「怪獣界だと? 何だそれは」
「私も信じ難かったが…彼らの姿を見れば納得できるだろう」
ランスは周囲を見渡す。
そこには確かに見た事も無いモンスターのように見える存在がランス達を崇めている。
そしてそこには、モンスターが見せる敵意が全く感じられない。
「ちょっと待て。レダとまおーの姿が見えない。それに…ケッセルリンク、お前の使徒はどうした?」
スラルの言葉に、ケッセルリンクは安心させるように微笑む。
「皆無事です。怪獣王子、まずは私から説明したいのだがいいか? どうやら先に来た私達とは違い、ランスは今の状況を理解出来てないようだからな」
「それがいいですぎゃ。それに見た所、勇者殿もお疲れの様子。まずはゆっくりと疲れを癒して欲しいですぎゃ」
「む、むぅ…」
非常に礼儀正しい怪獣王子にランスは困惑する。
如何にも冒険者風の衣服を纏っているが、確かに王子と言われればなんとなくだが納得もいく。
それだけの気品を備えている様に見えるし、何よりも非常に礼儀正しい。
(…何か俺様が知る王族とかよりもよっぽど上品だな)
ランスが知る王族はリア達だが…ランスの前ではかなりあーぱーな所を見せるリア、王女ではあるがあんな調子のマジック、清楚なようで意外と図太いシーラだ。
男は男でやたらと体と声がでかいガンジー、とても王族には見えないパットンなど個性豊かすぎる。
「さあ、案内しますぎゃ」
そして怪獣王子に案内されたのは、豪華ではあるが普通の部屋だ。
「うーむ、何か違いがあるかと思ったが、人間の居た所とあまり変わらんな」
ランスは周囲を見渡しながら、部屋にある調度品を見る。
確かにオブジェ等はこの世界の独自のものだろうが、ベッド等は人間界のモノと変わらない。
「疲れが癒えたらもう一度話を聞いてほしいぎゃ」
「うむ、良いだろう」
「そうね…ちょっと疲れたわね…」
スラルは用意されたベッドに腰掛け、大きくため息をつく。
それを見届けて、怪獣王子は一礼して部屋を出ていく。
そして残されたのはランスとスラルの二人だけだ。
すると突然スラルはランスの胸に飛び込む。
「おっ? 何だスラルちゃん」
「ごめ…ごめん…ごめんなさい…わ、私のせいでジルが…」
スラルは声を震わせて泣いている。
ランスの体を力強く掴んで大きな声で泣き喚くのを見て、ランスは意外なほど優しくスラルの頭を撫でる。
「気にするな。別にスラルちゃんが悪い訳じゃ無いだろ」
「で、でも…私が無敵結界なんか頼んだせいで…ま、魔王が変わって…それでジルが…ジルにはランスの子供が…」
ランスの子供、という言葉を聞いて流石のランスも表情が消える。
ジルはランスの子を妊娠していた…それはランスも知らなかった事だが、本当の事だろう。
「だから気にするな。あの状況はどうしようもないだろ」
確かにランスはジルを失った…が、あの状況はもう誰のせいでもなく、誰であろうが抗えない場面だった。
かつて魔王と対峙したランスだからこそ、魔王の脅威は誰よりも理解している。
魔王には誰にも勝つ事は出来ない…それこそ奇跡でもおきなければ。
「うわーーーーーーっ!」
ランスに優しく頭を撫でられながら、スラルはランスの胸の中で泣き続けた。
「で、落ち着いたか」
「あ、ああ…落ち着いた…」
二人はベッドに腰掛けながらため息をつく。
色々な事が有り過ぎて、ランスとしても少ししんどくなってきている所もある。
こうしてスラルが感情を露わにして泣いてくれて、逆にランスが冷静になっていた。
「それよりもスラルちゃん。体があるではないか」
「そ、そうだな…我も驚いている…一体何が起きたのか、正直自分でも把握できていない」
急に現れたスラルの体、そして甦った魔王の力。
「だが魔王の力はもう使えないな…」
「何、そうなのか?」
「ケッセルリンクの支配権が奪えたのは、ジルがまだ魔王になって間も無かった事と、ケッセルリンク自身がジルに抗ったからだろう。しかし時間が経った今、魔王の命令権は使えないな」
「そうか…」
魔王の絶対命令権…それさえあれば楽になるとランスは思ったのだが、やはりそう上手くは行かないらしい。
「無敵結界も魔人を作る力も無い…あるとすれば、人間よりも上回る魔力程度か…いや、それでも十分すぎるな」
普通の人間よりも遥かに優れた魔力は有るが、魔人には敵わない。
それくらいの力しか持っていない、中途半端な存在だ。
「そうかそうか。スラルちゃんの体がとうとう戻ったか」
「うむ、紆余曲折はあったが、ランスの目的の一つは完遂された…」
そこまで言葉を発して、スラルは突如として自分の背筋が寒くなると同時に、顔が紅潮するのを自覚する。
そう、自分が肉体を取り戻したという事は…
「がははははは! とーーーーーーーっ!」
「え、きゃあああ!?」
スラルが身構えるよりも早く、ランスがスラルをベッドに押し倒す。
そしてスラルの唇を素早く塞ぐ。
「むぐっ!?」
突如の事で目を白黒させるスラルに対し、ランスはあっという間に服を脱ぎ捨て全裸になる。
「ようやくスラルちゃんを思う存分抱ける訳だ! 今までずーっと我慢していたからな!」
「ちょ、ちょっと待てランス! お前は今疲れているのだろう!? そ、そんな事をしている余裕なんて…」
「そんなもんはスラルちゃんとするためには何の障害にもならんわ!」
「あ、こら! 服を脱がすな! んんっ!?」
ランスは素早くスラルの服を脱がせ、再びスラルの唇を塞ぐ。
そしてスラルの体に手を這わせる。
その感覚にスラルは体はどんどんと紅潮し、その体から力が抜けていく。
「スラルちゃんも待っていたんだろう? 俺様を甘く見るなよ」
「そ、そんな事は…それに…お前はジルを失ったばかりで…」
「それは違うな。まだジルを失った訳じゃ無いだろ。ジルは何としても取り戻す。だが、その前にスラルちゃんを完全に俺様の女にする」
「ラ、ランス…」
スラルはランスの目を覗き込むが、確かにその目には力強い輝きが宿っている。
ジルを…大切な存在を奪われたというのに、ランスの力強さは全く変わらない。
(…そうか。だから我はこんなランスが欲しかったのだな)
スラルは観念したように微笑むと、ランスの首の手を回す。
「お。スラルちゃんもやっぱりその気だったんだな」
「今まで…何度お前が他の女を抱く所を見せつけられたと思っているんだ。わ、我も…女だぞ」
「がはははは! 大丈夫だ! スラルちゃんも俺様の女だから。うむ、そうだな。スラルちゃんが魔王だった時は激しくしたが、今回はまずは優しくしてやろう」
「ん…」
その言葉通り、ランスはスラルの唇を優しく塞ぐ。
だが、そんな唇とは違い、その舌は激しくスラルの口内で暴れまわる。
スラルもそんなランスに応える様に舌を絡める。
(…そうだ。これが肉体があるという感覚だったな)
今はランスの体の力強さ、温かさ、その全てが懐かしく、そして愛おしい。
「所でランスに優しくする…なんて事を出来るの?」
「…スラルちゃん、中々言うようになったな。最初は優しくしてやるが、次からは思いっきりやるからな」
「え、ちょっとそれは…あっ…」
その日スラルは最初は優しくされ…その後は思いっきりランスに攻められた。
「ランス、いいか?」
「んー…ケッセルリンクか」
ランスが思いっきりスラルの体を楽しみ、眠りについているとケッセルリンクが部屋に入って来る。
ランスは横で眠っているスラルを起こさないように起き上がる。
ケッセルリンクはランスの横で眠るスラルを見て微笑む。
「全く…予想はしていたが、早速か。しかしレダはどうした?」
「あん? レダは居ないのか?」
「ああ。私としてもお前と一緒に居ると思っていたが…どうやら、ここに現れるのには時間差があるようだな。事実、お前がここに来たのは私達が来た一日後だ」
「ふーん。だったらその内出てくるだろ」
ランスとしてもレダの事は全く心配していない。
その強さは本物だし、何よりもエンジェルナイトだ。
「ランス…すまない」
ケッセルリンクが突然ランスに対して頭を下げる。
それにランスは驚く。
「あん? 何がだ」
「ジルの事だ…私は…お前から彼女を…」
「別にお前が悪いわけじゃないだろ。魔人は魔王の命令には逆らえんのだろ。嫌という程聞いた」
魔人は魔王に逆らえないという事は、サテラからも嫌という程聞かされた。
だからこそ、サテラは魔人なんちゃらとやらから美樹を守っているとも聞いている。
「ランス…」
「今回だって何とか…はならんかったが、最悪では無かっただろ」
そう、ランスにとっては確かにジルは助けられなかったが、最悪では無かった。
自分が生きているというだけで、確かに望みが有る、ランスはそう考える男だった。
(それにシィルだって何とかなったんだ。俺様なら当然何とかできるな、うん)
魔王リトルプリンセスの氷から、シィルを助け出す事が出来たのだから、ジルも何とか出来る。
ランスはそう頭を切り替えていた。
それよりも、ランスは別の可能性について頭を悩ませていた。
正確には、一番最初にカミーラと出会った時からの違和感だったが、ジルが魔王となった事でその可能性が見えてきた。
(…もしかして過去の世界とかいう奴か? そういや志津香も過去を変えようと色々となんかやってたな)
志津香は自分の父親を殺された過去を変えるとか何とか言っていた…ような気がする。
もう何年も前の事であり、ランスとしてもすっかり忘れてしまっていた。
(うーむ…しかし何が原因だ? やっぱりこれもセラクロラスか?)
セラクロラスの力で未来に進んでいるという事は分かっている。
だとしたら、逆があってもいいのかもしれないが、流石のランスもそこまでも確証もない。
それに、あれからセラクロラスにも会っていないので、話を聞く事も出来ない。
「ランス?」
「まあとにかくだ。お前もジルを元に戻す事に力を貸せ。これは決定事項だ。いいな」
「………ああ。分かった。魔人の身でどこまでお前に協力できるかは分からないが…協力しよう」
悲痛な表情を浮かべていたケッセルリンクだったが、ランスとの会話でようやく笑みを見せる。
その笑顔を見て、先程までに散々スラルを相手にしていたランスのハイパー兵器が反応する。
ランスは全裸のままケッセルリンクの所へ歩いていくと、そのままケッセルリンクをベッドに押し倒す。
押し倒されたケッセルリンクは、隣で眠っているスラルを見て笑みを浮かべる。
「スラル様…良かった」
「あ、そういやスラルちゃんに普通に体があるんだが、お前何かしたか?」
「いや…私がどうにか出来るのなら、とっくにどうにかしている。あの時、まおーが何かをしたかのように見えたが…そう言えばまおーの姿も見えないな」
「そういやアイツも居ないな…まあそんな事は今の俺様にはどうでもいい。早速やるぞ」
ランスの言葉にケッセルリンクは少し呆れたように微笑みながら、ランスの頭をその豊満の胸に抱き寄せる。
「ん、何だ?」
「いや…無性にこうしたくなった。それと同時に…お前という人間を非常に好ましく思った…それはあの時魔人を倒した時から変わらないが…改めて、お前という人間を凄いと思った」
「今更何だ。俺様は最初から凄かっただろうが」
「ああ、それは疑っていないよ。お前のその心の持ちようが非常に好きだ。何事にも諦めずに、ただ只管に真っ直ぐを見据えるお前が」
ケッセルリンクはランスに唇に軽く口づけすると、
「今日は…私に任せてくれ。お前はゆっくりしてくれ」
ランスと体を入れ替えると、そのまま服を脱ぎ捨ててランスのハイパー兵器を掴む。
「ん…」
そのままハイパー兵器を受け入れ、ランスの胸に手をあてながら、リズミカルに腰を使い始める。
ランスからすればその動きはリズナやリアよりも拙いが、それでもケッセルリンクがこうして自分に対して一生懸命な所を見るだけでも満足感がある。
(うーむ、やっぱりケッセルリンクはいい女だな。この可愛げがパステルにもあればな…いや、アイツはアイツでいいか)
同じカラーであるパステルと比較するが、パステルは絶対こんな事はしてくれないと思いつつも、ランスはケッセルリンクの言う通り、彼女の好きにさせる事にした。
ランスとケッセルリンクがセックスを始めてから少し経過し、今はケッセルリンクがランスの下で喘いでいる。
その美しい体は既に汗にまみれ、その美しさを更に艶っぽくさせている。
必死でランスにしがみ付き、そして今日何度目かの絶頂を同時に迎える。
「ああ…えがった。だが流石に疲れたぞ…」
ランスは魔人であるケッセルリンクの上に体重をかけて伸し掛かる。
普通の女性にはまずしない行為だが、魔人である彼女ならばランス一人の体重などどうという事は無かった。
ケッセルリンクも絡めていた手と足を離し、そのままランスの髪を撫でる。
(ランス…流石にジルを…ジル様を失った事と、彼女の中にあった子を失った事は大きかったか…)
最初はケッセルリンクが動いていたが、徐々にランスに主導権が移り、最後にはやや乱暴なセックスへと変わっていった。
それもランスの心境を考えれば無理は無い、とケッセルリンクは思う。
大切な者を失えば無理も無い、そう思いケッセルリンクはその行為を全て受け止めた。
「………ランス、お前は本当に飽きないな」
「ん、何だスラルちゃん、起きてたのか」
「随分な言い草だな。というよりも、女が寝ている横で躊躇いなく別の女とセックスをするとか…相変わらずというか何というか…」
スラルは呆れたようにため息をついて起き上る。
だが、その顔は明らかに朱に染まっている。
「んー…スラルちゃんも混ざってもいいが、流石に今回は疲れた。俺様はもう寝る…」
ランスはそのままケッセルリンクの上でとうとう寝始めた。
ケッセルリンクは最後にランスを優しく抱きしめると、そのままランスをベッドに寝かせる。
そしてケッセルリンクも起き上り、自分は服を着ようとして、自分がとんでもない状態なのを思い出し、失礼にならないようにシーツだけを羽織る。
「スラル様…まずはこうして再びあなた様と出会えた事に感謝を」
「そんなのはいらないさ。今までも話は出来ていただろう」
「確かにそうですが…こうしてスラル様に触れる事が出来るのを嬉しく思います」
今のスラルも全裸だが、その美しさは魔王の時から変わっていない。
魔王の時の張りつめた空気が無くなっているのが、ケッセルリンクには嬉しく思える。
「しかし一体どうしてスラル様に肉体が出て来たのか…そこが分かりません」
「今分からなくてもいいだろう。それよりも今後の事だ…特にケッセルリンク、お前はな」
スラルは難しい顔でケッセルリンクを見る。
何しろ、今回ケッセルリンクは現魔王であるジルに明確に逆らってしまった。
確かに支配権を奪われていたという事はあるが、そんなのは魔王にとっては関係無い事だ。
魔王が気に入らなければ、それだけで魔人は殺されてしまうのだ。
「私は…覚悟はしています。それに、元々はスラル様に救われた命、こうしてスラル様が甦られたのであれば、私はそれでも十分です」
ケッセルリンクの言葉にスラルは首を振る。
「我の事よりもランスがな…お前が死ぬことをランスは望まない。それどころか、お前を守るために魔王にも立ち向かいかねないのがランスという男だ」
「私のした事は許される事ではありません…私は、ランスの子を殺す片棒を担いでしまいました…それが例え魔王の命令であっても…」
「さっきのランスの言葉…少し聞こえていた。ジルを元に戻すためにランスに協力するのだろう? だったら、ランスに協力するのがその贖罪になると我は思う」
「スラル様…」
眠っているランスの顔を見て、ケッセルリンクは力強く頷く。
「自ら死にに行く事はしません…しかし、魔王がどう動くかは分かりませんので、もしかしたらという可能性は常に持って頂かなければいけません」
「魔人四天王の一人であるお前を切るつもりがあるかどうかか…こればかりは、魔王を見てみなければ判断はつかないか…」
本来であれば、魔人が魔王に逆らうなど言語道断、許されない事だ。
許されない事ではあるが、今回は例外中の例外…という事になるのを祈るしかない。
結局は、魔人の命は魔王に握られているのだから。
「しかし…此処は何処だ? 我も怪獣界というのは聞いた事が無い。異世界は存在しうると思っていたが…」
「まだ私も把握できてはいません。ただ、こちらに対する悪意はありませんし、ハウセスナースの名前を口にしてましたから」
「ハウセスナース…地の聖女の子モンスターか。やはり聖女の子モンスターとは不思議な力があるようだな。我もまだ見ていない、ウェンリーナーに会ってみたいな…」
セラクロラス、ベゼルアイ、ハウセスナースに会う事は出来たが、未だにウェンリーナーには会った事が無い。
ここまでくれば、聖女の子モンスターをコンプリートしたいという思いに駆られてしまう。
「それよりも…まずはゆっくりと休んでください。スラル様もお疲れでしょう」
「…そうだな。確かに疲れた。ケッセルリンク、お前はどうする?」
「私は…そうですね。今はランスの側に居ようと思います。ランスにとっては…辛い現実だと思いますので」
「ああ…それがいい。お前はランスを癒してくれ。我は…我にはその方法が分からぬ…」
スラルは少し悲しそうに眉を伏せる。
そんなスラルに対してケッセルリンクは優しく微笑む。
「大丈夫ですよ。スラル様は何時もの様にしているだけでいいのです。それが一番良いと思います」
「…だといいがな。とにかく…ランスが自暴自棄にならないのは本当に良かった」
スラルはそのままランスの側に横たわる。
ケッセルリンクはその逆側で同じように横たわる。
(魔王…か。一体魔王とは何なのだろうな)
スラルはそう考えながら、己も眠りについた。
翌朝―――ランス達は再び怪獣王子の所を訪れる途中だった。
「…相変わらずレダとまおーがおらんな」
「そうですねー。あの二人がいないのは辛いですよねー」
加奈代がランスの言葉に頷くが、そんな加奈代の頭をランスが軽く叩く。
「ランスさん? 一体何ですか?」
「お前、何時の間に使徒になったんだ。というか俺様の女がどんどんとケッセルリンクの使徒になっていくぞ」
「あはははは。私は死にかけてたみたいでして…そこをケッセルリンク様に助けてもらいましたー。いえーい」
「何がいえーい、だ。まあそんな事はどうでもいいか」
「えー。私が使徒になった事って凄い軽いんですね。まあランスさんですからねえ」
加奈代はランスが何時もの様な口調でいる事に安心する。
(流石にジルさんが魔王になってどうなるかと思いましたけど…何とか大丈夫そうですねー)
加奈代としてもランスの事が心配だったが、どうやら大丈夫…のようだ。
まだこの先どうなるか分からないが、少なくともランスが暗い顔をしているのは何だからしくないと思う。
そしてランス達が怪獣兵士に案内された先には、怪獣王子ともう一体…いや、もう一人の人間に似た少女が待っていた。
「勇者殿、疲れは取れましたぎゃ?」
「うむ、まあ中々良い寝床だったな。で、隣のは誰だ?」
「お初にお目にかかりますぎゃ。あたしは怪獣王女、にいちゃんの妹ですぎゃ」
「何だと!? 全然姿が違うではないか!?」
怪獣王女と怪獣王子を見比べてランスは驚く。
怪獣王子はランスから見れたモンスターだが、怪獣王女は人間の女に非常に似ている。
(いや…モンスターも男と女で分かれてるからな…これでも問題は無いのか…?)
ランスは改めて怪獣王女を見るが、
「どうしましたぎゃ?」
「うーん…あと2年は必要だな」
「?」
手を出すには流石に早いような気がする。
幸いにも、今は女には困ってはいないので、このくらいの容姿の少女はランスの対象外だ。
勿論、極限状態になればランスは躊躇いなく襲うのだが、幸いにも今は周囲にランスの好みの女性が居るのでランスも耐える事が出来ていた。
「それで突然なのですぎゃ…まずは突然皆さんをお呼びした事をお詫びしますぎゃ」
怪獣王子はまずは恭しく一礼をする。
「構わないわよ。私達にとっても幸いだったしね」
ランスが「全くだ。俺様も暇じゃないんだぞ」と言おうとする前に、スラルが応える。
「その通りだ。むしろ我々は助けられた…だが、何故我々だったのか…そこも聞きたいな」
ケッセルリンクがスラルに続いたため、ランスは言葉の行き所を無くしてしまう。
「皆様をお呼びした経緯ですぎゃ、それは我々の世界に恐ろしく強い魔神が出現してしまった事からですぎゃ。異世界の魔神を倒すために、勇者を探していた所、ハウセスナース殿が勇者殿を送ってくれたのですぎゃ」
「ちょっと待て! ハウセスナースだと!?」
ハウセスナースの名前が出た事で、ランスも流石にこれ以上は黙ってはいられない。
「そういやあの色ボケが何か言ってたような…」
「あー…そういえば言ってたわね。怪獣神官に宜しくとか…」
「その怪獣神官の一人が、ハウセスナース殿との交信に成功したのですぎゃ。それ故に勇者殿がこの世界に…もしかして無理矢理連れてこられましたぎゃ?」
ランス達の微妙な表情に、流石の怪獣王子もその心境を察する。
「…まあいい、あの色ボケ聖女の子モンスターは後できつくオシオキだな。で、俺様達を帰す事は出来るんだろうな」
ランスにとってはこれが一番重要。
確かに異世界はランスの冒険心を刺激してくれるが、取り敢えず今はジルの事が気になってはいる。
ただ、ランスも魔王ジルの治世にはカオスとカフェからよく聞かされている。
曰く生き地獄、誰もが息を顰めて生きていた時代であり、夜には灯りを灯す事さえできず、次の日が訪れた事に感謝していた時代だという。
そして何よりもランスでも気が滅入ったのが、人間牧場という言葉だ。
それにはあのスケベで煩いカオスも口数が少なくなり、明るいカフェでもその目には怒りが存在していた。
それだけ、魔王ジルの時代は人間が生きるのには苦痛の時代だという事だ。
「勿論、再びハウセスナース殿との交信が出来れば戻す事は出来ますぎゃ。ただ、そのためにはあの魔神を倒さなければならないのですぎゃ」
怪獣王子の言葉にケッセルリンクは腕を組んで考える。
「魔人…いや、魔神の方が正しいのか? それ程までに強いのか、それは」
「勿論その魔神が強いというのもありのですぎゃ、それと同じようにこちらでは狂王が暴れているのですぎゃ…狂王を相手しながら、魔神の相手は難しいのですぎゃ」
「狂王…随分と大層な名前ね。それで私達に異世界の魔神を倒してほしいという訳ね?」
「そうですぎゃ。本来であれば我等だけで相手をしなければならないぎゃ…ですぎゃ、魔神の力も想像以上ですぎゃ…」
魔神と聞いて、スラルも流石に考え込む。
もしその相手に無敵結界が有効ならば、ケッセルリンクが居れば問題は無いだろう。
ただ、無敵結界は決して万能では無い。
実際に、ケッセルリンクは悪魔との戦いで無敵結界を無視された事もある。
「まあいい。それで何か報酬はあるのか?」
「それは勿論ですぎゃ。我が世界の危機を救ってくれた方にお礼をするのは当然ですぎゃ」
怪獣王子の言葉にランスはニヤリと笑う。
その笑みを見て、スラルは呆れたようにため息をつく。
見ればケッセルリンクを始めとしたその使徒達も「やっぱり」と言わんばかりの顔をしている。
ただ一人、バーバラだけは軽蔑の目でランスを見ていた。
「よーしだったらそこの妹を…」
ランスは改めて怪獣王女を見るが、やはり微妙な顔になってしまう。
勿論かわいいのだが、ランスのストライクゾーンからは微妙に外れてしまっているのだ。
(うーむ…やっぱり微妙だ。かわいいのだが…)
身長は低いし、顔立ちが幼いせいでどうしてもそういう気にはなれない。
「…何かいいアイテムを寄こせ」
ランスの言葉を聞いて、スラル達はやっぱり呆れた顔になってしまう。
清々しく女優先ではあるが、相手の女性を見て思い直したのを見て、それはそれで呆れてしまう。
「勿論ですぎゃ。魔神を倒して頂けばお礼はしますぎゃ」
「よーし。じゃあとっととその魔神とやらを倒しに行くぞ。で、その魔神は女か?」
「いえ、巨大な男ですぎゃ」
「何だ下らん。さっさと殺すぞ」
相手が女では無い事に、ランスは露骨にさっさと殺そうとする。
「頼もしいですぎゃ。相手の魔神はグナガン…恐ろしい強さを持つ存在ですぎゃ」
突然ですが、怪獣界は直ぐに終わらせるつもりです
掘り下げようにも、設定しかないので掘り下げれないのが現状です
ですので、詳しい事を知りたければ、ひつじ小屋さんを参考にして下さい
怪獣王子と怪獣王女の容姿に関しては、鬼畜王ランスを基準にしております
そしてガイの件ですが、この作品内では魔王に匹敵はしない事で描写します
理由としては、魔王にはまず勝てないという前提条件があるからです(魔王ケイブリス撃破ENDは例外として下さい)
禁術をノーリスクで使えたと有りますが、ランス本編でその禁術が出てきた事が無いので、判断基準が無いんですよね
ガイの事を描写してる場面としては、レイがランスの事を「小細工はガイとどっこい」という発言が有ります
それが何時の事なのかは分かりませんが、仮に魔王と互角に戦えるのなら、小細工は必要無いと思うからです
魔人になって弱体化したとはありますが、そんな魔王級から魔人並に強さが落ちるのかなと
ただ、織音さんの設定では、魔王アベルを倒してるんだけど…そこが悩みます
公式の発表が無い以上、魔人を倒しているかどうか分からないし、魔王並の力があるのならこの世界を一人で滅ぼす力があるという事ですし…流石に人間でそれはありえないと思いました
正直、魔王並みに強いとぶっちゃけ描写する事が非常に難しくなるという…二次創作を作る上での設定だけのチートキャラって本当に扱い辛いです…