「ほう、そんなアイテムがあるのか。やはり世界は広いな」
スラルはシャロンから話を聞きながら頷いている。
剣の中なので姿は見えないが、それはもう癖のようなものだろう。
「ケッセルリンクがなあ。まあいい、俺様が華麗に助けてやって、お礼をズバッと貰うとするか」
「あはは。ランスさんは何時もズバッとやってますから、お礼としては弱いんじゃ無いですかー?」
久しぶりの美味い飯には流石のランスも機嫌が良い。
そんなランスの器に御代わりを盛り付けながら加奈代が笑う。
「ほら、やっぱりここはランスさんの部屋に隠してあったエッチな下着をですね…」
「がはははは! あいつはスタイルが良いからな。ああいう格好も似合うしな」
「流石ランスさん! 話が分かる! で、ここだけの話ですけどね。私が作ったケッセルリンク様専用のランジェリーが有りましてね…」
「ほー。それは勿論エロいんだろうな」
「それは勿論! 程よく上品でそれでいてエロチックな…いたっ」
ランスと盛り上がる加奈代の頭をバーバラが軽く叩く。
「ケッセルリンク様は私たちの主だろうが! 何でその使徒が率先して人間に主を売るような真似をするんだ!」
「勿論ケッセルリンク様が拒否したら私も諦めますよー。まあ拒否するとは思ってませんけど」
「こいつは…」
バーバラは苦い顔で加奈代を見ながら、空いている皿に料理を盛り付ける。
その盛り付けた料理に食らいつくのはレイとエドワウだ。
「いや、マジでうめぇな…こんなの食ったのは流石に初めてだ」
「ここまで材料が揃う事が無いからな。しかも彼女達には相応の技量がある。本当にこれは素晴らしいことだ」
2人は盛られる料理を次から次に胃に収めていく。
今の時代では到底考えられない贅沢だ。
「で、お前たちはこいつら…魔人の使徒とも知り合いって訳だ」
肉を片手にレイが楽しそうな目でランスとレンを見る。
「そーだ。ぜーんぶ俺様が頂いた」
ニヤリと笑うランスの頭をバーバラが小突く。
「私は関係無い!」
「どーせ時間の問題だ。だからいいんだ」
「絶対無い!」
プリプリと怒りながらバーバラは次の料理に取り掛かる。
この調子では、自分達が食べる分も無くなってしまいそうだとため息をつく。
「使徒か…で、こいつらも当然そうなんだよな」
そしてレイが次に見たのは七星とラインコックの2人だ。
「ええ。私達はカミーラ様の使徒です。そして…レイ、と言いましたか。あなたを捕獲しに来ました」
「ほう。おもしれえじゃねえか」
七星の言葉にレイは獰猛な笑みを見せる。
「ランス殿、構いませんね」
そんなレイを無視して七星はランスに話しかける。
「男がどうなろうが俺様の知った事では無い。好きにしろ」
「それを聞いて安心しました」
ランスの言葉を聞いて七星は微笑を浮かべる。
勿論、ランスの言葉など無くてもレイを捕えるというのは魔王の命令なので絶対だ。
しかし、今手を出す訳にはいかない。
カミーラの楽しみはランスがこのダンジョンを攻略して強くなる事。
そのためにはこの男の力も必要となるだろう。
あくまでもカミーラが優先、それは使徒として当然な事だ。
「レイを捕える、か。それで魔人が動いていた訳か」
魔人が何故こんな所に来るのか…スラルはそれが疑問だったが、どうやら魔王の命令でレイを捕えに来たようだ。
それならば、カミーラが動くのはある意味納得できる。
ランスでは無くとも、強い者を探して狩るのがカミーラの趣味の一つだ。
(まあランスが動いていると察知したのだろうが…だとすると、情報源はレキシントン以外に無いか?)
いくらなんでもこれ程早くに自分達を見つけられるなんて考えられない。
だとすると、あのレキシントンからの情報を得たと考えるのが自然だ。
(レキシントンはともかく、あの使徒は油断がならない感じがしたからな…)
全裸の使徒…確かに変態ではあるが、油断が出来ないタイプだ。
あの飄々とした態度の中には確かな鋭さがある。
(ただ…あの使徒は本当に魔人レキシントンのためだけに動いている感じが凄かったな。主が楽しければそれでいいタイプなのは有難いな)
ただ、あの二人の使徒には悪辣さが感じられなかった。
女の方は分からないが、男の方は楽しさを優先していたような気がする。
(しかしそれが何故カミーラに情報を与えたのか…勿論私の想像でしかないし、真実は違うかもしれないが…)
カミーラがレキシントンから情報を得たと言うのはスラルの想像だけだ。
だが、それ以外にカミーラがこんなにも早く特定の人間を探すことが出来るなどありえないと考えるのも普通だ。
「ランス様。ケッセルリンク様の事、お願い致します」
スラルが考え事をしていると、神妙な様子でシャロンがランスに頭を下げる。
「構わんぞ。まあ掴まってあたふたしてるあいつを見るのも面白そうだしな」
ケッセルリンクは常に凛としており、カラーだった頃から取り乱すところをあまり見た事が無い。
カラーの間でもファンが多く、皆からも慕われていた存在だ。
女性にモテるタイプの女性と言えば良いのだろうか。
「お前ケッセルリンク様に向かって…」
ランスの言葉にバーバラは剣呑な目を向けるが、ランスは全く意に介さない。
「まあ俺様なら余裕だな。がはははは!」
何時もの様に笑うランスに、バーバラ以外のケッセルリンクの使徒達は安心したように笑う。
その態度もまた、バーバラにはやはり理解は出来なかった。
深夜―――
「ねえカミーラ様…」
カミーラの足元で座っていたラインコックがカミーラを見上げる。
「どうした」
「うん…あの男が本当にカミーラ様が探していた人間なんですよね…」
「ああ。このカミーラに無礼を働いた男…そしてこのカミーラに傷をつけた人間だ」
「カミーラ様に傷を…!?」
ラインコックはカミーラの言葉に思わず目を見開く。
それはカミーラが人間の男に傷つけられたという驚愕、そして偉大な主を傷つけたという人間への怒りが入り混じっている。
「そ、それなのにあんな奴を使徒にしようとしているんですか?」
その言葉は使徒として言ってはいけない言葉だったのかもしれない。
だが、それでもラインコックは主にそう聞いてしまった。
言ってからラインコックは背筋が凍るが、幸いにもカミーラは薄く微笑むだけだ。
「そうだ。ランスはこのカミーラを退け、抵抗した。だからこそ…私がこの力で屈服させるのだ。魔人では無い…このプラチナドラゴンのカミーラの力でな」
ラインコックはカミーラが『魔人』としてでは無く、『ドラゴン』としての部分を前面に押し出しているのは勿論分かっている。
だからこそ、カミーラは強く美しいのだ。
「だから…無敵結界も使わないんですか?」
「必要無い…無敵結界の力で奴を屈服させ、何がドラゴンだ。奴はこのカミーラが正面から打ち砕くのだ。それ以外では奴は絶対にこのカミーラには傅かぬ」
カミーラもまたランスという人間を理解していた。
このまま無敵結界にモノを言わせても、ランスは絶対に納得はしないだろう。
無敵結界を無しで戦ってもランスは納得はしないだろうが、これは最早カミーラのプライドの問題だ。
「で、でも…あんな男なのにカミーラ様が使徒にしようとするなんて、ちょっと信じられなくて…そ、その、ごめんなさい…」
ラインコックはランスが消えていった方向を見る。
勿論そこに居るランスの姿は見えない。
だが、あの男が何をしているかは見なくても分かる。
ラインコックから見れば、ランスは下品で醜い人間でしかないのだ。
その人間が魔人の使徒と対等に話し、そして今その体も味わっている。
それは使徒からすればとんでもない事なのだ。
「構わぬ。だが、ランスはこのカミーラが絶対に打ち砕く。誰にも邪魔はさせぬ…例えそれが魔王であったとしてもな」
そう言うカミーラの顔には確かな自信に満ち溢れていた。
そんなカミーラの顔を見て、ラインコックはうっとりした顔で興奮していた。
カミーラが楽しそうにしているのを見る事、それがラインコックの何よりの至福の時だった。
そしてランスの部屋―――そこではランス達がメイド達を相手にしていた。
「いい具合だぞシャロン。使徒になってもお前の体は変わらんな」
「い、言わないで下さい…」
ランスの言葉にシャロンは恥ずかしがりながらも、満更では無い顔をしてる。
白いガーターとストッキングだけという扇情的な格好をしながら、シャロンはランスの攻めに必死に耐えていた。
特段耐える必要も無く、ランスにされるがままにされるのも勿論良いのだが、こうした方がランスが喜ぶという事を理解しているため、あえてそうしている。
『ケッセルリンクは俺様が助ける。だからお前達にはその報酬を貰おうか。勿論先払いでだ』
そう言ってランスが笑った時、それに反発したのは当然バーバラだ。
ランスを卑怯者と詰り、反発していたのをシャロン達は何とか宥め、シャロン、パレロア、エルシール、加奈代の4人でランスの相手をする事になった。
激しく突かれるたびに枕を握るシャロンの力は強くなる。
それと比例するように、ランスの腰に巻かれた足の力も強くなる。
「いやー、やっぱりシャロンさんって凄いですね。ランスさんの望みを完全に叶えてますねー」
それをニコニコとした顔で見ながら、加奈代はパレロアの肩をつつく。
「ランスさんはこういう所では子供っぽいですから…ああいう風に言うのが癖になってるのかもしれませんね。それに合わせるシャロンさんも凄いですけど」
パレロアは官能的なため息つき、必死で耐えているシャロンを見て頷く。
メイド達はランスに誘われれば当然断らない。
ランスとケッセルリンクに命を救われ、無駄に失うはずの人生をこうして生きながらえている。
勿論今の時代が辛い時代なのは分かってはいるが、こうして全く変わっていないランスを見て安心もする。
「ランスさんは素直じゃない人ですから。そこも良い所だと思えるくらいには付き合いも長いですから」
エルシールも楽しそうにシャロンを体を味わっているランスを見て苦笑する。
「あんな事を言わなくても付き合うんですけどね…」
「それをあえて口に出すのがランスさんですから」
まるで子供のような態度だが、そこもまたランスが一人の人間だという事を認識できる部分だ。
女性の好意には敏感なようでいて結構鈍感。
そんな部分も見ている分には中々面白いものだ。
「がはははは! そろそろいくぞ! とーーーーーーっ!」
ランスの動きが激しくなると同時に、二人は絶頂を迎える。
シャロンは上気した顔ととろんとした目をランスに向けて微笑む。
「いかが…でしたか?」
「うむ、いいぞ。使徒になってから結構冷静になったみたいだが、セックスの時は昔のままだな」
「女性に対して言う言葉じゃありませんよ」
シャロンは笑ってランスの頬を撫でる。
ランスの体がシャロンから離れ、ハイパー兵器が引き抜かれる。
引き抜かれた場所から、大量の皇帝液が溢れる感覚にシャロンは身を震わせる。
「綺麗にしますね」
そんなシャロンに加奈代が近づき、ティッシュと新しいタオルで身を整える。
「ありがとう、加奈代」
「いえいえ、シャロンさんの裸も見れて眼福ですから」
礼を言うシャロンに対し、加奈代はさも楽しいと言わんばかりに笑って見せる。
「なんだお前。相変わらず女が好きなのか」
「いやー、そもそも周りに人間の男性が居ませんから。男の子モンスターの裸を見て喜ぶ趣味は無いですしねー」
「それもそうか」
加奈代は男よりも女が好きという性癖を持っている。
それは自分がランスと一緒に旅をしてから発覚した性癖で、正直戸惑いもした。
だが、幸いにも加奈代はバイだったので、何も問題無くランスも彼女を受け入れた。
「お前も俺様がいなくて寂しかっただろう。じゃあ久々にしっぽりといくか」
「それもいいですけどねー。先にパレロアさんとエルシールさんからでお願いします」
「む、俺様とするのが嫌だとでも言うつもりか」
ランスは少しムッとしながら加奈代の胸を揉む。
そんあランスに加奈代は微笑みかけて、
「いえいえ。ランスさんとエッチをしてとろとろになる二人を見たいなーと思いまして」
「ほー、それもいいかもしれんな。いや、それがいい気がして来たぞ」
ランスがパレロアとエルシールを見ると、スタイルの良い二人の裸体がランスをその気にさせる。
シャロンと同様、既にガーターとストッキングだけの姿になった二人を見てランスのハイパー兵器に力が灯る。
「よーし、次はパレロアだな。こっちに来い」
「ええ、いいですよ」
パレロアは苦笑しながらランスの側へと向かう。
そしてランスとシャロンの体液に塗れたハイパー兵器を、躊躇う事無く口に含んで綺麗にする。
ランスは上機嫌にパレロアの奉仕を味わう。
ただ単純に綺麗にするという行為だが、それでも気持ちの良いものは気持ちが良い。
「もういいぞ。で、お前はどうしたい」
「え…」
ランスの言葉にパレロアは少し戸惑う。
パレロアは人妻だったが、夫とのセックスは淡泊だった。
勿論ランスと比較する方が間違ってはいるのだが、何しろ彼女は夫とランスしか知らない。
そしてランスに対してはひたすら受け身のセックスをしてきた。
「じゃ…じゃあ…私が上になってもいいですか?」
「おー構わんぞ。今日はお前が好きに動け」
ランスが仰向けになるのを見ると、パレロアは意を決したようにランスの上に跨る。
そのままハイパー兵器を体に収めると、熱い吐息を吐く。
「おー…何と言うか、お前がそういう顔をすると凄いエロいな。何というか人妻のエロさと言うか…」
「ど、どうせ私は皆より年上っぽく見られます」
「がはははは! 拗ねるな拗ねるな。そんな所も可愛いぞ」
恥ずかしそうにランスを見るパレロアに対し、ランスは下から軽く腰を動かす。
あくまでも今回はパレロアの自主性に任せる様に、緩やかな動きだ。
パレロアにはそれで十分なようで、ぎこちないながらも腰を動かし始める。
「もうちょっと激しく動いてもいいと思いますよー。こんな風に」
「きゃっ! か、加奈代…」
そんなパレロアの動きを見ていた加奈代がパレロアの後ろに回ると、その大きな胸を掴む。
その刺激でパレロアの動きが少し激しくなる。
「ランスさんが満足しないと、ケッセルリンク様を助けてくれませんよ。だからきちんとしないと…」
加奈代の言葉にパレロアは心の中で苦笑する。
「そ、そうですね…わ、私達で何とかランスさんを満足させないと…」
パレロアは意を決して、腰の動きを激しくする。
勿論それは彼女視点の話であり、ランスからすればその動きもたどたどしい。
だが、それもまたランスにとっては丁度良いスパイスだ。
ランスがパレロアの動きを見てニヤニヤしていると、その視界にエルシールが入ってくる。
「む、どうしたエルシール」
「いえ…私だけが放っとかれるのも何か嫌で…ですので失礼しますね」
「むぐっ」
エルシールはランスの唇に己の唇を重ねる。
そのまま二人は濃厚に舌を絡め、互いに唾液を交換しあう。
「ランスさん。絶対にケッセルリンク様を助けて下さいね。もし助けてくれなければ、私達は死んでしまうかもしれません」
「何を言っている。ケッセルリンクは俺様の女だ。だから当然俺様が助ける。当たり前の事を言うな」
「それを聞いて安心しました。だから…今宵は私達を好きにして下さいね」
エルシールはそのまま微笑むと、更に濃厚に唇を重ねてきた。
こうしてランスは朝までメイドハーレムを楽しんだ。
そして次の日―――ランスは一人ダンジョンへと入っていた。
が、その顔は非常に難しい。
「だーーーーー! 鬱陶しい! 死ねーーーーーっ!」
「ほっほっほ」
ランスの一撃が微笑み男を霧散させる。
その強烈な一撃は、物理攻撃が効きにくいはずの微笑み男すらも切裂く。
「何だここは! 面倒臭い奴ばかりではないか!」
昨日戦ったモンスターは硬いモンスターばかりだったが、ここに居るのは物理攻撃が通りにくいモンスターばかりだ。
「ふーむ…しかし本当に不思議な所だ。何故こんな所に森のようなダンジョンが」
スラルは剣の中から周囲を見渡す。
このダンジョンが変なダンジョンだとは分かってはいたが、本当に意味が分からない。
「しかしランス…お前、マッピングが壊滅的に下手だな」
「やかましい」
スラルはランスが持っている地図を見て呆れた声を出す。
そこには何が書いてあるのか全く分からない、間違いなく誰もが地図とは言わない物がある。
ランスも普段からマッピングはシィル、又はあてな2号に任せていた。
ランス自身は自分のマッピングがアレだという事は自覚はしていない。
何故ならそれがランスという人間なのだから。
「フン、だったらこれを使えばいい」
ランスが取り出したのは、何かの香炉だ。
「よーし行くぞ」
そしてその香炉に火を灯すと、そこから地図が現れる。
「おお…これは凄いな」
それだけで完全な地図が現れる。
「これなら文句は無いだろ。で、このあからさまに怪しい部分を回っていくか」
ランスは地図を見ながら歩き始める。
「ふーむ…しかしランス。お前は一人でも危なげなくこなしていくな」
スラルはランスの行動を見ていたが、その行動は本当に見事な物だ。
大雑把なように見えるが、その実慎重だ。
ランスが冒険が好きなのと比例して、ランスは凄まじい冒険スキルを持っている事をスラルは理解した。
だからこそ、ランスは冒険という行動に心惹かれるのだろう。
「ランス、お前は自分の剣には愛着は無いのか?」
「剣? そんなの適当に使えればいいだろ」
ランスは特に持ち物に愛着は無い。
どんな貴重品だろうが、いらなければ売ってしまう。
その所為でリーザスとヘルマンの戦争では苦労をした程だ。
カオスだけは魔人と戦うのに必要な武器なので持っているという程度だ。
「そうか…まあお前らしいな。で、我はこの剣の名前を考えたのだが…いいか?」
「好きにすればいいだろ。俺様は使えれば何でもいいからな」
ただ、ランスとしてはこの剣は中々のお気に入りだ。
魔人を相手にしない分には十分すぎる程の切れ味を持っているし、重さもランスには丁度良い重さだ。
テンションで切れ味が左右されるカオスよりも、この剣の方が安定感はあるし、何よりもスラルとの合体技がランスもお気に入りだ。
剣で斬ると言うよりも、鈍器で叩き付けるような使い方にはなるが、ランスの力ならばそれで十分なのだ。
「肝心の名前なのだが…『ハデス』というのはどうだ」
「ハデス? なんだそりゃ」
「我が魔王であった時に読んだ文献の中に存在した名前でな…異界の神の名前だ」
「神だあ?」
「そうだ。死の神の名前だったはずだ。名前が無いのであれば、我はこの名を名づけたいのだが」
「好きにしていいぞ。俺様は別に構わん」
ランスの言葉にスラルは少し嬉しそうに笑うが、生憎とそれは剣の中だったためランスからは見えない。
「で、ランス。一体ここはどうすればいいのだ? ケッセルリンクが捕らわれているとの事だが、魔人を捕える程の罠とは信じ難いのだが」
「特別なアイテムを三つ揃えればいいんだと。それが何なのかは知らんが」
ハニーキングの言葉によると、三つのアイテムを揃え、それをどこかに嵌めこむとケッセルリンクを助けられるらしい。
だが、ハニーの事だからそれが本当かどうかは全く分からない。
「あ、モンスターが来たな」
再びランス達の目の前にモンスターが現れる。
「今度は叫び男か。いい加減飽きて来たぞ」
物理攻撃が効きづらい相手ばかりが嫌がらせのように出て来る。
その事実にランスもいい加減にゲンナリしてきた。
「ランス、お前の技で効率良く斬る事は出来ないのか」
「こんな奴など俺様の必殺技が決まれば一撃だろ」
ランスは必殺技の体勢を取るが、
「いや…もしこの先本当にお前が魔人と、そして魔王と戦うならこの程度の相手は一撃で倒せた方が良いのではないか?」
「だから一撃だろうが。俺様のランスアタックで」
「そういう事では無い。お前の力ならば普通に斬れると言う意味で言っている。例え物理が効きにくい相手でもな」
「よく分からん。何が言いたい」
襲い掛かってくる叫び男を、ランスアタックの一撃で吹き飛ばしながらランスは首を傾げる。
「前にも言ったが、お前は己の才能を理解していない…というよりも持て余している。お前は剣の腕だけで言えば藤原石丸に負けている」
「何だと」
「これは客観的に見た純粋な評価だ。勿論お前が藤原石丸に負けるとは思っていない。直接の戦いだけが全てでは無いからな」
ランスの事だから、不意打ちだろうがどんな卑劣な手段だろうが、必要とあれば躊躇いなく取るのは分かっている。
だからこそ、スラルはランスの『強さ』を評価し、魔人へと誘ったのだから。
「ランス、お前自身自分の剣に違和感を持っているはずだ。だからお前も色々と試している」
「………」
スラルに指摘されてランスは黙る。
実際、ランスが己の剣に違和感を持っているのは事実だから。
過去の世界に来てからランスの剣の腕は確かに上がっている。
だが、その事でランスには拭いようのない感覚が有る。
昔と同じようにランスアタックを放っても、何故だかスッキリしない。
あれ程ランスが悩み、結構な苦労をして完成させた必殺技も、完成させるまでは経験値すらも消耗させた更なる必殺技の鬼畜アタックも、何かが違うと思ってしまっている。
「勿論我は剣の事に関しては詳しくは無いので特に気の利いた事は言えない。だが、お前自身がそれを自覚しているのであれば、どうにかした方が良い。お前の戦おうとしている相手はそれ程までの相手なのだからな」
「フン、剣の事を分からんくせに勝手な事を言うな」
スラルの言葉にはランスも少し気分を害したように顔を歪める。
「すまないな。だが、我以外にそれを指摘できる者はいない。だからこそ、一つの高みを目指す価値はあると思う。それに強くなることはお前があのレベル神からの褒美を貰える事にもつながるぞ」
「む…」
その言葉にはランスも思わず反応する。
レベル神クエルプラン…その褒美を貰うためには、100レベルという途方も無く長いレベル上げが待っている。
そもそも人間で100レベルを超えた者は存在して居ない。
かつてランスは魔王ジルの力で多大なレベルアップをしているが、アレは例外中の例外だ。
「強くなるという事はそれだけ選択肢も増えるという事だ。我はお前の無限の可能性を見てみたいのだ。我が魔人へと誘いたくなったお前の可能性を」
「フン、そんなのは俺様が決める事だ。だが…スラルちゃんの言う事もまあ分かるな」
ランスにとっては強さとは自分が好き勝手にするための手段の一つに過ぎない。
強さにはそんなに拘りは無いが、それでもあの腹が立つ男より下だと言われてはランスも不愉快になる。
「お前に剣を教えられる者が居ればいいのだがな…生憎とそんな者は存在しない。それにお前の剣は完全な我流だから、教えられる存在も居ないだろうし…何よりお前が誰かに教えてもらうなんて考えられんな」
スラルはそこで呆れたようにため息をつく。
「がはははは! 当たり前だ。俺様は誰かに剣を習わずとも強いのだ。まあ女が俺様に手取り足取り教えてくれるならそれもいいかもしれんがな」
「そんな奴は存在しないのだろうな…結局は無駄に終わった話か」
残念そうな声を出すスラルに、何時もの様にがははと笑いながら歩みを進めるランス。
だが、スラルの言葉が、後に伝説と呼ばれる侍によって覆される事になるとは、その時はまだ誰も思っていなかった。
スラルも、そして当のランスでさえも。
カラーホイホイと呼ばれるアイテムの中。
その中でケッセルリンクは難しい顔をしていた。
「出られぬ、か。体を闇と化す事も出来ぬし、魔法も使えぬ。まさか私の力が封じる事が出来るモノが存在するとはな…」
魔法も試したし、己を闇と化す事も試したが、その力は一向に発揮しない。
特殊な結界とも言うべき存在なのか、魔人四天王であるケッセルリンクですらもその力を封じられていた。
「あり得ぬ事では無い、か。事実ランス達は無敵結界を持つ魔人をも倒した…ならば、これもまた魔人を封じるための一つの手段なのかもしれぬ」
魔人は決して無敵では無い、これはケッセルリンク自身が分かっている事だ。
悪魔との戦いでは無敵結界は発動しないし、ラ・バスワルドとの戦いでも無敵結界は発動しなかった。
そしてランスは無敵結界を張っていた魔人トルーマンを倒している。
それも4つのアイテムを使ってとの事だが、詳細は残念ながら分からなかった。
ランスもスラルもそこだけは教えてはくれなかった。
ランスは口を滑らせそうになってはいたが、スラルがそれを止めた。
(無理も無いか…私は魔王の命令があれば嫌でもランス達と戦わねばならぬからな。そのための警戒は必要か)
ケッセルリンクは苦笑するが、同時にこれは魔王ジルも知っている事だ。
だが、ジルは知っていてそれを放置しているような気がする。
だからこそ、ケッセルリンクは魔王ジルの事もまた何とかしなければならないとも思っていた。
「しかし力を封じる…とは違う気がするな。何か特別な条件があるはずだ」
「ほう…よもやこの忌まわしいアイテムに再び閉じ込められる哀れなカラーが居たとはな…」
ケッセルリンクが一人考え込んでいると、突如として男の声が聞こえる。
突如として現れた気配に、ケッセルリンクも目を細くしてその声の主を見る。
「カラーか…だが普通のカラーとは随分と毛色が違う。お前のような容姿のカラーは初めて見た。だが、それもまたよし」
そこに居たのは男の子モンスターである拷問戦士だ。
言葉通り、拷問が全てであるモンスターであり、ケッセルリンクとしてもいい印象は持っていない。
だが、その拷問戦士は黒い鎧では無く、何故か金色の鎧を纏っている。
「これはカラーホイホイ…別世界のカラーからクリスタルを抜き取るために造られたカラー専用の牢獄よ」
「…何だと」
カラーのクリスタルを抜き取るという言葉にケッセルリンクの目が細くなる。
そこにあるのは確かな怒りだ。
「この世界のカラーは犯された時にクリスタルの色が変わる…だが、別の世界のカラーは恐怖を覚えた時にクリスタルが変わる。面白い物だな」
肩を震わせて笑う拷問戦士に、ケッセルリンクの殺意がどんどんと高まっていく。
「どれほど強かろうとも無駄だ。どんな強さを持とうが、このカラーホイホイの中ではカラーはその力を出す事は出来ぬ」
「…成程な」
どんなに怒りを覚えようとも、何故だか体に力が入らないのに気づき、ケッセルリンクはこのアイテム仕組みを理解する。
(カラーを殺すための道具という訳か…どの世界でもカラーには受難があるようだな)
別世界とはいえ、カラーという存在の価値が変わらぬ事に、ケッセルリンクは怒りを覚える。
「そして…ここから出るにはクリスタルを外す以外に無い。即ち、貴様の死によってこのカラーホイホイから貴様は解放される」
「面白い…だが、この私からクリスタルを外せると思うのか。やってみろ」
「どんなカラーも私の拷問を受けると直ぐに哀願する。殺してくれとな…貴様はどれくらい耐えられる?」
拷問戦士は鎧の下で笑うと、ケッセルリンクに向かって襲い掛かっていった。
ランスの剣の名前に関しては元ネタは同じ会社の作品のペルシオンからです
あのデザインは正直好きです
カラーのクリスタルの設定に関しては闘神都市3Dから
まあ流石にあっちで元の設定は使えないよね…
レベル3技能は本当に難しい
ランスシリーズの色々な作品を見ましたが、当然各作者様の匙加減な訳で
勿論チート技能ではあるのでしょうが、本当に解釈が難しい
正直いじるのが難しすぎて今更ながら迷い中です
思い浮かんだのがD○Cのダ○テなんだよなぁ…