ランス再び   作:メケネコ

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運命の言葉

「カミーラ、何か言う事はあるか?」

「………」

 

魔王スラルの問いに魔人カミーラは何も答えない。

元々カミーラはあまり協力的な魔人ではないが、だからと言って邪魔をする事も無かった。

スラルとしても、まさかカミーラが人間に興味を持つとは思っていなかったため、命令をしなかった事でまさかランスの命を狙うとは予想外だった。

 

「まあいい。今後我が捕えた人間に『手を出す事は許さん』、いいな」

「…御意に」

 

魔王の言葉にカミーラは素直に頷く。

魔人は魔王の命令には逆らう事が出来ない。

例えそれが死であっても、魔人は魔王の命令には絶対服従だ。

 

「言いたい事はそれだけだ」

 

スラルはそれだけど言うと姿を消す。

カミーラはしばらくの間、スラルが消えた空間を見ていたが、その内面白くなさそうにため息をつく。

 

「カミーラ様…」

「構わん…予想はしていた」

 

七星の気を使うような声をカミーラは手で押さえる。

魔王の命令はカミーラにとっても想定内だ。

最初からあの男を殺そうと思えば殺すことも出来たが、あの男の戦いぶりを見て気が変わった。

 

「それに『手を出すな』と言われただけだ…会いに行くなと言われた訳では無い」

「カミーラ様…それは」

 

七星は主の言葉の意味を察する。

それは七星にとっても「まさか」という思いだった。

自分の主が、人間を気にする等考えてもいなかった。

しかし現実にカミーラには楽しげな笑みが浮かんでいる…今までは相手を『狩る』ために笑っていた事はあったが、会いに行くという事で笑った事など無かった。

 

「ククク…スラルはあの人間が余程気に入ったと見える…」

 

カミーラの笑いがどこまでも木霊していた。

 

 

 

「と、いう訳で俺がつく事になったからよろしくな」

「何がよろしくなだ。誰だ貴様」

 

魔王であるスラルに新たに用意された部屋には、お目付け役として魔人ガルティアが派遣されていた。

ランスは不満顔を隠さずにガルティアを睨む。

 

「落ち着きなさいよ、ランス。流石にもう一度カミーラが来ても困るでしょ…それにしてもこれって何なのよ」

 

レダはベッドの上からガルティアを半眼で睨む。

別にガルティアに対して敵意がある訳では無い。

自分達に宛がわれた部屋だというのに、今のこの状況に対して呆れていた。

 

「あんた…これ全部食べるわけ?」

「おう。美味そうだろ」

 

そこには山のような…まさしく言葉通りに山積みにされている食料があった。

ガルティアはそこから味わうように食べていく。

 

「まるでカロリアみたいに食うな。お前ムシ使いかなんかか」

 

それはランスにとっては何気ない言葉だったかもしれない。

最早ムシ使いは彼女しか存在していない、それを分かったの上の言葉だったが、

 

「おう、俺はムシ使いだがそれがどうかしたか?」

「何?」

 

ランスはもう何度目か忘れたが、その言葉に非常に困惑する。

ランスの認識ではカロリアが最後のムシ使いであり、他のムシ使いはゼスによって滅ぼされたはずだった。

だが目の前の魔人はそのムシ使いだと言う。

(うーむ…まあ魔人は長生きしてる奴も多いからな。ムシ使いの魔人がいてもおかしくはないか)

だからその程度の認識でしかなかった。

悲しいほどに男には興味が無いのがランスという男だった。

 

「それよりもお前も災難だったな。よりによってカミーラに目をつけられるとはなー」

「俺様にかかれば余裕だ余裕」

「そうか。まぁカミーラは滅茶苦茶強いからな。そのカミーラに狙われて生き残っているだけでも大したもんだ」

 

ガルティは本心からランスに感心していた。

カミーラの強さはガルティアも十分すぎる程理解している。

人間だった時にカミーラとぶつかった事もあるが、無敵結界が無いにも関わらず手も足も出なかった。

魔人になってからはカミーラは自分に殆ど興味を失ったようだが、それでもその強さは変わらない。

何しろティラノサウルスの魔人すらも簡単に倒してしまうほどだ。

 

「どうだ? お前達も食うか?」

「ふん、貰ってやる」

「あ、私も」

 

ガルティアが差し出してきた食事をランスとレダも受け取る。

 

「うーむ…今一舌にあわんな」

「まあそうかもね」

 

ランスの苦言をレダは十分に理解している。

(時代が違うからね…確かにあの時に比べればちょっと大味かも)

何しろここはランスが住まう時代のずっと前の時代だ。

食材も違うし、調理技術も違うため、GI、LP期に生きているランスには舌に合わないという事もあるだろう。

が、その言葉がガルティアの琴線に触れたらしい。

 

「あん? まずいのってのか?」

 

ガルティアの目がギラリと光る。

彼にとっては食事は神聖なものであり、作ってくれた者達への感謝は絶対に忘れない。

 

「まずくはないが…なーんか合わないな」

 

カラーの村でも食事には少々苦労したが、それは魔王城に来てもあまり変わらないようだった。

(うーむ…俺様の城での食事に慣れすぎたか…)

ランスも普段は冒険に出ている事が多かったため、食事にそこまでの文句は言わない。

冒険の中で美味い食事に出会える事など無いと、自分を育ててくれた女戦士に教わったし、実際シィルと出会うまでは食事にはあまり気を使っていなかった。

シィルは料理技能こそ持ってはいないが、ランスの好みを知り尽くしているためにランスの舌に合う。

そしてアタゴの店ではツケで食事をしているため、食事には困った事は無かった。

 

「合わない? お前普段からどんなもん食ってたんだ?」

「ラーメンとかへんでろぱとか…まあ沢山だな」

「ラーメン? へんでろぱ? なんだそりゃ」

 

聞いた事の無い料理名にガルティアは首を傾げる。

この時代にはまだ女の子モンスターのらーめんはいないし、へんでろぱといった料理もまだ確立されていない。

実際にガルティアが今食べている料理も、焼いたもの、揚げたもの、スープ類が殆どだ。

 

「…ん? これは」

 

ランスは山積みになった料理の中から、一つの料理を見つけ出す。

いや、料理というよりも、その料理の器と言ってもいい。

 

「おお! これはまさかヒラダイラ貝! まさかこんな所にあるとは!」

「あーそれも美味いよな」

 

ランスの趣味には貝殻の収集が有り、その手入れはランス自らが行っているほどだ。

そして今のランスの手の中にあるのは、ランスも図鑑でしか見た事の無い貝だ。

ランスは慎重に閉じている貝を剥がすと、そこには名前の通りの平べったい中身が芳醇な香りを立てている。

 

「うーむ…これは美味いな。コリコリとした食感がたまらんな」

「おう、それはいい食感してるよな。でも中々見つからないんだよな」

「がはははは! まさかこんな所でこんなお宝に巡り合えるとは!」

 

既にランスは上機嫌になっており、中身をおいしく食べると、その殻を大事に仕舞う。

そして皿に置いてある唐揚げに手を伸ばすと、

 

「おっ、これはこかとりすだな。うむ、この唐揚げは美味いな」

「これも美味いよなー。中々手に入らないけどな」

 

こかとりすはLP時代にも残っている高級食材だ。

それはランスの好物であるへんでろぱの材料であるが、それ以外にもその肉を使った料理はランスの好みだ。

 

「あ、本当だ。これ美味しい」

 

レダもこかとりすの唐揚げには舌鼓を打つ。

柔らかくてジューシーな味わいはやはり下界に来ないと味わえない。

ランスと共に行動してからはシィルやロッキーの手料理を食べて来たが、やはり冒険の際の料理であった。

カラーの食事も美味しかったが、この料理もかなりのものだ。

 

「こかとりすも美味いんだけどなー…もうちょい味の幅が欲しいよな」

 

こかとりすは体が大きいため肉が沢山取れるが、やはりガルティアにかかればそれは一食分にも満たない。

それにモンスターの中でも中々の強さのため、普通のモンスターでは手も足も出ない。

それ故に肉はこの時代では貴重であり、中々新しい料理が作られない現実もあった。

(こかとりすを食ってたら余計にへんでろぱが食いたくなったぞ…まったく、シィル達は何処におるんだ)

 

「で、ところで『へんでろぱ』ってどんな料理だ?」

「へんでろぱはへんでろぱだろ」

「いや、答えになってないから」

 

(…そういやへんでろぱの材料がこかとりすって事以外俺様も知らんな)

ランスは自分では料理をしないため、へんでろぱがどのような料理なのか説明できなかった。

 

「俺も食べた事ねーな…食いたくなってきたが今は無理だしな…」

 

流石のカミーラも魔王の命令には逆らう事は出来ないだろうが、それでも魔王の目的を果たすまでは魔王城からは離れられない。

世界の食を食べる事が趣味のガルティアには残念だが、それ以上に魔王の―――スラルの願いを叶えてやりたかった。

本来ならばすぐにスラルもここに来たいだろうが、新たな魔人であるケッセルリンクの願いを叶えるのに遁走している。

 

「まあもう少しの辛抱か」

「あん? 何がだ?」

「何でもないさ。その内分かるだろうしな」

 

その後も三人は食事を続けた。

ランスが魔王城に来てから初めての食事は、魔人と共に過ごすという意外な結果に終わった。

 

 

 

「夜は私が来る事になった。よろしく頼む…というのも今更だな」

「本当にねー。ケッセルリンクが魔人になったっていうのに、この男は全く変わってないし」

 

夜にはケッセルリンクがお目付け役として派遣されてくる。

ケッセルリンクはレダと顔を合わせ笑いあう。

(私はエンジェルナイトなのに、こうして魔人と笑いあってるなんて変な話よね)

ランスと出会ってから自分の環境は劇的に変わっている。

人間と共に冒険し、カラーと共に魔人と戦い、そして魔人と共に食事を取り、そして魔人と共に笑いあっている。

 

「それよりもケッセルリンク…魔人になって変わった事無いの?」

「大変わりさ。日光がまったくダメになってしまった…」

 

ケッセルリンクの体質は完全に変化しており、もう昼間では以前のように戦う事が出来ない。

その代わり夜の間は以前よりも遥かに強い力を扱う事が出来ている。

以前はランスにはとても敵わなかったが、今は自分はランスを越えていると確信していた。

 

「ふーん…大変だな」

「そうだな、割と大変だ。だが命があるだけでも私としてはありがたいがな」

 

ケッセルリンクは死にかけている所を魔王によって救われたため、魔王に対しては特に恨みを持っている訳ではない。

体質が変わっただけで、他の何が変わった訳ではない、ケッセルリンクにとってはその程度の認識だった。

 

「魔人になったって事は使徒も作るのか」

「使徒、か。特に考えた事は無かったな…」

 

ケッセルリンクはそこで薄く笑ってみせる。

魔人になれば自分の使徒を作る事が出来るため、使徒になるという事は魔人同様永遠の命を授かる事となる。

 

「ランス、お前はどうだ? 私の使徒になるか?」

「アホか。何で俺が自分の女の使徒にならなければならんのだ」

「そう言うと思ったさ」

 

ランスの言葉にケッセルリンクとレダは笑う。

実にランスらしい言葉だとむしろ感心してしまうほどだ。

(だが…果たしてこれからどうなるのかがな…)

魔王スラルからは既にランス達の処遇は聞かされていた。

ランスとレダの二人が、魔王スラルの魔人候補と聞いた時は正直複雑な気分ではあった。

だが同時にランスとレダとこれからも長い付き合いが続く、という事は正直魅力的でもあった。

 

「しかしランス…お前はあのドラゴンの魔人を知っているのか?」

「ああ…カミーラの事か。確かに俺様が倒してゼスで封印されてたはずなんだがな…何故かここにいるし、そもそもカミーラがあんな性格になってるのも訳が分からんぞ」

 

ランスが一番分からないのはやはりあの性格の変化だ。

昨日のカミーラの態度はランスの知っているカミーラでは無いように思えた。

あの時のカミーラの目は、今思い出してもランスですらも怯むほどだ。

だからこそ余計にランスは混乱してしまう。

やっと知ってる奴が居たと思ったら、そいつは自分の事を知らずに、あまつさえ性格もほとんど別人とくればランスとしても頭を捻らざるをえない。

ここでのカラーとの出会い、そして違ってしまっている魔王、知っているはずなのにまるで別人のような魔人。

ランスとしてもこの状況を整理するので手一杯になってしまっていた。

(まあ考えても無駄だな。後は流れにまかせるしかないな)

だからランスはもうこれ以上は考えるのをやめる。

取りあえずはこの状況をどう打破するか、それに頭を巡らせる。

やはりこの状況…魔王に捕らわれた状態というのはまずい。

 

「ケッセルリンク。俺達をここから逃がす事は出来んのか」

「…魔人である私に凄い頼み事をするな。逃がしてはやりたいが…今の状況では無理だ。お前達を逃がさないように命令を受けている」

「そうか」

 

ランスも流石にそこまでは期待していない。

魔人は魔王の命令には絶対服従、それはランスも知っているため、いくらケッセルリンクでも難しいとは思っていた。

幸いにも武器はあるし、レダも自分の武器と防具をいつでも用意できるためその点は問題は無いが、この大きいであろう城から安全に逃げられる保証は無かった。

今はまだ博打に出る状況ではないとランスも分かっている。

だから何とか外に出る手段をランスは探っていた。

 

「すまないな。ランス、レダ」

「別にいいわよ。流石に魔王の命令には逆らえないでしょうしね」

「ふん、俺様ならば楽勝だ」

 

ランスは横になっていた体を起こすと、椅子に座っているケッセルリンクの元へ歩く。

そのままケッセルリンクを抱き上げ、さらには近くにいたレダも一緒に抱き上げる。

そしてそのまま二人をベッドに押し倒す。

 

「がはははは! このまま朝までお楽しみだ!」

「いや、ランスは本当にぶれないわね…」

「お前は少し危機感を持った方がいいと思うぞ」

 

レダとケッセルリンクは少し呆れた顔をしているが、特に逃げるような素振りは見せない。

ランスは手早く二人の服を脱がすと、いつもの早業で自分も裸になる。

 

「相変わらずこういう時は素早いな」

「才能の無駄遣いって言うのよ」

「お前らうるさいぞ。こういう時は素直に抱かれればいいのだ」

 

ランスは二人に覆いかぶさるとその胸に手を伸ばす。

 

「がははははー柔らかー」

「まったく…」

「はいはい」

 

 

 

―――翌朝―――

 

「…頭が痛いな」

 

翌朝目が覚めたケッセルリンクは少し痛む頭を抱えていた。

 

「大丈夫?」

 

レダが心配そうに声をかけるが、ケッセルリンクは大丈夫という風に手を振る。

確かに少し辛いが、少しずつ慣れていってるような気がしていた。

既に着替えは済ませており、体も洗い終えている。

 

「ああ…少し痛むだけだ。まだ自分の体に慣れていないだけだ」

「ふーん、大変だな」

「まったく大変だ。その大変な私を躊躇無く朝まで突き合わせのをやめてくれれば、楽になるかもしれないがな」

 

そう言うケッセルリンクの表情は柔らかい。

彼女も決して本気で言っている訳では無く、軽口のようなものだ。

 

「俺様だけのせいでは無いだろ。お前だって俺様から離れなかったではないか」

「そういうデリカシーの無い言葉は慎んだ方がいいと思うわよ。まあ今更言っても仕方ないと思うけど」

「確かに今更だな」

 

2人は笑いあう。

(女ってのは時々訳の分からん事で分かりあうな)

ランスと付き合いの長い女達にもそんな事があったような気がした。

 

「ところで俺達はいつまでここに居ればいいのだ」

 

ランスの不満はやはり自由に動けない事であった。

カミーラとの出会いから三日ほど立つが、その間は本当に出来る事が無かった。

外に出る事が出来ない為、やる事といえばガルティアと食事をするが、レダとケッセルリンクとセックスをする以外に無かった。

確かにセックスは楽しいが、このまま閉じ込められるのはランスとしても面白くなかった。

 

「すまないが私にも答える事は出来ないな」

「魔人であるケッセルリンクにも分からないの?」

 

レダは不満そうな顔をするが、それをケッセルリンクに言ってもしょうがないと思い直し、ため息をつく。

この状況に不満を抱いているのはレダも一緒だった。

 

ガチャ…

 

その時だった、何の前触れも無く扉が開かれる。

ガルティアかと思ってランスがその視線を向けた先には、魔王スラルが居た。

 

「ご苦労、ケッセルリンク」

「スラル様」

 

ケッセルリンクがスラルに跪く。

(魔王か…)

ランスは何度見ても『魔王』という存在と目の前の少女が合致しない。

 

「君が魔王か」

「そうだ。こうして話すのはあの時以来となるな。まずはお前の力を褒めよう。よくぞ魔人を倒せた」

 

それはスラルの心からの賛辞。

スラルは神により無敵結界を授かった。

それを得てからは魔人はまさに無敵の存在となった…それに対抗できるのは同じ無敵結界を持つ魔人だけだ。

それにより絶対的な階級社会が完成し、魔王であるスラルはまさにその頂点にいると言っていい。

そして魔人はその魔王の下の階級であり、間違っても人間が勝てる存在ではないはずだった。

しかし目の前の人間はその理を見事に崩して見せた。

確かにあのオウゴンダマの魔人は無敵結界を使ってはいなかったが、使えないように策を巡らせたのは間違いなくこの人間の力だ。

 

「俺様にかかれば余裕だ余裕」

 

ランスの言葉にスラルは笑う。

(それくらいの気概がある方がいい)

それでこそ自分の魔人に相応しいと思う。

 

「ランス、レダ、お前達に話がある」

 

その言葉にケッセルリンクが体を震わせる。

魔王スラルの目的はケッセルリンクも知っている…彼女が望むのは自分に望んだ事と同じ事だからだ。

 

「魔王が俺様に何の用だ」

「いや、どうしてランスはそう偉そうなのよ」

 

明らかに魔王に対する態度ではないし、レダもランスの言葉に思わず突っ込み入れる。

 

「ランス!」

 

ケッセルリンクが咎める様な声を出すが、スラルは笑みを浮かべるだけだ。

 

「話というのは他でもない。お前達…魔人となり我に仕える気は無いか?」

 

それはランスの運命を変える大きな一言。

ここから全ての歴史が始まったといってもいい。

その言葉は魔王の運命すら変えてしまう一言だった。

 

 

 

―――カラーの森―――

 

「そう…そんな事が」

 

ハンティ・カラーは女王であるルルリナからここまでの顛末を全て聞いていた。

カラーの里を襲った数々の困難、そしてその困難を乗り越えてきた存在の事、最後にはその存在が魔王に捕らわれた事。

だからこそハンティも苦虫を噛み潰した顔をする。

それほどの存在が居れば、恐らくはこの里は安泰だっただろう。

しかし魔人となってしまっては、新たな脅威が増えてしまった事になる。

この森はカラーにとっても割りと理想的な立地にある。

ドラゴン達はカラーには興味が無いだろうし、モンスターもいたずらにドラゴンを刺激したくは無い筈だ。

 

「はい…私達はこれからどうすればいいか…」

 

カラー達は皆暗い表情を浮かべているが、ハンティはそんな暗さを吹き飛ばすように笑う。

 

「大丈夫さ。今はもうモンスターもこの森にはいないみたいだしね。他のカラーも何れは合流できるようになるさ」

 

ハンティの言葉に皆が顔を上げる。

 

「ハンティ様…今何と…」

「他のカラー達と合流できるのもそう遠い日じゃ無いって事さ」

「本当ですか!?」

「ああ。もうここの場所はわかったからね。移動出来る環境を整えれば大丈夫」

 

ハンティ・カラーには瞬間移動がある。

自分以外の存在と一緒に瞬間移動をするのは危険だが、こうして連絡を取り合うだけならば何も問題は無い。

それにモンスターの動きもここ最近は大人しくなってきたため、大規模な移動も難しくないだろう。

 

「早速向こうと話をつけるさ。ま、期待して待ってなよ」

 

そう言うと早速ハンティの姿が消える。

その消えたハンティに向かって、カラー達は祈りと感謝をささげる。

こうしてカラーの命運は後の伝説のカラー、ハンティ・カラーによって守られていく。

カラーと人間が本当の意味で衝突してしまうその日まで。

 




感想欄で色々なご指摘、有難う御座います
後書きという形ですが、ここに感謝致します

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