「何とか皆無事なようだね」
ハンティはカラー達を集め、誰も犠牲者が出ていない事に安堵のため息をついた。
(私一人じゃこうもいかなかったからね。ランス達を頼って正解だったか)
「俺様が手を貸してやっているんだ。当然だ」
ランスは胸を張って答える。
ランスに助けられたカラーはやはりランスに脅えてはいるが、それでも恐怖感は感じられない。
「…これが現実なんですね」
日光は脅えているカラーを見て唇を噛む。
人間がカラーを襲う、それは紛れもない現実だった。
そしてあの人間達の顔を見れば、カラー達の事をどう思っているのか明らかだ。
(ランス殿とは全然違う…)
ランスも女好きだが、女をモノのように扱った事は無い。
ある意味女性に対しては不器用な人だが…それでも優しい人である事は間違いは無い。
そのランスとは全く違う女を見る目…それが嫌でも感じられた。
「ここは完全に把握されている。移動するしか無いんだけど…覚悟は出来てるかい?」
ハンティの言葉にカラー達は青ざめながらも頷く。
誰もがここで死んでいいだなんて考えてはいない、それは人間もカラーも変わらない。
「話の腰を折って悪いけどね。日光、見逃したでしょ」
その時、レンとスラルも戻って来る。
レンはその手に一人の男―――まだ少年とも言える人間を引き摺っていた。
スラルも厳しい顔をしており、その目は露骨に日光の甘さを責めていた。
「何だ日光。お前、また病気が出たのか」
ランスも呆れたように日光を見ている。
「で、ですがまだ少年です!」
日光の言葉をランスが鼻で笑う。
「どうせこいつもカラー狩りと言いながらカラーをレイプしていたクズだ。そんな奴を生かしておけばまた絶対にカラーを狙うぞ」
ランスの目は何処まで冷徹だ。
ランスは殺す時はどんな時でも躊躇なく殺す。
それが女を犯していた奴ならば尚更だ。
そういう時はランスは子供でも決して容赦はしない。
「そ、そんな…助けて…」
「お前はそうやって命乞いしてきたカラーも殺して来たんだろ。逆の立場になってそんなムシのいい事が通用すると思っているのか」
ランスは少年の首筋に剣を突き付ける。
「ま、待ってください! どうしてランスさんはそこまで簡単に殺せるんですか!?」
「そんなの簡単だ。今こいつを殺さないとカラーはずっと狙われる。こいつを見逃した所でまた同じような人間を引き攣れて来るだけだ」
ランスはそのまま少年を斬り殺す。
「ランスさん!」
日光は非難の目をランスに向けるが、ランスは全く動じることなく剣を鞘に納める。
「日光。お前もいい加減に覚えておけ。お前のその下らん情けがもっと大きな被害を出すんだぞ。カラーを狙う奴等はこの先どんな事をしてでもカラーを狙う。そんな奴等はこの世界に必要無い」
「そこまで言いますか…」
何処までも冷徹な態度を崩さないランスには日光の目も険しくなる。
「悪いけどカラーの立場から言わせて貰えば、ランスの言ってる事の方が有難いさ。人間ってヤツは一度見逃せばそこに付け込んでくるからね」
「ハンティ殿…」
ランスを擁護する言葉に日光は唇を噛む。
「カラーのクリスタルは確かに強力な武器や道具になる。同時にそれは人間に凄まじい富を産む事になるのさ。そしてこんな時代でもやっぱり金っていうのは価値があるものなのさ」
「お金のために…ですか」
「ああ。金っていうのはそれだけ重要なのさ。戦うためには金が必要だからね」
ハンティの言葉に日光は何も言えなくなる。
日光の居た地ではほぼ自給自足のような生活をしていた。
たまに行商が訪れたりもしてたが、そんなものは本当に稀だ。
「日光。お前が優しいという事は分かる。だが、その優しさは時には両刃の剣となり自分だけでなく、仲間も傷つける。それを忘れない事だ」
スラルの言葉に日光はただ俯くだけだ。
(…私は甘いのでしょうか)
日光から見ればランスが非情すぎる。
いや、優しさのベクトルが全て女に向けられていると言った方が良い。
自分に対してはランスは厳しい事を言いながらも、きっちりと現実を突き付けてくる。
だが、男に対しては本当に容赦が無い。
その部分が日光にはどうしても受け入れられない…というよりも、少しは改善してほしいとは思う。
(でも…ランス殿だから絶対に改善はしないのでしょうね…)
「申し訳ありません…カラーの皆さんの事を考えていませんでした。でも私は…どうしても人の心を信じてみたいのです…」
自分の家族や村の仲間がそうであったように、支え合って生きている者も絶対に居る。
日光はそう頑なに信じていた。
「まあいい。とっとと行くぞ。と、言ってもどうやって行くんだ」
ランスの言葉にハンティはため息をつく。
「予想以上に人間の行動が早かったからね…どうしても強行軍になるね。でも、この子達は皆覚悟は出来てるさ。どんな状況でもね」
ハンティの言葉にカラー達は頷く。
そこには恐れはあっても諦めは全く無い。
どうあっても生き抜く、そんな強い意志を皆が持っていた。
「私が頼みたかったのは、アンタが持ってるあの家の事さ。あれなら大人数でも問題無いだろ?」
「魔法ハウスね。確かに問題は無いと思うけど…やっぱり目立つわよ」
ハンティの言葉にレンは難しい顔をする。
GL期に入ってからはランスも頻繁に魔法ハウスは使わない。
やぱり大きいのでどうしても目立ってしまうのだ。
そしてこんな時代でも、ランスの持つ魔法ハウスを狙って来る人間は存在する。
なので基本的にはランス達も町では宿泊施設を利用していた。
幸いにも金は大量に持っているので、そこに困った事は無かった。
ただ、今の時代にLP時代の宿泊施設は無いので、ランスが女を連れ込めないという事に不満を持っていただけだ。
「問題は無いさ。その辺は私が斥候をするからね」
「しかしお前一人では無理が出るだろう。やはり30人での移動は難しいと思うがな」
ハンティの言葉にスラルが難しい顔をする。
伝説のカラーという事は知っているが、実際にはスラルはハンティの事は知らなかった。
以前に出会った時も、その力を見た訳でも無い。
「大丈夫だろ。こいつには瞬間移動が有るからな」
「何!? 瞬間移動!?」
ランスの言葉にスラルは目を見開く。
「ああ。だからこいつは滅茶苦茶強いってパットンが言ってたからな。ただ、俺様もハンティと戦ったのはあの時の闘神の時だけだからな…」
「…アンタ、何でそんな事まで知ってるんだい?」
ハンティの目が細くなり、ランスに対する警戒心が強くなる。
確かにハンティには瞬間移動があるが、それを誰かに話したりした事は無い。
ましてや今はこんな時代…ハンティの能力が人間達に伝わっている可能性は無いはずだ。
「どうだっていいだろ。問題なのはそこまで行けるかという事だからな。取り敢えず移動するぞ」
「ランスの言ってる事は気になるが、確かにその通りだ。何時までもここに留まっている訳にもいかないだろう。それに、魔物からも人からも見つからぬ様に動かなければならないからな」
「…まあそうだね。まずはこの子達の命が優先か」
ハンティは何かを言いたげな顔をしていたが、何にせよ優先するのはカラーの命。
ランス達は長い行軍をする事になった。
LP期でいう所の自由都市付近からカラーの森までの距離は遠い。
それが徒歩ならば尚更だ。
これがLP期であればうし車を使う事で問題は無いのだが、何しろ今はGL期。
これ程の大人数での移動は並大抵の事では無い、それが一般的な常識だった。
だがしかし、そんな常識が通用しないのがこの男―――ランスだった。
そんな面倒な事は知らんとばかりに、今ランスが求めているモノが向こうからやって来た。
「がはははは! しっかり運転しろよ。そうしないとお前はカラーの呪いで金玉が破裂するからな」
「は、はいいいぃぃぃ!」
ランスはうし車を運転する男を足蹴にしながら胸を張る。
それに対して日光は何か言いたげな顔をするが、それでも特に何も言う事は無かった。
「いやー、まさか本当に移動手段と移動ルートが手に入るなんてねー」
スラルは感心したような、そして何処か呆れた様子で現状を見ている。
「…こういう偶然、本当にあるんですか?」
日光はとても信じられないといった顔をしている。
「フン、俺様ならば当然だ」
根拠のない自信に満ち溢れているランスに対し、一部のカラーは熱い視線を送っている。
「まさか移動しようとした先に奴隷を輸送していたうし車が通って、カラー達を捕えようとして来るなんてね…」
「その後のランス殿の行動が悪辣すぎるような気がしますが…」
それはランス達がまずは移動をしようとした時だった。
たまたまそこにうし車が通った。
うし車を使っていた人間達は奴隷商人で、当然の事ながらランス達が連れているカラーを捕えようと思った。
だが、当然奴隷商人は返り討ちにあう。
そもそもレベル80越えのランス達にとっては、普通の人間などは最早相手にもならない。
ましてやそこにハンティも加わればただの蹂躙にしかならなかった。
「お、お願いだから殺さないで…」
うし車は2台有り、1台にはレンとハンティが乗り込み、もう一台は生き残った御者がうし車を操っている。
「俺様の言う事に従えば生かしておいてやる。だが、裏切った瞬間にお前のその粗末なモノは爆発するがな」
「ううう…どうしてこんな事に…」
男を脅迫するランスに日光は頭を抱える。
奴隷商人を殺さなかったランスに日光はもしかしたらと思った。
だが、それは男を脅迫して利用するために生かしているに過ぎなかった。
それが奴隷を運ぶルートを使用して、魔物に見つからないための移動を行うという手段だ。
『お願いします! 殺さないで!』
命乞いをする男にランスは悪辣に笑うと、
『よーし、いいだろう。ただーし! お前は今から俺様にいう事を聞け。聞かないとカラーの呪いでお前のタマが吹き飛ぶぞ』
そう言って男を従わせた。
カラーの呪いの事は人間にも知れ渡っているので、男は呪いという目に見えない鎖で雁字搦めにされてしまった。
「あの…本当にランス殿の言うような呪いはあるのですか?」
「いいえ、ありませんよ。でも、それで大人しくなるならそれで良いと思います」
日光はカラーの一人に聞くが、当然カラーはそんな呪いは否定する。
ランスは適当なカラーを呼んで、男に対して呪いをかけるフリをするように言った。
その仕草だけで、もう男は自分がカラーの呪いを受けたと思うのは無理は無かった。
「本当に凄い酷い人ですよね…でも、そんな人が私達を助けてくれるのだから、分からないものですね」
「…そうですね」
カラーの少女の言葉に日光は複雑な顔をする。
確かにランスのやっている事は褒められた事では無い。
いや、それどころかかなり悪辣で酷い事だ。
だが、その酷い事でここに居るカラーの少女たちを救っている。
日光はそのギャップに頭が痛くなっていた。
そう考えていると、突然男がうし車を止める。
「む、どうした。まさか今更言う事が聞けないとでも言うんじゃないだろうな」
「ち、違います! ここから先はこの時間帯になるとこんばんわの大群が現れるんです。だから俺達はいっつもここの近くで奴等をやり過ごすんです!」
「こんばんわか。俺様からすれば雑魚だな。レンの魔法があればあんな連中一発だろ」
こんばんわは結構厄介なモンスターで、中々強いし固い。
それが大群となれば、確かに普通の人間では躊躇するだろう。
「まあ待てランス。ここはこいつの言葉を聞き入れるべきだろう。こいつ等はそうする事で今まで生き残って来たんだからな」
「フーン…まあ良いだろう。ただし、それが嘘だったらお前は惨たらしく死ぬからな。覚悟しろよ」
「ひ、ひぃぃぃぃーーー!」
ランスの言葉に男は震える声で何度も頷く。
それは到底嘘とは思えない。
なのでランス達は男の言う場所へと移動し、一晩を明かす事にする。
そして現れる魔法ハウスにカラー達は喜びの声を上げて入っていく。
「ふぅ…しっかしこんな簡単に移動が出来るなんてね…やっぱり人間もしぶといよね」
ハンティも少し安堵した様子で水を飲む。
「で、お前は今夜も外で見回るのか」
「当然。それはあたしがやらなきゃいけない事だからね。まああの子達がリラックス出来るだけでも有難いさ」
ランスの言葉にハンティが笑う。
そこには本当にカラーの娘達が無事な事への安堵が見られる。
「ふーん。まあいいか。しかし…こんなに大量に女が居ると思った以上に喧しいな…」
そしてランスはというと、最初はこの状況に喜んでは居たのだが…それが続くうち、少し疲れが出て来た。
勿論女と居て疲れるなんて事は本来は無いのだが、それがこうも続くと流石のランスも考える事が出て来る。
何しろカラーの娘達には一人も手を付けていない。
男を恐れているという事もあるが、ランスとしても完全な合意が無い限りカラーには手を出せずにいた。
ランスはパステルに呪われて散々な目にあったので、カラーを襲う事は絶対にしなかった。
合意の元ならば躊躇い無く手を出すのだが、流石に今の状況ではランスも自重せざるを得なかった。
「こいつ等、本当にアレだけ落ち込んでた奴等なのか?」
ランスは半眼でカラーの娘達を見る。
「はーい! お風呂開きましたー!」
「こっちはご飯出来てるよー!」
「トイレ掃除完了でーす! 次は個室の掃除をしちゃうねー!」
カラー達は元気に魔法ハウスで過ごしていた。
自発的に炊事洗濯掃除をしてくれるのは良いのだが、あれ程落ち込んでいた連中がここまで元気を取り戻すとランスも困惑する。
「はい2D…7! クリティカル!」
「こっちは2D…4! ぎゃー! ファンブルしたー!」
更には別の所ではカラーの娘達が何処から持ち込んだのか、色々なゲームを楽しんでいた。
「…色々と閉鎖的な環境で脅えながら暮らしてた訳だからさ」
流石のハンティもその様子には愛想笑いを浮かべるしかなかった。
「まあ良いではないか。幸いにも食料にも余裕がある。しかし奴隷商人とはそれ程儲かるものなのか?」
「さーな。金はある奴には集まるんだろ」
商人と聞けばランスが思い浮かぶのがLP期における世界一の商人であるコパンドンだ。
何しろ町一つを買い取る程の成功を収め、ランスの所有するランス城にも多大な融資をしてくれた。
商売の事を全く知らないランスの代わりに、ランス城の建設に尽力したのが彼女だ。
「食料に関してはあたしが何とかするさ。そっちにばかり苦労はかけないよ」
「当たり前だ。何の準備も無く来る事になったんだからな」
「そりゃ悪いね。でも不思議と何とかなってるのがね。さて、私は見回りに行くよ。後は頼むよ」
ハンティはランスに対して詫びるとそのまま見回りに行く。
「本当に彼女は働き者だな。伝説のカラーの存在、伊達では無いという事だな」
「スラルちゃんはハンティの事は知らなかったんだな」
「まあな。NC期に会ったのが初めてだ。まあ瞬間移動…あれ程の力を見せられては魔王としても中々探せぬのも納得だ」
スラルはハンティから瞬間移動の事を聞いていた。
聞いた結果として、自分では使う事の出来ない魔法だとも理解した。
(瞬間移動か…上手く使えれば良いと思ったのだが、我には使えないな。アレはLV3技能では無いか。まあ技能があっても使用は躊躇うがな)
瞬間移動は確かに凄いが、それはリスクが大きすぎて使うのには躊躇する代物だった。
少なくとも、スラルが使える技能では無いし、自分の知識を持ってしても有効活用出来る事は無いだろう。
スラルはそれよりもリスクの事を考えてしまう、それが自分の性分だと理解していてもそれは変える事は出来ない。
「…カラーと人は手を取り合う事は出来ないのですか? 彼女の力があれば魔人にも対抗出来そうだと思うのですが」
日光の言葉にランス達の世話をしてくれているカラーが難しい顔をする。
「それは…難しいと思います。何しろ人間にとってはカラーは便利なマジックアイテムくらいの認識しか無いでしょうから…」
「そんなに酷いのですか…」
「ええ…人間とカラーの確執はそれだけ大きいんです。昔の私達の先祖が招いた事…と始祖様は言っていましたが、同時に遅かれ早かれこうなっていたとも言ってました」
カラーと人間の確執はNC期の頃に出来てしまった。
カラーが人間を支配しようとした結果、人間の逆襲にあいカラーは絶滅の危機に瀕した。
その際にカラーのクリスタルが強力なアイテムになると人間に知れ渡った結果、人間はクリスタルを求めてカラーを狩るようになってしまった。
そしてそれが500年以上経過した今でも続いているのだ。
「フン、こんなモノのためにカラーを殺すなどありえんな」
「そう言う人が珍しいんです…特に男性はカラーを見つけると襲って来るものだと私達は教えられましたから…」
カラーの一人がランスが持っているクリスタルソードを見る。
それこそがカラーのクリスタルを使った一品、その中でもかなりのクリスタルが使われた物だとカラーなら誰でも分かる。
「でもランスさんはカラーに対しては優しいですよね。それはこのクリスタルの剣を見れば分かります」
「俺様は何時でも可愛い子の味方だ。男は知らん」
そう言い切るランスにカラーは少しだけ微笑む。
(恐らくランスの言葉を場を和ませる冗談だと思ってるんでしょうね…でもランスは本気で言ってるのよね)
レンはランスを遠巻きに見ているカラーを見てため息をつく。
ランスという人間は本気で男なんぞどうでも良いと考えており、全ての基準は女で決まってしまう。
勿論黒部といったランスが認めた男も居るのだが、黒部はそもそも人の形をしていないので例外だ。
それを象徴したのが藤原石丸との戦いだ。
ランスは結局最後まであの男と分かり合う事は無かった。
(そんな奴だけど…不思議と人は集まる。変な奴よね)
カラー達は、自分達のために色々とやってくれているランスを信用しつつある。
不思議と何とかしてくれる奴…それがランスという人間なのだ。
「その優しさをもっと人に向ける事は出来ないのですか…?」
「何を言っている。俺様は十分に優しいだろうが。あの男だってああして生かしてやっているだろう」
ちなみに御者の男は魔法ハウスに入る事は許されず、うし車の中で寝ている。
流石に不憫に思ったのか、カラーが食事の差し入れをしており、男は泣いて喜んで食事を取っていた。
(ランス殿がその気になれば、人を率いて魔人と対抗出来そうなものですが…)
日光としてはそれが残念でならない。
ランスはその強さとカリスマで人を引っ張って行く事が出来る―――のだが、本人にはその気が全く無いのが恨めしい。
「お前の優しさは全て女に向けられているだろう。まあ黒部だけは例外だがな」
「そうね。流石のランスでも黒部だけは例外だったわね」
スラルとレンはランスを見て笑う。
ランスは素直では無いが、あの黒部を認めていたのは明らかだ。
だからこそ、あのランスが黒部の形見である牙をずっと持っていたのだ。
今でこそ同じ妖怪王であるお町に黒部の牙を渡しているが、ランスにとってもきっと大切な物だったのだろうと思っている。
「何を言っている。まあ黒部は中々強いし面白い奴だったが」
黒部はランスにとっては完全に安全圏の存在である事と、ランスの強さについてこれる事。
この二つが合わさってランスにとっても中々面白い奴だった。
「ランス殿が認めた妖怪王黒部…一度会ってみたかったですね」
「お前まで何を言ってやがる」
日光としても、このランスが認めているであろう妖怪王黒部には会ってみたかった。
一体どういう関係だったのだろうかと、ランスの事を知っているからこそ、黒部と会ってみたいという思いが溢れてくる。
「とにかくランスは人には好かれないが、不思議とそれ以外に好かれるな。そういう生まれなのだろう」
「変な事を言うな。まあ女に好かれるのであれば俺様は一向に構わんがな」
スラルの揶揄にもランスは気にせず上機嫌になる。
だが、確かにランスは人以外の女にもモテるというのは事実だ。
そういう星の元に生まれたのがランスという人間なのだろう。
「それにしてもこのクリスタルソード…凄いです。カラーのクリスタルがこんなに綺麗に輝いてるなんて…」
「あ、そうそう。それ私も思ってた。これって負のイメージが全く無いんだよね。ランスさんに託したって感じがして」
カラー達は改めてランスの所有物であるクリスタルソードを見る。
最初はランスのクリスタルソードに非難、そして敵意の目で見ていたのだが、今はこのクリスタルソードの輝きに感心している。
「そんなのがあるのか」
「ええ…カラーは呪いを得意とする一族です。人間がカラーから奪ったクリスタルには、怨念と言いますか…そういうのが何となく分かるんです」
ランスの言葉にカラーは寂しげな顔をする。
「でも…これには不思議とそんな感じがしないんです。持ち主がランスさんだからでしょうか?」
「がはははは! 俺様は特別な男だからな。この剣を持ってた奴はさぞカラーに恨まれてたんだろ。だが俺様ならばこの通りだな」
ランスはカラーからクリスタルソードを受け取ると、その剣を一振りする。
それだけでカラーのクリスタルが輝き、特別な光を放ったように見える。
「おお…」
「うわぁ…かっこいい…」
その動きは幻想的でさえあり、カラー達も思わずその動きに見惚れてしまう程だ。
日光もランスと同じ剣士として、ランスの振るう剣の動きには見惚れてしまう。
荒々しく、剣術の基本が無いように見えても実際には異常なまでの強さがある。
それは相対した者にしか分からない、ランス独特の剣だ。
キラキラした目で自分を見るカラーに対し、ランスは内心でため息をつく。
(ああ…しかしこのカラー達とやれんのは残念だな。だがまあハンティを敵に回すのは面倒だしな)
ハンティからはカラーの娘達には手を出すなときつく言われている。
最初はそんなのは知った事では無いと思ったが、カラーの娘達のランスを見る目がやはり脅えの色が強かったので、ランスとしても手を出すのは躊躇われた。
エッチした結果自殺でもされたらランスとしても寝覚めが悪い。
エッチとは楽しくやるもなのだ、それがランスの持論だ。
ただ、極限状態になるとその持論も投げ捨ててしまうのもランスなのだが。
「もう今日は休みませんか? ランスさん達もお疲れでしょうから」
「む、そういやもうそんな時間か。まあ丁度いいな。で、君達はどうするんだ」
「戦える者は始祖様と共に戦いますよ。これは本来は私達カラーだけでやらなければいけない事ですから。皆さんはゆっくり休んでてください」
「ふーん。まあ君達がそれで良いと言うのであれば構わんが。だが、無理はするなよ」
ランスの言葉にカラー達は笑う。
それは不器用ではあったが、カラーを心配する言葉だったからだ。
「大丈夫ですよ。それに何かあれば始祖様がランスさんを呼びますよ」
「まあゆっくり休みなさいな。私がハンティに付き合うから」
カラーの言葉にレンが頷く。
レンはエンジェルナイトなので、当然の事ながら少しくらい休憩しなくても問題は無い。
なので積極的にハンティに付き合って警戒をしていた。
「そういう事ならそうさせて貰うぞ。という事で行くぞ。スラル、日光」
「…カラーの娘が居るのに本当に遠慮が無いな。そういう所がデリカシーに欠けると言われる所だぞ」
「ランス殿…やっぱりこういう状態でそういう事は…」
「知らん。俺様がやりたい時がやる時なのだ」
ランスはそのままスラルと日光の二人と共に消えていく。
それを呆れた様子で見ながら、レンもまた魔法ハウスの外にと消えていく。
そんなランスを見ながらカラー達は、
「ランスさんってエッチなのに私達には絶対手を出さないよね」
「お風呂上りは結構エッチな目で見て来るけど、こっちを襲うって感じはしないよね」
「ただのスケベな人間って訳じゃ無いよねー」
こんな他愛の無い話で盛り上がっていた。
それだけ心に余裕が出て来た事ではあるが、やはりカラーもまた年頃の少女であった。
「…遅いわねえ」
魔人メディウサは未だに戻らない魔物達に対してイラついていた。
そのメディウサの直ぐ横にはもう息をしていない人間の女がゴロゴロと転がっていた。
何れも酷い扱いをされており、メディウサが人間をどのように扱っているのかを伺わせる。
怠惰なメディウサは自分から動く事は滅多に無い。
まだ使徒のアレフガルドが居ないので、身の回りは全て魔物兵がやっていた。
「そろそろ飽きて来たかな」
「うぎゃああああああ!」
「うるさいわよ。ああ、もう壊れたオモチャはいらないか」
メディウサは女を犯しながら、詰まらなそうに呟く。
「ぐはっ」
そしてそのままメディウサの股間から生えた蛇は、女の内臓を内側から食い尽くしてしまった。
無造作に捨てられた女を見てもメディウサは何の感情も浮かんでいない。
「あー…もっといい女を殺したいわね…魔人が相手だったら尚いいんだけどね」
人間の女は直ぐに壊れてしまう。
メディウサは魔人になってからずっと人間の女を犯し殺して来たが、ここ最近は不満が有った。
なのでもっと頑丈な相手を探しているのだが、生憎とそんな女は存在しない。
「ケッセルリンクとか凄いいい顔をしそうなんだけどね…流石に無謀すぎるか」
魔人四天王の一人、夜の女王ケッセルリンク。
メディウサとしては是非とも犯したい相手だが、もしそんな事を実行しようとすれば、自分は確実に殺されるだろう。
魔人としての実力が違い過ぎるのだ。
「今度は…カラーが良いかもしれないね」
ケッセルリンクが駄目なら、その出身種族のカラーがいいかもしれない。
あのケッセルリンクの目を盗み、カラーを捕えられればどれほど楽しめるだろうか。
「魔王様は私に目をかけてくれてるし…そうだね、次はカラーがいいかもね」
自分には魔王の後ろ盾があるので好きに出来る、メディウサはそう勘違いしていた。
いや、誰もがそう思っているからこそ、メディウサの元には多くの魔物兵が殺到していた。
「フフフ…そう、今度はカラーね」
メディウサは何処までもサディスティックな笑みを浮かべていた。
だが、メディウサは知らない…自分はある人間を誘き寄せるための駒にしか過ぎない事を。
そしてそれが自分の運命をどれ程狂わせるのかという事も。
GL期でもカラー狩りがあったと明言されたので若干のプロット変更が有り、このような展開となりました
本当はハンティとはあまり関わらないはずだったんだけど、ガイの件もあって関わることになりました
ただ、ガイに関しては正直微妙なラインでもあります…
やっぱり後の世界に大きく影響を及ぼす存在ですし、在任期間がランスと被っていますので
そして先に述べますが、ガイの強さは魔王には全く及ばないとして扱わせていただきます
というか人間の頃から魔王を追い詰めたみたいな話も有りますが、ちょっと考えにくいかなと思いまして…
レベル250越えのランスの子供達が、魔王として未覚醒のランスに手も足も出ない事を考えるといくら禁術をノーリスクで使えても、そんな事はありえるのかと思いますて…
ですので、この作品ではそのように扱わせて頂きますので、御了承下さい