魔物牧場―――それはジルが魔物を増やすためだけに作った施設。
本来の歴史にはそんなものは存在しない。
先代魔王のナイチサから与えられた知識から、魔王に対抗する手段を唯一持っている勇者に対して人間牧場を作った。
だが、ランスに救われた事で人間に対する憎悪を持たなかった『ジル』としての部分が、過剰なまでに人間を痛めつける事を止めていた。
勿論人間牧場に入れられた人間はそんな事が分かる訳もないが、ジルは人間に対しては関心が薄いと言ってもいい。
人間の視点からすれば、生かさず殺さずで人間を真綿で絞め殺すような事をされているのだが、その真綿の方がより痛めつけられる等分かりようも無い。
そしてその魔物達はその専用牧場で只管に子を産み落とすのに使われる。
そこには下級のモンスターも上級のモンスターも存在しない、ただただ魔軍の人間牧場の管理のために生み出される個体が増えるだけ。
個性など全く必要無く、成長すれば魔物スーツを着せられ、人間の管理に回される。
そして失敗をすればこの魔物牧場に送られ、子を産むだけの苗床にされる。
子が産めなくなれば、人間牧場に捨てられ、そのまま人間達のストレス発散のために嬲り殺しにされるのだ。
それは間違いない無く魔物達にとっての地獄だった。
そこには何の楽しみも存在しない、少しでも成長すれば魔物スーツを着せられて只管に人間の管理をさせられるという現実。
ミスをすればその人間牧場全体が責任を取らされ、処刑場に送られるか魔物牧場に回される。
それは魔物隊長だろうが魔物将軍だろうが魔物大将軍であろうが何も関係ない。
魔王ジルは等しくこの世界に存在する全ての存在から安息を奪っていた。
魔王にとってはこの世界の全ての生命体は自分の意のままに出来るのであり、ジルにとっては魔物も人間も変わらない。
ジルとしても、勇者が現れる条件が確定では無いため色々な検証をしているだけに過ぎない。
人類の半分とは一体何をもってして半分とするのか?
そこに魔物の数は関係しているのか?
一体誰がその判定をするのかが分からないので、色々と思考を巡らせていた。
魔物牧場を作ったのも、そんな賢者ジルとしての思考の一環に過ぎないのだ。
ジルは人間の数と魔物の数を正確ではないが、大凡の数を把握している。
ナイチサの起こした死滅戦争で減った人間の数を大きく上回り、約2億5000万程に人口は増えた。
だが同時に、毎月に行っている処刑のせいで魔物の数はどんどんと減っていく。
魔物の数と人間の数が勇者の登場に関係する可能性もあるので、ジルは手っ取り早く魔物を増やす事を選択したに過ぎない。
人間と同じように魔物も増やすが、あまり増やしすぎるのも問題があるかもしれない。
そのような考えからジルは魔物牧場も作り…その結果、この世界は人間と魔物の悲鳴と絶叫に包まれていた。
そんなジルは魔王城で一人、己の指を見ていた。
そこには本来あるはずの、ランスと共に手に入れたはずの指輪が存在しない。
そして自分の腹部に手を当てるが、そこにあったはずの命も存在しない。
ジルは全てを失ってしまった…頼りになる仲間も、愛した男も、人としての未来も。
そんな自分を余所にのうのうと生きる人間共が非常に憎らしくもあり、別にどうでもいいとも感じる。
ジルが人間牧場を作ったのは、自分を脅かす勇者という存在への対抗策でしかない。
ジル本人は、人間の事などほとんどどうでも良かったと言ってもいい。
「だが…魔王ナイチサ…貴様だけは許さぬ…」
魔王ジルは魔王でありながら、魔王ナイチサへの憎悪が今でも収まっていない。
この手で殺しはしたものの、それで気が晴れるという事は未だに無かった。
ジルが魔物を冷遇し、使い捨ての道具にしているのも前魔王ナイチサへの恨みによるものが大きい。
「ランス…」
そんなジルだが、ランスの名前を呼ぶ時はその顔が穏やかになる。
勿論そんな事は誰も知らない、ジルも一人の時にしかそんな顔を出さない。
「何処に…いる…」
ランスがこの世界に居ないのは既に分かっている。
最初に世界の全ての国家を破壊した時、ランスの姿は影も形も無かった。
もしランスが居るのならば、その圧倒的な力から間違いなく目立つ存在となるのは分かっている。
しかし人間の中にそんな者達は存在しない…ならば、ランスはこの世界にはいないという事だ。
ランスが死んでいるとは微塵も感じてはおらず、ジルは只管にランスの事を待ち続けている。
「ん…」
そしてジルは己の体に手を這わせる。
それはもう何度も何度も繰り返した行為であり、同時に満たされぬ不毛な行為でもある。
自分を抱きしめた大きく暖かい、そして力強いあの手を思い出すと自分の黒い手では物足りない。
だがそれでも、ジルは己を慰めるのを止めない。
ジルの満たされぬ心は日々増していくのだが、ランスがまだこの世界に戻る気配は無かった。
怪獣界―――
「はぁ~…ここは本当に理不尽の塊だ。一体何がどうなっているのやら…」
スラルはグナガン迷宮の外で頭を抱えていた。
怪獣王子の言う通り、迷宮から出ればランス達の力は元に戻る。
しかし一度迷宮に入ればランス達のレベルが迷宮内のレベルに戻ってしまう。
「がはははは! 使徒だろうが何だろうがここで俺様がお前に負ける訳が無いだろうが!」
「ふ、普通に悔しい! っていうか使徒のアタシをこうまであしらえるなんて、アンタ本当に人間!?」
「敗者のくせに口が悪いぞ。悪いのはココか? それともココか?」
「ぎゃーーーーー! どさくさに紛れて変な所を触るな!」
ランスはと言うと、突っかかってきたバーバラをあっさりといなしていた。
迷宮の外に出ればランスは一流の戦士に戻るので、使徒であろうとも簡単に押さえ込む事が出来る。
「ランス、出来ればバーバラには手を出さないでくれないか。彼女にはトラウマがあるからな…それを刺激するのは止めて欲しい」
ケッセルリンクがやんわりとバーバラを解放するようにランスに頼む。
「何だ、俺様はこいつが突っかかって来たから相手になっただけだぞ。俺様だけではなくこいつにも言え」
「それも尤もだ。バーバラ…君も少し懲りた方がいいな。ランスはお前よりも遥かに強いのだから」
「そ、それは分かりました! だ、だから尻を触るな! あ、ちょっと! なに人のスカートの中に手を…」
「はーい、ランスさん。嫌がってる女の子にそんな事したらだめですよー。あ、私ならおさわりOKですよー」
「がはははは! そう言えば使徒になった加奈代にはまだ触って無かったな! うーむ…やっぱり人間の時と変わらないな…」
ランスはバーバラを離し、加奈代に手を伸ばす。
勿論その手触りは人間だった時と全く変わらない。
「た、助かった…」
「バーバラ…あなたが余計な事をしなければそうなる事も無かったのです。ランスさんはああいう性格なんですから、あなたも反省しなさい」
「も、申し訳ありません…ううう…味方がいない…」
エルシールに窘められ、バーバラは一人涙を流す。
実際にバーバラに同情する者は誰もいない…というよりも、ランスにちょっかいを出さなければ、ランスも特に強引な事をしてこないと理解しない彼女が悪いのだ。
「だが分かった事も有る。この迷宮内では独自にレベルの概念が存在している。そうだろう、シャロン」
「はい。もう一度この迷宮に入りましたが、私のレベルは2でした。もう一度入り直しても、この迷宮内で上がったレベルはそのままのようですね」
「それは僥倖…なのだが、問題は我とランスか…流石にレベルが1では何も出来んぞ」
スラルはその現実に頭を抱える。
人間では無い魔人や使徒は、レベル神やレベル屋の力が無くても、経験値が貯まれば勝手にレベルが上がる。
そこが人間と魔物の違いだ。
だが、その違いが異世界において自分達を苦しめている。
「何とかレベルを上げる方法は無いものか…いや、しかしなぁ…」
考え込むスラルを見て、ケッセルリンクも難しい顔をする。
魔人である自分は基礎能力が高いので問題は無いが、レベルが最も左右する人間はそういう訳にはいかない。
特にランスはレベルが上がる事によるその力の上昇が激しい。
今のレベルのままでは、初期のモンスターは何とかなっても、それを上回るモンスターが相手では厳しくなるだろう。
「とりあえず行ける所までは行くしか無いのでは? この迷宮は特殊なようで、どうやら一度行った階層から始められるようですから」
「本当に理不尽な迷宮だ…それが魔神の力と言えばそれまでだが…しかし行くしかないか…」
「………」
ケッセルリンクとスラルが頭を悩ませるのを見て、パレロアは何かを決意したように、拳を握りしめた。
そしてダンジョンに入って7Fに入った所―――
「あんぎゃーーーー!!」
「ランス!」
とうとう恐れていた事故が起きた。
ブルーハニーのハニーフラッシュがランスに直撃し、レベルが1しかないランスが倒れたのだ。
「はにほー! もう一発ー」
「え、ちょ、うあっ!?」
そして同じくグリーンハニーから不意打ちを受けたスラルが倒れる。
「ランス! スラル様!? クッ、お前達! 撤退するぞ!」
即座にケッセルリンクが撤退の指示を出し、何とかその場から離れる事は出来た。
その夜―――
「いかん…いかんぞ。この俺様があんな雑魚に手も足も出ないとはあってはならん事だ」
「そうは言うがな…レベル神がいないのであればどうしようもないぞ…」
異世界にはレベル神もレベル屋も存在しない。
おかげで人間はどうやっても強くなることが出来ない。
ルドラサウム大陸における一般的な常識だが、その常識が通用しない所ではもうどうしようもない。
「むぅ…ここはケッセルリンクとその使徒に任せるか…」
「普段なら何を言っているという所だが…現状それしか無い気もするな…だが、レダと大まおーが居ないのがここまで響くとはな…」
ランスとスラルのレベルが上がらないのもそうだが、何よりもレダと大まおーが居ないのが辛い。
「というかお前等揃いも揃って神魔法の一つも使えんのか。ガード出来る奴もおらんし」
ランスはケッセルリンクの使徒達をジロリと睨む。
「まあ…こればっかりは才能ですから」
シャロンは亡国の王女なのに、何故か格闘の才能が有る。
「私は…そもそも戦闘に向かないもので…」
パレロアはそもそも戦闘に向いていない。
使徒の能力でゴリ押し出来るだけで、戦いの才能は存在しない。
「魔法使いの才能ならあるんですけど…」
エルシールも貴族の娘だが、魔法の才能と人を指揮する才能に恵まれている。
その才能ゆえに、ケッセルリンクからもメイド長としての任を任されている。
「攻撃魔法しか使えないわよ」
バーバラもエルシール同様に攻撃魔法しか使えない。
「回復は出来なくも無いですけど、その後でどうしても倒れちゃいますねー」
加奈代は弓を使えるが、一応巫女の真似事も出来はする。
しかし本格的に修行をしていないせいか、才能があまり無かったのかは分からないが、一度力を使うともうダウンしてしまう。
それでは回復役を任せる事など到底出来ない。
「済まんな…カラーなのに呪いも弓も不得手だ」
ケッセルリンクはカラーなのに弓が使えず、カラー特有の呪いの力も殆どない。
剣と魔法は得意であり、魔人四天王の一角なので実力は折り紙つきだが、生憎と今必要なのはヒーラーなのだ。
「というよりもレダが何でも出来過ぎなんだ。魔法も神魔法もガードも出来る…レダに頼りすぎたな。それと大まおーが居ないせいで罠もな…」
レダという最高の壁役兼回復薬、そして奇妙な事にレンジャー技能を持つ大まおーが居ないせいで、罠の解除も難しい。
ケッセルリンクとその使徒の力で攻撃こそ問題無いが、冒険のための技能が致命的に欠けてしまっている。
「じゃあとりあえず、ケッセルリンク達だけで一度行ける所まで行って貰えるか? 今の我では本当に足手纏いだ…」
スラルは頭を抱えながらため息をつく。
「分かりました。まずは私達だけで行ってきましょう」
そして次の日、ケッセルリンクとその使徒達だけでグナガン迷宮に向かい―――直ぐに戻ってきてしまった。
「おい、どういう事だ」
「その…申し訳ありません。どうあっても我等だけでは進めない所が出てしまいました」
「10階までは行けたんですけど…生憎とそれ以上進む事が出来ないんです」
シャロンとエルシールが厳しい顔をしている。
「ケッセルリンクが居て進めないなど、それこそありえんだろ。ぶっちゃけケッセルリンク一人でも余裕だろ」
「そうだな…確かにお前の言う通り、私だけでもそこそこ進む事が出来るだろう。レベルは下がったが、能力まで消えた訳では無いからな」
ランスの言葉にケッセルリンクは苦い顔で応える。
「しかし、いくら私でも世界の摂理には逆らえなかったという事だ…」
「世界の摂理?」
ケッセルリンクの言葉にスラルは首を傾げる。
「ええ…例えスラル様が魔王の力を持っていても、そいつに勝つ事は出来ないでしょう。勿論倒される事もありませんが…」
「ケッセルリンク…そうもったいぶらないで何か教えてくれ。そうで無ければ策も練れないだろう」
スラルの言葉にケッセルリンクは苦虫を噛み潰したかのような表情になる。
「女殺しです。女殺しが一つしかない通路に陣取っていて、私達では手が出せないんです」
「お、女殺しが!?」
パレロアの言葉にスラルは驚く。
女殺し…その名の如く、女に対しては絶対的な力を持つモンスターで、女は女殺しに攻撃が出来なくなるという厄介な性質を持っている。
この性質はゴブリンやハニーと同じ様に世界のルールでそうなっており、女である以上は女殺しを倒す事は不可能なのだ。
「女殺しか…それは厄介だな。確かに女殺しが相手では、ケッセルリンクでも手が出ないか…」
「レベル1のランスさんをそこまで連れてくのも難しいですねー。微笑み男や呻き男が沢山いるフロアですから」
「何だその嫌がらせみたいなダンジョンは…」
加奈代の言葉にスラルは頭を抱える。
肝心のケッセルリンクは戦えない、流石にレベル1のランスでは女殺しも倒せないだろう。
「怪獣王子と怪獣王女も今は居ないし…どうすればいいのか分からないなぁ…」
普段は強気なバーバラも女殺しが相手では何も出来ない。
しかも肝心の怪獣王子は何でも狂王の攻撃が激しくなってきたとやらで、今この場にはいない。
魔法ハウスの中には重苦しい空気が流れていた。
「やかましい! 女殺し如き、俺様の敵では無いわ! とっとと行くぞ!」
ランスが苛立ったように怒鳴ると、そのまま勢いよく迷宮へと進んでいった。
「あんぎゃーーーー!!」
「まあ予想はしていた」
だが、ランスは女殺しの元に辿り着く前に微笑み男に倒された。
レベルが1しかないのだから、いくらランスであっても雑魚モンスター相手でも苦戦を強いられる。
この結果は分かり切っていた。
そして魔法ハウスの中では更に重苦しい空気が纏わりついていた。
それは言わずもがな、ランスが発している不機嫌さから来るものだ。
普段ならバーバラが何か一言言っている所だが、ランスの不機嫌さを見てその言葉も引っ込んでしまう。
グナガン迷宮の外ならばランスは超一流の戦士であり、下手な使徒よりも断然強いという信じられない強さを持っている。
だが、この迷宮にはその当たり前の常識が通用しない。
そしてこの迷宮を突破しなければ、ランスは元の世界に帰る事が出来ないのだ。
「………寝る」
ランスは不機嫌な態度を隠そうともせずに、大足で自分の部屋へと引っ込む。
その様子をスラルもケッセルリンクも深刻な顔で見ていた。
「あんなに余裕の無いランス、初めて見た…」
「私もです。ランスは常に何処か騒乱を楽しんでいるような空気が有りましたが…今のランスにはその余裕が無い」
ランスは確かに短気だし、結構八つ当たりも多い男だ。
だが、こんなにも苛立っているランスは見た事が無かった。
「ランスさん…大丈夫でしょうか」
シャロンも不安気な様子でランスの去った後を見ている。
「あの男はそんなに自分が戦えない事に苛立ってるんですか? そういうタイプの人間には見えませんけど…」
バーバラの言葉にパレロアが首を振る。
「ランスさんは…元の世界に戻れない事に苛立ってるんだと思います」
「ランスさんが? あの人は凄い冒険好きだし、ここに来た時も凄い喜んでいたけど…」
エルシールの言葉にパレロアは小さく俯く。
「きっと…ジル様の事が気にかかっているのだと思います。ランスさんはジル様の事を奴隷だと言っていましたけど、きっと大切な存在だったんだと思います」
「そうですねー…ランスさんはジル様とエッチするために魔人と戦ったようなものですし」
パレロアの言葉に加奈代も小さく頷く。
「ランスは強い…きっと今まで挫折した事が無かったのだろう。持ち前の力と知恵で乗り切ってきた男だ。壁に当たった事はあっただろうが、それを実力で乗り越えてきた男だ。だが、今回は…」
ケッセルリンクはランスの事を思うと胸が締め付けられる。
大切な存在が目の前で魔王になる…それは一体どれ程の事か、自分には想像もつかない。
そして、今現在もジルがどうなっているかどうしても知りたいはずだ。
「ケッセルリンク…ランスの所に行ってくれないか。ランスと一番付き合いが長いのはお前だからな」
「スラル様…それを言えば、スラル様の方がランスと一緒にいる時間は長かったのですから、スラル様が行った方が…」
ケッセルリンクの言葉にスラルは首を振る。
「いや…こういう時、我はどんな言葉をかけていいのか分からない。我には…人を、ランスに対してどう言葉を発していいのか分からない…」
スラルの沈痛な顔にケッセルリンクも胸が痛む。
「分かりました…ですがスラル様。だからこそ、スラル様はランスに対して何かを言うべきだと思います。今日は私が行きますが、次はスラル様がランスに声をかけてあげて下さい」
ケッセルリンクはそう言って、ランスの部屋へと向かって行く。
ケッセルリンクがランスの部屋に入っていくのがその音で分かる。
残された者達は皆暗い顔で俯く。
「ランスさんも人間でしたもんね。あまりに強くて忘れちゃってました」
「そうですね…あのランスさんが落ち込むなんてありえないと思ってました。あの時、藤原石丸相手に撤退した時でも、落ち込んでなんていませんでしたし」
エルシールは過去のJAPANでの出来事を思い出す。
あの時は大変だったが、彼女にとっても非常に濃厚な日々だった。
同時に、英雄としてのランスの力強さを感じ取れた日々でもあった。
「今はケッセルリンク様に任せるしかありません。それよりも…私も失礼していいですか? 少し調べたい事が有ります」
「パレロアさんが珍しいですね…じゃあ明日の食事は私が用意しますよ」
「お願いね、バーバラ。それとエルシールは…間違っても台所には立たないように」
「…分かってます」
パレロアの言葉にエルシールは顔を真っ赤に染めて俯く。
「エルシール…相変わらず家事は苦手なのか?」
「使徒になって200年程ですが…未だに料理の類が苦手で…」
戦闘も出来る、統率力も有る、メイドとしても一級の存在ではあるが、エルシールは料理だけは未だに上達しない。
何度頑張っても、美味しい料理を作る事が出来ないのだ。
「スラル様…ケッセルリンク様の言葉、考えておいて頂けませんか? ケッセルリンク様は今でもスラル様を気にかけておいでなのです」
「もう我は魔王では無いと言うのにな…だが、我は本当に何を言えばいいか分からないんだ。我は…お前達とは違い、生まれた時から魔王だったから…」
スラルはケッセルリンクの使徒達のように、元人間では無い。
新たなメインプレイヤーが作られた時から生み出された、生まれながらにしての魔王なのだ。
「スラル様のお気持ちを告げればいいと思います。ランスさんならきっと応えてくれますよ」
エルシールの笑顔に、スラルは小さく笑みを浮かべる。
「そう…だな。こうしてうじうじするよりも、前向きに行動しなければな。ランスも前向きに考えているからこそ、ああして苛立っているんだからな」
「うーーーーーーーむ…」
ランスは己の部屋で唸っていた。
そこには普段、しょうも無い事で唸っているのではなく、そこには小さな怒りすら感じる。
ランスの苛立ちの原因は勿論ジルの事だ。
シィル達の事もそうだが、今は姿が見えない者の事よりも、ランスの目の前で起きた現実に目を向ける必要がある。
「ジルはジルちゃんだったという事か…」
ここに至ってはもうランスも認めざるを得ない。
ランスの奴隷であるジルは、あの時リーザスで復活し、異世界でランスが倒したはずの魔王ジルだという事を。
しかし、ランスが出会ったジルは人間であり、魔王ナイチサによって無理矢理魔王にさせられていた。
「あの時のジルちゃんとも少し違う…一体どうなっとるんだ。レダの奴も姿を見せんし」
レダが居れば容易く回答が出るだろうが、居ない者の事を考えても仕方が無い。
「いや、俺様の奴隷が魔王になる…俺様よりも偉くなるなどありえん事だ。うむ、ジルを魔王から引きずりおろさなければな」
しかしそう考えても、魔王の強さはまさに桁違いであり、ランスも流石に魔王には勝てる気は全くしない。
アレは最早別次元の存在だ。
ランスが思考の渦に嵌っていた時、部屋の扉が開きケッセルリンクが入ってくる。
「何だケッセルリンク。ノックもしないとはお前らしくないな」
「そうだな…私らしくは無い。だが、同時にお前らしくも無い態度でもある」
ケッセルリンクはそのままランスが座るベッドに腰掛けると、そのままランスを自分の胸に抱きしめる。
「何だ突然」
「私にはこうする以外にお前を慰める術を知らない…だから、私は全力でお前を慰める」
そのままケッセルリンクはランスを押し倒すと、そのままランスの唇を己の唇で塞ぐ。
「ランス…お前の苛立ちは私にぶつけてくれていい。私は…それだけの事をお前とジルにしてしまった」
「だからそれはお前のせいでは無いと言ってるだろうが! お前も少ししつこいぞ」
「だが私は…」
「だーーーーーっ! お前がそんな何時までもうじうじするのを見てたら俺様まで腹が立つだろうが! お前もお前で何時もの様にしろ!」
ランスの言葉を聞き、少し張りつめた様子のケッセルリンクは少しの間驚いていたが、やがて何時もの様に優しい笑みを浮かべる。
「やれやれ…これではあべこべだな。私はお前を慰めに来たと言うのに、逆に私が言われてしまった」
「辛気臭い奴に慰められても逆に気が滅入るだけだ」
ケッセルリンクはその言葉に嬉しそうに微笑むと、服を脱ぎ始める。
「ランス。それは抜きで、私を好きに犯してくれていい。お前のストレスを解消するには、それが一番いいだろう」
「………」
ランスは少しの間無言だったが、直ぐに自分も服を脱ぎ捨てる。
「がははははは! 言ったなケッセルリンク! だったら今日一日お前を好きにさせて貰うぞ! とーーーーーーっ!」
そのまま二人はベッドの上で寝転がると、ランスはケッセルリンクの体を思う存分にその手で堪能する。
直ぐに行為をするのではなく、前戯でケッセルリンクの体を昂らせると同時に自分も存分に楽しむ。
そして何時もの様に、ランスがハイパー兵器をケッセルリンクに突っ込もうとした時、
「ランス…私はお前が好きだ」
「何だ突然。まあ俺様は超絶美男子だから当然だな」
「それはどうかと思うがな…だが、こうして言葉にした事は無かったと思ってな…」
「…そういやそうだな。まあお前が俺様に惚れているのは当然の事ながら分かっていたがな、うん」
ケッセルリンクはランスを抱き寄せると、そのまま軽く触れるだけのキスをする。
「もし私が魔人で無かったら…私は森を飛び出して、お前と共に旅をしていただろう」
「今だって似たような事をしているではないか。お前は魔人だろうが何だろうが俺様の女だ」
「フフ…実にお前らしい。お前にとっては、私が魔人だという事もどうでもいいのだろうな…だからこそ、嬉しい…んっ」
ランスのハイパー兵器がケッセルリンクに中に入り込み、ハイパー兵器を温かく包む。
そのままランスはそれこそケッセルリンクを犯すように力強く動く。
魔人であるはずのケッセルリンクだが、それを感じさせない弱弱しい動きでランスに体を密着させる。
「がはははは! 今日のお前は可愛いな。何時ものお前とは何か違うな」
ランスはそんな可愛らしく見えるケッセルリンクに対して、やや乱暴に動く。
それでもケッセルリンクの体は反応し、ハイパー兵器が前後するたびにその体がはねる。
そして二人は同時に絶頂を迎え、ランスは非常に満足そうに一度ケッセルリンクから体を離す。
「ふー、えがった。俺様のハイパー兵器が色々と汚れてしまった。綺麗にしてもらおうか」
「全く…本当にお前は遠慮というものが無い。お前はきっと死ぬまで変わらないのだろうな」
ケッセルリンクは少し苦笑いをして、ハイパー兵器をその口で綺麗にする。
「よーし、今夜はしっぽりと楽しむぞ」
「今夜も、だろう。だが、私も日光に影響されない生活というのも久しぶりだ。今日は…とことん付き合おう」
ランスは今度はケッセルリンクをうつ伏せにして、そのままハイパー兵器をその中へと突入させる。
二人はこうして夜通し互いの体を求め合った。
「がはははは! 今日の飯も美味いな!」
次の日の朝、ランスは昨日の苛立ちが嘘のように明るい顔で飯をかきこむ。
「それは良かった」
バーバラは美味そうにご飯を食べるランスに苦笑するしかない。
ランスの事は今でも嫌いだが、こうして自分の作ったご飯を美味そうに食べるというのは複雑な感情がある。
それでも、こうして美味そうに食べてくれるのであれば、作り甲斐があるというものだ。
「ランスが普段通りであるのは喜ばしいことだろうが…根本的な事は何も解決していないぞ」
「何だスラルちゃん。朝からいきなり気が重くなるような事を言いおって」
「現実は何も変わっていないからな。女殺しを何とかしない限り、我らは永遠にここに釘付けだぞ」
スラルの言う事は正しく、女殺しへの対策は何も出来ていない。
「うーむ…」
ランスとしても女殺しの事は頭が痛い。
男であるランスなら女殺しをあっさり倒せるのだが、その道中でランスが倒されるのであればどうしようもない。
ハニーのハニーフラッシュや、魔法使いの放ってくる魔法は絶対に命中するので、レベル1のランスでは耐えられないのだ。
一同が頭を悩ませていると、
「あの…その件ですが、何とかなると思います」
パレロアがジルが寝泊りした部屋から出てくる。
「パレロア…もしかして一晩中探していたのですか?」
シャロンがパレロアを嗜める。
使徒なので一日程度徹夜しても問題は無いだろうが、それでも心配なものは心配だ。
「ええ。ですが確かに有りました…ジル様は本当に頭の良い方なんですね」
パレロアの手にあるのは一つの水晶玉だ。
そしてパレロアは一つ咳払いすると、何処からかメガネを取り出して装着する。
「その…レベル屋です。レベルアップをお望みですか?」
パレロアは恥ずかしそうに体をもじもじさせながらそう言うので精一杯だった。
レベル屋設定はまんまGALZOOアイランドから
レオはランスと同じ世代のようなので、レベルアップの手段も同じ様な手順で
女殺しはまんまDALK外伝からの流れです