ランス再び   作:メケネコ

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救出作戦 後編

 ランスとスラルはモンスターを蹴散らしながら進んでいく。

 スラルは幽霊状態なので、実質ランス一人ではあるが、ランスはそれを楽しむかのように進んでいく。

 その様子にスラルは少し違和感を覚えた。

「なあランス」

「なんだスラルちゃん」

「いや…お前は随分と楽観視しているみたいだが、ケッセルリンクが心配ではないのか?」

 ランスの態度はかなり気楽に見える。

 自分の女が囚われてるというのに、ケッセルリンクの心配をしているようには見えない。

「何を言っとるんだスラルちゃん。あいつは魔人だぞ。どんな危害だって受けないにきまっとるだろうが」

「まあ…それは分かるのだがな。その…ケッセルリンクは凄い美人だ。そっちの系統の危害があるのではないかとな…」

「あいつにか? 無敵結界がある魔人にそんな事出来る奴はおらんだろ」

「言われてみればそうなのだがな…」

 ランスもスラルが言わんとしている事は勿論分かる。

 もしこれがシィルや志津香が囚われたなら、ランスは全力で、そして早急に取り戻すはずだ。

 だが、それがケッセルリンクとなれば話は別だ。

 何しろ彼女は魔人であり、無敵結界をどうにかしなければ危害を加えることも出来ない。

 なのでランスは何も心配はしていない。

 むしろ、助けた時にお礼としてどんなHを要求しようかという楽しみが優っている。

 しかし、そんなランスにも少し考えさせられる事があった。

(しかし俺様があの野郎以下だとは…許せんな)

 それはランスと戦い、そしてついに決着がつかなかった存在。

 いや、ハッキリと言えばあれは間違いなくランスの負けだ。

 勿論横槍が入ったからこそランスは負けたのだが、どんな形だろうとやはり負けは負けでしかないのだ。

 これが相手が魔人等といった超常的な存在が相手なら、ランスはそこまで感じなかった。

 しかし、あの時の相手は間違いなく人間だった…それがランスを苛立たせる事になっていた。

 これまで世界最強と呼ばれたトーマ・リプトンでさえ、ランスは真正面から打ち倒したのだから。

 もしこれでリベンジが出来るのなら、ランスはここまで腹を立てる事は無かっただろう。

 これまでランスは一度負けても、必ずリベンジは果たしてきた。

 最後に笑うのは絶対に自分なので、こんな気持ちになる事は無かった。

 しかし藤原石丸は死んだとは言え、ランスに勝ったまま死んでいった。

 死んだ時点で勿論ランスは自分の勝ちを信じて疑わないが、流石にスラルにここまで言われると思う所はあるのが人情だろう。

(スラルちゃんが俺様にここまで言って来る…やはり許せんな)

 そう思う時点でスラルの煽りは上手く行っているのだが、ランスはそこまでは考えていない。

 その頭にあるのは、ランスがあの男より強いと言わせる事なのだから。

 そしてその後のおしおき兼ご褒美セックスまでがランスの流れなのだ。

「スラルちゃん」

「何だ」

「どうしてスラルちゃんは俺様よりあの藤なんちゃらとかいう奴が強いと思う」

(おっ…)

 ランスがそう言った事で、スラルは内心でほくそ笑む。

 これこそが、スラルが思い描いていた展開だからだ。

「いや、別に我はお前があの男に負けるとは思っていない。まともにぶつかれば多分お前が最終的に勝つのではないかとは思っている」

「そりゃどういう事だ。言ってる事がおかしいぞ」

「純粋な剣の腕だけはお前はまだあの男に負けていると言っているだけだ。実際に戦うとなれば、実質的にランスと我の2対1だ。その状況なら負けないさ」

 今現実にランスと石丸の1対1の展開があったとしても、状況は絶対にそうなる。

 そもそもランスは本当に『勝つ』と決めたのならば、どんな汚い手段でも平気で使うし、1対1の決闘など鼻で笑って容赦無く集団で襲い掛かるだろう。

「ほー。だがあいつは死んだぞ。比較など出来んだろ」

「確かに出来ない。だが、我はお前の剣の中で奴の剣の動きを見ていた。だから分かる…まあ剣の素人の我の言葉などお前から見ればおかしな話かもしれないが」

「フン、スラルちゃんも案外そういう話が好きだな」

「まあ…我はそうする事で生き延びてきた存在だ。何よりも我は知識と相手を見る目が必要だった」

 魔王になってからも恐怖は抜けず、無敵で有る事を願った。

 それまでは相手を見極める事でスラルは生き延びてきた。

 臆病だと言われようが、それがスラルの生きてきた証であり決して卑下する事でも無い。

「だったらそのスラルちゃんの目で確かめろ。俺様があの野郎を超えている事をな」

「構わんよ。むしろ我としては願ったりだ。我が求めたお前こそが最も強い存在だと認めさせろ。それでこそ我の人を見る目が正しいと証明される」

「その後でスラルちゃんはおしおきセックスだな。やめてと言われても絶対にやめんぞ。あ、そうだ。もっと後ろもガッツリ開発するか」

「そ、そういう事を言うのは止めろ。お前らしいと言えばそうだが、これ以上我に何をする気だ…」

 スラルは剣の中で顔を赤らめ、思わずお尻を押さえる。

 ランスは性癖はまともなようで、あまりアブノーマルなプレイは好まない。

 軽く辱めたりはするが、こちらに苦痛を与えるような事は絶対にしない。

 だが、それでも後ろ…お尻だけは例外で、スラルは体が戻った時に何度も何度も後ろを攻められた。

 最悪の部分は見られてはいないが、それでも不浄の穴を何度か犯され、そして自分も相当な回数の絶頂を迎えたのは今でも忘れられない。

 それが繰り返される事によって、嵌ってしまいそうな自分が何よりも怖いのだ。

 そしてそれでランスが喜んでくれる事に自分も嬉しくなる自分も怖い。

(ううう…我はランスに誘われたら断れない…いくらジルの事があったとしても、後ろめたさよりも喜びの方が勝ってしまう…)

 ランスに求められると嬉しいし、ランスとセックスをするのは気持ちが良い。

 まさか自分がこんな風に乱れるとは、魔王だった頃からは考えもしなかった事だ。

(ぐふふ…スラルちゃんも意外とノリがいいな。だがまあ俺様が世界一強いと認めさせるいい機会だ)

 ランスもまた内心でほくそ笑む。

 他の男と比較されるのはランスとしては詰まらないが、それがエッチに結び付けられるのであればやぶさかでは無い。

 何しろランスはエッチのためならばどんな無茶な事でも出来る男なのだから。

「お、モンスターが来たな。今度は空を飛んでる奴か。鬱陶しいな」

「そうだな。こういう時は我が魔法を使えればいいのだがな…初級の魔法しか使えないとなると流石にな」

 集団で現れた時はスラルの得意の氷雪吹雪、それ以外にも電磁結界や火爆破等色々な手段が有る。

 だが、魔力が少ない今は単体相手の初級魔法しか使えない。

 それでは時間がかかってしまう。

(うーむ…そういやスラルちゃんはイメージ出来れば何でも出来ると言っていたな)

 それはランスがカミーラと戦っていた時の事。

 スラルに促され、ランスは真正面からカミーラのブレスと向き合い、そして実際にカミーラのブレスを剣で斬った。

 斬られたブレスは霧散し、ランスにはあまりダメージが来なかった。

(そういや俺様もランスアタックの完成には苦労したな。じゃあちょっと試すか)

 最初に思いついたランスアタックは役に立ってるとは言い難かった。

 カスタムの沈没騒ぎから使い始めたが、ただ疲れるだけで相手に多大なダメージがいっているとは思えなかった。

 ランスが必殺技を完成させたのは、その後の事だ。

 光ってかっこよくて強い…それが完成されたランスの必殺技なのだ。

「ランス、ここは一体一体潰していくか?」

「…いや、面倒臭い」

 ランスはスラルの言葉に一つ思案する。

(そうだ。今の俺様は何でも出来るのだ。だったらあんな宙に浮いているだけの雑魚など、容易く蹴散らせるはずだ。多分)

 スラルの言っていたイメージ。

 確かにこれは重大な事だ。

 ランスアタックの完成も、鬼畜アタックの完成もランスは試行錯誤の上で編み出したのだから。

「そういやスラルちゃんと最初の合体技だったか。アレをやった時は大変だったな」

「あー…そんな事あったな。我の魔力が定まらず、使い手であるお前にまで傷つけてしまった」

 最初に適当に合体技を使ったら、その被害はランスにまで及んだ。

 鬼畜アタックも最初の方は経験値を犠牲にするという、非常に悩ましい事からスタートしたのだ。

「よーし、スラルちゃんも俺様の華麗な必殺の一撃を見ていろ」

「ほう。ではその技が凄かったら、我は夜に何でもしてやるぞ。まあいくらお前でもそんな簡単には出来ないだろう」

 スラルは剣の中でニコニコと笑っている。

 その顔は、いくらランスでもそんな事が出来る訳が無いと言わんばかりの顔をしている。

 だが、スラルはまだランスの事を理解していなかった。

 スラルは元魔王故に、この世界の事をある程度理解している故に、人の力を見くびっていた所もあるかもしれない。

「がはははは! 行くぞ! 俺様の新必殺技じゃー!」

 ランスは全身に力を溜め、剣を腰だめに構えると、

「吹き飛べ!」

 そのまま剣を薙ぎ払う。

 するとその剣から闘気の渦が生じ、それはまるで竜巻のようになってモンスター達に襲い掛かる。

 モンスター達は悲鳴を上げながら竜巻に巻き込まれていく。

 竜巻が通過した後には、モンスターのバラバラの死体が残っているだけだ。

「………」

 スラルはそれを呆然としながら見ていた。

「どうだ、スラルちゃん。前からちょっと考えていたのだ」

「…いや、正直驚いた。そうか、あの時の我との合体技か…イメージとは言ったが、まさかこれ程までとは…」

 ランスの技は、一番最初にランスとの合体技をした時と似た一撃だ。

 あの時は氷の竜巻が発生していたが、今回は闘気の竜巻だ。

「前から考えていたとは言っていたが、お前はそこまでイメージが出来ていたのか?」

「がはははは! 中々派手で見栄えも良かったからな。だからちょっと練習したらすぐ出来たぞ」

「直ぐ…か」

 スラルはランスの言葉に苦笑する。

 ランスがちょくちょく剣を振るっているのは妙だと思っていた。

 剣の練習をするタイプでは無いし、割と行き当たりばったりで行動をしている。

 だが、これに関しては結構本気で考えていたのは理解出来る。

「で、満足か。スラルちゃん」

「…まあそうだな。正直言うと想像以上だ。まさかここまでとはな」

「ならば当然賭けは俺様の勝ちだな。がはははは! スラルちゃんに色々と出来るぞー」

「…ああ! お前、さては分かっててあんな事を言ったな! 勝つ事を分かってて言ったな!」

「そんなのは知らん。大体スラルちゃんが本当に嫌なら断ればいいだけだ。受けたのはスラルちゃんだ。俺様は悪くない」

「ぐうううぅぅぅ…!」

 スラルは呻くが、確かにランスの言葉に乗ってしまったのは自分だ。

 ランスの言う通り、嫌ならば断われば良かっただけの話だ。

 もしこれがランスの事をよく知っている者ならば、こんな賭けは誰も乗らなかったかもしれない。

「わ、分かった。確かにお前の言う事は正しい。ただし! 我の魔力が回復するまではダメだ!」

「それは別に構わんぞ。戻った時に楽しみが増えるだけだからなー」

 ニヤニヤ笑うランスに、スラルは今更ながら何をされるのかという恐怖に背筋が震える。

 だが、それと同時に若干の高揚感が有る事にも背筋が震える。

 そんな相反する感情に、スラルは大きくため息をつく。

「それよりもとっとと行くぞ。この地図を使えば簡単だからな」

 ランスはそのまま地図を片手に進んでいく。

 幸いにも道中には罠や宝箱は見つからず、ただただモンスターが出て来るというだけの単純な造りだ。

「お、あれか」

 そしてこれ見よがしに置かれている宝箱を見つける。

「あまりにあからさま過ぎて罠を疑うが…大丈夫なのか?」

「いいんだ。こういう所に置かれているのは重要なアイテムだと決まっとるんだ」

 ランスは無造作に宝箱を開けると、そこにあるのはランスも見覚えのあるアイテムだった。

「なんだと? これはラレラレ石か?」

「何だソレは?」

「だが再生装置が無いからな…」

 ラレラレ石は専用の再生装置が有れば見れるが、残念ながら今の時代にそんなものは無い。

 大抵はお楽しみ…中にはランスですらも胸糞悪くなる画像が入っている事も有るので油断は出来ない。

「はーにほー!」

 ランスが悩んでいると、突如としてハニーキングが姿を現る。

「やーやーランス君。ついに鍵を一つ手に入れたんだねー。残った鍵はあと2つだから頑張ってねー。あ、これランス君にプレゼント」

 そして好き勝手に言葉を放つと、ランスに一つのアイテムを渡して消えていく。

「…なんなんだ、アイツは」

 スラルは消えていったハニーキングに疲れた声を出す。

 昔から変わらない…そしてある意味底が知れない相手は本当に嫌だ。

 ふざけている様で全てをお見通しというハニーキングには、スラルは昔から苦手意識を持っていた。

「気が利く奴だな。じゃあぽちっとな」

 ランスはそのままラレラレ石をセットして再生する。

 そして見えてきたのは、ランスが知っている静止画ではなく、明らかな動画だった。

「おっ、これは動画が再生できるのか」

 ランスは何の気なしに言っているが、もしこれをマリアが知ったら大興奮していただろう。

 これは明らかにこの世界の技術を超えているからだ。

 しかし、ランスは勿論そんな事は気にも留めない。

「で、どれどれ」

「私にも見せてよ」

 ランスとスラルは同時に映像を覗き込む。

 すると、その映像の中では、魔人ケッセルリンクが扇情的な下着を着せられ、そして首枷がつけられていた。

「あ、俺様の女が!」

「ケッセルリンク!」

 ランスとスラルの声が重なる。

 まさか魔人であるケッセルリンクが、こんな屈辱的な格好をランス以外の者から受けるとは思ってもいなかったからだ。

(だが相変わらずいい体だな)

 ケッセルリンクはその外見にはそぐわぬ、レースの入った赤いランジェリーを身に纏っている。

 所謂セックスをするための下着というもので、それはケッセルリンクの見事なスタイルをより強調していた。

「フッフッフ…私のプレゼントは気に入ってくれたかな」

 そして現れたのは、金色の鎧を着こんだ男だった。

「拷問戦士と言うからにはどんな事をしてくると思えば…随分と下衆な事をするのだな」

 ケッセルリンクは表情一つ変えず、拷問戦士を睨みつける。

 普通の拷問戦士とは違い、その頭部にはトサカが生えており、何故か顎が長い。

「何とでも言うがいい。お前がどんな言葉を並べようとも、カラーである以上は力を出せぬ」

「フン…」

 拷問戦士の言葉通り、ケッセルリンクは身動き一つせず、ただ拷問戦士を睨むだけだ。

 相変わらず見事なスタイルを持った肢体が嫌でも目に入るのだが、ランスは無言のまま映像を見ていた。

「ランス…」

「黙ってろ」

 不安そうにランスに声をかけると、その返事が異常に迫力のある低い声が返ってくる。

 その言葉にスラルは思わず背筋が凍る程だ。

 この声は間違いなく、ジルが魔王になってしまった時と同じ声だ。

 即ち、ランスの中にあるのは紛れも無く強い怒りだ。

「フッフッフ…この私は拷問のプロだ。どういう拷問をすればいいか当然心得ている…そして貴様のために用意した道具がこれだ!」

 拷問戦士は台を一つ持ってくる。

 そこにあるのは…何故か一つの鍋、それも土鍋だった。

 突然土鍋が出て来た事で、スラルは思わず首を捻る。

 拷問戦士がケッセルリンクの前でその土鍋を開けた時、ケッセルリンクは思わず顔を背けた。

 そんなケッセルリンクの姿に気を良くしたのか、拷問戦士は土鍋に箸を入れる。

「…え?」

 そしてその橋が持ち上げられると…そこにあったのは映像でも分かる程にアツアツの湯気を立てている大根だった。

「ふははははは! さあ、お前にはこのアツアツの大根を食ってもらおうか! しかもこの鍋の中にあるのは大根だけでは無い! こんにゃくもはんぺんもあるぞ!」

 見るからに熱そうな大根を手に、拷問戦士が高笑いする。

「ちょっと待て! うわ、あつ!」

 拷問戦士はアツアツの大根をケッセルリンクに無理矢理食べさせる。

 そのアツアツの大根には流石のケッセルリンクも悶絶する。

「ふははははは! あつかろう! しかもコンロで温度調整も出来る!」

 拷問戦士はノリノリでコンロに火をつけると、そのまま中に入っている具を次々にケッセルリンクの口元に持っていく。

「こんなJAPANのおでんを作れ、コンロで温度調整を出来る私を見下すとは…女というのはつくづく御しがたいな!」

 映像はそこで終わっていた。

「………」

 スラルは目を点にして今の映像を見ていた。

 正直、今自分が何を言えば良いのか全く分からないのが現実だ。

「な、なあランス…い、今のは何だったのだろうな…」

「知るか」

 スラルの疑問をランスは一刀両断に斬り捨てる。

「とっととクリアするぞ。そして俺様が直々にケッセルリンクをいじめてやるのだ。がはははは!」

 ランスは何故だか上機嫌に歩き始める。

 襲ってくるモンスターを斬り捨てながら、地図の示す方向に進んでいく。

 そして再び宝箱を見つけると、そこに向かって歩いていく。

 その時、

「「「はーにほー!!!」」」

 突如として響き渡る声に、ランスとスラルは少しげんなりする。

 その声は間違いなくハニーの声だから。

「我々は!」

「我々は!」

「我々は!」

「「「ブラックハニー三連星!!!」」」

 奇妙なモノアイのお面を被った3体のブラックハニーが出て来る。

「この鍵は我々が持っている!」

「「持っている!!」」

「我々を倒す事が出来ればこの鍵を渡そう」

「「渡そう!!」

「「「さあ、かかってこい!!!」」」

 ブラックハニー達がポーズを決める。

「やった…決まった」

「はにほー! やっぱりいいね、黒い三連星」

「じゃあ次はジェットス○リーアタ…」

「ラーンスあたたたーーーーーーっく!!!」

「「「あいやー!!!」」」

 ハニー達が何かを言う前に、問答無用でランスの必殺の一撃が決まる。

「そ、そんな…酷い。まだ名乗りを上げている最中なのにー…」

「そ、そうだー。名乗りを上げている最中に攻撃するなんて、正義の味方のする事じゃないよー…」

「い、一度でいいからジェットストリー○アタックを決めてみたかった…がく」

 そしてそのままハニー達は動かなくなる。

「フン、悠長に聞いてやる馬鹿が何処にいる」

「まあ…お前はそういう奴だな、うん」

 これに関してはハニー達が悪い、言いたいのだが、問答無用で攻撃をしたランスもそれはそれで酷いと思う。

 所謂お約束という事を全く無視し、いきなりの必殺技で相手を打ち倒した。

「だが、ちょっと見てみたかったぞ。そのジェット○トリームアタックとやらを」

「知らん。そんなのが有るなら最初から使えばいい。俺様がそれを待ってやる理由は何一つないぞ」

「うん、そうだがな…」

 ちょっとランスに言いたいが、戦場においてはランスが圧倒的に正しい。

 相手の攻撃を待ってやる義理は全く無いし、油断をしているならばそこをつくのは当然だ。

「それよりもそのカギとやらを見てみるか」

 一体のブラックハニーが手に持っていたラレラレ石を手に取ると、ランスは先程と同じ様に再生する。

「次はどんなふざけた映像が残っている」

「まあ…それは確かに気になるな」

 そしてランスとスラルの二人の目に映ったのは…十字架に貼り付けられているケッセルリンクの姿だった。

 先程の赤いランジェリーとは違い、真っ白なランジェリーにガーターベルトをつけたケッセルリンクはこの上無く蠱惑的だ。

 それが十字架に貼り付けに貼り付けられていると来ては、誰であっても興奮してしまうだろう。

 それ程に美しい光景がそこにはあった。

「フフフ…どうだね、私の用意した新しい衣装は」

「…最悪だな」

 羞恥では無く、怒りで顔を紅潮させて拷問戦士を睨んでいるが、その姿すらも美しく、そして儚い。

「それは良かった。君が怒りを覚える度に、私の拷問も冴えわたる。君がその顔に涙を浮かべる光景が目に浮かぶようだよ」

「この私が泣く、か。そんな調子では私に恐怖を与える事など出来ない。いくら貴様が私を攻め立ててもな」

 怒りで顔を歪めていたケッセルリンクだが、その顔に冷笑が浮かぶ。

「フフフ…お前は勘違いをしている。涙を流し、恐怖を与えるという事は決して苦痛だけでは無いのだ」

 拷問戦士は一度姿を消すと、何かの箱を持って現れる。

「ああそうだ。貴様を助けようとしてる人間が居るらしいな…そしてその人間もまたその光景を見ている」

「…何?」

 拷問戦士の言葉にケッセルリンクの顔に初めて焦りの表情が浮かぶ。

「焦ったな? 貴様にとってその人間は余程の関係のようだ…その人間にこんな姿を見られた時、貴様は何を思う?」

「貴様…何処までも下衆な奴だ」

「そう言っていられるのも今の内だ。見るがいい! この私の最高の拷問を!」

 拷問戦士がその箱を開けると、入っていたのは数枚の羽根だった。

 それを見てケッセルリンクは怪訝な顔をする。

 が、次の瞬間にケッセルリンクの顔が驚愕に歪む。

「貴様…!」

「ふはははは! 怖かろう! 自分が何をされるか分かったようだな!」

 高笑いをしながら拷問戦士はその羽根をケッセルリンクに近づけていく。

 そしてそれを足の裏、首筋、脇の下、そしてふとももにセットする。

「これでお前は動く事が出来ない。何故なら、君が動くだけでその羽根はお前の体を蝕むのだから」

「く…」

 ケッセルリンクは苦い顔をしながら、体を硬直させる。

 その体が動いた時、自分がどうなるかを理解しているからだ。

「そしてこの光景を見ている人間だが…どうやらお前と親しいらしいな。そして貴様の態度を見れば分かる…お前は明らかにこんな自分の姿を見られたくないと」

 ケッセルリンクの強い眼光にも拷問戦士は楽しそうな声を出すだけだ。

「しかしそれこそが我が愉悦…それこそが最大の恐怖となるのだ」

 拷問戦士はケッセルリンクの脇の所にある羽根を団扇で扇ぐ。

「!」

 それだけでケッセルリンクの体が少し動く。

 するとそれに連動して、ケッセルリンクの体の近くに飾られている羽根が彼女の体に触れる。

「ク…」

 そうすると当然、周囲の羽根全体がケッセルリンクの体を弄る。

「いいぞ! その顔だ! さあ、その顔を貴様の知り合いとやらに見せればいい! その無様な姿をな!」

「き、貴様! 絶対に殺す! ク…」

 ケッセルリンクの言葉に対し、拷問戦士は更に団扇で羽根を扇ぐ。

 ケッセルリンクは何とか耐えていたが、

「さて、にゃんにゃんじゃらしも使うとするか」

 拷問戦士がにゃんにゃんじゃらしを使って、ケッセルリンクの脇を撫でた時、

「ぷ…く…あ、あはははははははは!」

 ついにケッセルリンクの表情が崩れる。

 

 

 ―――ケッセルリンクの大笑いが続くのでしばらくお待ちください―――

 

 

「………」

「何コレ」

 映像が終わった時、ランスとスラルは互いに何とも言えなくなる。

 確かにこれは拷問だ。

 恐ろしい拷問ではあるが、ランスとスラルが考えていた拷問とはかけ離れている。

 いや、言ってしまえばふざけている。

「何と言うか…ケッセルリンクの命に別状は無いな。今思えば、無敵結界があるから、普通の拷問など出来ないからな…」

 それを思えば確かに恐ろしい拷問だ。

 まさかケッセルリンクのあんな表情を見られるとは思ってもいなかった。

 勿論それがランスに見られているとあれば、ケッセルリンクにとってはこの上ない屈辱だろう。

「うーむ…俺様の想像とは大分かけ離れた方向に行ってるぞ。確かに珍しいと言えば珍しいが…」

 ランスも拷問という名の攻めはするが、それは拷問のスペシャリストのタマネギすらも呆れてしまう行為だ。

 ただ自分が楽しいから、そんな事で女性を辱めるのがランス流の拷問だ。

 昔は女に対してナスを使って情報を吐かせたりはしたが、言ってしまえば温い。

「…とにかく、ケッセルリンクがこれ以上黒歴史を作る前に助けるか」

「…そうだな。確かに珍しくて面白かったが、それだけだしな」

 ランスは改めてケッセルリンクを救うべく歩き始める。

 その足取りは少し軽く、ランスも安心してしているというのがその態度で分かる。

「お、居たぞ。アレがボスか」

「みたいだな。今度はどんなふざけた奴が居るのか…」

 ランスはそれに近づいていくとそこに居たのは、

「はーにほー! やあやあランス君、ここの最後のボスはボクだよ!」

 真っ白い体に王冠とマントを纏ったハニー、即ちハニーキングが存在して居た。

「ハニーキング。まさかお前が障害になるという事か」

「そうだよー。ほら、囚われのお姫様を助けるのは障害が大きい方がいいでしょ? 悪の首領ごっこだよー」

 ハニーキングはうきうきしながらランスに対してそのロッドを向ける。

 その様子にランスは少し考え込む。

 ハニーキングと戦ったのは一度や二度では無いが、その何れもこのハニーは本気では無かった。

 その証拠に、何度叩き割っても直ぐに復活する。

 そして本当に強いのがハニーキングなのだ。

「じゃあいくよー。超手加減キングフラッシュ!」

「どわーーーーーっ!」

 ハニーキングのキングフラッシュがランスに直撃し、ランスの体が吹き飛ばされる。

「ランス! 大丈夫!?」

「手加減してるから大丈夫だよー。ほら、派手に見えるけど実害は無い感じで」

 ランスは体についた埃を払いながら立ち上がる。

 確かに今の一撃で派手に吹き飛ばされたが、ダメージは殆どない。

 それだけでハニーキングがもの凄い手加減をしているのが分かる。

「まあいい。とにかくお前をぶち倒せばいいんだろう。だったら速攻で叩き割ってやる!」

「いいねいいねー! じゃあランス君、遊ぼうか」

 こうしてランスとハニーキング(手加減)の闘いが始まった。

 

 




ようやくリアルの忙しさに一息つけました
これからスピードも戻していきたいですが、今度は年末に向けて忙しくなるというね…

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