でもそんな話もいいよね
魔王城
それは現魔王スラルが住まう、現大陸の中央に存在する城。
スラルは久々に自分の城に戻ってきていた。
理由はたった一つ。
「メガラスとガルティアを呼びなさい」
自分の忠実なる部下に仕事を与えるため。
しばらくして、魔人メガラス、魔人ガルティアの二人がスラルの前に現れる。
「おう、来たぜ」
些か魔王に対しては砕けた調子だが、スラルは別にそんな事で咎めたりはしない。
魔人ガルティアとはそういう男なのだ。
「よく来た。メガラス、ガルティア」
対してメガラスは何も言わずにただ頭を垂れるだけだ。
こちらから話さなければ殆ど話しかけてくる事は無い魔人だが、この男は世界最速の存在だ。
ホルスというこの世界の外から来た存在らしいが、今でも詳しい事は分かっていない。
分かっているのはこの男を魔人にしたのが、先代の魔王アベルという事だけ。
「で、何か用か?」
ガルティアは常に何かを食べているが、それはこの男がムシ使いという特別な存在だからだ。
それ故に、常に何かを食べていなければならないらしい。
少なくとも、スラルはガルティアが食事を我慢しているところを見た事が無かった。
「お前達にやってもらう事がある」
これは魔王としての言葉であり、魔王の力を行使したものだ。
『絶対命令権』、これがある限り魔人は魔王には絶対に逆らうことが出来ない。
「お前達はこれよりカラーの村へ行き、この者達を捕えよ」
スラルの魔法により、3人の姿が映し出される。
カラーには珍しい、ショートヘアのカラー、鮮やかな金色の髪をした美しい女性、最後に茶色い髪をした剣士風の男。
「決して殺してはならぬ。生かして我の元に連れてくるのだ」
「………」
「おうよ」
メガラスは沈黙で、ガルティアは軽い調子で応える。
「うむ、では行くがよい」
スラルの言葉に二人の魔人はその場を去る。
二人がその場を去った後、
「…ふむ」
スラルはこれからの事に思いを馳せる。
(あの三人が我の元に来る…か)
彼女は既にあの三人が自分の元に来ることを少しも疑ったりはしていない。
確かにあの魔人オウゴンダマは倒されたが、それは自身の能力を逆手に取られたからこその敗北だ。
しかしメガラスとガルティアは違う。
あの二人は無敵結界の解除などしないし、油断というものも一切無い。
「そういえば…」
突如スラルは思い出す。
先程はあの三人の事で頭が一杯だったが、あの男は魔血塊を回収していたはずだ。
それを取りに行く必要がある。
魔血塊を初期化出来るのは魔王だけだ。
「我とした事が…二度手間になってしまったな」
スラルは苦笑いを浮かべる。
ついでに二人に命令すれば良かったのが、つい言いそびれてしまった。
「まあいい…我ももう一度行くとしよう」
スラルの言葉にはどこまでも笑みが浮かんでいた。
「で、どうする? メガラス」
「………」
ガルティアはメガラスに問いかけるが、帰ってくるのは沈黙だけだ。
そのメガラスに特に気分を悪くする様子もなく、ガルティアは続ける。
「どっちを担当する?」
魔人は2人だが、ターゲットは3人。
どちらかが2人を相手にする必要が有るかもしれない。
「………男だ」
メガラスは非常に珍しく、ガルティアの問いに答える。
「へぇ…」
久々にメガラスの声を聞いたと思ったが、ガルティアは特に気にせずに言葉を続ける。
「じゃあ俺がカラーと女を担当するか」
「………」
ガルティアもこの割振りには納得していた。
メガラスには使徒はいないが、自分には3体の使徒がいる。
その使徒の内の1体は相手を捕獲するのに向いている。
ならば自分が多い方を担当するのは当然だと思った。
「じゃあ行くとするか」
「………」
ガルティアの言葉にメガラスは何も答えない。
しかし男達の胸にあるのは魔王の命令を遂行するという使命だけ。
こうして本来ではあり得ぬ歴史、メガラスとガルティアが魔王の命を受けて動き始めた。
「…気に入らないわね」
女神ALICEは自分の一室で少々機嫌を損ねていた。
それは人間とカラーが魔人を倒したという事実。
無敵結界を魔王が授かってからは初めての事。
「でもね…」
女神ALICEが頭を悩ませているのは、無敵結界を破ったのではなく、魔人側が解除して戦った結果敗れたという事実。
これならば魔人が敗れても全くおかしくは無い。
この世界は三超神が一度滅んでしまった世界から、新たなバランスをもってして作られた世界。
新たなメインプレイヤーはドラゴンと違い、弱く愚かだが繁殖力は強い生命体。
しかしその中から時には世界を変える力を持つ者が生まれる事がある。
女神ALICEは、それをバランスブレイカーとして回収する義務を作ろうと考えていた。
この世界は、創造神がメインプレイヤーが苦しむのを楽しむために作られた世界。
「人間が人間の手でその未来を摘む…まさに最高の皮肉ね」
そうだ、それを世界への貢献という形にしてしまおう。
そして人間自らの手で、この世界を地獄へと変えさせるのだ。
「でも今は無理かしらね」
AL教はまだ出来たばかりであり、その組織や制度もまだ普及していない。
というよりも彼女自身もまだ仕事が無い状態だ。
「でも…もっと時が経てば楽しいことになりそう」
女神ALICEはこの先のメインプレイヤーの未来を思い浮かべ、悠然と微笑んだ。
「それでは魔人撃破を祝って…」
「「「「かんぱーい!!!!」」」」
女王の合図に、皆が一斉に声を出す。
そこにあるのは紛れも無く喜び。
今は誰もがこの勝利に酔いしれていた。
「いやーでもランスさんもよくあんな作戦考え付いたよね」
「ホントホント。人間って皆あんなこと考え付くのかな?」
「あんな悪辣な手段を考え付くのはランスだけでしょ」
カラー達の会話にレダが答える。
実際あんな手段を考え付くのは、ランスくらいだと本気でレダは思っていた。
(でも確かに効果的ではあったわね)
本来であれば魔剣カオス、聖刀日光無しにして、人は魔人に勝つ事は出来ない。
他にも魔封印結界という手段はあるが、あれは条件が厳しすぎるため中々お目にかかる事は出来ないだろう。
ランスは今は大笑いしながら酒を飲んでいる。
「でもそれ以上に意外だったのはやっぱりケッセルリンク様よねー」
「うんうん。まさかケッセルリンク様のクリスタルが変わる日が来るなんて思わなかったよね」
「…まあそれはね」
カラーの会話にレダは言葉を濁す。
ケッセルリンクの初体験の全てを知っている身としては、その話はこれ以上は遠慮してもらいたい。
「フッフッフ、そんなに興味があるかね?」
ニヤニヤと笑いながらやって来たのは、アナウサ・カラーだった。
「アナウサちゃん! 今回はご苦労様!」
「まさかアナウサちゃんにあんな特技があったなんてねー」
「それに関しては私も驚いてるわ。でもさー、自分でも何を言ってるのかさっぱり分からなかったんだよねー」
アナウサは自分でも不思議そうに首を捻る。
あの時はすらすらと言葉が出てきたが、後になると自分が何を言っていたのかも覚えていない。
今でも「アトミックドロップ」だの、「ブレーンバスター」等の言葉の意味はさっぱりと分からなかった。
「それよりもアナウサちゃん。アナウサちゃんはケッセルリンク様の初体験の事やっぱり知ってるの?」
「どうなの? 実際の所」
目をキラキラと輝かせながら、興味津々といった感じのカラーにアナウサは不適に笑う。
「まあケッセルリンク様の名誉のために内容は伏せるけど…乙女ケッセルリンク様とだけは言っときましょうか」
「「「おおおーーー!!!」」」
何時の間にか声が一つ増え、そこには女王であるルルリナ・カラーがいた。
「あれ、ルルリナ様」
「それよりもアナウサ…実際ケッセルリンクってどうだったの? やっぱり泣いたりしてたの?」
「いや、あの…流石にルルリナ様でもね…ちょっと黙秘権を行使させていただきたいです、ハイ」
他のカラーよりも興味があるといった感じの女王の姿に、流石のアナウサも一歩退いてしまう。
「やっぱりね、そういうのは本人の同意なくしては言えないってのであって…あ、ほらケッセルリンク様いないし」
アナウサが周囲を見渡しても、ケッセルリンクの姿は見えない。
「あれ? さっきまでケッセルリンク様いたよね?」
「あ、よく見るとランスさんの姿も無い」
乾杯の時には確かにケッセルリンクはいたが、今はその姿が見えない。
そしてランスの姿も。
(…どっちが連れ出したのかしらね)
ケッセルリンクか、又はランスか。
(まあ今は二人だけにさせておいたほうがいいのかな)
レダには何となくケッセルリンクの気持ちが分かる気がする。
これほどの大仕事をやり遂げたのだ、誇らしい気持ちと共に、何か思うところもあるはずだ。
(私もそうだったし…)
かつて自分も悪魔を初めて倒した時には気分が高揚した物だ。
今でこそ大分慣れたつもりだが、その自分も今回は高揚した部分もある。
(まあ頑張りなさい…どっちもね)
レダは手に持った酒を飲みながら、二人の事を思った。
「…僕はやっぱり除者だった」
勇者アーズラはカラー達の祝いを見ながら黄昏ていた。
カラーの女王の名において放免はされたが、流石にカラーの宴には呼ばれなかった。
まあカラー達の出会いを考えれば当然なのだが、それでもアーズラは何か寂しいモノを感じずにはいられなかった。
「で、あなたは何時までも何をやってるんですか?」
「コーラ…放っておいてくれ…僕は今ほど自分が勇者である事に疑問を持った事はない…」
「はぁ…そうですか」
コーラはやっぱり心底呆れていた。
今回の事で勇者は少しは成長したかと思ったが、意外とそうでも無かったようだ。
(今回の勇者は少々煩悩が強すぎますね。でも異性にモテる力は一切作用してない。まだ調整段階なのでしょうかね)
「ああ…あんな不幸な事が起きなければ僕もあの中に入れたのに…」
「まあ勇者は普段は不幸ですから仕方ないですね」
よりにもよって、今の自分はカラーの中では変態仮面でしかない。
あの美しいカラーには是非自分と一緒に来てもらいたかった…あの金髪の女性もそうだ。
だがしかし、その場にいたのはあの茶色い髪をした男。
口が大きく、物凄い性格が悪そうな男。
「は! もしやあの二人はあの男に脅されているのかもしれない!」
「あなたは一体何を言ってるんですか」
とうとう頭の悪い発言をしだした勇者に、流石のコーラも突っ込みを入れざるを得ない。
「そうだ! あの男は二人の弱みを握ってあんなことやこんなことを…許せん!」
更にはもっと頭の悪い思い込みを発症してしまっている。
しかし根が単純なアーズラは何故かそれを真実だと信じ込んでしまっていた。
「おのれ…あの男許してはおけない!」
「…もう好きにして下さい」
突然走り出した勇者に、コーラは何度目かのため息をついた。
「は! いた!」
アーズラはひたすらにケッセルリンクを探して走った。
本来であれば皆と宴をしていると考えるはずだが、今のアーズラにはそんな考えは無かった。
良くも悪くも直情的…それがこの勇者だった。
だが、それは勇者の幸運か、最初にアーズラが変態仮面の汚名を受けた泉に、ケッセルリンクはいた。
「…いるのだろう。出て来い」
(は…まさか、僕に気づいてくれて…)
アーズラは鼓動が早くなるのを感じた。
彼女は自分を待ってくれていた…そんな都合のいい事を考えながら。
「ケ…」
「何だ、気づいてたのか」
その声は別の方向から聞こえた。
ケッセルリンクの声に応えたのは、自分を利用するだけ利用した男だった。
「森の中ならカラーならば気づくさ。それよりも何の用だ」
「まあお前に用があったのは事実だが…お前こそ何でここに来たんだ」
「…いや、僅かな時間だったが、私の今までの人生の中でも濃密過ぎる時間だと思っただけだ」
ケッセルリンクは初めてランス達と会った事を思い返していた。
今までの人間とは全く違った方法で現れた二人の男女。
最初は彼らを捕らえたが、その夜にはすぐにモンスターの襲撃が有り、二人のおかげで被害無く乗り切る事が出来た。
ランスはカラーの中であっという間に皆の信頼を掴んでいった。
その類稀な剣の腕、そしてその指揮能力、大胆過ぎるほどの決断力。
この男が現れてから、カラーは大きく変わったのだろう。
そしてムシ、魔人との戦い。
悪魔との邂逅…思い出しただけでも今までの長い生の中でも、これほどの事はもう起きないかもしれない、それほどの時間だった。
「そういや俺達がお前に捕らわれた場所がここだったな」
「そうだな」
ランスはごく自然にケッセルリンクの横に立つ。
「で、約束は覚えているか?」
「…魔人を倒せばお前の女になるという約束か」
(な、なんだってー!?)
二人の会話にアーズラは驚く。
まさかそんな約束が二人の間に交わされていたとは…何故自分は魔人を倒す事が出来なかったのか、今になってそれが恨めしかった。
「だが…魔人に止めを刺したのは私だと思ったがな」
「何だとー! 俺の素晴らしい作戦があったから上手くいったんだろうが!」
そういうケッセルリンクは薄く笑っていた。
「冗談だよ。…ランス、私は本当に感謝している。お前はカラーの危機を見事に解決してくれた」
「だから言っただろう。俺にかかれば容易い事だと」
ランスは自信たっぷりに言い放つ。
その様子にケッセルリンクは今度は苦笑いを浮かべた。
この男は1から10まで全て本気なのだろうと。
「それよりも…お前は何故そんなに私に拘る? お前の目に適うカラーは他にも沢山いると思うが」
「あん?」
カラーは全て美しい容姿をしている。
女王であるルルリナはケッセルリンクの目から見ても美しいし、アナウサもあんな感じではあるがやはり可愛らしい。
だが、ランスは意外にも自分にだけ「俺の女になれ」と声をかけていたようだ。
「俺にとってお前が一番いいと思ったからだ。それ以上の理由は無い」
その言葉にケッセルリンクは目を見開く。
「…お前も冗談が上手いな」
「冗談のつもりは無いぞ。俺はお前が欲しいと思った。だから声をかけてる。それだけだ」
「ランス…」
ケッセルリンクはランスの顔を覗き込むが、ランスの顔は本気そのものだ。
(え、何この展開)
草葉の陰から除いてアーズラは固まっていた。
自分はケッセルリンクを脅している(誤解)あの男を倒し、『自分について来て欲しい』と言うつもりだった。
しかし今目の前の光景は、どうみても告白シーンそのものである。
(いや、そんな事はある訳がない…あんな明らかにチンピラっぽい奴の女になんてなる訳無い)
「お前も物好きな奴だな。私みたいなカラーを選ぶとは」
ケッセルリンクは愉快そうに笑う。
(え、何その顔)
アーズラに嫌な予感が走る。
彼女の顔はまるで…
「物好きだろうが何だろうが俺は構わん」
ケッセルリンクはランスに顔を近づけ…
(だ、ダメだ! ケッセルリンクさん! あなたは騙されているんだ!)
アーズラが二人を止めるべく足を踏み出そうとしたとき、そこに丁度いい大きさの石があったのは偶然。
そしてアーズラが倒れた先に、体が動かなくなる毒草があったのも偶然。
ちょうど二人の姿が見えるような体勢になったのも全て偶然。
だからハッキリと見えてしまった…ランスとケッセルリンクがキスをしているところを。
(ああーーーーー!!)
それもただのキスではなく、互いに背中に手を回してのキス。
しかもそれだけでは終わらない。
ランスはケッセルリンクの服に手をかけ、彼女もそれに抵抗しない。
こうしてアーズラは新たな性癖に目覚めそうになっていた。
「ん…」
ケッセルリンクは自分にしては珍しいと思うくらに遅く目覚めた。
(…そうだ、魔人を倒して…)
隣を見ると、幸せそうな顔をして眠るランスがいた。
「まったく…」
こうして見ると、年相応の顔をしていると思う。
「起きろ、ランス」
「むが…」
ケッセルリンクの声にランスは目を覚ます。
ランスの目に映ったのは、昨日のままの全裸のケッセルリンクだった。
「ぐふふ…」
そのままランスはケッセルリンクに手を伸ばすと、その手はケッセルリンクに払われる。
「むっ…」
「そういうのは今は無しだ。もう朝だぞ」
「むぅ…」
ランスは唸るが、それ以上に満足感を感じていた。
とうとうケッセルリンクをベッドに誘うことに成功したからだ。
(普段はクールだが、ベッドの中ではカワイイからな…)
ゴンッ!
「あだっ! 何をする」
「何か不埒な事を考えていたからだ。それよりも早く起きろよ」
ケッセルリンクは笑いながらベッドから降りると、自分の服に着替える。
ランスもそれに倣い、普段の服に着替える。
ランスとケッセルリンクが部屋から出ると、そこにはレダが既に待っていた。
「ランス、ケッセルリンク。これから何か重要な会議があるそうよ」
「そうか…直ぐに行こう」
ケッセルリンクはそう答えると、ランスの手を引いて歩き出す。
「おい、なんだこの手は」
「こうしないとお前は面倒くさがって来なさそうだからな。せっかくだ、このまま付き合え」
「わかったわかった。俺は子供じゃないんだぞ…」
そう言いながら、ランスはケッセルリンクに手を引かれて行くのを、レダは呆れてみていた。
(何かあったのは丸分かりだけど…なんか姉と弟みたい)
「遅くなりました」
「いえ、待ってましたよケッセルリンク。それとランスさん」
「うむ、苦しゅうないぞ」
ランスはそこに用意されていた椅子に座ると、続いてレダとケッセルリンクも腰を下ろす。
「で、何の会議だ?」
「それなのですが…これからどうするべきかと思いまして」
カラーの問題点であったモンスターの脅威は去った。
ムシの方も、あれからはあまり動きが無い。
だからこそ、ここからどうするか、それがカラーの問題だった。
「どうするも何も…何かやる事があるのか?」
ランスが知るカラーは、ペンシルカウに閉じこもり外との接触を絶ってきた。
だからこのカラー達も同じなのかと思っていたが、
「いえ、此処だけではなく別のカラーの村を探せないかと思いまして」
「あん?」
「ランスは知らないかもしれないが…カラーには此処以外にも住んでいた場所があった、と言い伝えられている」
LP時代では黒髪のカラーである、ハンティ・カラーがカラーを纏め上げペンシルカウを立ち上げていた。
そして人間のカラー狩りを止めるべく、ヘルマンの評議会に名を連ねていた事もあった。
しかしこの時代ではまだ大規模なカラー狩りは行われてはいないため、カラーは色々な場所に別の集落を作っていた。
が、ここ100年の間にモンスターの動きが活発になり、カラーもまたその居場所を失ったとされている。
「ふーん…で、お前たちはどうしたいんだ?」
「私たちはこの地以外に住まう同胞を探したいと思います」
カラーの数はやはりまだ少ない。
今回はランス達の助けがあり、何とか切り抜けられたが、これから先はどうなるか分からない。
だからこそ、魔人の脅威を切り抜けた今、世界に散らばるとされているカラーの仲間を探したいのだ。
「それでランスさん…人間のあなたにこんな事を頼むのは筋違いかもしれませんが、私達に力を貸してくれませんか?」
「…まあ俺様は構わんが」
普段のランスであれば、条件をつけて女を差し出させるくらいの事はしただろうが、相手がカラーであること、そしてケッセルリンクが自分の女になっている事である程度満足していた。
そして現在はランスでも自由に外を周るのは難しい。
移動用のウシ車も無ければ、いざとなると頼る事が出来る国も存在していない。
そんな中ではカラーとは協力関係で無ければいけないと考えていた。
「ありがとうございます! ランスさんの力があれば100人力です!」
ルルリナはランスの手を取って喜び、カラー達も皆期待の目を持ってランスを見る。
それを見てランスは普段の調子を取り戻す!
「がはははは! 俺様に任せろ!」
何時ものようにバカ笑いをし、自信満々に胸を張る。
そんなランスにレダが小声で話しかける。
「ねぇねぇ、いいの? セラクロラスの事探さなくても」
「ついでにセラクロラスも探せばいいだろ。俺にはそれよりも大事な事があるのだ」
ランスの大事な事…それはカラーにハーレムを築く事だった。
人間相手ではハーレムプレイを何度も楽しんでいるが、実はカラーではした事が無い。
出来そうな事もあったが、その時は禁欲モルルンにかかっていたし、その後は色々有りカラーの里にもあまり寄れなかった。
(しかしここでは違う)
カラー達は皆ランスを尊敬してるし、何より一番信頼が厚いであろうケッセルリンクがランスの女である(ランス視点)。
ならばここであの時果たせなかった事を実践するのも悪くないと思った。
「がはははは! 行くぞお前ら!」
「「「「おーーーっ!!!」」」」
「で、アーズラ。あなたはこんな所で何をやってるんですか?」
コーラは未だに毒草の効果で痺れているアーズラに対し、呆れたように声をかける。
「コーラ、か…」
アーズラの目は悟りを開いているかのように澄んでいた。
「いや…なんか新たな境地に辿り着けそうで」
「…風麟病にでもかかりましたか?」
「そうかもしれない…」
勇者は何故か新たな性癖に目覚めつつあった。
勇者の扱いがアレですが、ランスと関わると勇者は扱いが悪くなります
強烈な主人公補正といえばそうですが、LP期でもランスにヒロイン取られてるしね
まあ運命の女の前には勇者の力なんて役にはたたないのでしょうね