ランス再び   作:メケネコ

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分岐点

 GL期は魔物が支配する絶対的な支配―――であると同時に、魔物も魔王に容赦なく処刑される過酷な世界。

 本来の歴史とは違い、魔物にとっても地獄とも言える世界だが、その世界に君臨するのもまた魔王だ。

 その魔王ジルだが、魔人には殆ど興味を示す事は無かった。

 魔人ノス、魔人ジーク、魔人メディウサを作りはしたものの、特に何かをさせる訳でもなく、各々自由にさせている。

 ノスに関してはジルに対して絶対的な忠誠を抱いている。

 そんなノスはジルにとっては優秀な手駒として、自分の側に居るのを許していた。

 ジークに関してはあまり興味は無い。

 ジークは魔物一紳士であるためか、魔人ケッセルリンクとは交流を持っているようだが、ジルにとってはジークはどうでも良かった。

 そしてジルが今一番注目しているのがメディウサだ。

 へびさんから魔人となったメディウサは、元の女の子モンスターの嗜虐性を一層高めており、股間の蛇で女を犯し殺すという性癖を持っていた。

 魔王ジルの目を盗み、各地から人間を捕えては殺している事はジルも知っている。

 それなのにお咎め無しなのは、メディウサがジルに気に入られているからだという話が魔物達の間では有名だ。

(愚かな…)

 そんな噂を聞いても、ジルは冷たく一笑するだけだ。

 ジルにとってはもうこの世界の脅威は完全に抑える事が出来ていると判断したからこそ、メディウサを見逃しているに過ぎない。

 人類の人口が半分以下にさえならなければ、魔王は誰にも倒す事は出来ないのだ。

 そして何よりも、メディウサには大事な役目がある。

(ランスは…メディウサを知れば必ず倒すべく動き出すはずだ…)

 ランスの性格は魔王になった今でも覚えている。

 男に対しては厳しいが、女に対しては基本的に甘い。

 基本的に子供にも結構甘い面もあり、アレでいて意外と優しい所もある。

 ジルはランスの奴隷だが、それは世間一般的な奴隷とはまた違った扱いなのは明白だ。

 そんなランスだからこそ、女を嬲り殺す魔人の事を聞けば、間違いなく倒そうと動くのは明白だ。

 それ故に、ジルはメディウサの事を知りつつも敢えて放置しているのだ。

 メディウサを魔人にしてから時間が経過しているが、まだランスが動き出す気配は無い。

 だが、必ずランスは動く…ジルはそれを確信していた。

「ククク…」

 ジルは魔王城の自分の椅子の上で楽しそうに笑う。

 その笑みだけで、ノスは内心で至福の表情を浮かべ、ジルを世話するメイドさんは背筋を凍らせる。

(さあランス…メディウサを倒して見せてくれ…メディウサはそのためだけに作った存在なのだから)

 ジルはランスの事と再び出会える事を想像して、胸がどんどんと高鳴ってくる。

 400年待っているのだから、そろそろ会えるはずだ。

 いや、そうでなくてはならないのだ。

 だがその前に――――

「魔人に伝えろ…この世界で好き勝手に生きている人間を…捕えろとな」

「人間を…ですか」

「そうだ…魔物将軍を退けた…ならば…魔人を動かせ…」

「分かりました、ジル様」

 ジルの言葉にノスは頭を垂れる。

 魔人にとって魔王の言葉は絶対であり、決して逆らえない。

 ノスが魔王の間から去っていくのを見届けると、ジルは笑う。

「ランス…ではない…だが…強き者ならば…ランスと出会ってもおかしくはない…もし会っているのならば…それも一興…」

 その人間とは間違いなくランスではないだろう。

 ランスならばもっと甚大な被害が出るだろうし、何よりも特徴的な女が隣に居るのでそちらの目撃情報も有るはずだ。

「さて…どう出る…? ランス…」

 

 

 

 カミーラの城―――

 魔人カミーラは何時もの様に己の城で佇んでいた。

 GL期はカミーラにとっては非常に退屈な時ではあったが、だからと言って魔王に目を付けられるのは面倒だ。

 しかも、今回の魔王はランスとはとても親しかったとケッセルリンクから聞いている故に、余計に動くのは自重しなければならなかった。

 だが、突如としてカミーラは動き始めた。

 人間捕縛命令―――本来であれば、カミーラはそんな下らない命令など無視するはずだった。

 しかし、魔物達の予想に反してカミーラは動き始めた。

 それは少し前、カミーラの所に思わぬ客が来た事からだ。

「ハハハハハハ! カミーラは居るか!?」

「お、お待ち下さいレキシントン様! 何卒、何卒…」

「やかましい! 儂はカミーラに用があるんだ!」

 いきなりカミーラの元に突撃してきたレキシントンを、魔物兵程度では当然止める事は出来ない。

 結果、レキシントンは乱暴にカミーラの城へと入り込み、そしてカミーラの前にやってきた。

「おうカミーラ! 久しぶりだな!」

「レキシントン…何のつもりだ…」

 カミーラを前にしても全く態度を改めないレキシントンをカミーラは冷たく睨む。

 レキシントンはカミーラにとっては醜く、そして五月蝿いので勿論嫌ってはいる。

 何度かレキシントンとはぶつかってはいるが、レキシントンは強いのでカミーラでも殺すことは難しい。

「まあそう言うな。今回は儂がお前に有益な情報を持ってきてやったのよ!」

 レキシントンは胡坐をかくと、その後ろからやってきた使徒が酒樽をレキシントンの前に置く。

「…殺すぞ」

 その態度にカミーラの目が細くなり、魔人四天王の中でも最強格とされるプレッシャーが放たれる。

 それだけで魔物兵達は萎縮し、恐怖に身を震わせるがレキシントン達には全く通用していない。

「お前が探していた小僧…ランスって奴に会ったぞ」

 レキシントンの言葉にカミーラの眉が動く。

 その反応を見て、ジュノーとアトランタはニヤリと笑う。

 カミーラの態度こそが、カミーラとランスの間には繋がりがあると確信させた。

「どこでだ…」

「JAPANでだ。今は大陸に戻って来てるだろ。そしてなあ…魔王からある男の捕獲の命令が来た」

 レキシントンの笑いにカミーラはその視線を鋭くする。

「心配するな。そいつはあの小僧じゃない。全く別の人間だ。だがなあ…その男がランスと共に居ると言ったらどうだ?」

「貴様…」

 レキシントンの言葉に、カミーラからは凄まじい怒りの重圧が放たれる。

「お待ち下さい、カミーラ様!」

 その怒りのカミーラを七星が何とか諌めようとする。

「そこで話だが…どうだ? 早い者勝ちとしないか」

「…どういうつもりだ」

 レキシントンの意図が読めず、カミーラは僅かに苛立ち気に声を出す。

「お前から恨みを買うのは真っ平だからな。儂とお前…どっちもあの小僧を狙う。早い者勝ち…それでどうだ?」

 カミーラはレキシントンの言葉に無言になる。

 レキシントンの言ってる事はカミーラからすれば滅茶苦茶だ。

 今から700年程前、レキシントンは確かにランスと戦った。

 その時、レキシントンは魔人でありながらも人間の男に一太刀浴びせられている。

 尤も、それを気にするレキシントンではなく、そもそも魔人とも頻繁にぶつかっているので、傷があるのが当たり前の魔人だ。

 唯只管に戦いを望むレキシントンから見れば、確かに自分を傷つけた人間は魅力的に映るのかもしれないが、だとするとこちらにその話を持ってくる理由が分からない。

「儂はただ楽しみたいのよ…ジルが魔王になって、生憎と儂は退屈をしていてな」

 獰猛に笑うレキシントンを見て、カミーラは唇を歪める。

 退屈、という言葉に関して言えば、カミーラも同意見だったからだ。

 確かに今のこの現状は人間にも、そして魔物にも地獄の日々だろう。

 しかし、魔人にはそんなのは一切関係ない。

 皆好き勝手行動しており、魔王も特には魔人に何かを言う事も無い。

 ただ、ノスとの争いに関しては魔王も面倒だから禁じた程度でしかない。

「…いいだろう、好きにしろ。だが、貴様の知っている事を全て話せ」

 カミーラが唇を釣り上げた事で、レキシントンもまた笑う。

「おう、ジュノー、アトランタ、話してやれ」

「レキシントンはそういう事は直ぐ俺達に丸投げするね。まあそんな所もいいんだけどさ」

 ジュノーは楽しそうに笑うと、そのままJAPANであった事を話す。

 嘘偽りなく、ランスと話した事をそのままカミーラに伝える。

 そしてランスの狙いは、あの魔人メディウサだという事も素直に伝えた。

「ランス…この私を無視し、メディウサの所へ向かうか…ククク…」

 魔人メディウサはジルが作った魔人だが、カミーラはメディウサの事など気にも留めていなかった。

 魔王から止められている人間殺しを密かにやっているようだが、カミーラには全く興味の無い事だった。

 その魔人をランスが狙う…それはカミーラにとっては非常に不愉快な事だ。

「この私を無視し、よくやるものだ…」

 それは静かな怒りだが、今にも爆発しそうな程にカミーラから強力なプレッシャーが放たれる。

 その重圧を受けて尚レキシントンは楽しそうに笑う。

「やる気になったようだな。それじゃあ儂はそろそろ行くぞ。儂は儂で動かせてもらうぞ」

「好きにしろ…だが、ランスは私の獲物だ。手を出すようなら、貴様を殺す」

「カカカカカッ! それもいいだろう。儂があの小僧を殺す前に、お前が見つければいい」

 レキシントンは楽しそうに笑いながら、二人の使徒を伴ってカミーラの前から姿を消す。

「七星…」

「はっ…」

 カミーラは側に控えていた七星に声をかける。

 そこには先程の怒りの様子は全く無い。

「お前の用意していたもの…動かせ。成果を見せてみろ」

「分かりましたカミーラ様。ですが、そのためには魔物将軍…少なくとも魔物隊長を動かす必要があります」

「………」

 七星の言葉にカミーラは忌々しげに顔を歪める。

 魔物将軍、そして魔物隊長を動かすとなると流石に面倒くさい。

 1魔物風情が動くのであれば魔王は全く気にしないだろう。

 しかし、流石に魔物将軍クラスを動かすとなると魔王に気取られる可能性は高い。

 魔物将軍は貴重な存在であり、ある程度数が限られているのだから。

「いいだろう…魔物隊長を2体くらいなら魔王にも気取られる事は無いだろう。だが、急げ…魔王に気取られると面倒だ」

「はっ…しかし、魔王はその人間を捕える事を命じた様子、ならば魔物将軍を動かしても問題は無いのでは?」

 七星の言葉にカミーラは首を振る。

「ジルは…間違いなくスラル同様に、ランスを魔人へと変えるべく動くだろう。だが、ジルはスラルとは違う…ランスの意志など無視するだろう」

 魔王ジルは正しく『魔王』という存在だ。

 この世界の支配者として傲慢で、冷酷で、そして圧倒的な強さを持っている。

 ジルとランスの関係は既にケッセルリンクから聞いているので、間違いなくジルはランスを狙う。

 ジルはスラルの様に話が通用する存在ではないのは明らかだ。

「レキシントンも騒ぎを大きくはすまい…ならば小数でいい」

「分かりました。ならば秘密裏に動かしましょう」

 七星の言葉にカミーラは満足気に頷く。

「行け、七星。必ず…ランスを見つけろ。レキシントンよりも早くだ」

「ははっ!」

 カミーラの言葉に七星は一礼すると、すぐさま行動に移す。

 一人残ったカミーラは、自分の腕を動かす。

 が、そこにある若干の違和感に顔を歪める。

「ノスめ…」

 それは少し前、ノスと争った時につけられた傷。

 流石にあのノスが相手では、カミーラも無傷という訳にはいかなかった。

 それは相手も同じだが、この場合はドラゴンとドラゴンの戦いがあったという事が重要だ。

 ドラゴンがドラゴンを傷つけた場合、その傷は尾を引いてしまう。

 理由は分からないが、とにかくノスにつけられた傷は今もまだカミーラの体を蝕んでいる。

 それはノスも同じだろうが、とにかくカミーラは今は本調子という訳ではない。

「まあいい…あれからランスも強くなっているだろう。次こそ…屈服させる。そして奴は跪き、このカミーラの使徒になると言うのだ…」

 カミーラは非常に楽しそうに笑みを浮かべると、その椅子から立ち上がる。

 ノスとの戦いの傷跡は大きいが、相手は人間なのだ。

 それで負けるという事は決してありえない。

 例えそれが無敵結界を使用しないでもだ。

「ククク…」

 カミーラは何処までも楽しそうに笑い続けた。

 

 

 

「ここが大陸か…」

 天満橋から足を踏み出し、お町は何処か安堵したかのようにため息をつく。

「そうだ。ここが大陸だ。まあ俺様について来れば問題無い」

 ランスは少し乱暴にお町の頭を撫でる。

「貴様、我をいい加減に子供扱いするのはやめろ」

「だったらでかくなればいいだろ」

 憮然としながらも、お町はランスの手を振りほどく様な真似はしない。

「だがランス。ここからメディウサとかいう魔人の所まで行くのは時間がかかるぞ。バイクを使えば一瞬でジルにばれてしまう」

「…何て不便な世界だ」

 魔王ジルの時代…まさに魔物の黄金期と呼べる時代であり、人間達は明日を生きるのも手一杯という状態だ。

 それ故に、目立つところに人の集落は存在せず、人里を探すのにも苦労する状態だ。

「レイ。ここから近い人間の集落はどこだ?」

「………」

 スラルの言葉にレイは考え込む。

 そして出てきた言葉が、

「わからねえな」

 そう言った瞬間、ランスの蹴りがレイに炸裂する。

「いってーな! 何しやがる!」

「貴様が役に立たんからだ。お前、自分が何処に居るかも分からずに魔物に喧嘩を売り続けてたのか」

「わりぃか!?」

 レイには今の時代を好きに生きれる力がある。

 それ故に、地図なんてものは持たないし、何処に人間の集落があったかなんて一々記憶もしていない。

「戦闘以外に役に立たんな、お前は」

「グッ!」

 レイは反射的に何かを言い返そうとして、自分が本当に何も言い返せない事に気づいて言葉を飲み込む。

 ダンジョンなどの探索についてはランスがずば抜けている。

 開錠等は出来ないが、冒険に至るまでのプロセスもかなり筋道を立てており、行き当たりばったりのようでいて意外と考えられている。

 何よりも、ダンジョンにおいて宝箱を見つけたりという絶対的な幸運が凄まじい。

 それに比べれば、レイは冒険においては完全に素人、勝手に行動した結果罠に嵌ったりは当たり前、足を引っ張る結果になる事が多い。

 ランスの言う通り、戦闘以外は全く役に立っていないというのは紛れもない現実だ。

「レイの事はどうでもいいから、進路を決めない?」

「…どうでもいい」

 レンの言葉にレイは露骨に凹む。

 男に言われると腹が立つ言葉も、女に言われると何故か凄いダメージが来るのをレイは自覚した。

「だが…流石に中央の方を通ることは出来んな」

 スラルはレンと共に地図を覗き込む。

 お町も興味を引かれたのか、その地図を覗き込もうとするが身長が足りずに見ることが出来ない。

 それを見てレンは地図を地面に下ろす。

「今はJAPANを出たところ…その魔人が居るという所まではかなりの距離があるわよ」

「そうだな…流石にこの距離をバイクやうし車無しで移動するのは厳しいな」

 今現在の位置は天満橋を渡った所で、メディウサの居るであろう場所までにはかなりの距離がある。

 この距離を歩くとなると、数ヶ月単位の時間がかかってしまうだろう。

「ランス、どうする?」

 スラルの言葉にランスは少し考える。

 これがランスが居る時代のLP期やGI期、そして先の時代のNC期ならば躊躇い無くバイクを使うなり、うし車を使うなり躊躇いは無かっただろう。

 歩いていくなど面倒だからだ。

 しかし今は見つかればアウトのGL期。

 ランスは短気で無鉄砲と呼ばれる面もあるかもしれないが、それでも冒険者としては超がつく一流の人間だ。

「こっちの方を通って行くぞ」

 ランスが指差したのは、南回りから大陸の中央に向かうルートだ。

 そしてその先にあるのは小島…そう、ランスも何度か訪れている川中島。

 即ち、AL教が管理する地であり、その総本山のカイズがある場所。

「そこから河を抜けてこっちに向かうぞ。どうだ、完璧な計画だろう!」

『がははははは!』と何時もの様に笑うランスに対し、スラルは難しい顔をする。

「ランス…河を抜けるのはいいが、どうやって抜けるつもりだ?」

「そんなの簡単だ。確かここ…なんつーかは忘れたが、ここから船が出ているはずだ」

 ランスが指さしたのは、LP期における自由都市の都市の一つ。

 AL教と大陸の橋渡しをしている都市、ジフテリアだ。

「…今の時代に出てるの?」

 レンの顔にもランスは自信満々に答える。

「お前達はわかっとらんな。人間というのはこういう時に備えて色々とやってるもんだ。絶対ここに行く手段は用意している」

 ランスは自信満々に答える。

 それはランスのある種の確信とも言える。

 人間というのは意外としぶといもので、必ずそういった手段は用意しておくものなのだ。

 そういう備えをしている人間が居るからこそ、格差が生まれ、弱者と強者で分かれる。

 世界というのはそういうものだとランスはある意味理解していた。

 いや、理解させられていた。

「という訳で行くぞお前ら! がはははは!」

 こうしてランスの強い主張の元、ランス達は川中島へと向かうべく歩き始めた。

 ランス達の強さは圧倒的で、野良モンスターや野良魔軍程度では全く相手にならない。

 相手は必ず全滅させ、魔軍に報告が行く事もなくランス達は一応順調に進んではいた。

 そしてある日の夜―――

「がはははは! とーーーーーっ!」

「んんんんん!」

 何時もの様に、ランスは魔法ハウスの己の部屋でスラルの体を存分に堪能していた。

 ある日はレン、その次はスラル、そして次は3人で…ランスは思う存分にスラルとレンの体を味わっている。

 そして今日はスラルがランスと同衾していた。

 二人は思う存分に互いの体を味わい、ランスは心地よい気怠さに身を任せていた。

 スラルはそんなランスの腕を枕にして、荒い息をついて体をランスに預けていた。

「ランス…真面目な話をしていいか」

「んー…明日だ明日。今はもう寝る…」

「…そうだな。分かった」

 スラルはランスと話をしようとしたが、自分の心地よい快感に身を任せていたせいか、その日はあっさりと眠りにつく。

 そして次の日、ランスは何時もの様に起き上る。

 体内時計は完璧で、ランスはどんな時でも起きれるようになっている。

 今までの冒険の中での習慣は完全にランスの体に染みついている。

「で、スラルちゃん。真面目な話ってなんだ」

「ああ…それなのだがな」

 スラルは何時もの様に下着を身に着け、そしてゆったりとした服を身に纏う。

 その様子には、昨夜あれほど乱れた形跡は感じさせない。

「ランス。お前は魔人の所に行くという。だが、魔人の所に行ってどうするつもりだ?」

「何言ってやがる。そんなの魔人をぶっ倒してズバーッとおしおきに決まっているだろうが」

 ランスは何の事も無いかのように答える。

 その言葉を予想していたスラルは大きくため息をつく。

「無敵結界をどうするつもりだ」

「………あっ」

 ランスは肝心な事を忘れていた。

 魔人を倒しておしおきするというテンションに流されていたが、ここでようやく思い出す。

 ランスの手元には魔剣カオスも聖刀日光も存在しないのだと。

 魔人トルーマンを倒した事で、思わず失念していたのだ。

 ちなみに先に魔人レキシントンに会った事はもう忘れてしまっている。

 相変わらず自分に都合の良い事しか頭に入っていない、ランスの悪い所が出てしまっていた。

「えーと、あれだ。また魔封印結界で…」

「聖なるアイテムはもう無いぞ。クエルプランが身に着けていた物以外、全て壊れてしまった。それに、魔封印結界は魔人を誘き寄せる事が出来るからこそ意味がある」

「むぐぐ…」

 スラルの指摘をランスは嫌でも理解してしまった。

 サテラの時も、トルーマンの時も魔人を誘き寄せる形で結界の中に誘導した。

 何れも迎え撃つ形であり、それも魔人が単体で攻めてきた時の形だ。

「それに魔物兵の事もある。そのメディウサという魔人が1体だけで居るとは限らないし、何よりも使徒の存在も考えなければならない」

 魔物兵、そして使徒、魔人と戦いたくても、この障害はどうしても付きまとう。

「何よりも、無敵結界をどうするか。これが一番の問題だろう」

 無敵結界こそが魔人の一番の脅威であり、それがある限りは人間は魔人には決して勝てない。

 それはランスも嫌というほど味わっており、そのためにあの馬鹿剣を使っていたのだから。

「スラルちゃんのあの力でもどうにもならんか」

「バスワルドの力を使うには、我がランスの剣の中に居なければならぬ。だが、今の我と幽霊の我…強いのはどちらだ?」

「そりゃ今のスラルちゃんだろ」

 スラルは肉体を得ていた方が強い。

 それはランスも十分すぎるほど感じ取っている。

「そうだ。今の我の方が強い。広範囲の一撃を撃つのであれば、我がランスの剣に居たほうがいいが、今の状況ではそうもいくまい」

 ランスとスラルの合体技は非常に強力で、広範囲の相手すらも壊滅させられる威力を持っている。

 だが、その分反動も大きく、時には使い手のランスの体も傷つけ、そしてスラルは少しの間戦うための魔力が枯渇してしまう。

 それに比べれば、自前で威力が調整でき、尚且つランスが今は使っていない、クリスタルソードを持ち魔力を増幅させたスラルの方が圧倒的に役立つ。

 それが分かっているからこそ、ランスも非常に頭が痛くなってくる。

「そして魔人を倒すには…それこそ人を越えた力が必要となる」

 スラルも強いと感じ取った藤原石丸でも、魔人ザビエルには敵わなかった。

 三種の神器を集めたあの天才的な剣士でも、無敵結界の前には歯が立たなかったのだ。

「だが、お前は人をやめる気は無いのだろう?」

「当たり前だ。人間の俺様が魔人を倒すから凄いのであって、それ以外だと意味が無いだろうが」

「だとすれば残る手段は唯一つ…ランスが自分自身の力でバスワルドの力を剣に宿す以外に方法は無い」

「何だと?」

「ランス…我はお前ならば出来ると思っている。お前は普通では考えられない方法で危機を脱出してきた」

 スラルは自嘲的に笑う。

 昔、ランスを無理矢理魔人にしようとした時、セラクロラスの邪魔が入りそれは叶わなかった。

 勿論今ではそれで良かったと思っているが、同時に凄まじいランスの強運を味わった瞬間だった。

 そしてそれからも、ランスは自分自身の力と、その強運でどんな危機も乗り越えてきた。

「そしてお前には力がある。もしお前が本当に魔人を倒し、ジルを救いたいというのであれば…お前は選ばなければならない。そのまま身を任せるか、それとも己の力でねじ伏せるか」

 スラルはランスの目を覗き込む。

「さあ、お前はどちらを選ぶ? ランス」




川中島設定に関してはオリジナルが強めです
川中島からゼス方面に行けるかどうか覚えてないです…
忘れてるだけかもしれませんが、きちんした設定があればお知らせ頂ければ幸いです

シーラって法王就任の時にカイズに行ってたけど、山を越えていったのかな…?
ランス9のシーラを見てると出来そうなんだよなぁ…
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