ランス再び   作:メケネコ

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再びJAPANへ

 ランス達はJAPANを目指して移動をしていた。

 ただ、NC期と違い自由に動けているという訳では無い。

 人間の隠れ里みたいな所はあるのだが、あからさまにランス達の事を拒絶しており、その態度にはランスも腹が立ちそのまま出ていく次第だ。

「おい、この時代の人間はみなあんな感じなのか」

「まあそうだな。隠れて過ごすのが常識と言えば常識だな」

 ランスの言葉にレイが答える。

 ランスはあまりに出会いの少ない状況に腹が立ってしまう。

 まさにカオスとカフェの言う通りの世界であり、その陰気な空気にはランスも辟易してきている。

(だが…何かイメージとは違うな)

 ただ、ランスとしては想像していた状況とは結構な違いがある。

 魔物が無数に歩き、人間を絶えず苦しめていたという言葉だが、その魔物の方が余裕が無いように感じられた。

 ゼスやJAPANでの魔物兵の行動こそまさに無法地帯という感じだ。

 実際にカミーラが占領していたゼスの宮殿では、100人輪姦の刑やらカミーラを楽しませなければ問答無用で処刑というとんでもないものだった。

 JAPANではザビエルに占領されていた地方では、当たり前の様に人間が殺されていた。

 その時の魔物兵の態度はまさに傲慢そのもの、楽しみながら人間を拷問し、殺していた。

 だが、この世界の魔物兵は明らかに追い込まれた感じであり、楽しんでランス達を襲ってくる奴等は一体もいなかった。

 何かに追い詰められるようにランス達に向かって来てたが、そんな連中がランス達の相手になるはずも無く、無様な屍を晒していた。

 その辺が、カオス達が話していた魔王ジルの時代、そしてランスが知っている魔軍とは一致しない。

 だからこその違和感がランスを襲っていた。

(本当にここが俺様の知る過去の世界なのか?)

 流石のランスも今の時代がランスが知る過去の世界という事は分かっている。

 ただ、分かってはいても自分の記憶や経験と違っていれば、それは明らかな違和感となってランスを襲っていた。

 だが、いくらランスが考えても答えは絶対に出ないだろう。

 何故なら、ランスがこの時代に飛ばされた事で本来の歴史は歪んでしまった。

 ランスはそんな事は全く自覚せずに行動をしているのだが…肝心のランスがそれに気づく事は無かった。

「しかしこんなダンジョンでしか魔法ハウスを使えないのは不便だな…」

 今現在ランス達はダンジョンの中で魔法ハウスを展開している。

 外で魔法ハウスを展開するのは流石に危険すぎた。

 こうしてダンジョンの中で魔法ハウスを使うのもリスクがあるが、それでも外にいる魔物兵に見つかる可能性を考えれば、この方がまだマシだ。

 ランスも今の現状を考えれば妥協せざるを得ない。

 魔物兵はともかく、魔人や魔王が襲って来れば、流石のランスと言えどもどうしようもない。

 特に今現在において、魔王に見つかるのだけは絶対に避けなければならない。

 そしてカミーラに見つかるのもまずいので、こうして隠れてコソコソ動かなければならないのだ。

 その状況にランスはかなりイラついているのは傍から見ていても分かる。

 夜になればスラルがランスの相手をするが、どうやらその事と、今現在の事は話は別のようだ。

(やはりジルの事はランスにとっても尾を引いているようだな…無理も無いか。あのランスが自分の目の前でジルを失ったのだからな…)

 ランスの強さは確かに破格ではあるが、それでも魔王相手には手も足も出ない。

 そして今その手も足も出ない魔王こそが、ランスが何とかしようとしている相手なのだ。

「ランス。取り敢えずレベルを確認しないか? そろそろ上がっている頃だろう」

「…パレロアはもう居ないだろうが」

 ランスの言葉にスラルは驚いて目を見開く。

 まさかランスが今の自分のレベル神の事を忘れているとは思ってもいなかった。

 いや、それだけランスがジルの事を気になっている証拠だろうとスラルは判断した。

「元の世界に戻って来たんだ。レベル神を呼べるだろう」

「あ、そういやそうだな。ずっとクエルプランちゃんを呼べないからすっかり忘れてたぞ。パレロアもサービスしてくれてたからな」

 結構な間、ランス達はグナガン迷宮に挑んでいた。

 その間はずっとパレロアがレベル屋をやってくれており、ランスがレベルが上がる度にパレロアにサービスと称して色々させてきた。

 そのため、ランスもすっかり忘れていた…それだけジルの事で頭がいっぱいだったという事もあるのだが。

「よーし! 早速呼ぶとするか! カモーン! クエルプラン!」

 ランスが声を上げると、魔法ハウスが眩い光に包まれる。

「うお!? 眩し!?」

 その光にレイは目を閉じる。

「おい! 久々とはいえ眩しいぞ!?」

 ランスも普段よりも煌々とした輝きには文句を言う。

「申し訳ありません。少し立て込んでいたのもので…お久しぶりですね、ランス」

「うむ、久々だな。あ、でもクエルプランちゃんからしたら大分時間が経ってるんだろ? がはははは! 俺様に会えなくて寂しかったか?」

 普段通りのランスの軽口に、クエルプランは少しの間考え込む。

 そして、

「そう…ですね。もしかしたら私はそう思っていたのかもしれません。何しろ400年は経過しましたから」

 クエルプランの言葉にランスは満足そうに笑う。

 まさか素直にそんな言葉が出て来るとは思っていなかったが、ただランスには漠然とした何かを彼女から感じ取っていた。

(うむ、この子は俺様の事が気になっている…と思う。最初に会った時より感情が豊かになってきたからな)

 最初の出会いはお世辞にも良いものとは言えなかった。

 真っ先に消滅させるような事を言っていたし、それだけの力があるのではないかというランスの危機本能が働いたからだ。

 どこか浮世絵離れしている雰囲気は持っていたが、ここ最近はそれが和らいできたような気がする。

「それよりもレベルアップだレベルアップ」

「そうですね。私もレベル神の仕事をする事にします」

 そしてクエルプランが呪文を唱えると、ランスに己のレベルが上がったのを自覚する。

 ようやく本来のレベルから上がる事も有り、ランスも変なストレスから解消されるというものだ。

「ランスのレベルは76になりました」

「結構上がったな」

「スラルはレベル75になりました」

「自分で言うのも何だが、我も才能の限界が意外と高いな」

「それではレベルアップは完了しました。その後ですが…」

「おいちょっと待て!」

 クエルプランが用件を言おうとした時、それをレイが止める。

「何で俺だけレベルアップしてくれねえんだ」

「むしろ何でお前のレベルアップを俺様のレベル神がしなけりゃならんのだ。お前にクエルプランちゃんは勿体無い。お前はお前でレベル屋でもつかってろ」

「レイくらいの強さなら、担当のレベル神がいてもいいと思うがな」

「………いや、それはな」

 ランスとスラルの言葉に、レイは少し難しい顔で俯く。

(…言えねえ。まさか俺のレベル神が女の子モンスターを要求してくるハゲでデブの神だなんて言えねえ。見られたらこいつに何を言われるかわからねえ)

 レイの担当レベル神は一言で言えば変態チックな格好をしたハゲの男のレベル神だ。

 しかも女の子モンスターを捧げれば違法なレベルアップも持ちかける生粋の変態だ。

 レイは一応はまともな感性を持っていたので、そういうのは興味は無かったのだ、やはり生理的に呼び出すのは抵抗があった。

 というか、何故自分の担当レベル神がこんな奴なんだろうと思ったほどだ。

 それを考えれば、目の前にいる明らかに美人のレベル神は明らかな差がある。

 レイも一人の男なので、当然ハゲの男のレベル神よりも、こんな美人にレベルアップして貰う方が当然嬉しいというのが本心だ。

「構いません。それでは…レイはレベル71になりました」

「おう」

「おいクエルプランちゃん。こいつは俺様の仲間でも何でも無いぞ。だからこいつをレベルアップする必要は無いぞ」

「そうですか? それはそれとして、ランスに会わせたい者が居ます」

 クエルプランがそう言うと、光と共に一人の女性が出て来る。

「あ! レダ!? どうして!?」

 そして出て来たのは魔王ジルとの戦いで行方不明なった、エンジェルナイトのレダだ。

「久しぶり。生きてたようで安心したわ」

「その羽…エンジェルナイトの証か。偽エンジェルナイトならランスとは出来ないからな」

 勿論エンジェルナイトである事は信じていたが、こうしてエンジェルナイトの翼を見ると、それはやはり別格だ。

 それに前には無かった強い力が感じられる。

 上級の魔人…それこそ魔人四天王には及ばないだろうが、下級魔人とならば戦えるのではないかと思うくらいの重圧を感じる。

 そんなのが大量に居れば、それこそ魔王や魔人でも相手にならないだろう…かつてこの世界を支配していたドラゴンと同じ様に。

「あとそれと…いきなりだけど、私名前が変わったから」

「…あん?」

 レダの言葉にランスは怪訝な顔をする。

「ちょっとややこしいかもしれないけど、私の名前は『レン』に変わったわ」

「意味が分からん。何で名前が変わる。しかも一文字しか変わって無いぞ」

「とにかくそれが私の名前なの! だからそっちで呼びなさいよ」

 ジロリとランスを見るレダ…いや、レンの視線を受け、

「まあどうでもいいか。とにかく、お前は前の様に俺様の所に居るという事だろう」

「そうね。私の役目が変わった訳じゃ無い。ただ、今までの名前が変わっただけ。私本人は何も変わって無い」

「じゃあいいや。お前が居ない間は随分と苦労したからな。きりきり働け」

 ランスはあっさりとレンの言葉を受け入れる。

 ランスにとっては名前が変わったという事は特に重要では無い。

 とにかく、自分の側に居るいい女という事実だけで十分なのだ。

「お前が戻ってきてくれて安心した。改めてよろしく頼む。レン」

「こっちもね。スラル…って当たり前の様に肉体があるアンタにちょっと困惑するんだけど…」

 レンもランス達とジルと戦った時、確かにスラルには肉体があった。

 どうやらそれは今でも維持されているようだ。

「…で、こいつは誰よ。ヤンキーの変異種? ジャイアンツ? それともマリナーズ?」

「誰がヤンキーの変異種だ!?」

 レンの言葉にレイが激昂する。

「まあいいや。とにかく、これからまた頼むわよ」

「うむ、お前が戻ってきたのは良い事だ。女が増えるのはそれだけでも良い事だからな」

「それでは私の役目は終わりました。また経験値が貯まりましたら呼んで下さい」

 クエルプランはそう言って消えていく。

 そしてランスはレンをじろじろと見る。

「何よ」

「いや…そういやお前の背中に羽ってあったんだな。忘れてたぞ」

「ランスから見れば確かにそうよね。でも私にとってはようやく何だけどね」

 レンにとっては非常に不本意な時間だった。

 やはり羽が有ると無いとでは戦いに影響は大きくなるし、何よりも制限されていた力がようやく戻ってきたのが嬉しい。

「まあそんな事はどうでもいい。がはははは! 早速ズバッとやるぞー!」

「え、ちょっと!?」

 ランスはそのままレダを抱えると、自分の部屋へと走っていく。

 それを見てレイは呆れたように笑う。

「あいつ、本当にそればっかりだな」

「まあ…否定はしない。だが、そのためならば何だってやるのがランスだ」

「…おもしれ―奴だ」

 レイも男だし、普通にセックスもしているが、流石にランス程飢えている訳では無い。

 ただ、今の時代は出会いが極端に少ないだけだ。

 その中で、スラルや今出会ったレンという女性は魅力的だ。

「で、お前は行かないのか?」

「別に常に我はランスと同衾している訳では無いぞ。それに調べたい事もあるからな」

「…ここでお前を襲えばランスとは本気でやれるのか?」

 目が髪で隠れているのでその真意は分からないが、

「やめておけ。我はお前よりも強い。それに我を襲ったとしてもランスとは本気で戦う事は出来ない」

「へえ。あいつはお前を大事にしているっぽいけどな」

「だからだ。ランスはお前をどんな手を使ってでも殺すだろう。真正面から戦うよりももっと確実な手段でな」

「そりゃ駄目だな。俺はアイツとは真正面からぶつかりたいからな。じゃあ俺もとっとと引っ込むか」

 レイは肩を竦めると、そのまま自分が使っている部屋へと戻っていく。

 それを見てスラルも肩を竦める。

「全く…対等な相手が出て来たのが嬉しいのだな。あの男も難儀な事だ。さて、我もジルの残した書物を見るとするか」

 スラルはジルの残した書物を見るべく、彼女が使っていた部屋へと向かう。

 この部屋に入ると、ランスと一緒に居て嬉しそうに笑っていた彼女の事を嫌でも思い出す。

 そして、その彼女の運命を狂わせたのは、自分かもしれないのだ。

 ジルは愛した男も、その男の子供も、仲間も失い、魔王となった。

 それが良い事かどうかは誰にも分からないが、少なくとも彼女には良い事では無いはずだ。

「さて…我は今の状況をよく知らなければならないな」

 スラルの体は今は本当の体では無い。

「だから…ジルを何とかすべきだ」

 ジルの体をこの人形に入れれば彼女はとりあえず肉体を得れる。

 今、自分が肉体を得るよりも、彼女を優先しなければならない。

「だが、そのためには魔王ジルに何としても会わなければならないか…」

 魔王に会う、それは本来は無謀な行為、

 だが、ジルを救うためには絶対に会わなければならない。

「難しすぎるな…だが、やらなければならないか」

 スラルは決意を固め、ジルの残した書物に目を通し始めた。

 

 

 

 そしてランスの部屋…そこでは何時もの様にランスが女性を押し倒す―――光景は無かった。

 ランスは真剣な顔でレンを見ている。

「何よランス。そんな顔して」

 ランスがここまで真剣な顔をしているのは非常に珍しい。

 魔人と戦う時にも、何処か楽しそうな笑みを浮かべている事も多いランスが、ここまで真剣な表情をしているのをレンは初めて見た気がする。

「お前は知ってたのか? この世界の事を」

 その言葉にレンもまた真剣な表情になる。

 ランスももう当然気づいている。

 ここが、ランスの居る世界の過去の世界であると。

「一ついい? ランス」

「何だ」

 だからレンも真剣な顔でランスを見る。

「むしろあなた、ここが過去の世界だって気づいてなかったの?」

「やかましい!」

 レンの言葉に思わず怒鳴る。

「歴史を知っていれば分かったと思うけど…過去の魔王とか」

「何で俺様がそんな事を知っていなければならんのだ」

「まあそうよね。歴史なんて知らなければ意味ないものね」

 ランスは…当然の事ながら、歴代の魔王の事など全く知らない。

 ランスが知っている魔王は、ランスにとっての現魔王であるリトルプリンセスこと来栖美樹と、今現在の魔王であるジルだけだ。

 サテラから、先代魔王の娘であるホーネットの事は聞いたような気がするが、その先代魔王の事は名前も知らない。

「で、お前は知ってて隠していたのか?」

 ランスの視線にもレンは全く動じない。

「知ってて隠してたと言うか…私も人間の歴史に詳しくないし、興味も無いし」

「…そういやお前はエンジェルナイトだったな」

 レンは…エンジェルナイトは基本的に人間の歴史になど興味は無い。

 レンが有る程度知っていたのは、ランスに興味が出た事と、1級神ALICEにランスの守護を命令された事で、人間の歴史を少し調べたからだ。

「私の知ってる事なんてランスと大差ないわよ」

「むぐぐ…」

 ランスはレンの言っている事は間違いでは無いと思っている。

 神や悪魔などそんなものだろうと思っているからだ。

「だから…ジルの事も何も知らなかった。魔王ジルについては名前は知っていても、容姿は知らなかったし。むしろランスの方が知ってたでしょ」

「フン…」

 その言葉にランスは詰まらなそうに顔を背ける。

 ジルに関してはランスの方が圧倒的に詳しい。

 一度対峙したからこそ、魔王ジルという存在を知っているからだ。

 だが…その魔王ジルと、人間のジルとの違いが大きすぎた。

 魔王と対峙した時のあのジルの冷酷さ…そして人間を見る目が印象的すぎた。

 人を人と思っておらず、最後の最後までランスを認識すらしなかったあの目…そして強さ。

 最初はランスですら逃げ出したくなると思ったのは、後にも先にもあの魔王ジルだけだ。

 しかし…人間のジルは魔王の頃からは全く違った存在だった。

 頭が良く、気遣いが出来、結構感情豊かで、何よりも魔人を何とかしたいと思うあの強い意志。

 そんなジルが、何が起きたらあんな冷酷な魔王になるか全く理解が出来なかった。

(いや、でも美樹ちゃんもあんな感じだったしな…)

 JAPANでシィルが氷漬けになった時の魔王リトルプリンセスも、元の美樹の人格は殆ど残っていなかった。

 魔王になれば全ての人格が消え、人を苦しめるだけの存在になる…そんな事をカオスが言っていたような気がする。

 だが、それでも…あのジルが魔王ジルだとはランスも信じられなかった。

「それでランス。これからどうするの? 私はしばらくの間居なかったから、何が起きてるのか分からないのよね」

「ああ、そういやそうだな。じゃあ教えてやろう」

 ランスはそれから起きた事を話す。

 ただ、ランスは説明がもの凄い下手なので、レンはそれを理解するのに結構な時間を有した。

「成程…スラルの体は何か不思議なアイテムで出来ていて、ランスの剣の中にはジルの魂が入っている。そして魔王ジルの中にある、ジルの魂を何とか手に入れようって訳ね」

「うむ、そういう事だ」

(スラルから聞けばよかった。やっぱりランスはそういう説明が出来ないのね)

 今一要領を得なかったが、とにかく魔王ジルと対峙しなければいけないという事は分かった。

「でも、どうやってジルの魂を回収するの? 大まおーはもういないし、大まおーが持っていた鎌も無いでしょ」

「それはだな…うむ、これから何とかするのだ」

「要はまだ計画は練られてない訳ね。まあそれも仕方ないけど」

 魂を何とかする…なんて普通の人間には出来ないだろう。

「だからJAPANに行くのだ。何かあるかもしれないからな」

「私はどうでもいいけどね。ランスを守るのが私の任務だし」

「だったら俺様から離れるな。お前がいないから余計に苦労したんだぞ」

「私が悪い訳じゃ無いから。で…その…するの?」

 話しはもう終わったと判断して、レンは少し上目づかいでランスを見る。

 頬を少し朱に染めた彼女は、ランスの目には極上の女だ。

「うむ、そうだな。今出来ない事をごちゃごちゃ言っても始まらんな。だったらずばっとやってから考えよう。とーーーーーっ!」

 ランスは一瞬で服を脱ぎ捨てると、レンもそれに合わせて服を脱ぐ。

 相変わらずの人間離れした見事な体は、何時見ても眼福だ。

「あれ? お前、胸がでかくなった?」

「え? そ、そんな事ある? 私みたいな一般エンジェルナイトの体が成長するなんて無いと思うけど…」

「うーむ…いや、間違いなくでかくなったな。うむ、グッドだ!」

「ちょ、ちょっと…何する気よ」

 顔を朱に染めたレンがランスを見る。

 その顔もどことなく大人びてきたように見える。

「お前…やっぱり色々成長してるな。うむ、俺様好みのいい体になってるではないか。グットだ!」

「え、ええ? そうなの?」

「最初にお前とやった時よりもでかくなってるぞ。エンジェルナイトも成長するのか?」

「そ、それは知らないけど…ま、まあランスが嬉しいならそれはそれで…」

 どんどん小さくなっていくレンの声など聞こえていないように、ランスは彼女を押し倒す。

「よーし、今日は早速この大きくなった胸を楽しむとするか」

 ランスの言葉通り、レンはその日ランスに思いっ切り胸を堪能される事になった。

 

 

 

 レンと合流してから数日後―――

「ようやくJAPANに来たのだが…ここも大陸と同じ様に全く活気が無いな」

「そうみてーだな。魔物すらいやがらねえ」

 ランスの言葉にレイが同意するようにため息をつく。

 一度JAPANに行ってみたいとは思っていたが、ここも大陸とそう変わらないとなると少々落胆するのは無理も無い。

「今の時代から考えれば当たり前…なのかしらね」

 翼を仕舞ったレンも顔を顰めている。

 魔王ジルの時代、少しは知っていたつもりだが、自分の想像以上に人間には厳しい時代だったようだ。

 尤も、そんなのは神には関係の無い話なので、むしろ神はこの世界の現状を楽しんでいるのが現実だ。

「スラルちゃん、こんな状況で話なんか聞けるか?」

「それは問題は無いな」

 ランスの言葉にもスラルは自信満々に答える。

「人間はしぶとい…必ずその技術は継承されているはずだ。今の世界にもまだムシ使いが残っているようにな」

「…そういやそんなもんか」

 ムシ使いと聞いて、ランスはカロリアの事を思い出す。

 そしてもう一人思い出したのが、魔人であるムシ使いのガルティアの事だ。

 ガルティアは魔人のくせに中々話しやすく、その使徒が印象的だったのでランスも覚えていた。

 現在の世界を理解したランスだからこそ、スラルの言葉の意味を理解していた。

(そういや天志教だったか…アレもザビエルを封印してたんだったな。だったら残っていてもいいのか)

 天志教が出来たのはNC期…ランスも戦った藤原石丸の側近が創った宗教らしい。

 大して興味も無いので気に留めても居なかったが、こうしてランスが関わり、そして魔人ザビエルと戦った事から話の繋がりが大凡理解していた、多分。

「それに…どうやらJAPANには人間牧場も魔物牧場も無いようだな。確かにこんな所にまでそんなものを作る必要は無いという事か。それとも魔王があえて放置しているか…」

 ジルの考えは分からないが、それでもギチギチに人間も魔物も締め付けてはいない。

 何処となくだが、ある程度の数が居ればそれでいいと考えているとスラルは感じた。

 理由は不明だが、死滅戦争で減った人間の数を増やすという事には、何かしらの意味があるのだ。

(魔王であるナイチサは死にかけだった…普通に考えれば魔王がやられるはずは無い。我の前の魔王であるアベルはドラゴンの王に倒されたが、それを知っているからこそ我は不死身である事を願ったのだからな)

 あの頭の良いジルが、何の考えも無くこんな事をするはずが無い。

 勿論魔王なのだから、この世界をどうしようかは魔王の勝手なのだから、ただ人間と魔物を苦しめるためとも考えられはするのだが。

「魔物がいないならそれはそれで楽だな。さっさと行くぞ」

 ランスはGL期のJAPANに訪れる。

 勿論ランスが動くのだから、それはそれで必ず一波乱はあるのだが、それはまだ誰も知らない。

 

 

 

 ???―――

「不快よ…」

 それは人の体程の大きさを持つ巨大な狐だった。

 だが、それ以上に目を引くのはその狐の持つ9つの尾だった。

「人とは本当に哀れで愚かで不愉快な存在よ…」

 その狐は狂星九尾・末知女殿と呼ばれる、2代目の妖怪王だ。

 彼女には一つの宿命がある…それこそが彼女を作った陰陽師達が自分にかけた呪いのようなものだ。

 JAPANが争いに満ち、統治者が現れない場合は彼女が妖怪王として妖怪を率い、全ての日本人の敵になる事で人を纏めさせること。

 だが、今の時代ではその争いなどは起きる気配が無い。

 人はそれどころでは無く、今を生きるので手一杯だったからだ。

 だからこそ、狂星九尾・末知女殿は今は彼女にとっての束の間の平穏を楽しんでいた。

 だが、それは全くの予想もしなかった乱入者によって打ち砕かれる。

「よ、妖怪王! 大変です! 恐ろしく強い奴が来て我等妖怪を打ち砕いています!」

「………この時代の人に、そんな気概を持つ者がいるのか?」

「ち、違います! ひ、人じゃありません! そ、そいつは鬼…うぎゃーーーーー!!!」

 狂星九尾・末知女殿の前で妖怪が巨大な金棒で砕かれる。

「ぐわーっはっはっは! お前が新しい妖怪王か!? 儂と戦え!」

 その巨大な鬼の名前は魔人レキシントン。

 本来の歴史において、先代妖怪王黒部とは出会わなかった存在が、今ここに現れた。

 そして2代目の妖怪王にその刃を向ける。

 その顔にはどうしようもないくらいに楽しげな笑みが浮かんでいた。




お町さんですが、この時期妖怪王だったかどうか投稿時に疑念が
でも今更なのでそのまま進めるしかありませんでした

言い訳になるかもしれませんが、投稿が遅れたのは再び職場で問題が…
一体いつになったら落ち着くのか不安しか無いです

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