「ようやく全ての―――が揃ったぞ」
魔王スラルは神の間の前で4つの―――をセットする。
すると神の間が開き、眩い光がスラルを包む。
この世界最強の存在であるスラルだが、目の前の光はそのスラルすらも呑み込んでしまう程の光を放っている。
「よくぞここに辿り着いた。願いを言うがいい」
それはスラルが何故か知っている知識、4つの―――を集めれば、願いを叶えてくれるという荒唐無稽な話。
だが、それは現実に存在して居る。
「我の願いは―――」
魔王スラルはこの世界最強の存在でありながら、常に恐怖を覚えていた。
それは自分を上回る存在はこの世界には間違いなく存在するという事。
先代と先々代の魔王はその別の存在に敗れ去っている。
魔王はこの世界最強ではあるが、決して無敵では無い、それがスラルにとっては恐ろしかった。
「それは魔王は決して死なず」
「このとんでもない殺人料理人のスキルを何とかしろ」
「…え?」
スラルが願いを叶えようとした時、それを横から口を挟む存在がいる。
緑色を基調とした服を着た人間…ただし、とんでもなく強い存在だというのは分かる。
「こいつの料理は世界を崩壊させるレベルだ! 願いを叶えるならこいつの料理を何とかしろ!」
「え、えええええええ!?」
突然失礼な事を言いだした男に、スラルは思わず驚きの声を上げるしかない。
「お前の料理の腕は香ちゃん以上だ! いや、香ちゃんは団子以外は上手いし、七色の団子という分かりやすい料理だからまだいい。だがしかーし! スラルちゃんは別だ!」
「ちょ、ちょっと待て! 突然何を言い出す!? というか誰だお前は!?」
「やかましい! お前の料理がどれだけの被害を出したと思っとるんだ! おかげで人類も魔物も全て滅んだでは無いか!」
「は、はああああああああ!?」
突如としてとんでもない事を言い始めた男に、流石のスラルも切れそうになる。
「人間…貴様、言うに事をかいて何を失礼な事を。死にたいのか」
スラルはギロリと男を睨むが、その男は魔王の視線にすら意にも介さない。
「何が失礼だ! 事実を事実と言って何が悪い! スラルちゃん、俺様のスーパーなおしおき100倍を受ける前にその料理の不味さを何とかしろ!」
「わ、我の料理が不味いだと!? そんな事は無い! ガルティアは我の料理を宇宙の真理と言って受け入れてくれている! というか貴様魔王におしおきとはいい度胸だ! …アレ?」
男のおしおきという言葉にスラルは思わずお尻を押さえる。
突如として非常に強い違和感に襲われ、体をもじもじさせる。
(な、何だ? 我の体はどうなっている? 何故突然こんな人間におしおきと言われただけで、我の体が…しかもとんでもない所が疼く?)
「という訳でこの殺人料理人の腕前を何とかしろ。世界が完全に滅ぶ前に」
「そうねー。流石にコレは擁護できないかな。人並とは言わない、せめてメシマズくらいにまではレベルが上がって欲しいかな」
金髪の美しい女が突如として出現し、うんうんと頷きながら男に同意する。
「な、何を勝手な事を! というか我の料理で世界が滅ぶなどあってたまるか!」
「だったらその目で見てみろ!」
男がスラルの顔を乱暴に背後に向けさせる。
「…え?」
すると突然目の前の光景が変わり、そこには恐ろしい世界が広がっていた。
モンスターが、人間が、ハニーが、カラーが、そしてドラゴンまでもがまるで生きる屍となって世界を蠢いていた。
屍は互いに互いを食い合いながら争いを始める。
それは正に地獄と言うのに相応しい光景なのは明らかだった。
「スラルちゃんのコロッケのせいで世界はこうなったのだ! それなのに無敵になりたいだと!? そんなのは神が許しても俺様がゆるさーん!」
「いや、何故貴様にそうまで言われなければならない!? というか貴様誰だ!?」
「このランス様の事を忘れるとはいい度胸だ! だったらこの場で100倍おしおきじゃー! だがその前に! こいつの料理の腕を何とかしろ!」
ランスと名乗った男の言葉に、神はその口を開く。
「残念だが、その願いは私の力を超えている。叶える事は出来ない」
「ちょっとそれどういう意味だ! というか我の料理が本当に世界を滅ぼす力があるというのか!? あ、消えるな! 我の願いを叶えろ!」
神の姿は既にその場には無く、残されたのはランスと名乗った男と金髪の女、そして自分だけだ。
「に、人間! 貴様許さんぞ!」
「許さないのは俺様の台詞だ! スラルちゃんにそんな事をいう資格は無い! という訳でとーーーーーーっ!」
「ぎゃーーーーー!? 何で全裸になる!? あ、ていうか何で我の体が縛られている!? というか動かんぞ!?」
何時の間にかスラルの服は全て消えており、その体は縄で拘束されている。
「ふっふっふ、100倍おしおきじゃー! じゃあまずは1本目いくか」
ランスは手に持った器具の中に液体を充満させる。
そしてそれを片手に動けないスラルの後ろに回ると、それをスラルのお尻へと近づける。
「あ、こら人間!? 貴様何のつもりだ!? ま、まさかそれを我の尻に突き立てるつもりでは無いだろうな!?」
「100倍おしおきと言っただろうが! まずはこれを100本スラルちゃんの尻にぶち込む! その後は100回スラルちゃんとこっちでセックスじゃー!」
「え、あ、ちょっとやめろ人間! いや、やめて! あ、ああああああああああ」
そしてスラルの尻にランスが握っていた器具が突き立てられ、中の液体がスラルの中に入っていくと同時に、スラルは意識を失った。
カイズが地獄と化した翌日―――カイズは何とかその静けさを取り戻していた。
戻してはいたのだが、
「鬱陶しいと何というか、本気でどういう状況なのか全く理解出来ないんだけど」
「世の中は理解出来ぬ事だらけじゃ…」
レンとお町は目の前の光景に頭が痛くなってくる。
ランス達は未だに目を覚まさない。
一応魔法ハウス内で休ませているが、それでもスラルの特製のコロッケの破壊力は甚大だったようだ。
もう痙攣は収まっているが、今でも目覚めない所を見ると、スラルの料理はそれほどまでに進化してしまったのだろう。
まあランス達は正直生きているのでどうでもいいのだが、問題なのはハニー達だ。
「コロッケェ…」
「あうあうあああ…」
呻きながら周囲を徘徊するハニー…いや、これはハニーのゾンビとでも言うべきだろうか、あちこちがひび割れたり、体から謎の粘液を出しているハニーが無数に居る。
最早そこにはグリーンハニーやレッドハニーといった種類は無く、皆がどす黒い色に変化してしまっている。
中には互いに共食いをしているハニーも見える。
「どうするのよ…この惨事」
「…どうにかする方法があるのかのう」
レンとお町は未だに目覚めぬランス達を見てため息をついた。
そしてランス達が目覚めたのは、その翌日の事だった。
「あー…最悪な目にあったぞ…」
ランスは目に見えてげっそりした顔でレンの作った料理を食べていた。
「お前のせいで俺まで巻き込まれたじゃねえか…」
ランスの側ではレイもまたげっそりした顔で何とか食事をとっている。
レイの方はランスよりも深刻なのか、時折吐きそうになりながらも無理をしてでも料理を胃に詰め込んでいる。
「フッ…まさか私の母になってくれる女性と巡り合えそうになるとは…これがニュータイプの世界というものか…」
エドワウも訳の分からない事を言いながらやはり食事を取っている。
「うわああああああ!! 100本は! 100本は無理ーーーーー!」
そして最後まで魘されていたスラルは突如として飛び起きる。
「と、突然なんじゃ!? 100本とは一体何の事じゃ?」
スラルの近くに居たお町は突然起き上ったスラルに驚く。
「あ…ゆ、夢か…? いや、あんな生々しい夢を見るとは…しかもその時の衝撃で何か重大な事を思い出せそうだったのに、吹き飛んでしまった…」
スラルは頭を押さえながら起き上るが、その顔は真っ赤に染まり上気している。
端的に言えば、先程まであれだけ苦しんでいたのに妙に艶っぽい。
「…ん?」
突如してスラルは立ち止まると、真っ赤になってた顔が更に紅くなったかと思うと、
「ちょ、ちょっと我は頭を冷やしてくる!」
一度自分の部屋に戻って着替えを取って来たかと思うと、そのまま浴室に向かって行く。
「…何があったんだ。つーか文句を言う暇も無かったぜ」
レイは本調子とは程遠いのか、スラルに文句の一つも言う気力も無いようだ。
「あー駄目だ…俺はまだ寝るぜ…一体何を作ったらこうなるってんだ…」
何とかおかゆを食べると、そのまま自分に宛がわれた部屋へと戻っていく。
その様子は非常に辛そうで、普段のレイとは大違いだ。
「私ももう少し休ませて貰おう…ババアには何時でも会えるから…」
「ああ、客用の部屋はこっちよ」
エドワウもそのままレンに連れて行かれ、客用の部屋に消えていく。
レンは直ぐに戻って来て、
「ランスは大丈夫なの?」
意外と平気そうなランスを見て首を傾げる。
確かにランスは気絶している時間は長かったが、どうやらレイやエドワウのような後遺症は無いようだ。
「非常に腹立たしい事だが、慣れた。前から香ちゃんの毒団子を食ってたから耐性があるんだろ」
ランスとしては非常に不本意だが、以前から織田香の団子を食べ、そしてスラルの料理を3回も口にしてしまった。
なのでランスは耐性が出来てしまっていた。
勿論そんなのは何も嬉しくは無いのだが。
「で、スラルちゃんは平気なのか」
「まあ…毒持ちのモンスターが自分の毒で死ぬかって話だし」
「それもそうだな」
スラルも自分の料理を口にしたのに、体には大して影響は無いようだ。
スラルが入っていった風呂を見て、ランスはニヤリと唇を歪める。
「また? あんまり汚さないでよ」
「大丈夫だ。あのガキが非常に便利にしていたからな。がはははは! スラルちゃんに100倍おしおきじゃー」
ランスは一度自分の部屋に戻ると、何かを抱えてそのままスラルが消えた風呂場に消えていく。
「…あの男、本当に底なしじゃな」
「そういう男よ。考えるだけ無駄よ無駄」
呆れた顔をするお町に、レンは何時もの事だと言わんばかりに退屈を凌ぐべく本を取り出す。
「天使もそういう本を見るのか?」
不思議そうに首を傾げるお町に、レンは薄く笑う。
「天使…エンジェルナイトもこういうものよ。自分で言うのも何だけど、意外と俗っぽいのよ」
エンジェルナイトにも色々と種類は居る。
それこそ十人十色、人間と同じように性格や容姿の差は当然存在する。
中には人間界から態々食料を買って来る同僚も居たくらいだ。
「まあ好きにさせておきなさい。今回はスラルが悪いしね」
風呂ではスラルが真っ赤な顔でシャワーを浴びていた。
「ううう…どうして我がこんな目に…」
水を浴びてはいるものの、スラルの体から火照りは全く消えない。
突然のシャワーに、皆は怪しんでいないかどうか非常に不安になってくる。
(言えるか…寝汗もそうだが、まさか我の下着があんな事になってるなんて…)
スラルは真っ先にシャワーを浴びに来た一番の理由は、汗とは別の理由でぐちゃぐちゃになった下着を脱ぐためと、体の火照りを抑えるためだ。
まさか自分があんな夢で…しかもノーマルなプレイでは無く、非常にアブノーマルなプレイの夢で下着がとんでもない事になるとは想像もしていなかった。
(だが、一体我は何故あんな夢を見たのか…)
自分の夢で何か重大な事を思い出させるはずだったのが、その後に出て来たランスのせいで全て吹き飛んでしまった。
(そうだ。これも全部ランスが悪いんだ。我のせいでは無い)
非常に理不尽な事を言っているのはスラルも分かっているが、その原因は全てランスが悪い。
「ランスが悪い! ゆ、夢の中とはいえ我にあんな事を…」
「何だ、俺様がどうかしたのか」
「え…? う、うわああああああ!? ラ、ランス!? 一体いつ入ってきた!?」
突如として後ろから聞こえた声に、スラルは思わず飛び跳ねる。
「ま、全く気配を感じなかったぞ!? 元魔王であるこの我が!」
「元だろうが何だろうがスラルちゃんはポンコツだろうが」
「ぐ…」
実際にはランスは自分の気配を殺すのは上手い。
その技術は、ヘルマンのアサシンのトップであるフレイアにも気づかせない程だ。
尤も、それが生かされるのは決まって女が関わっている時だけなのだが。
「それはそうとスラルちゃん。お前は自分が何をしたのか分かってるのだろうな」
「我が何をしたというのだ! …あっ」
ランスの険しい表情を見て、ようやくスラルは自分が何をしたのか思い出す。
そもそも自分が気絶する原因を作ったのは、他ならぬ自分の責任だった事を。
目の前でハニーが苦しんでいく光景を見て、スラルの中のどす黒い何かが蠢き、結果としてランス達を巻き込んだ。
その結果、ランスとは相打ちになる形で気絶してしまったのだ。
(何故だ…何故我の料理は上手くいかんのだ。いや、というかあのハニー達の態度は明らかにおかしい。ガルティアは喜んで食べてくれるというのに…)
結果として、やっぱりハニーが悪いという責任転嫁をしているスラルだが、勿論そんなものはランスには通用しない。
「さーて、スラルちゃんも覚えているだろうな。100倍おしおきを」
「え、えーと、それに関してはランスも悪い所はあるというか、たかが料理で100倍のおしおきは無いのではないかと思うのだが…ひゃん!」
スラルは何とかその罪から逃れようと考えるが、勿論ランスにはそんなものは通用しない。
無遠慮に尻を掴まれ、スラルは思わず声を漏らしてしまう。
「言い訳はゆるさーん! 大体俺様を巻き込む理由なんぞ無いだろうが!」
「そ、それに関してはだな。ほら、女の料理を食べるのは男の甲斐性というかだな」
「毒物を作った奴の言っていい言葉では無いぞ。と、いう訳でスラルちゃんは俺様のハイパーなおしおきを受けてもらうぞ」
ランスの手がスラルの尻を無遠慮に揉んだ事で、スラルはあの夢の事を思い出してしまう。
そして前回ランスにやられたおしおきは、スラルが想像もしていなかった程のプレイをされてしまった。
いや、そういう行為があるのは知ってはいたが、まさか自分がやられる立場になるとは全く思っていなかった。
「ま、待ってくれ! あ、アレは止めてくれ! ほ、本当に辛いんだ! その…あれから少しの間お尻がひりひりして…」
勿論こんな言葉を放つなどスラルのプライドが許さない。
だが、それでもアレは勘弁してほしいという思いが強い。
(その…嵌ったらまずいと思って…)
その言葉をスラルは何とか口にしないように必死に飲み込む。
お尻を犯された時、スラルには言いようの無い快楽が襲ってきた。
背徳的な行為である事、そして元魔王の自分がそんな所まで犯されてしまったという事、何よりも非常に嬉しそうなランスの様子を見て、自分も悪く無かった事。
色々な思いが交差して、普段の理性的な自分が何処かへやってしまいそうな事が怖かった。
「まあ流石に今はアレは止めておいてやろう。あんなモノを食べたばかりだからな、俺様のハイパー兵器に影響があっては困る」
「そ、そこまで言うか…」
一体自分の作ったコロッケがそこまで言われる事をしたのだろうかと思いつつも、スラルは取り敢えずは安堵する。
「だからまずはこれに着替えて貰おうか」
ランスが非常にいやらしい顔をしたとき、スラルはこれから自分がどうなるのかを完全に察した。
「やっぱりこうなった…というかお前は本当にこういう事に関してはマメというか何と言うか…」
スラルは風呂場のマットの上で横になっているランスを見てため息をつく。
その身には白い水着を身に着けているが、それがまたとんでもない代物だ。
「うーむ。スラルちゃんは一見小柄だがやっぱり出ている所は出ているな。がはははは! 似合ってるぞ!」
「嬉しくない! いや、純粋に褒めてもらっているのは嬉しいのかもしれないが…それにしても、お前はこういうモノを一体何処で仕入れてくるのだ…」
スラルはその両手で胸と股間を隠している。
「これは裸よりも恥ずかしいぞ…」
スラルが身に着けているのは白い水着…ではあるのだが、その布面積は非常に小さい。
胸の先端とその周囲を辛うじて隠しているくらいの上の部分と、完全にお尻が出てしまっている上に、完全に股間を隠しきれていない程の小さな水着。
俗に言う、エロ水着という奴だ。
「人間というのは本当にこういうモノを作るのだな…」
「そんなの女の子モンスターも変わらんだろうが。ほぼ全裸のような奴だっているだろうが」
「人間とモンスターを一緒にするな。全く…今日ほど自分がお前から離れられないのを恨んだ事は無いぞ。いや、別に今日だけという訳でも無いが…」
「ぐちぐち言ってないでとっととこっちに来い」
ランスの言葉にスラルは大きく唾を飲み込むと、そのままマットの上に寝そべっているランスの上にと体を重ねる。
「こ、こうでいいのか…」
(た、確かジルはこうしていたような…)
スラルは望む望まないしろ、ランスの剣から離れられない時期が長かった。
そして、常にランスと他の女のセックスの場面を見せられてきた。
正確には目を背けていれば良かったのだが、スラルはじっとランスと他の女の営みを見てきてしまった。
それ故に結構な耳年増になってしまっている。
そしてこの風呂場でマットを使ったプレイは、ランスがジルを抱くのに使っていた手段だ。
風呂場でランスとセックスをするのは初めてではないが、こういった露骨なエッチをするための衣装を身に纏った上に、こういう道具を使うのは流石に初めてだ。
「うーむ…それにしてもスラルちゃん、少し臭うぞ。いや、別に臭い訳では無いが」
「そ、それは…まあ汗だろうな。非常に認めがたいが、我の作ったコロッケで気を失っていた分、寝汗が溜まっていたのかもしれんな」
汗の臭いはもう仕方が無い。
スラルの汗の臭いを指摘しているが、ランスも同じように少し臭いを感じる。
ただ、スラルにとってはそれは不快な臭いではない。
何しろ普段から汗だくになってセックスをするため、もうこの臭いになれてしまった自分が居る。
「うははー。柔らかー」
ランスは自分の上に乗っているスラルの体に触れる。
背中からお尻のラインにかけて手を動かしていき、スラルの形のいい尻に手を添える。
「あ、ま、待て。流石にそこは…」
「心配するな。流石に今日はここは弄らん。それにお互いに汗の臭いがあるからな、スラルちゃんには俺様の体を洗ってもらおう」
「体をか? それくらいなら別に構わないが」
スラルは柔らかい手拭を手に取ろうとして―――
「おっとそれは駄目だなスラルちゃん。そんな硬いもので俺様の玉のような肌が傷ついたらどうするつもりだ」
「は? これは柔らかいだろうが。これより柔らかいものは…」
スラルはここで思い出す。
ランスとは風呂場でもセックスはしているが、その時はごく普通のプレイで体を洗うにしても手拭を使っていた。
こうしていかにもエログッズを使い、こういう恰好もしか事は無い。
そしてランスがジルとセックスをしたとき、こういう光景を見た事を思い出した。
「ま、まさか…わ、我の体で洗えというのではないだろうな…?」
「分かっとるなら話は早い。じゃあやってもらおうか」
「…うう」
今ここで断っても、ランスは絶対に納得しない。
というよりも、自分もこんな恰好を受け入れておいて今更拒否するのもありえないだろう。
スラルは覚悟を決めると、自分の体を泡まみれにする。
そしてランスの上に体を重ねると、ランスの体に掴まりながら体を何とか上下させる。
気持ちよさそうなランスの顔を見て、スラルは顔を朱に染めてその鼻を弾く。
「お前という奴は。本当にこういう事に関しては目ざといというか何と言うか…」
「がはははは! それもいい男の条件だ」
訳の分からない事を言うランスに、スラルは憮然とした表情もしながらもランスの体を洗う。
(…本当に逞しい体をしているな、ランスは)
ランスが強いのは十分に理解しているが、この肉体があの強さの源なのは間違いないだろう。
だが、それ以上に今スラルが思っているのは、
「ランス…お前は本気でジルをその手に取り戻すつもりなのか」
それは元魔王だから分かる、人間と魔王の絶対的な力の差。
魔王の前にはどんな才能も力も意味をなさない。
それこそ魔王は1体でこの世界を滅ぼす力を持っているのだ。
「当たり前だ。魔王になったくらいで俺様から逃げられると許されん事だ。もう一度俺様の奴隷として分からせなければいかんからな」
それは極当然と言わんばかりの声。
まるで何処かへ買い物にでも行くような変哲もない声だ。
「…お前はそれほどジルを」
「何を言っている。アレは俺様の奴隷で俺様の所有物。それが勝手にいなくなるなど許されん事だからな」
「…そうか」
ランスは本気でそう言っているのはスラルには分かる。
別に強がりでも何でも無く、ランスは相手が魔王だろうが本気でそう思っているのだ。
「その理由は…お前がジルを愛しているからなのか?」
そしてもう一つスラルが知りたい事。
それはランスの本音だ。
「どーいう事だ」
「ジルは…お前の事を愛していた。いや、多分今でも愛してると我は思う。だから…ランスもそうなのかと」
愛、それはランスが常々リアに言われている事だ。
勿論リアはあの通りだし、感情表現も王族なのにストレートすぎる。
それでいて優秀なのだから、リアはアレでいいのだろう。
「ランス。愛とは…そして恋とは何なんだ? 我には分からない…」
ランスが何と答えようか思案してた時、スラルが不安そうな顔でランスを見る。
その目は不安と若干の恐れのようなものが見える。
「我は…間接的にお前からジルを奪った。それなのに…お前は我への態度が変わらない。それも…正直分からないのだ」
スラルは不安だった。
全く変わらないランスの態度、そしてランスの力強さに。
(もしジルが戻らなければ我は…)
「前も言っただろうが。別にスラルちゃんが悪い訳じゃ無いだろ。悪いのは全部あのナイチサとかいう奴だ」
ランスは本気でそう思っている。
と、いうよりも何故スラルがそこまで自己嫌悪に陥るのか、それが分からなかった。
スラルが負い目を持っているなら、そこにつけこんでセックスが出来ればいいかなくらいにしか考えていなかった。
「だからいい加減に気に病むな」
「それとな…もし我が…ジルの立場だったら。ジルと我が逆だったなら…お前は我を助けてくれるのだろうか…そんな事も考えてしまうのだ」
スラルは不安そうにランスの体を抱きしめる。
ランスは確かに自分の体を戻した…過程はどうあれ、ランスと共に居たことで実際にこうして肉体は存在している。
それは勿論嬉しいのだが、同時にランスが自分から離れるのではないか、という恐怖が出てきてしまった。
(魔王であった時とは考えられぬ言葉だ…これが本当の我なのか)
「そんな下らんことで悩んでたのか」
しかしランスはそんなスラルに呆れたような顔をする。
そしてその顔をむにむにと掴んで引っ張る。
「スラルちゃんは今の状況を後悔している訳じゃないだろ」
「ああ…お前と出会うことで、色々な事を経験し、そして知る事が出来た。そしてそれは刺激的でとても楽しかった。我が魔王だった頃からは考えられない」
ランスはスラルの頭を掴むと、少し強引に自分の顔に近づける。
「前から言っただろうが。スラルちゃんも俺様の女だ。俺様は自分の女を決して見捨てん。それに俺様の女は楽しく一生を過ごすことに決まっとるんだ。だからそんな下らん事を考えるな」
「下らない…か?」
「ああ。今のスラルちゃんは、ありえん妄想でぐだぐだ言ってるだけだ。そういやスラルちゃんは生まれた時から魔王だと言ってたよな」
「あ、ああ。我は…初めての『人』という種族の魔王だが、人であった記憶は無い。生まれながらの魔王だ」
スラルの言葉を聞いてランスは鼻で笑う。
「だったらスラルちゃんはガキみたいなもんだな。それも相当あたまでっかちのガキだ」
「な、何だと!? わ、我はお前の20倍以上は生きているぞ! そ、そんな我をガキ等と…」
「そういう所がガキなんだ。まあ人として生きてるのはほんの数年だから当然か」
ランスはスラルの頭を乱暴に撫でる。
「甘え方も無茶苦茶下手だしな。だが、一つ分かることはあるぞ」
「それは何だ。確かにランスは我よりも色々な事を知ってはいる。だが、我の頭脳ならばお前をも追い越すのもそう遠くは無い…」
「スラルちゃんは俺様に惚れてるって事だ」
「………え?」
文句を言おうとしたスラルの言葉が止まる。
「まあ俺様は当然な程にいい男だからな。スラルちゃんが惚れるのも当然だ。スラルちゃんはそういう感情を知らないから戸惑ってるだけだ」
「ほ、惚れる…? 我がか? いや、しかしそんな事が…」
呆然としているスラルを前にランスはニヤリと笑う。
「当たり前だろうが。普通の女は金でも貰わん限り、男と一緒に風呂など入らんし、セックスもしない。それにスラルちゃんも嫌じゃないだろ」
「………」
ランスの言葉にスラルは何も答えられない。
いや、どう答えればいいのか分からない。
「スラルちゃんは俺様の事が好きだから不安になるのだ。だがそんな不安なんぞ持つだけ無駄だ。俺様についてこれば間違いない」
「…お前という奴は。何処までも自分本位で自信過剰な奴だ」
少しの間呆然としていたスラルだが、突如としてランスの鼻を摘む。
「こら、何をする」
「年上の女に偉そうな事を言うからだ。我は臆病だったから、他の者の気持ちには敏感なのだ。だが…自分の事に関しては本当に分かってなかったのだな」
そして寝そべるランスの首の後ろに手を回すと、ランスの唇を奪う。
それだけでなく、普段は受身のスラルが自ら情熱的にランスと舌を絡める。
少しの間唇を重ねていたが、スラルの唇がランスの口から離れる。
「随分と情熱的だな。スラルちゃん」
「お前のことだ。どうせ同じような事を他の女にも言ってるのだろう」
「何の事だ」
スラルはそんなランスに微笑む。
「お、なんだ。スラルちゃんもそういう風に笑えるんだな。年相応というか何と言うか」
「我はお前の20倍以上は年上だといっただろう。そんな女に年相応とはどういう事だ」
「スラルちゃんが何年生きようと、人間としてはガキだと言ったんだ。まあスラルちゃんも吹っ切れたようで何よりだ。じゃあ…」
そこでランスの顔がいやらしく変わる。
「早速するか」
「お前はそれっばかりだな…だが本当に今更だ。だったら…我も思いっきりお前を求めるとしよう」
スラルは既に大きくなっているハイパー兵器に手を添えると、それを自分の中へと包んでいく。
「ランス…我はこういう事は滅多に言わない。だから…聞けるのを光栄に思え」
ランスの胸に手をつき、何とか体をおこしたスラルが微笑む。
「我はお前が好きだ」
その吹っ切れたようで優しい微笑みは、ランスがこれまで見たスラルの表情の中でも飛び切りのものだった。
定期的にこういうシーンを入れないと息が詰まってしまう
しかしランスの恋愛って本当に難しいなあ…