(ランスさんを意識しているのは間違いないけど…その気持ちに自分で気づいていないという感じなんですかねー)

 そう思うが、実際には口には出さない。

 口に出さないほうが面白そうだからだ。

(ランスさんって本当に面白い人…見てて飽きない人ですよねー)

 

 

 

 ランスはジルを部屋に寝かせるとそのままレダの部屋にと向かう。

「がはははは! レダ! やるぞ!」

「あーはいはい。来ると思ってたわよ」

 レダはベッドの上でくつろいでおり、部屋に入ってきたランスを見ても特に表情を変えない。

 もう何度も繰り返されていた行為であり、レダとしてもするのは嫌なことではない。

 しかし最近少し悩んでいる事もある。

「ねえランス…あなた、私の事を便利な性処理相手と勘違いしてないでしょうね」

「…はあ? なんだそりゃ」

 レダの言葉にランスは心底呆れた顔をする。

「馬鹿かお前は。俺様がそんな詰まらん事を考えてるとでも思っているのか」

「…ごめん、正直私自身も何でそんな事いったのか…今思ったら、魔人や魔王や神すらもそういう目で見ているものね」

 ランスの女好きは筋金入りであり、基本的に女しか好きじゃない。

 黒部は明らかに人間では無いので、例外は彼くらいだろう。

 ロッキーは明らかに美男子とは言えないので、ある程度容姿が整っている男がランスにとっては嫌いな男という事になるのだろう。

 それと女にモテる男が嫌い…だから藤原石丸とは絶対に相容れない関係だったという事だ。

「俺に抱かれる女は幸せなのだ。だからお前も幸せ、それでいいではないか」

「本気でそう思ってるのね…ま、まあいいけど…」

「大体お前なんて口では色々と言っておきながら、初体験からノリノリだったではないか」

「あんまり忘れたい過去をほじくり返さないでよ…」

 今でも思い出す、ランスに初めてを奪われた事。

 人間に返り討ちにあった挙句、人間に犯されると言うエンジェルナイトとしては恥としか言いようがない過去。

 そんな自分が、今こうしてランスと共にいるのは何の因果かと笑ってしまう。

「よーし、じゃあやるぞ!」

「…そ、それなんだけど。きょ、今日は私から色々としてみたいんだけど…」

「ほう…まあお前は最初からセックスに興味津々だったからな。まあたまにはお前にやらせてみるのもいいか」

「そ、そう。じゃ、じゃあ行きましょう」

 こうしてランスは何時もの様にレダの体を十分に堪能した。

 

 

 

「お前等早いな。女ってのは大抵そうなのか?」

 ランスが朝起きた時は既にレダの姿は無く、少しつまらないと思いながらもランスはリビングに降りてくる。

 そこには既に加奈代が朝食を作っている最中で、ジルはスラルに今の時代の言葉を教えているようだ。

「おはようございまーす。ランスさんも別に遅いって訳では無いですよ。それにランスさんは決まった時間には起きてきますしねー」

「レダはどうした?」

「レダさんならお風呂ですよー。昨日随分と激しかったみたいですね。後でシーツを洗っておきますからね」

「うむ、そうしろ」

 こうしてランス達の一日が始まり、何時もの様に割と騒がしく朝食を終えた後でランスが皆を集める。

「よーし、お前等。こうして天志教とやらに乗り込む準備が出来たぞ」

「乗り込むって…別に喧嘩を売りに行く訳じゃ無いでしょ? 私も十分に興味あるけどさ…」

「早く行きましょう。時間は有限ですから」

 スラルとジルの二人は非常に乗り気だが、そこには大きな違いがある。

 スラルは純粋に自分の知識を満たすため、ジルは魔人を倒す手がかりを掴むため。

「で、加奈代。お前はそこに行ったことがあるのか?」

「ありますよー。これでも実家は結構天志教に寄付してましたからね。そういう部分もJAPANでは結構大きなモノを占めてるんです。何しろあの魔人ザビエルを封印した人が作ったものですから」

 JAPANの絶対的な英雄であり、この世界を統一出来ただろう男と、それをずっと補佐してきた男。

 その名前はJAPANでも非常に大きく、藤原石丸の妻と子供が消えた後はJAPANは再び戦乱の時代へと戻った。

 誰もが帝の証たる三種の神器を狙い、今尚小競り合いを続けている。

 そしてこのJAPANでは誰もが天志教を信仰しており、そこに寄付を続けている。

 最早JAPANにおける絶対的な存在の一つであり、無くてはならないものになっている。

(天志教…あの時の連中だよな)

 ランスも天志教の事は良く覚えている。

 あの大僧正の男は既に還暦を迎えているとの事で、北条早雲とは別の意味でランスを驚かせた。

 信長がザビエルに乗っ取られてからやむなく戦う事になったが、その前に大量の兵士達が逃げ出したのはランスとしても非常に不愉快な思い出だ。

(だがザビエルの封印なんてしとらんかったな…いや、天才である俺様が倒したからだが)

 ザビエルを封印すると言ってはいたが、最終的にザビエルを倒したのはランスだ。

 なのでザビエルを封印する月餅の法とやらは、名前だけを知っているだけだ。

 それも失敗したので、今聞いてようやく思い出す程度の事だ。

「でも異人…大陸の人間が行っても相手をしてくれるのでしょうか」

 ジルは紹介状を手に持っても少し不安そうな顔をする。

 JAPANに来てからは驚きの連続だが、何よりも気になったのは大陸の人間に対して少し余所余所しい所だろうか。

 警戒心もあるのだろうが、あまり歓迎はされていないのは分かる。

 ランスもそんな人間関係の煩わしさから、JAPANの宿を利用せずに魔法ハウスを使っているのだ。

「取り敢えずこれを見せればいいでしょ。それに無理なら無理でやり方はあるしね」

 スラルの言葉にもジルはやなり不安そうな顔をするだけだ。

「今ここでうだうだ言ってないで実際に行けばいいだろ。それから考えるぞ」

「はい」

 ランスの言葉にジルは頷いて、これからの事に考えを移す。

 ランスの言うとおり、まずは行ってみなければ分からないのだ。

 そんな事が有り、ジルは内心でどうしようと考えてはいたのだが、天志教の本陣…なにわに来た時その巨大さに驚いてしまう。

「ここが天志教の本部でーす」

「うわ…」

 流石の宗教団体の本部と言うべきか、それはJAPANにある城にも勝るとも劣らない。

 いや、JAPANの各地から寄付金が送られているのだから、ある意味ココこそがJAPANで一番金が集まる所なのは間違いないだろう。

「うーん…そういえば私、宗教関係って全く知らないのよね。AL教の事は知ってるけど、特に興味も無かったし…」

 スラルが魔王の時代から存在するAL教に関してはスラルも知ってはいたが、全くタッチしていなかった。

 ただその頃からか、神魔法という存在が認知され、そこはスラルも興味を持った。

 尤も、自分には神魔法の才能が全く無いようで、そこは惜しいとも思った。

(天志教か…下っ端の私には殆ど情報が無いのよね。でも、話によればALICE様が忌まわしくも思いながらもあえて手は出さないと聞いてるけど…)

 下っ端のエンジェルナイトのレダにはその手の情報は回ってこない。

 下級の自分がそんな事を考える必要は無いし、そもそも天使達は上司の命令に忠実であり、それ以外の事はほとんどしない。

 レダがランスの事を守っているのは、1級神であるALICEの直々の命令だからだ。

「こういう奴等は何かあくどい事をして金を貯めてるんだろ。だったら俺様が頂いても何も問題無いな」

「あの…ランスさん、それは本当にやめた方がいいです。もし天志教が本気になれば、JAPAN全体がランスさんの敵に回りかねないですから」

「…面倒だからやめるか」

 宗教がやっかいなのはランスも身に染みている。

 それは天志教もAL教も何も変わらない。

 AL教がランスの脅威にならないのは、AL教のトップである法王のクルックーがランスの女だからだ。

 ―――実際にはそのクルックーがあの手この手を使ってランスへの手出しを防いでいる事を、ランスは知らない。

「あのー。こちらの紹介で来ましたー」

 加奈代が門番の者に自分の親が書いた手紙、そしてあの陰陽師から受け取った手紙を渡す。

「おお、あなたは…なんと。少しお待ちください」

 門番は加奈代の事を知っているのか、手紙を躊躇う事無く受け取り内容を見てから門の中へと消えていく。

 少し時間が経ったのち、位の高そうな僧が一人現れる。

「おお! やはりあなた方でしたか!」

 その僧はランス達を見て嬉しそうに声をかけてくる。

「………誰だ。俺にはハゲの知り合いはおらんぞ」

「いやこの前あのダンジョンで会った人間でしょ。あんた、本当に男の事は全く覚えてないのね…」

 それは平城京にて出会った僧の一人だったが、やはりランスは欠片も覚えていなかったようだ。

「これは手厳しい。それよりも大僧正があなた達をお待ちしています」

「え?」

 その言葉にはスラルも思わず驚く。

 まさかそこまで話が進んでいるとは全く思ってもいなかった。

(随分と話がとんとん拍子に進むわね…いえ、これもランスの力なのかしら?)

 今思えばランスがこれという事を決めて突き進んだ時は必ず結果が現れる。

 スラルがランスに興味を抱いた切っ掛けである魔人オウゴンダマの時もそうだ。

 ランスはあの短い時間の中でこの剣を手に入れたし、あの少ない戦力の中で魔人を倒すという快挙を成し遂げた。

 それだけでなく、シャロンを救った時もそうだ。

(うーん…やっぱりランスには何かがあるのね。私の目は正しかったわね、うん)

 スラルは一人納得しながら剣の中で頷いている。

 そうしている内に、ある一つの部屋に通される。

「ここは…」

 部屋の空気にレダは眉を顰める。

 人間であるランス達は感じていないようだが、エンジェルナイトであるレダは落ち着かない。

(何ここ…あの時フィオリと戦った時の場所のような嫌な感じがする…)

 思い出すのはあの第三階級魔神である悪魔フィオリとの戦い。

 ここはそれに似て非なる空気が感じられる。

「お待たせしました」

「!」

 そして入ってきた人間…いや、その人間が手に持っているのを見てレダは警戒心を露にする。

「どうしたの? レダ」

 その様子にスラルは怪訝そうに尋ねるが。

「…いや、何でも無い」

 レダは何とか自分の体が動くのを抑える。

 今の自分の役割はあくまでもランスを守ること…それ以外の事はあまり関わるべきではない。

 ましてや自分は今はこの場にはいてはいけない存在なのだ。

 だからこそ、この人間が持っている『悪魔の鎌』に関しては何も言わない事にする。

「魔人を封印する方法を求めて大陸からやってきたそうですね」

 その男は非常に落ち着いた声で喋り始める。

「はい。このJAPANではかつて魔人ザビエルを封印したという事実が有ります。その方法が分かれば人類は魔人に対抗できる力を持てます」

「…成るほど、人類のためですか。その心はご立派です。そしてあなたのその目、嘘ではないのでしょう」

 大僧正は一度ため息をつく。

「ですが教えるわけにはいきません。いえ、正確には教えても意味が無いからです」

「意味が無い?」

 大僧正の言葉にジルは怪訝な顔をする。

『教えない』とうい言葉自体には納得できる部分もある。

 その手の秘術を簡単に教える訳が無い、というのも理解できる。

 しかし『意味が無い』という言葉はどうしても理解できなかった。

「それはどういう意味ですか?」

「まず一つに、これは我等天志教の術である事…大陸の人間であるあなたには使えない」

 大僧正の言葉にジルは何も言う事は出来ない。

 彼の言っている事はジルも十分に理解できる。

 自分に剣の才能が無いのと同じように、天志教の術を使う才能が無いという事だ。

「ですが…それでも魔人を封印できる唯一の手では無いのでしょうか?」

 しかしそれでも諦める事は出来ない。

 今目の前に、魔人に対抗する唯一の手段があるのだ。

「もう一つは…魔人を封印するためには、数多の犠牲が必要になる事です」

「!!」

 その言葉にジルは息を呑む。

 大僧正の顔はいたって真面目で、冗談を言っているようには見えない。

 いや、彼の顔が苦渋に満ちていることからも、彼自身も納得がいっていない事が読み取れる。

「月餅は偉大な方です…しかし後を継ぐ者が優秀とは限らないのです。月餅が亡き今、我等は我等なりの方法でしか封印が出来ないのです」

 それは魔法使いであるジルにもよく理解出来る。

 魔法にも『禁術』と呼ばれるものが有り、ジルもそれを知ってはいるが使う気は全く無い。

 それだけ禁術と呼ばれるものはリスクが大きいからだ。

 それと同じように、天志教もまた魔人を封印する秘術にはリスクがあるのだろう。

 それが彼の言った『犠牲』という言葉なのだろう。

「で、その犠牲になるのは男か?」

 ランスが突然突拍子も無いことを聞が、

「いいえ、女性が犠牲になります」

 大僧正は至って真面目に答える。

「なんだ、じゃあダメだな。ブスはともかく女の子が犠牲になるんじゃ意味は無いな。おいジル、行くぞ」

「ランス様…」

「こういう奴等は脅迫しようが何をしようがどうせ何も答えんからな。話すだけ時間の無駄だ。それよりも外の手を探すほうがいいだろ」

「でも…」

「そちらの御仁の言うとおりです。我等は我等のやり方しか出来ぬのです…あなたはあなたなりの方法を探すべきです」

 ランスと大僧正の二人に言われ、ジルは唇をかみ締める。

 勿論教えてもらえない可能性は予測していたが、犠牲を伴うとは思っていなかった。

 ジルとしても望まぬ犠牲を出すのは本意ではないし、何より魔人の数は1体では無いのだ。

「それに出来るのは封印だけだろ。奴等を殺せないんなら意味が無いな。魔王が魔血魂を消さんと何処で復活するか分からんからな」

 ランスの言葉にジルは何も言えない。

「あなたはまだ若い…あの北条の者のように。なれば開祖月餅のように、魔人を倒す手段を見つけられるやもしれませぬ」

「…はい」

 ジルは大僧正の言葉に頷くしかなかった。

 自分の望んだ答えは得られなかったが、それは今までに通ってきた道だ。

「じゃあ行くぞ。もうここに居る理由は無いからな」

 ランスはそのままジルの肩を抱いて部屋を出て行く。

 加奈世もそれに続くが、レダだけは残ったままだ。

「ねえ。それが何なのか分かって持っているの?」

「この鎌ですか? これはいずれ訪れるザビエルの復活のためにと開祖月餅が我等に残したものです」

「…そう」

 それを聞いてレダはランスの後に続く。

(月餅…直接顔を合わせたことは無いけど、間違いなく悪魔か。でも…それがLP期にまで残ってるなら、何も言う必要は無いか)

 それに…と思う。

(魔人を封印する術を残す、か。悪魔の中にも変わった奴がいるものね)

 己の宿敵である悪魔が人に魔人への対抗手段を、そして己の武器を残したことを奇妙に思いながら、レダは部屋を後にした。

 

 

 

「犠牲、か」

 一人残された大僧正は、己の放った言葉を反芻していた。

 そう、ザビエルを封印するには犠牲者が必ず出てしまう。

 誰もが開祖月餅のような強さを持っている訳ではないのだ。

「犠牲になるのでは意味が無い、か。痛い所を突かれるものだ」

 大僧正とて、このままで良いとは思っていない。

 だからこそ、力あるものと共に月餅の法をより犠牲の出ない方法を模索している。

「ならば…我等も口だけでいる訳にはいかぬな」

 大僧正はその口に少しだけ笑みを浮かべながら瞑想を始めた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。