「ラーンスあたたたーーーーーっく!!」
ランスの必殺の一撃がモンスター達を吹き飛ばす。
相変わらずの威力なのだが、ランスの顔は全く晴れない。
「うがーーーー! なんだここは! 何て面倒臭い奴等ばかりが出て来るんだ!」
「『かちかち山』というダンジョンなのだが、文字通りの『かちかち』のモンスターが出る訳か。下らんな」
そういうスラルだが、飛んできた砲撃を何とか避けている状態だ。
「うざってえな! ただただ硬い奴はひたすら面倒くせえ!」
レイは襲ってくるサイクロナイトや俺は鉄壁、オウゴンダマを相手に辟易している。
「こうまで硬いと私に出来る事が少ないな!」
エドワウも剣を片手に何とかモンスターを倒そうとするが、その持っている剣は刃毀れこそしないが、切れ味に関してはそこまで高くは無い。
b・i・i・mサーベルを片手に何とか耐えている状態だ。
「よりにもよってコンタートルみたいなモンスターも出て来るとはね!」
レンはコンタートルから放たれる弾丸を防ぎながらぼやく。
その背後にはお町が電撃を放っているが、いかんせん数が多い。
それほど山のように襲ってくる硬いモンスターの前にはまさに焼け石に水だ。
「スラルちゃん! アレをやるぞ!」
「それしか無いか。ソウルブリンク!」
スラルの肉体と魂が分離し、その魂がランスの剣の中へと入っていく。
ランスは分離した人形を拾ってから仕舞うと、襲ってくるサイクロナイトの無数の蛇腹剣をその剣で弾く。
「邪魔だ!」
ランスはそのままサイクロナイトを叩き斬る。
力任せに放たれた斬撃はサイクロナイトの盾を斬るというよりは砕いていく。
そのままサイクロナイトの鎧に剣を突き刺し、それを回転させる事でサイクロナイトを絶命させる。
倒れるサイクロナイトの死体をそのままに、ランスは巨鉄ちゃんが放った砲撃を別のサイクロナイトを盾にする事で逃れる。
ランスはそのサイクロナイトに剣を突き刺したまま、巨鉄ちゃんへと突っ込んでいく。
鋼と鋼がぶつかる鈍い音と共に、巨鉄ちゃんが倒れる。
ランスはそこを襲い掛かってきた鋼箱を一刀の元に斬り捨てると、
「ラーンススラーーーーッシュ!」
剣をそのまま横一文字に振るう。
するとそこからランスアタックよりも小さなオーラが飛んでいき、そこに陣取っていたコンタートルの真っ二つに斬り裂く。
(あの時完成してなかった技だけど…何だかんだ言って使いこなしてはいるか)
パイアールの依頼を受け、魔人と戦った時にランスが編み出した技。
いや、あの時はランスが適当にやっていただけで技とも言えない様な技術だった(ランス視点)。
だが、それからランスは密かに特訓をしていたのは分かっていた。
何だかんだ言って、己が強くなるという事をランスは全く否定しない。
必要ならば、どれだけレベルアップを重ねるのも苦行では無いと考えている。
ましてや今回はランス付きのレベル神である、クエルプランからの褒美が有るとすれば尚更だ。
(そして…改めてランスの剣の中に居て分かるけど、本当に強くなっている)
改めて感じるのは、ランスの剣は異質だという事だ。
これまでスラルが見てきた剣の使い手で一番なのは間違いなく藤原石丸だ。
あの剣技は、魔人ガルティアやランスよりも技術的には一枚も二枚も上手だろう。
だからこそ、JAPANでランスと石丸が戦った時も、石丸はランスに対して優位を保っていた。
ただ、スラルという存在がランスの剣に居たからこそ、実質的な2対1の状態だからこそランスは負けなかった。
勿論ランスはそれを卑怯だのと考えてはいない。
ランスにとって戦いとはどんな手段をとろうが、最終的に勝てさえすれば過程などどうでもいいからだ。
(技術的には及ばない…いや、これは剣の質が対極的と言うべきだろう。力のランスと技の石丸…そんな単純な話でも無いか)
剣については全く素人な自分が言っても仕方が無いと言わんばかりにスラルは苦笑する。
それでも魔法の集中力を絶やす事は全く無い。
それだけの経験と力がスラルには存在している。
「うざってえ!」
レイはコンタートルから放たれる石の塊を苛立った様子で蹴り返す。
勿論上位モンスターであるコンタートルが放った一撃なのだから、凄まじい威力があるはずなのだが、それを全く感じさせぬ勢いでレイは次々に石の塊を蹴っていく。
不思議な事に、その蹴り返された石の塊はレイを傷つける事無く、正確にモンスターの体に突き刺さっていく。
燃える石が体に突き刺さったモンスター達は悶えながらもレイに向かって行く。
レイは獰猛な笑みを浮かべると、そのままモンスター達に向かって突っ込んでいく。
そして本来の歴史において、GL期を好きに生きてきたという実力をいかんなく発揮している。
その拳が鉄箱を頭部を粉砕し、足が俺は鉄壁を蹴り飛ばす。
襲い来るサイクロナイトの蛇腹剣を意外なほどに華麗に避けると、そのまま倒れている俺は鉄壁を拾い、勢いよくサイクロナイトに投げつける。
サイクロナイトは放たれた俺は鉄壁を盾で防ぐが、レイの膂力で投げつけられた俺は鉄壁とぶつかった振動でたたらを踏む。
そのサイクロナイトにレイは一直線で突っ込んでいき、そのまま跳び上がるとサイクロナイトに強烈な飛び蹴りをぶつける。
サイクロナイトの頭部はその一撃でひしゃげ、そのまま倒れて動けなくなる。
そんな相手を無視して、レイは次の獲物を目指して走り始める。
「ランス! 出来た!」
ランスとレイが暴れまわっていた時、ついにスラルの魔法が完成する。
「よーし! ぶっ放すぞ! おいレン! 男はどーでもいいから、お町だけは守り通せよ!」
「分かってるわよ!」
ランスは久しぶりの感覚に思わずその口に笑みを浮かべる。
スラルとの合体技とも言うべきこの技は、ランスとしては中々気分のいいものだった。
この技を放った時の爽快感は、ランスをして戦闘の中でその気分を良くさせるほどだ。
「がははははは! 貴様等全員これで皆殺しだ! スーパーウルトララーンスアターーーーーック!!」
「雷神雷光!」
そして必殺の一撃が放たれ、周囲にランスの放った必殺のオーラと、スラルの魔法が合わさり、周囲が雷の嵐に覆われる。
「おわっ!?」
レイもそれには驚愕して、急いで雷の嵐から逃れる。
「これは…!?」
レンは雷の嵐を見ながら呆然とする。
それは以前に見た技よりも遥かにパワーアップしている。
「すごい…」
お町は呆然と雷が魔物達を蹂躙する所を見ていた。
雷はまるで生き物の様に…いや、間違いなくその雷は獣の牙に変わり、魔物達を食い散らかしていく。
(これこそ…力だ…)
それはお町が望んでやまない、絶対的な力。
雷の獣は強固な魔物達も噛み砕き、打ち砕いていく。
その姿こそまさに、お町の理想の妖怪王の姿だった。
「がはははは! 俺様の敵では無いわ!」
そして残ったのは、まさに死体死体死体…死体の山だ。
魔物達は雷の獣に噛み砕かれ、五体満足の死体など何一つない。
「凄まじいな…」
エドワウは転がる無数の死体を見て戦慄する。
この力こそまさに人ならざる力…魔人の力と言われても信じてしまう。
「で、スラルちゃんはどうだ。まだ大丈夫か」
「いや…流石にアレを使った後は厳しいな。簡単な魔法の炎の矢や氷の矢が使える程度か。レーザー系や火爆破も厳しいな」
「ふーん、そうか。じゃあ少しペース落とすか」
ランスとしては結構な速度でダンジョンを攻略しているつもりだが、ゴールまでは後は半分といった所だろうか。
それもハニーキングの言葉が正しければの話ではあるのだが、それでもランスとしても手ごたえは感じていた。
懐からスタンプカードを取り出すと、大凡半分ほどは消化している。
(それにそろそろあの道具を使うのもいいかもしれんな…)
ランスの顔にイヤらしい笑みをスラルは剣の中から見ていた。
(これはしばらくの間剣の中に居るのもいいかもしれんな。疲れている状態でランスとのセックスは気持ちいいけど負担も凄いし…)
明らかにその顔がエロ関係なのを見て、スラルは大きくため息をつく。
気持ちいい事は気持ちいいが、流石に連日連夜冒険の後にセックスとなると非常に疲れる。
むしろ何でランスは同じ様な事をしながら、夜もこんなに元気にセックスが出来るのか本当に不思議だ。
「よーし、とっととここをクリアするぞ」
「そうね。流石に今回は疲れたわね」
ランスの言葉にレンが同意する。
レンとしても、今回は著しく魔力を消耗したので休みたかった。
「…手と足が痛え」
そして戦いが終わったからか、レイは今になって手と足に痛みを感じて来た。
戦闘中はアドレナリンが全開だったので気にならなかったのだが、サイクロナイトを始めとしたとにかく硬い敵を殴っていたので、拳を痛めてしまった。
ただ、それでも拳を痛めるだけで済むのは、レイがずば抜けた力を持っている証拠だ。
「やれやれ。流石にこれだけの硬いモンスターが相手だと私はあまり役に立たないな」
エドワウは苦笑しながら拳を痛めているレイにヒーリングをかける。
「…おい」
「何かな? 手と足が痛いと言っていたようだが」
「いや…何でもねえ」
そう言いながらもレイは面白くなさそうにしている。
実際レイとしては、男にヒーリングをかけて貰うよりは当然女にかけて貰う方がいい。
ただ、実際にそれを口に出す程でも無かった。
そんなレイを怪訝な顔で見ていたエドワウだったが、ランスの方に近づいていく。
「ランス殿。あなたの持つその剣はかなりの…いや、最上級の力を持つ剣だとお見受けするが、それは何と言う名の剣なのかな」
「あん?」
突然奇妙な事を言ってきたエドワウにランスは少々不機嫌になる。
ランスとしては、今日の夜にはどんなプレイをしようかと楽しみにしていたのに、それに水を差されたという感じだ。
勿論これは理不尽な事なのだが、残念ながらランスは本気でそう思っているので性質が悪い。
だが、
「そう言えば我も気になっていたな。これ程の不思議な力を持つ名剣だ。さぞかし名の知れた剣なのだとは思うのだがな」
スラルが口を挟んで来た事で、ランスも思わず自分の持つ剣を見る。
これは前にランスが悪魔から貰った剣だ。
自分が死んだ後には返却されるらしいが、ランスとしては自分が死んだ後の事など知った事では無いので、事実上生きている限り使える役に立つ剣でしかない。
「知らん。気にした事も無いな」
だからランスがそう答えるのは当然の事だった。
ランスは使えさえすればそれでいいので、特に武器に愛着を持つという事も無い。
魔人を相手にするのにはカオスを使うしかないし、そもそも魔剣カオスは『カオス』という盗賊の本名だ。
「…そうなのか。剣士としては気になる所なのだがな」
「そういうお前の持つ剣も中々不思議な剣だと思うのだがな」
本当に残念そうにしているエドワウに、スラルが話しかける。
「ああ…私のb・i・i・mサーベルか」
エドワウが自分の手に棒のようなものを握ると、そこから刀身が現れる。
ランスは改めてその剣を見るが、やはりリックの持つバイ・ロードと非常によく似ている。
リックの持つバイ・ロードは刀身が赤いが、エドワウの持つb・i・i・mサーベルは刀身がピンク色だ。
「切れ味はあまり良くないが、決して刃毀れはしないし、曲がる事も無い。一人で旅をするのには便利だよ。何しろ補給が必要無いからね」
「ほう…それも中々興味深いな」
スラルは己にとって危険なアイテムを収集し、宝物庫に仕舞っていた。
それ故に、宝物庫のアイテムが暴走し、大まおーなる奇妙な生命体が出て来たのはもう懐かしい思い出だ。
それ以外にも、色々なアイテムを収集し研究する…それがスラルのライフスタイルだった。
「じゃあ寄こせ」
ランスはエドワウからb・i・i・mサーベルを取り上げて、何度か素振りをする。
「使いづらいな。いらん」
そして無造作に放り投げるのを見て、エドワウは苦笑する。
「ランス殿と私では剣士としてのタイプが違う。使いづらくとも無理は無いさ」
「当たり前だ。俺様とお前ではレベルが違い過ぎる」
ランスは当然の様に胸を張って答える。
エドワウはそれに気を悪くする事無く笑う。
実際にランスとエドワウの間には、非常なまでの高い壁があるのをエドワウ自身が一番分かっている。
だからこそ、世界は広いという事をエドワウは改めて実感していた。
「しかしランスの剣の名前というのも気にはなるな。名剣というのは必ず名前があるものだからな」
スラルも知っているのは、魔人ガルティアが持っているハワイアンソードという名剣。
ランスの持つ剣はそれすらも上回る剣だ。
悪魔と取引したとは聞いたが、その詳細はランスに聞いても話してくれない。
一緒に居たと言うケッセルリンクも、その詳細は話してはくれなかった。
「ならば我がランスの剣に名前をつけてもいいか? ランスに決めさせるとスペシャルランスソードとかつけそうだしな」
「………スラルちゃんは俺様の事を何だと思っとるんだ」
「とりあえずネーミングセンスは最悪だという事は分かるぞ。語彙力に欠けると言えば良いか」
「何だとーーー!」
「当たり前だ。何がスーパーウルトラランスアタックだ。お前まさかそれが本当にかっこいいと思っていたのか?」
割と辛辣なスラルの言葉にランスは剣を勢いよく振る。
「はっはっは。我はお前の剣の中に居るから全く効果は無いぞ」
「スラルちゃん、久々に幽霊になったと思ったら随分強気になったな」
「当然だ。我は元魔王、本来であればお前よりも立場が上なのだ。お前があまりにも無遠慮なのだ」
ランスとスラルは掛け合いをしながら進んでいくと、スタンプ台を見つける。
「ようやく見つけたな」
「ああ。ここまで戦ったのなら、レベルアップもしていると思うからな。戻ったらレベル神を呼ぶのがいいだろうな」
今回のダンジョンは本当に厄介なダンジョンだった。
何しろ只管にモンスターが硬く、面倒臭いうえに、特に宝箱も見つからない。
本当に得る物が無いというダンジョンだった。
ランスはスタンプを押すと、その体が光に包まれて地上に戻る。
「あー疲れたぜ。流石に今日はもう寝てえ…だがその前に飯も食いてえ…」
流石のレイも地上に戻って来た事に安堵のため息をつく。
「私も疲れたな…しかし中々聖なるアイテムとは見つからないものだな」
エドワウもその顔には疲労が濃く見える。
「我は殆ど役にたてなかったがな…」
お町は自分の力不足に悩むが、そんなお町の頭をランスが少し乱暴に撫でる。
「そんなに焦るな。もう少しでっかくなってから強くなればいいだろ」
「そんなものか? 我は今力が欲しいのだがな…」
「まだまだガキだな。そんな背伸びしなくてもお前は強くなるから大丈夫だ」
「…知った風な事を」
ランスの言葉にお町は唇を尖らす。
如何にも不満満載と言った顔だが、ランスはあのお町がこんな顔をするのかくらいにしか思っていない。
(どうせ本当に強くなるからな。まあそれまでに俺様のモノにすればいいだけだ。あの目玉野郎には勿体無いからな、うん)
ランスは当然の事ながら未来のお町の事を知っている。
あの着物から毀れる程の巨乳に、あの強さ。
他の政宗の嫁とかいうのはやれたが、お町とだけはやる事が出来なかった。
なので当然ランスはお町を狙っている。
(まあ慌てる必要は無い。時間はある訳だしな)
「…お前、何かたのしそうじゃな。いや、邪悪な笑みと言うべきか」
「誰が邪悪だ。俺様は未来に向けてのプランを練っているだけだ」
勿論そのプランとはお町を自分のモノにするというプランなのだが、お町は勿論ランスがそんな事を考えて居るなど思っても居ない。
ランス達が家に戻っている時、
「はーにほー!」
突如として眩い光と共にハニーキングが現れる。
「うげ、ハニーキング」
そんなハニーキングにスラルは露骨に嫌そうな顔をする。
「おうハニワ。一体何の用だ」
大してランスは特に気にした様子も無く、ハニーキングに声をかける。
それは男に対して辛辣なランスからすれば、普通どころか何処か楽しそうにも見えるのにスラルとレンは違和感を覚えた。
「いやー、ランス君も頑張っているようだねー。だからそんなランス君にボクからの緊急ミッションを用意したよ。このミッションをクリアしたら、10000ハニーポイントを進呈するよ!」
「ほー。それは随分と奮発したな」
「…いやハニーポイントって何よ。ハニーキングと何の怪しい取引をしてるのよ」
ランスとハニーキングの言葉に、スラルは剣の中から半眼で二人を睨む。
今思えば、ランスとハニーキング、この二人が揃って何かが起きない訳が無いのだ。
絶対よからぬことを考えているとは分かるが、それを阻止できるとも思えない。
「スラルちゃんにはまだ関係無いな。いや、後で嫌でも分かるから楽しみしておけ」
「何!? ランスは一体我に何をする気なのだ!?」
「そんな事はどうでもいい。で、緊急ミッションとは何だ」
「フッフッフ…それはねえ…救出作戦だよ。ランス君の知り合いがあるダンジョンに囚われてるんだ。それを救出するのが次のミッションだよ」
ハニーキングが杖を振るうと、ランスの持っているスタンプカードが光り始める。
ランスがそれを見ると、次のダンジョンを示す所に印が浮かぶ。
「それが次のダンジョンだよ。で、そこには制限があってね…ランス君しか行く事は出来ないんだよ」
「何、俺様だけだと」
「そう。ランス君以外が行っても即座に地上に送り返されるんだよ。だからきちんと準備はしておいた方が良いよー」
「それよりも囚われている俺様の知り合いとは誰だ。男なら俺様は行かんぞ」
ランスの言葉にハニーキングはうんうんと頷く。
「それは勿論ランス君の知り合いの女の子だよ。今日はもうダンジョンは開いてないけど、頑張ってねー」
そう言ってハニーキングの姿が消えていく。
ランスは手にあるスタンプカードを見て、
「俺様の知り合い…誰だ?」
「さあな…まさかカミーラ何てことは無いだろうしな。まあ行けば分かるだろう」
「そうだな。取り敢えず今日は戻るか」
ランス達は魔法ハウスへ向かって歩いていくと、その魔法ハウスが何か騒がしい事に気づく。
「誰かいるわね」
レンの目が細まり、即座に戦闘態勢に入れるようにする。
レイは楽しそうに笑うと、同じように戦闘態勢に入る。
「カミーラがいるはずだが…いや、何処かに出かけててもおかしくは無いが。しかし誰だ」
スラルは今日は魔力を使い切っているため、生憎と戦闘では役には立たない。
だが、カミーラが居るのだから曲者では無いとは思うし、何よりあのハニーキングが放置しているのだ。
決して悪い事にはならないだろうとも思っている。
ランスが魔法ハウスに入ろうとした時、その魔法ハウスの扉が開く。
そしてそこからゴミ袋を持ったパレロアが出て来る。
「あ。パレロア」
「あらランスさん。おかえりなさい」
パレロアは微笑んで一礼すると、
「私はちょっとこのゴミを処分してきますね。皆中に居ますよ」
そのまま複数のゴミ袋を持って歩いていく。
「…何だありゃ」
臨戦態勢だったレイは、出て来たのが女、しかもランスに親しそうな顔をしていたのを見て毒気が抜かれる。
「来てたのはパレロア達か」
レンはそのまま戦闘態勢を解除する。
彼女がここに居るという事は、ここに居るのが誰なのかを理解したからだ。
「…いや、当然の様に振舞っているが、一体彼女は誰なんだ? いや、それ以前にどうしてこの地に人間が…?」
エドワウが困惑したように声を出す。
彼からすれば、こんな所に人間が居るという事自体が不自然だ。
そもそもランス達と出会った事すらも奇跡的な確立なのだ。
「居るのはケッセルリンクか。魔人四天王って暇なのか」
ランスはそのまま魔法ハウスに入ると、そこには慌しく動いているメイド達が居た。
リビングのソファには相変わらずカミーラが腰掛けているが、その側にはランスも知っているカミーラの使徒が立っている。
(あれ? あいつ何処かで見たことがあるような…)
水色の髪をした美少女を見て、ランスは頭を捻る。
(えーと確か…あ、そうだ! カミーラの側に可愛い子が一人居たんだよな。あ、でも途中から見なくなったな…)
ランスが知っているカミーラの使徒の内、七星はランスによって倒された。
使徒アベルトは魔人となった結果、ランスによって倒され、その魔血魂はゼスで保管されているはずだ。
実際にはAL教が保管しているのだが、ランスはその事を知らない。
そしてカミーラの側に居たのが、この水色の髪の少女だ。
「「「お帰りなさいませ、ランス様」」」
ケッセルリンクの使徒であるシャロン、エルシール、加奈代が一礼する。
パレロアは今さっきすれ違い、残っているのはあのバーバラという使徒なのだが、彼女の姿は見えない。
「おう、ケッセルリンクは上か?」
ランスの言葉にメイド達は皆一斉に落ち込んだ顔をする。
「あ、そうだ。俺様の知り合いがダンジョンに囚われてると聞いたが、もしかしてそれはケッセルリンクの新しい使徒か? 確かバーバラとか言ったな。少し間の抜けた奴」
「勝手に私を間抜けキャラ扱いするな!」
ランスの声が聞こえたのか、バーバラが些か乱暴に扉を開けながら、バケツと雑巾を持って1Fに下がってくる。
「あん? お前まで居るのか。だったら囚われた奴って誰だ」
知り合いが囚われている、と聞けばそれくらいしか思い浮かばないのは無理は無い。
「ケッセルリンクだ」
聞こえてきたのはメイド達とは別の方向であり、女の声。
それは即ちカミーラ以外に他ならない。
「捕らえられたのはケッセルリンクだ。些か信じられんがな」
「…はあ?」
カミーラの言葉には流石のランスも眉を顰める。
何しろケッセルリンクは魔人四天王の一人で、ランスとは何度も協力して戦ったので、その強さは分かっている。
それこそランスが知っている魔人の中ではカミーラやノスに匹敵する存在だ。
そのケッセルリンクが囚われるなど、到底信じ難い。
「何を言おうがそれが事実だ。尤も、私はそれを直接見た訳ではない。だが、七星が私に嘘をつくはずが無い。即ちそれが事実という事だ」
「あのケッセルリンクがね…到底信じられないけど、カミーラがそう言うのなら本当か…」
スラルも流石に唸るしかない。
それこそまさに「あのケッセルリンクが」という感じなのだから。
が、完全に置いてきぼりのレイ、エドワウ、お町は完全に展開について行けない。
「いや、どういう事だよ…」
ぽつりと呟いたレイの言葉だけが空しく響き渡った。
10月17日を過ぎれば忙しいのは何とかなりそうだけど、そこから年末だから別の意味で忙しくなりそう
早く投稿ペースを戻したいです…