ランス再び   作:メケネコ

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魔人トルーマン①

「魔人…絶対に倒す! 炎の矢!」

 ジルの放った魔法がトルーマンに当たるが、その魔法は魔人の持つ無敵結界の前に霧散する。

「あれが…無敵結界!」

 自分の放った魔法が無敵結界に弾かれたのを見て、ジルは唇を歪める。

 魔人の強さはその強大な強さもあるが、一番はその無敵結界が占める。

 何しろ魔人は魔王、そして魔人同士にしか傷つく事は無いと言われている。

 ジルもそれは知っているが、聞くと見るとでは大違いだ。

「無駄だ人間よ。さあ、貴様等の命も神に捧げてくれよう」

 トルーマンはその口に狂気に満ちた醜悪な笑みを浮かべながら向かって来る。

「がはははは! 死ぬのは貴様だ! 死ねーーーーッ!!」

 無造作に向かって来るトルーマンに対して、ランスは勢いよく跳び上がる。

 それは必殺のランスアタックの姿勢であり、ジルはその技の威力をよく知っている。

 上級のモンスターでも数体纏めてバラバラにし、あの硬い巨鉄ちゃんですらもたったの一撃で倒す程の威力。

(でも…それでも無敵結界の前には通用しない…!)

 無敵結界の力は絶対だ。

 その昔、人を超えた強さを持っていると言われた藤原石丸ですら、魔人の前に屈したのだ。

「ラーンスあたたたたーーーーーっく!!」

 勢いよく振り下ろされる剣をトルーマンは避けようともしない。

 どんな威力の一撃だろうとも、人間の攻撃など魔人には意味が無い―――それが魔人の中での常識だった…一部の魔人を除いて。

 そしてトルーマンもまた、その魔人の常識の範囲内にいる存在だった。

 だからこそ、ランスの一撃をまともに受けてしまった。

 

 ガッ!

 

 凄まじい衝撃音と共に、ランスでは無くトルーマンの方が吹き飛ばされる。

「え…?」

「ま、魔人を吹き飛ばした?」

 その光景にジル達は思わず呆然としてしまう。

 確かに無敵結界の前には人間はダメージを与える事は出来ない。

 しかしそれでもランスの一撃で魔人が吹き飛んだという事は皆に衝撃を与えた。

「ば…馬鹿な!? この私が吹き飛ばされる!? そ、それにこの衝撃は…人間! 貴様一体何をした!?」

「がはははは! お前はやっぱり雑魚だな。俺様が戦ってきた魔人の誰よりも弱いぞ」

 ランスがこれまで戦ってきた魔人は皆強敵だった。

 魔人四天王のカミーラは勿論、ランス達が全力で戦って何とか倒せたノス、元魔人四天王のザビエル…それ以外にも多数の魔人と戦ってきた。

 が、目の前にいる魔人はランスが戦ってきたどの魔人よりも明らかに弱い。

 無論ランスが強くなったというのもあるが、この魔人がこれまでの魔人よりも弱いという事をランスは確信していた。

 そして魔人レキシントンのような戦士としての才覚も無いとなれば尚更だ。

 そう、魔人トルーマンは典型的な魔人だったと言えるのだ。

「す、凄い…ランス様…」

「あの人本当に人間なんですか? 伝説の藤原石丸並に強いんじゃ無いですかねー」

 ジルと加奈代もランスとの付き合いがこの中では長いが、まさか魔人相手でも一歩も退かず、しかも無敵結界の上から相手を吹き飛ばすという力には驚愕するしかない。

「魔人はボスとスラルさんに任せる。私達はボスとスラルさんがが魔人に集中できるように相手を排除する。ジルさん、クー、あなた達の力が重要」

「分かってる! 皆さん、お願いします!」

「おう!」

「任せろ!」

 ドロシーの言葉にクーが魔法の詠唱を始める。

 そしてクーを守るべく、ドワイトとゲンバがジルとクーの前に立つ。

「私も守ってくださいねー。ランスさんが怒るといけませんから」

「怖い事言わないで下さいよ!」

 加奈代の言葉にゲンバはクナイを投擲してゾンビの足を止める。

 そして足を止めた所にジルの放った炎の矢が突き刺さり、ゾンビをあっという間に燃やし尽くす。

「浄化!」

 クーの放つ神魔法の力でゾンビが砂へと還っていく。

 だが、不思議とゾンビは次々に湧いて出て来る。

「どうなってんだ!? いくらなんでも死体が多すぎるぜ!」

 ドワイトがヒデオの剣で豚バンバラのゾンビを切り裂く。

 ゾンビは動きも鈍く、それ程強くも無いがいかんせん数が多すぎる。

 いくら魔人の力が有っても、死体の数には限りがあるはずなのに、一向に数が尽きない。

「人の死体よりも魔物の死体の方が多い…これには必ず理由があるはず」

 いくらなんでも町の人口に比べて死体が多すぎる。

 先に戦った500の魔物兵の中身も殆どはゾンビだったが、それでもその数は多い。

 いくら町一つを死の街に変えたとはいえ、この町にある死体の数と合わせると町の人口を迫る数だ。

 魔人とはいえ、その数を全く周囲に知られずに殺すなんて難しい。

 だとすると、何か相手には数を埋めるだけの方法があるはずなのだ。

「ジルさん! アレ何ですか!?」

 加奈代の言葉にジルは彼女が指さす方向を見る。

 そこには大量の死体があるため見にくいが、壷のような物が置いてある。

「あれはる壷!?」

 そこにあったのはる壷というモンスターを生み出す魔性の壷だ。

 だが、何故その壷があるのに、周囲には死体しかないのかは謎だが、それでもる壷があるのなら壊すしかない。

「あの壷を壊してください!」

「おう!」

 加奈代の言葉にゲンバがる壷に向かってクナイを投げる。

 る壷はモンスターを呼ぶが、その耐久力は普通の壷と変わらない。

 なのでクナイが当たれば簡単に壊れるはずだった。

「あっ!? 動いた!?」

 しかしそのクナイは予想もしない方向で外れてしまう。

 る壷が意識を持っているかのように、浮き上がってクナイを避けたのだ。

「まさか…使徒!?」

 バーバラの言葉に誰もが驚く。

 バーバラの言葉を肯定するかのように、る壷から新たなモンスターが出て来るが、そのモンスターは何故か死体として出て来る。

 そしてトルーマンがその死体をゾンビとして甦らせているのだ。

「なんて事…!」

 ジルはあまりの事実に唇を噛む。

 まさかる壷を使徒にするなど考えてもいなかった。

 だがそれでもジルは冷静だった。

 意識を持って動くのであれば、逃れる事が出来ないようにすればいい。

 魔法は絶対に命中するので、る壷が動いても逃げられないように魔法を放てばいいのだ。

 ジルはそう判断して魔法の詠唱を始める。

 その魔法に気づいたドワイトはジルを守るべく、彼女を襲ってくるモンスター達を食い止める。

「ドワイトさん! ヒーリング!」

 皆の壁になっているため、怪我が多いドワイトをクーが回復するが、何分数が多い。

「この! 火爆破!」

 バーバラの放つ魔法がモンスターを焼き尽くすが、それでもる壷から生み出されるモンスターの数は中々減らない。

「ランス! あっちも危ないわよ!」

「フン、今はこっちが先だ!」

 それを横目で見ながらランスとスラルは魔人トルーマンと戦っている。

「クッ! 人間が…!」

 トルーマンはあまりに早く、重いランスの一撃に中々反撃の機会を得る事が出来ない。

 人間の時は司祭でしかなかったトルーマンは、肉弾戦に不向きだ。

 普通ならば無敵結界の前には人間は成す術も無く、トルーマンの放った普通の魔法で消し炭になるのだが、

(こいつ…本当に人間か!?)

 ランスの一撃が魔法の詠唱をするタイミングを与えない。

 確かに無敵結界があるのでダメージは受けないが、無敵結界はその衝撃までは防いではくれない。

 そしてランスの一撃は恐ろしい衝撃を無敵結界の上から与えてくる。

 鈍器で殴られるような感覚は、例え魔人になったとしても慣れないものだ。

 いや、魔人になったからこそこの衝撃に余計に混乱を覚えているのかもしれない。

「がはははは! 雑魚は雑魚らしくさっさと俺様の経験値になれ!」

 ランスの攻撃はトルーマンに何もさせないくらいの速さを持って行われる。

 周囲のゾンビ達がランスに向かうも、そのゾンビたちはスラルの放つ魔法の前に消滅させられる。

 それだけでなく、ランスは魔人と戦いながら雑魚モンスターを片手間で片付けている。

「くたばれ! ラーンスあたたたたーーーーっく!」

 ランスの一撃で思わず体勢を崩したトルーマンに、ランスは己の必殺技を放つ。

 が、その時トルーマンは確かにその顔に笑みを浮かべた。

「ランス! 下!」

「何!?」

 スラルの声にランスは床に視線を向けた時、その床から巨大な壁のようなモノが出て来る。

 ランスアタックはその壁を切り裂き、その壁から血飛沫が飛び出す。

「なんだこれは!?」

「ランス! 来る!」

 スラルの声にランスは素早く反応し、襲い掛かってくる拳を避ける。

 そして一度後ろに下がった時、その巨大な壁を正体を悟る。

「ガーター大統領!? でもこんなのは見た事無い…」

 ガーター大統領は男の子モンスターの一種で、床と一体化したような形をした人型に近いモンスターだ。

 しかし目の前に居るガーター大統領は大地の色では無く、ドス黒い血に染まっている。

「人間が…まさか魔人である私が使徒と共に戦う事になるとはな…」

「使徒…そうか、こいつも使徒か。何体居ても不思議じゃないわね」

 魔人の使徒は複数体作り出す事が出来る。

 その分だけ魔人の魔王の血は薄くなり、魔人は少しだけ弱体化する。

「行くがいい、ウィルソン。その人間を殺せ」

「グオオオオオオオ!」

 ウィルソンと呼ばれた使徒は雄叫びを上げながらランスに襲い掛かる。

「チッ!」

 ノス程は大きくは無いが、それでも魔人レキシントンよりも縦にも横にも遥かに大きい。

 ランスがかつて戦った闘神ほどの大きさがある。

 使徒はただ単純に拳を振るうだけだが、その威力は人間がくらえばひとたまりもないだろう。

「! 危ないランス!」

 スラルが慌ててランスの前にバリアを貼る。

「うがっ!」

 その衝撃にランスは思わずバランスを崩すが、それでも何とか体勢を立て直す。

「何があった!?」

「魔人の魔法よ! どうやらこいつを壁にして魔法で攻撃する戦法に切り替えたようね」

「何だと!? ぐぬぬ…」

 只でさえ無敵結界は厄介なのに、目の前にはガーター大統領の使徒も存在している。

 流石のランスも魔人と使徒の2体がかりでは厳しい。

「フーヴァーよ。もっと死を吐き出せ。この人間共を皆殺しにするのだ」

 その言葉に合わせるように、る壷からモンスターの死体が吐き出される。

 トルーマンが口で何かを呟くと、その死体が起き上り、ランス達へと向かって来る。

「ランス! 流石にまずいわよ!」

「分かっとるわ! 魔人のくせにやってくる事がセコイぞ!」

 これまでランスが戦ってきた魔人は全て1体でランスに向かってきた。

 魔人サテラだけは自分が作り出したガーディアンであるシーザーと共に戦ってるが、それでも1体だけだ。

 こいつのように次々に数の暴力で攻めてくる魔人がいるとはランスも思わなかった。

「でも…連携に関してはグダグダね。ガルティアのように使徒と完全な連携が出来ていない」

 それでもランス達が戦えているのが、魔人と使徒がそれぞれバラバラに襲ってくるからだ。

 スラルの言う通り、連携がからっきしで使徒の動きに合わせて魔法を撃つのではなく、詠唱が完了したから魔法を撃つという単純な行動しかしてこない。

「魔人は連携が出来ないけど、こいつはからっきしね。ランス、まずはあの使徒を何とかしないとダメよ」

「レダが居れば問題無いのだ。あいつは一体何ちんたらやっとるんだ!」

 今は居ないレダに対して文句が出るのを止められない。

「スラルちゃん! アレは出来るか!」

「無理よ! ジル達を確実に巻き込むわ!」

「ぐぬぬ…いかん、少し甘く見過ぎたか」

 ランスとスラルの二人の必殺技ならばここの敵を一掃出来るかもしれないが、制御が不完全のため仲間を巻き込んでしまう。

 流石のランスも目の前の物量、そして魔人と使徒の攻撃の前には苦戦を強いられている。

 その時、

「ゼットン!」

 ジルの放った魔法が周囲のゾンビ達を広範囲に渡って焼き尽くす。

 その炎はトルーマンとウィルソンすらも飲み込む。

 炎が消えた時、周囲にいたゾンビ達は全てが焼き尽くされる。

 これならばあのる壷の使徒も倒せると思っていたが、ジルは目の前に存在しているゾンビを前に唇を歪める。

「はにほー…」

「ころっけぇ…」

 そこに居たのはブラックハニーと思われるハニーのゾンビだ。

 ハニーには魔法は一切効果が無く、いくらジルの魔力が優れていようがダメージを与える事は出来ない。

「ランスさん! る壷です! る壷の使徒を何とかしないと駄目です!」

「る壷だと!?」

 加奈代の指さす方向を見ると、ハニーのゾンビの後ろにランスも知るる壷の姿が存在している。

「る壷の使徒…あれがモンスターの死体を生み出し、魔人がその使徒を操るか。ランス! 魔人よりもまずはあっちをどうにかしないとジリ貧よ!」

「分かっとるわ! うーむ、せめてリック辺りが居れば何とかなるものを」

 こういう時はランスもその強さを認めるリック・アディスンが居ればいいと思ってしまう。

 あの手数が多く、攻撃に長けた男が居れば何も問題無くあのる壷の使徒を任せられるだろう。

 いや、レダさえ居れば何も問題無く倒せるのだろう。

 彼女は明らかにリックよりも強いのだから。

「人間よ。諦めよ…そして貴様の死を持って我が神に全てを捧げるのだ」

「やかましい! 絶対ぶっ殺す!」

 ランスはまずはる壷を壊そうとするが、流石に使徒と魔人が相手では近付けない。

 ジルのゼットンでゾンビの数は減ったが、る壷が存在している限りはどんどん増え続けてしまう。

「ボス! まずはる壷を頼む!」

 ランスが焦っていた時、ガーター大統領の攻撃をドワイトが何とか食い止める。

「バーバラ! 援護を頼むぜ!」

「あーもう! どうしてこんな事に!」

 バーバラは何故自分がこんな所で魔人と戦っているのだろうかと思いながら、ドワイトを援護する。

 クーによって防御魔法をかけられたドワイトは、ただ只管に時間を稼ぐ事だけに徹する。

 バーバラはそのための援護だ。

 身体能力は人間を上回っているバーバラだからこそ、魔法使いで有りながら自衛が出来るという特徴がある。

(ううう…私の力はケッセルリンク様のためにあるのに、どうして人間を助けてるんだろう。ああでもこの男はケッセルリンク様の戦友で、シャロンさん達の命の恩人だし…確かに滅茶苦茶強いけど!)

 襲い掛かるガーター大統領の使徒の攻撃をバーバラは何とかずらしながら戦う。

 問題は魔人だが、その魔人はランスの方に向かって行く。

 る壷の使徒を守る事を最優先にしたようだ。

「人間…好きにはさせんぞ」

「いい加減にしろ! 男が俺様に付き纏うんじゃねーーーーっ!」

 ランスの一撃が無敵結界を叩く―――前にその剣が何か硬いものに止められる。

 ランスの剣を止めたのは男の子モンスターの一種である、俺は鉄壁のゾンビだった。

「死ね。人間!」

「げ!」

 そして動きが一瞬止まったランスに向かって、トルーマンが放ったエンジェルカッターが襲い掛かる。

「くっ!」

 スラルは何とかそれを防ぐが、流石にタイミングが一瞬遅れてしまい、ランスの体に魔人の魔法が当たってしまう。

 ランスは吹き飛ばされるが、そのまま回転して素早く起き上る。

 ランスの持つドラゴンの加護は魔人の魔法すらもある程度防げる程の防御力を持っている。

 まさにバランスブレイカーの名前に相応しいアイテムではある。

 しかしそれでもランスも無傷では無く、その体からは血が流れる。

「止めだ。死ね!」

 そして魔人の手には先程よりも巨大な魔力が溜まっているのを感じる。

「まずいわよ! ランス!」

「わかっとるわ!」

 魔人は自分もろともジル達をも吹き飛ばすべく、その魔法…ライトボムを放とうとする。

「ボス! 危ない!」

 その時、トルーマンの前に何かが投げられるが、トルーマンはそれを無視する。

 無敵結界の前には全ての攻撃は無力であり、注意しなければならないのは目の前にいるランスの攻撃のみ―――そう決めつけていた魔人特有の油断があったのだろう。

 

 ボンっ!

 

「むっ!?」

 魔人の無敵結界に当たり、ソレが爆発した時にはトルーマンの視界は白い煙で覆われていた。

「おのれ人間…!」

 トルーマンは取るに足らないはずの人間…それこそランス以外の雑魚によって自分の視界が妨げられた事に怒る。

 その怒りで集中が解け、魔法を放てなくなる事に気づくが、その時にはもう全てが遅かった。

「だりゃああああああ!」

 ランスの放った剣が白い煙を切裂く。

「ま、マジかよ…」

 その剣技には最早呆れるしかないが、それでもランスは完全にやってのけた。

「ボス! ジルさん! あそこ!」

 魔法でる壷の気配を感知したドロシーの指差す先には、確かにる壷の姿があった。

「ファイヤーレーザー!」

 そしてジルがそれに合わせて魔法を放つ。

「させぬよ!」

 しかしそれはトルーマンがファイヤーレーザーの射線上に入り、無敵結界に阻まれて霧散する。

 その衝撃で煙が吹き飛ばされ、トルーマンは魔法を放った人間に対して酷薄な笑みを浮かべる。

 いかに必中の魔法でも、対象となったモノの前に物体が有ればそれに当たってしまう。

「いくら小細工をしようと、それが限界よ!」

 トルーマンの言葉に合わせるように、る壷から新たなモンスターの死体が湧きあがる。

 その死体に向かい、トルーマンが魔法を使おうとした時、

「くたばれ!」

 突如として飛んできた何かがる壷に直撃し、る壷を壁に縫い付ける。

「何だと!?」

 トルーマンがその方向に目を向けると、そこには剣を投擲したであろうランスの姿が見える。

 ランスは自分の持つ剣をる壷に投げつけ、それは見事にる壷を貫いた。

 トルーマンは驚くが、使徒であるフーヴァーはそれくらいでは死なない。

「戻れ!」

 ランスの言葉にその剣はランスの手元に戻る。

「とーーーーーーっ!」

 そしてランスが剣を振りかぶり、トルーマンへと一撃をぶつける。

「ぐっ!」

 その一撃に無敵結界が揺さぶられ、トルーマンは地に膝をつきそうになるのを必死で堪える。

 人間の狙いは既に分かっている。

 る壷の使徒を狙い、こちらの供給を止めるつもりなのだろう。

 

 バンッ!

 

 その時、ランスが入ってきた扉とは別の方向の扉が破壊され、猛烈な死臭が漂ってくる。

「来たか、マッキンリー」

「Oh…食事の邪魔をするのはお前達か。全員喰ってやる…」

 そこに入ってきたのは、使徒のマッキンリーだ。

「うげ」

 流石のランスもここに新たな使徒が出て来た事には驚愕するしかない。

 まさか4体の使徒を作っているとは思ってもいなかった。

 このマッキンリーという使徒だけだと思い込んでしまっていた。

「ランス…ここは撤退も考えるべきよ」

「むぐ…仕方ないか。だがあいつだけは何とかぶっ殺しておきたい…」

 ランスが何とかしたいのは、る壷の使徒だ。

 あの使徒が居る限り、相手は無尽蔵にゾンビを増やし続けるだろう。

 そうなると物量で押されてジリ貧になってしまう。

 だが、ランス以外の者も限界に近づいているのは明白だ。

 クーも既に魔力が枯渇する寸前だし、この時代には竜角散も存在しないので魔力の回復も見込めない。

 しかもる壷から生み出された死体が動きだし、再びランス達に向かって来る。

 ランスも流石にこうなってはどうしようもないと、皆に撤退の指示を出そうとした時、

「消えなさい!」

 ランス達が入ってきた扉から金色の髪をした人とは思えぬ美しさを持つ女が入ってくる。

 女―――レダの放った浄化の魔法の前に、湧き出て来たゾンビ達が砂へと変わる。

「遅くなったわね。でもここのマスターゾンビは全部潰しておいたわ」

「遅いぞ! レダ!」

「何よ。このまま無策に戦って、挟み撃ちにされるよりはいいでしょ!」

「レダさん! 皆をお願いします」

 ランスの隣に立つレダがランスと言い合いをしていると、切迫した声でクーが叫ぶ。

 見ればドワイトが全身から血を流し、膝を地についている。

 使徒ウィルソンとの戦いで大怪我をおっているのだ。

「回復の雨」

 レダが回復魔法をかけると、ドワイトも何とか立ち上がる。

「す、すまねえ…」

「謝るのは後。それよりも使徒が4体もいたのね。流石にそれは予想してなかったって事かしらね、ランス」

「やかましい。取り敢えずあのる壷の使徒はここで絶対に殺す」

「そうね。取り敢えずはまずはそこからね。それじゃあ行くか」

 ランスとレダは並び立つと、同時に魔人に向けて走り出した。

 




使徒は大帝国に習って全部アレ

しかしる壷から生み出されるモンスターって魂持ってるのかな…
それがあれば無限にモンスターが生まれて人間をあっさり滅ぼせそうだけど
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