「…私は」
日光は何かを答えようとして、言葉に詰まった。
それは日光がランスに対して抱いていた不満点とも言っていい。
日光はランスを尊敬している、それは間違いない。
大胆不敵とも言える行動力と実行力、そしてその判断力の高さ。
その剣の腕前だけでなく、冒険者としてもランスは一流だった。
そして何よりも、ランスには人を束ねる力があるという事だ。
それはきっと自分には無いものなのだろうと、ランスの側にいるからこそ感じ取っていた。
だが、ランスはそれを活かすつもりは全くない。
勿論今は時代が時代だ、いくらランスが人類を率いても魔王にはどうすることも出来ないだろう。
人類が纏まれるとも正直思えない。
だがそれでも…日光はランスを見ると期待してしまうのだ。
それが僅かな不満になっているとも、薄々ながらも自覚していた。
「ランス殿は…どうしてああなのでしょうか」
「それはあの方の生まれ持った性格でしょう。あなたの不満点は分かります。ランス様に対し、過剰な期待をしているのではないですか?」
「………」
シャロンの言葉に日光は何も言えなくなる。
そう、それがランスという人間の性格なのだからそれはもう仕方がない。
あんな性格だからこそ、魅力を感じる者もいるのだろう。
だが、日光はランスの事をもったいないとも感じてしまっていた。
「ランスさんにはあまりそういう事を期待してはいけないと思いますよ。あの人、権力は好きですけどその権力も直ぐに投げ出す人ですから」
エルシールはランスと共に冒険した期間は結構長い。
だからこそ、ランスの性格もある程度は理解している。
それは貴族の娘だった事も関係しているのかもしれない。
「断言しますけど…ランスさんは間違っても善人では無いですよ。むしろ悪人と言ってもいいかもしれません」
「それは…」
エルシールの言葉に日光は何も言い返せない。
彼女に言われるまでもなく、日光も当然理解している。
ランスは間違いなく悪人だ。
脅迫はするし、殺しも平気で行う。
何故そこまで割り切ることが出来るのか、日光はそこが不思議だった。
欲深くもあるが、そこまで執着もする訳でも無いし、欲しいものは自分の力で手に入れる、そんな人間だ。
だが、それでも人類に害を与える人間かと言われれば微妙だ。
我侭で強欲で女好きだが…それだけだ。
「でも…優しくて頼りになる人でも有ります。勿論普通にしてれば、という言葉はつきますけど」
悩む日光に対し、エルシールは苦笑しながら言葉をかける。
「そうですね。ランス様は優しい方なのだと思います。勿論その優しさは女性にしか向きませんし、不器用では有りますが」
シャロンも同じように苦笑する。
ランスという人間は非常に誤解を受けるタイプの人間で、好き嫌いはハッキリと分かれるだろう。
基本的には自分のやりたい通りに行動した結果、それが良い方向に転がりやすいというだけだ。
「それでも…もし藤原石丸を英雄と言うのであれば、間違いなくランスさんも英雄です。私はそれを間近で見てましたから」
そう断言するエルシールの顔には何の迷いも無い。
「…何故使徒のあなた達がそれほどまでにランス殿に肩入れをするんですか」
それは日光の素朴な疑問だ。
目の前にいるのは間違いなく使徒であり、人類の敵なのだ。
「私達は人間であった頃からランスさんの側に居ましたから…」
「ランス様には命を救ってもらった恩が有ります」
「…本当にそれだけなのですか?」
2人の使徒の言葉にも日光は疑問に思う。
命を救ってもらった恩が有る…確かにそれは大きいだろう。
自分もランスに命を救ってもらった身だ。
しかし、魔人の使徒である彼女達が何故そこまでランスを助けようとするのか…日光にはそれが分からなかった。
魔人とその使徒を信用することが出来なかった…それは人として当然の感情とも言える。
「…それ以外にも勿論有ります。ですが、私達の口からそれを言う事は出来ません」
「ランス様が話していない以上、私達も決して口にすべき事ではないと思っています」
日光の事に2人の使徒の顔が曇る。
その態度は勿論日光は気になったが、2人の態度を見れば絶対に話してくれないだろうという事は分かる。
何故なら、その2人の顔にあったのは悲しみだったからだ。
(…ランス殿に関わる事に何かあったと考えるべきでしょうか)
思えば、日光はランス達が自分達に過去を話してくれた事が無かった事を思い出す。
日光も特に疑問には思っていなかった。
分かっていたのは、ランスという人間がとにかく強く、そして魔人とも関係があるという事だけだ。
勿論後者だけでも相当にショックだったのだが、それでも日光はランスを信じていた。
ランスが魔人打倒を考えているのは、紛れも無い事実だからだ。
「長々と失礼致しました…今宵はゆっくりお休み下さい」
エルシールは話は終わったと言わんばかりに一礼すると、そのままシャロンと共に部屋から出て行く。
残された日光は彼女達の言葉、そして先程のケッセルリンクの言葉を思い返していた。
「私の取るべき道、か…」
そう言葉に出すが、自分がどうしていいのかまだ分からなかった。
日光は成熟した大人ではなく、まだ思春期の少女だった。
翌日、ケッセルリンクは体が重いながらも心は非常に充実しながら目を覚ました。
「何だ、もう起きたのか」
「…朝からそういう行為は感心しないな」
目が覚めた時、自分の体に遠慮なく触れているランスを見て苦笑する。
だが、決して払いのけるような事はせずにされるがままになっている。
「ん…」
しばらくランスの手を好きにさせていたが、流石に胸の先端に吸い付かれては話は別だ。
ケッセルリンクはランスの頭を優しくつかむと、そのままランスの口を胸から離す。
「む」
「む、じゃない。今は朝だ。私にとっては辛い時間だ。本格的に辛くなる前に、体を清めたい。それはお前もだろう」
二人の体は昨夜の情交の跡で汚れている。
ベッドのシーツも汚れているし、何よりも部屋の外では使徒が待っている気配がある。
「フン、分かった分かった。まあ俺様も満足したからな。大人しく風呂にでも入るか」
「そうしてくれ。加奈代、悪いが後を頼むぞ」
「はーい。お二人はゆっくりとお風呂に入ってくださいねー。もう準備は出来ていますからー」
ケッセルリンクの言葉に加奈代が遠慮なく部屋へと入ってくる。
二人の行為の残り香が強いが、加奈代はそれに対して満足気な笑みを浮かべる。
主が非常に気分が良いのがその空気でわかる。
そして何よりも、ケッセルリンクの裸身が加奈代には美しすぎた。
「はぁ…相変わらずケッセルリンク様はお美しいです」
「何だお前。相変わらず女が好きなのか。いかんぞ、同性愛は不健全だ」
「お前はそういう所は気にするのだな…」
「まあまあ。それよりもお二人ともお風呂に入ってきてください。私は後始末をしておきますので」
全裸のランスに対して全く気にする様子もなく、加奈代はベッドのシーツを綺麗に畳む。
「では頼むぞ、加奈代」
「はーい」
そのまま風呂場に消えていく二人を見て、加奈代はニコニコと微笑んでいた。
「いやー、ケッセルリンク様凄い嬉しそうですねー」
使徒である加奈代にとっては、今はケッセルリンクが自分の主。
その主があれほど嬉しそうだと、使徒としても嬉しくなる。
「それにしても…相変わらず激しいですねー」
二人の情交の跡を見て、加奈代は少し呆れながらシーツを畳む。
「それにしても…一緒にお風呂に入ったらどうなるか、ケッセルリンク様も分かっていらっしゃるのにねー。やっぱり好きだからでしょうねー」
その加奈代の予想は当然ながら当たっている。
風呂に来た二人だったが、早速ランスがケッセルリンクの体をその手で洗っていた。
勿論タオルなど使わずに、その手を使ってその全身を洗っているのだ。
「全く…私は朝は辛いと言ったはずだ。それなのにお前という奴は」
「がはははは! 本当に嫌ならそもそも俺様と風呂に入る訳が無いだろう。つまりお前が俺様を誘ったんだ」
「それは詭弁だ。私は純粋に朝が辛いだけだ」
夜の女王と称されるケッセルリンクは夜の間は敵無しと称される程に強い。
半面、それ以外の時間では体質的に戦うのが辛いという一面がある。
ただ、それでも並の魔人をも凌ぐ力は持っているとされている。
その魔人ケッセルリンクが抵抗をする気もなく。人間の手で体を洗われているなど誰も想像も出来ないだろう。
「相変わらずでかいな。ここまで揉み応えがある奴もそうはおらんな」
「それは褒めているのか? お前はやっぱり女の口説き方が下手だな。ん…」
ランスの言葉にケッセルリンクは苦笑しながらも、ランスの頭に手を回すとそのままキスをする。
ケッセルリンクの大きな胸を揉みながらもランスは彼女の口を味わう。
そしてそのまま下半身に手を伸ばそうとするのをケッセルリンクが止める。
「流石にそこまではダメだ。皆が待っているからな」
「何だと。お前は俺様のハイパー兵器の状態を見てそう言っているんだろうな」
ランスのハイパー兵器は既に臨戦態勢であり、正直すぐにでもケッセルリンクに挿入したいくらいだ。
だが、ランスという人間はやらせてくれるなら無茶はしない。
オシオキでセックスはするが、それはランスを嵌めた者であったり、敵である者だけだ。
「これで我慢してくれ」
ケッセルリンクは備え付けてあったマットの上に横たわると、そのままランスの手を引いて自分の上にまたがらせる。
そしてそのまま大きな胸でハイパー兵器を包み込む。
「お、そうか。こういうのもあったか」
「ああ。ちょうど良く私の胸は泡まみれだからな。だから…好きに動いてもいいぞ」
ケッセルリンクの顔は朱に染まっており、ランスとしてもそんな表情をされれば当然その気になる。
「まあ今は朝だからな。軽く一発で許してやるか」
そのままランスはケッセルリンクの胸を堪能した。
「で、お前は朝になったら寝るのか? 俺様と居る時はそんな事も無かったが」
「普段はそうだな。何しろ私が本気で戦えるのが夜だけだからな。だが…最近になってそうでも無いという事が分かってな」
風呂から上がり、二人で体を乾かした後で2人は着替える。
ランスは何時もの緑の服を着て御満悦だ。
ギャングのボスをしていた時は黒を基調にした服が用意されていた。
それを用意したのは勿論加奈代だったが、スラルの要望でランスの服の殆どが黒になってしまった。
ランスは不満を出しながらもその服を着ていたが、こうして加奈代がランス好みの服を用意をしてくれた事は予想外に嬉しいことだった。
「お前と共に行ったダンジョン…あの奇妙な迷宮を覚えているか?」
「ああ。電卓キューブだな。もう何回も行ってるから名前を覚えたぞ」
電卓キューブ、それはランスが運命の女と共に訪れた迷宮。
そこにはランスの運命の女の持つ道具が用意されている。
シィル、かなみ、志津香、シーラ、ミラクル、チルディ、千姫等と電卓キューブに向かっていた。
そしてここで出会った女…ケッセルリンクとジルが運命の女だと判明した。
その時に手に入れたのが、ケッセルリンクの手元にある手袋だ。
ケッセルリンクはその手袋を装着する。
「お前と共に手に入れたこの道具…不思議とこれをつけていると昼でもそこまで力が落ちない。全力には程遠いが、これがあれば普通に昼でも生活は出来る」
「ほう。便利だな」
「便利ではあるのだが…正直魔人になってから効果を発揮しているのが薄気味悪くてな。それに…魔人の私がこれを使ってもいいのか迷ってな」
ケッセルリンクにとってはこの手袋はランスと共に手に入れた唯一無二のものだ。
だからこそこれを大事にし、滅多に着用することも無かった。
これはあくまでも『カラー』としてのケッセルリンクが手に入れたものであり、『魔人』ケッセルリンクが使うのは気が引けた。
だが、それでも時にはつけたい時もある。
なのでたまたまこれを着用して朝まで起きていたのだが、その時は不思議と体がそこまで辛くはならなかった。
もしかしたらこれこそが自分の持つ道具の力なのかもしれないと思ったが、そこには大きな葛藤もあった。
魔人の自分がこれをつける価値があるのか…そう思ってしまったのだ。
「使えるものは何でも使えばいいだろ。お前だって俺と敵対する気なんて無いだろ」
「それはそうだが…」
「だったら変な遠慮するな。まあお前が周りを誤魔化すためにつけないというのも手だな」
「…成程、そういう使い方もあるか」
ランスの言葉はケッセルリンクの発想には無かった。
魔人になってからどうしても力押しの戦いになってしまっている。
カラーだった頃は頭を使って戦っていたが、今はもう昔のような戦い方が出来ない。
なのでランスの言う事に成程とも思ってしまった。
「未来において魔人同士の戦いが起きないとも限らない…いや、既に魔人同士の小競り合いも多く出ている。ならば自分の力を隠すのも意味があるか」
ケッセルリンクはランスの言っていることも尤もだと思う。
魔人となって長いが、魔人同士の争いがこの先起こらないとも限らない。
なのでその時に向けての布石を用意しておくのもいいか、と思う。
「ふぅ…やはり魔人として強くなりはしたが、どうにも戦い方が雑になっていたのかもしれないな…」
魔人なのでそもそも小細工は必要ない。
何しろ無敵結界があるだけで魔人は文字通り無敵なのだから。
「それよりも…ランス、昨日の話の続きと行こう」
「何だ、まだあるのか」
「色々と話した方が良いだろう。これから先のためにもな」
そしてケッセルリンクの城にて普通に朝食が始まり、ランスとスラルとレンとハンティは平然と平らげていく。
日光だけは、やはり魔人の城という事も有り緊張をしている。
日光からすればランスが図太すぎるのだ。
「ケッセルリンク…お前、朝なのに大丈夫なのか?」
「少しならば問題有りません。それに皆をこれ以上城に留めておくのも不安があります。魔人達がどう動くは私にも分からないので」
魔人というのは非常に気紛れだ。
正確には、ケッセルリンクの所を訪れる者たちが気紛れだと言うべきだろう。
「それでさ、黄金像を探すといっても手掛かりはあるの?」
レンの言葉にケッセルリンクは首を振る。
「生憎とな…私はランスのように物を探す才能は無いようだ。それは使徒達も同じだ。私が闇雲に探すよりも、ランスの直感の方が頼りになると思う」
「それは間違ってはいないな。我が知る限りでもランスは必ず目標の物を見つけてきていた。そういう力があるのだろうな」
ケッセルリンクの言葉にスラルが頷く。
これまでの冒険でも、ランスは最終的に目的の物を必ず見つけ出していた。
これだと決めたものは最終的に必ず見つけ出していた。
ランスの持つ剣もそうだし、魔封印結界に必要な聖なるアイテムも最終的には見つけ出した。
恐らくはそれがランスの才能なのだとスラルは見ている。
「それもいいけどさ。あたしとしても改めて聞いておきたい事があるんだけどいいかい?」
ハンティが真面目な顔でランスを見る。
「む、なんだ。俺様があまりにいい男だから見惚れたか」
「馬鹿言ってんじゃないよ。あたしが聞きたいのは一つ。魔封印結界についてさ。あんた等はそれを使って魔人を倒した事があるんだろう」
「! 魔人を倒した事がある!?」
ハンティの言葉に日光が文字通り飛び上がる。
それほどまでに、ハンティの言った言葉は日光にとっては衝撃的だった。
「ああ…あれか。あれは確実性に欠けるから駄目だな。直接ぶっ殺すのが一番手っ取り早い」
「悪くない手段だとは思う。だが、ランスの言う通り相手と場所を選びすぎる。それに必ず倒せるという保証も無い。弱らせた所で無敵結界の前には無力だ」
「…そうかい。それでも手段としては必要なものだとは思うけどね」
ハンティはケッセルリンクから魔人トルーマンを倒した時の話を聞いていた。
それを聞いた時ハンティは心底驚いたが、ケッセルリンクがそんな冗談を言うはずが無いのでそれを信じた。
「ランス殿! 人は魔人に対抗できる手段があるのですか!?」
「何だ突然。あるに決まってるだろ。魔人の無敵結界は確かに面倒だが、それさえ何とか出来れば意外と何とかなるもんだ」
これまでにランスは何体もの魔人を倒してきている。
勿論全ての魔人は強く、一筋縄ではいかない相手ばかりだった。
中でも魔人ノス、魔人カミーラはその強さがずば抜けていただろう。
「…何でそれを教えてくれなかったのですか」
日光の非難するような目にもランスは全く顔色を変えない。
「手段の一つだからだ。それがあれば魔人を倒せる訳じゃない」
ランスにとっては魔封印結界も魔人を倒す手段の一つに過ぎない。
魔剣カオスは魔人にとっては特効が有り、カオス自身のやる気と殺意も合わさり魔人に対して絶大な力を発揮していた。
半面、やる気が無い時はその切れ味は劣るが、それでも並の剣よりも遥かに強力なのが魔剣カオスだ。
「ランスの言う通りだ。それがあれば魔人に対抗できるという考えは取らない方がいい。あくまでも手段の一つと考えるべきだ」
「そうねー。対抗は出来るけど確実性がある訳じゃ無いしね。それに割と面倒くさいし」
スラルとレンもあまり乗り気じゃないのを見て、日光は尚更混乱する。
ランス達の言って居る事はまさに人間にとっては光明だ。
だが、それすらもランス達にとっては不満だと言っているのだ。
「聖なるアイテムを4つ集めるのがまず困難だ。それに一度使った結界が破られれば結局は集めたアイテムも無駄になる。その一撃で倒せない限りは、どうしても使いにくくなる。あくまでも我にとっての見解だがな」
スラルにとっては無敵結界が破られたのは驚きだったが、元々神や悪魔には無敵結界は意味をなさない。
ならば、神が作ったであろうアイテムが魔人にとって有効なのはある意味当然の事だととらえている。
理由は分からないが、恐らくは意図的にそうなっているのではないかとスラルは推測している。
無敵結界を何処で誰に授かったのかは分からないが、抜け穴も存在しているという事だけは確かだ。
ランスの剣にバスワルドの力が宿れば魔人を斬れるのも同じ理屈だ。
ラ・バスワルドは神なのだから。
「そんな…ですが一体誰がそんな力を見つけたのですか? そして何故ランス殿はそれを知っているのですか」
日光の言葉にスラルとケッセルリンク、そしてその使徒達が苦い顔をする。
顔色を全く変えないのは事情を知らないハンティと、特に気にしている様子もないランスとレンの二人だけだ。
「誰が見つけたのかは俺様も知らん。AL教の奴等だろ」
魔封印結界は元々はリーザス解放戦において、魔人サテラに対抗するためにセルから教わった技術だ。
その時はリーザスに伝わる武具と、セル自身が触媒となる事でサテラに大ダメージを与えることが出来た。
魔人トルーマンと戦った時も、聖なるアイテム3つとエンジェルナイトのレンが触媒となる事で、トルーマンをほぼ無力化する事が出来た。
その魔封印結界がLP期の神官であるセルが知っているのだから、まずAL教関係だろうとランスは思っている。
特に興味も無いが、AL教も中々に胡散臭い連中も多かったので特に関わろうとも思わなかった。
それに現法王のクルックーがランスの女だという事もある。
「AL教ですが…でも現在は」
「小さく続いてはいるだろう。だが、こうまで人類が追い詰められてはAL教から話を聞くのも難しいだろう。カイズも壊滅しているしな」
スラルはカイズの事を思い出す。
何故かハニーが色々と店を出したり、凶悪なダンジョンがあったりと驚きだらけだったが、色々な収穫もある場所でもあった。
「そうですか…ではランス殿達はその魔封印結界で魔人を倒した事は有ると…」
「その通りだ。魔人の一人を倒した。だが、その魔人は魔人としてはそれほど強い存在ではなかった。だから上手くいったという所も有る」
魔人トルーマンは魔人としてはそこまでの実力者では無かったとスラルも思う。
尤も、スラルが知る魔人達がカミーラやケッセルリンク、そしてメガラスやガルティアと強者が多かったというのも理由ではある。
「そういやスラルちゃんはジルと魔封印結界とやらに関して話してただろ。何か無いのか」
「現物が無いのに調査も何も出来る訳が無いだろう。それに我は神魔法に関しては才能が無いからな…検証も出来んから何も言えないな」
「…ジル、ですか? あの魔王と同じ名前なのですね」
ジルの名前が出た事で日光の顔色が暗くなる。
魔王ジルこそが今の地獄の時代を作った魔王。
その牙は魔物にも向けられ、人と魔物、両方にとっても恐ろしい時代なのは間違いない。
そんな魔王と同じ名前が出てくれば、日光としては複雑な気持ちになる。
「ジルは俺様の奴隷だ。その奴隷が今や魔王になっているのだからな。許されんことだ」
「…は?」
ランスの言葉に日光は茫然とした顔をする。
「あの…ランス殿。今なんと?」
「魔王ジルは昔は俺様の奴隷だったと言ったんだ。あの魔王ナイ…なんちゃらとかいう奴が無理矢理魔王にしたがな」
ランスは本当に忌々しそうな顔で言い放つ。
そこにあったのは確かな怒りの感情だった。
「え…魔王ジルが…魔人を倒すための術を編み出した…?」
それは日光にとってはまさに衝撃の事実だった。
自分達を苦しめている魔王が、その魔王の部下である魔人を倒す手段を編み出したというのだ。
疑問に思わない方がおかしい。
「ランス殿は…そのジルの事を知っていたのですか…?」
「そういや言ってなかったな。あいつは俺様の奴隷だ」
「そんな…」
日光はとうとう崩れ落ちた。
それは信じていた事が一気に崩れ落ちたかのような感覚だった。
日光はランス達を信じていた。
だが、そのランスがまさか魔王ジルと深い繋がりが有るとは思っていなかった。
「一言言っておくぞ、日光。確かに我等と魔王ジルには面識がある。かつてジルと共に魔人と戦ったのも事実だ。だが、それは魔王になる前の話だ」
「でも…それでも…!」
日光は立ち上がるとそのまま部屋から走り去っていく。
「あ、おい日光!」
ランスが追いかけようとするが、
「待てランス。私が行こう。私が行った方がいい」
「ケッセルリンク! だが今は朝だぞ!?」
「いいのです。それにジル様の事に関しては私の口から話した方が良いでしょう」
そのままケッセルリンクはローブを纏うと、そのまま日光を追っていく。
ケッセルリンクが消えた後で、
「…何だあいつ」
「日光からすれば我等もまた魔王と繋がりが有ると思われているのだろう。そうでなければ魔人がランスに好意的なのが説明がつかないのだからな」
スラルも苦い顔で日光が消えた後を見ていた。
(日光は魔人への憎しみが強い…だから話していなかった。こうなる可能性は予見できたのだが…)
「…悪いね。あたしが余計なことを言ったみたいだね」
ハンティもしまったという顔をしている。
その辺りの事も全て知っているとハンティは思ってしまったのだ。
「構わん。それにケッセルリンクなら大丈夫だろ」
「…随分と信頼しているんだね」
ランスの言葉にハンティは驚いた顔でランスを見る。
まさかそこまでケッセルリンクが信頼されているとは思ってもいなかった。
いくらケッセルリンクがランスの事を愛していると言っても、ハンティからすれば人間がどう思っているのかは分からなかった。
やはりハンティとしても人間には不信感は有る。
ただ、ランスはスケベでとんでもない女好きではあるが、一定の信頼を置いてもいいとも感じていた。
「あいつは女から滅茶苦茶人気があるからな」
カラーの時からケッセルリンクの女からの人望は凄かった。
一種のカリスマとも言っても良いだろう。
「任せておけ。悪いようにはならん」
だからランスは全く心配していなかった。
日光は富嶽を片手に木に向けて放っていた。
怒りに任せた日光の刀は刀に突き刺さるが、日光の手が痛くなる。
「怒りで刀を振るっては刀が泣く。君の刀はそのように使うものではないはずだ」
「!」
日光は後ろから声をかけられて、反射的に声の主に刀を振るう。
声の主に向けられた刀はその手に持つ剣で止められる。
「私が全てを話そう。ランスは自らの意思ではあの時の事を話さぬはずだ」
魔人ケッセルリンクは憂いの帯びた目で日光を見つめていた。
突然ですがとうとうPCが壊れました
ちょっと怪しい感じがしてたんですが、何の前触れも無く突然と
サルベージ作業などもあり、更新する事が出来ませんでした
とりあえずPCを借りて…という感じです
どうせなら良いPCを買ったのですが、届くのはもう少し後…
その間更新が出来ないです 申し訳ありません…