そして見つけたダンジョン…魔物界にあるダンジョンなのでどんなものかと思ったが、それは普通のダンジョンだ。
LP期の人間界のダンジョンと何も変わらない、ごく普通のダンジョンだ。
ただ、モンスターは中々の強さがある。
「レン! コンテだ! そっちは任せる!」
「そっちのお断りマンとソードマスターはランスに任せる! 我はシロメとにょ~をやる!」
モンスターの群れは中々強力で、数も多いので流石に苦労する。
「邪魔だ! 死ねーーーーっ!」
ランスの剣がお断わりマンを打ち砕く。
モンスターの中でも硬さは上位に値するお断りマンでも、ランスの剣を防ぐことは出来ない。
「ふっ!」
日光はソードマスターと打ち合っていた。
近接戦闘系の女の子モンスターの上位種であるソードマスターは流石に強い。
強いが、富嶽を持ち彼女専用のアイテムを持ち、そしてレベルが上がっている日光ならば十分に戦える。
日光はソードマスターの片方の剣を弾くとそのままソードマスターを斬り伏せる。
動かないソードマスターを後目にランスと共にお断りマンに向かっていく。
「ライトボム!」
レンの魔法がコンテを吹き飛ばす。
流石にエンジェルナイトの魔力での光の魔法にはコンテは耐えられない。
そのまま無数のモンスターと共に光の中にのまれていく。
「にょ~」
気が抜ける声と共ににょ~がスラルに攻撃をする。
「っ」
その攻撃にはスラル一瞬ふらつくが、本当に一瞬だ。
元魔王だけあり、スラルは並の人間よりも遥かに耐久力が高い。
魔法使いの弱点である防御の低さというのがスラルには無いのだ。
「消えろ! デビルビーム!」
スラルの放った闇の魔法がシロメとにょ~を吹き飛ばす。
流石に上位モンスターだけあって、その一撃をまともにうけてもにょ~はまだ起き上がる。
「ふっ!」
そこを日光がその足を活かし、その勢いのままにょ~を居合切りで斬る。
それでにょ~も動かなくなり、取り敢えずモンスターの群れを全滅させる事が出来た。
「まさかここまで上位のモンスターが居るとはな…これはカラーだけでの攻略は難しかっただろうな」
「当然ですよー。私達は数を減らすわけにはいけませんでしたし。でもやっぱりランスさん達って凄い強いですねー。カラーだけなら始祖様無しでは戦えないですよ」
ウトスカは物陰から出てくると躊躇う事無くモンスターの死体を漁る。
「あ、お金があった。でもお金って私達にはあんまり使い道無いんですよね~。だからランスさんにあげます」
「何を言っておる。これは俺様達が倒したんだから俺様の金だ」
「そうですねー。でも私達カラーも人間の所から何れ買い物をするかもしれませんし。少し貰ってもいいですよね」
「分かった分かった。必要ならもってけ」
「わーい! ランスさん大好きー♪」
ランスは相変わらずカラーには甘い。
カラーが美人だけの種族という事と、リセットの事もあり本当にカラーに対しては色々な意味で寛大だ。
「それよりもお前はお前の仕事をしろ」
「はーい。任せてくださーい。どんな罠でも私にかかればちょちょいのちょいですよー」
ウトスカの言葉には全く嘘は無かった。
その手際の良さには日光は思わずため息が漏れてしまう。
「どうしたの? 日光」
「レン殿…いえ、やはりスカウト技能というのは凄いものだと思いまして…私だったらいくつ罠を発動させていたのかと思うと…」
「そうねー。ダンジョンの中ではそういった技能がモノを言うんじゃない? 私もランスと共に冒険して初めて理解したけどね」
ダンジョンというのは罠とモンスターで溢れている。
難しいダンジョンほど、凶悪な罠が多く危険が伴う。
だからこそ、良い宝が眠っていることが多い。
ランスはこういったダンジョンをクリアするのが好きなのだ。
「流石に魔物界のダンジョンだな。中々楽しめそうではないか」
ランスは上機嫌に剣を収める。
確かに強いモンスターも多く、ダンジョンの中も中々に複雑だ。
だからこそ、ランスは新たなダンジョンを楽しんでいた。
元々誰も知らない事を知るのが好きで、未知のダンジョンが見つかれば嬉々として攻略する。
その過程でかわいい女の子とセックス出来れば尚良し。
そんな考えのランスにとっては厳しいダンジョンは苦では無い。
「楽しむのはいいけどね。結構時間かかりそうじゃない?」
レンは大量に散らばるモンスターを見て、それらが動かないのを確認してから剣を収める。
たまにこんにちはのように復活するモンスターが居るので、警戒は怠らない。
ランスを守るために最大限の行動をするのがレンの役目だ。
「ウトスカ、どんな感じだ?」
「そうですねー…思った以上に複雑と言いますか…正直私はダンジョンに入ったのが初めてなので、こんなに疲れるとは思ってなくて…」
そう言うウトスカの顔には喜びもあるが、それ以上に疲労の色が濃い。
「ランス殿。彼女ももう限界です。ここは一度戻る事も視野に入れても良いと思います」
「ふーん、そうか。まあ今ならダンジョンから戻り放題だしな」
ランスはカイズでお帰り盆栽をようやく手に入れる事が出来た。
このアイテムが有る事で、より効率良くダンジョンの探索が出来る。
危なくなったら直ぐに地上に戻れるというのは、それだけで大きな利点となる。
「で、お前はどうだ。厳しいか」
「あはは…自分では大丈夫のつもりだったんですが、思った以上に神経を使いますね…」
ウトスカは初めてのダンジョンにワクワクしては居るが、やはり精神的な疲労は隠せない。
「罠の解除に失敗もしちゃいましたから…」
「そんなの気にするな。大した被害じゃ無いだろ」
一度罠の解除に失敗し、ダンジョン内に警報が鳴り響いた。
どういう理屈でそうなるのかは不明だが、罠とはそういうものなのだろう。
その所為でモンスターに奇襲されたが、それでもランス達の力で何とか乗り切れた。
「まあいい。お前が潰れたら何にもならんからな。一回出るか」
「それがいい。焦る必要は無いからな」
ランスの言葉にスラルが同意し、アイテム袋からお帰り盆栽を取り出す。
(しかし便利なアイテムだな。ランスが求めるのが分かるな)
そしてお帰り盆栽から生えている帰り木を折ると、ランス達はそのまま地上へと戻って来る。
ここは魔物界なので、ランスも魔法ハウスを建てる場所は慎重になる。
幸いにも、ウトスカはその点優秀なスカウト能力を持っており、魔物から適度に隠れられ、尚且つ魔法ハウスを展開出来る場所を見つけていた。
「はぁ~~~~~、生き返る~。この魔法ハウスが快適すぎてダメになりそう」
ウトスカは水を飲みながら幸せそうにソファに横になる。
「行儀が悪いですよ」
「魔法ハウスに戻っちゃったら一気に疲れが出てきまして…ランスさん達はよく神経が持ちますね。この後もセックスするんでしょ?」
ウトスカの言葉に日光は顔を真っ赤に染める。
「あ、あなたはよく簡単にそんな言葉が出てきますね…」
「カラーは人間の男が居ないと数が増えないから…その人間がカラーを狩ってるんだから、出会いが無いんですよねー」
日光はウトスカの言葉に沈んだ顔をする。
これまでの人間の行動を見れば、人間がカラーをどう思っているのか理解出来る。
性欲の処理というよりも、便利なマジックアイテム…そう思っているように見えた。
カラーの歴史はハンティから聞かされていたが、それでもそこまでやる必要が有るのか、それが日光の見解だった。
「ランスさんってその点理想何ですけど…始祖様がランスさんはダメだって言うんですよね。色々不都合があるとかで。私、ランスさんがタイプなんだけどなあ」
「…それはどうかと思いますけど」
日光は控えめにウトスカを止める。
ランスという人間は確かに魅力がある人間だと思うが、それ以上に問題も多い。
決して家庭を作ってそれを守る…なんて事は出来ない人間だろう。
「日光さんはどう思いますか? 人間の目から見てランスさんってどう見えるんです? カラーの目から見たら凄い魅力的な人間なんですけど」
ウトスカは目をキラキラさせて日光を見る。
「がはははは! 俺様は美形のいい男だからな。魅力的に見えるのは当然だな」
「いやー、美形はどうだろう。勿論悪くないとは思いますけどねー」
「なんだとー!」
「あはははは。でも私はそんなランスさんが好きー。一緒に居て面白いし」
ランスとウトスカが軽い言い合いをしているのを見て、日光は思わず微笑んでしまう。
何気ない日常の会話がそこにある…それだけで日光は安心してしまう。
(…ああ、そうか。私はこんな何気ない会話が出来る世界が欲しいんだ)
最初はただ、自分の家族を殺した魔人への復讐が全てだった。
何よりも、あの魔人が、そして魔人を作った魔王が許せなかった。
しかし、ランス達と出会い、魔人と出会い、そして今の魔王の真実を知った。
だからこそ、今の自分が本当にやりたい事が見えたような気がした。
「ランス、あのダンジョンの探索はすべきだと思う。あそこまで強力な魔物が居るダンジョンなら、相応のモノがあると思って良いだろう」
「そうだな。難解なダンジョンこそ、いいお宝が眠っていると相場は決まっているもんだからな」
「…そうなの?」
「そうだ。俺様が翔竜山の山頂に行った時も、変な奴がお宝をよこしたからな」
難しいダンジョンをクリアすれば必ず褒美が有る、それはランスにとっては常識だ。
そしてそれはこの世界では概ね正しくも有る。
「そろそろクエルプランちゃんを呼ぶか。アレから結構戦ったからな。レベルが上がっているはずだ。カモーン! クエルプランちゃん!」
ランスの合図で、魔法ハウスの中が光に溢れる。
「お久しぶりです、ランス。レベルアップですね」
「おう。それよりも、前みたいに俺様から視線を逸らさないんだな」
「…ええ、まあ。ではレベルアップをしましょう」
クエルプランが呪文を唱えると、ランス達のレベルが上がる。
「ランスはレベル88になりました」
「あれだけ戦って1しか上がらんのか…」
「スラルはレベル87になりました」
「我もレベルの上りは遅いか…いや、ある意味当然か」
「レンはレベルが上がりませんでした」
「私はレベル100越えだから仕方ないか」
「日光はレベル55になりました」
「強くなっているのが分かります」
「ウトスカはレベル23になりました」
「私もですか? ありがとうございます」
「以上になります。また用があればお呼び下さい」
「ちょーっと待った! クエルプランちゃん!」
何時ものように消えようとするクエルプランをランスが引き留める。
「…何かありましたか?」
「うむ、俺様のレベルの上りが非常に悪い。一体どうなっとるんだ」
「どう…と言われましても。レベルが上がれば、次にレベルアップに必要な経験値が増えます。単純な事です」
「それだ! このままではいつ俺様のレベルが100に届くか分からんでは無いか。何か無いのか」
「そう言われましても…」
レベル100でランスに特別な褒美が出る、それはクエルプランがランスに約束した事。
ランスも100までレベル上げる楽しみが出来たと喜んだが、ここ最近はレベルが上がらない事に苛立ちを覚えていた。
このままでは、クエルプランに褒美を貰うのに10年くらいかかりそうな気がするのだ。
ハッキリ言ってそこまで我慢が出来る程ランスの気は長くは無かった。
「しかも俺様のレベルが上がりにくいのは、ここにいるスラルちゃんが余計な事をしたからなのだろうが」
「う…だ、だがな。それでランスの力が上がっているのだから、それは問題は無いのではないか」
「やかましい! そんなのは俺様がクエルプランから貰う褒美に比べればカスだカス。そんなものよりもクエルプランちゃんの方が大事だろうが」
ランスにそう断言されて、クエルプランは心の中で複雑な何かが湧き上がる。
それが何なのか、クエルプランも分からなかったが、取り敢えず分かった事が有る。
即ち、『ランスの希望を叶えてあげたい』という本来はあり得ぬ事だ。
しかし、それはレベル神の手助けの範疇を明らかに超えているのではないか?
そういう疑問も湧き上がり、この世界のルールを破る事が出来ないクエルプランの心を大きく乱していた。
が、そこでクエルプランは一つ思いつく。
(そういえば…レベル神はレベルアップ以外での褒美が許されていると聞きます。それに、あの時の事で私自身がランスに何かを授けても問題は無いはず)
クエルプランが思ったのは、あの時カイズでランスが創造神を大いに喜ばせた事。
ラ・バスワルドの力を人間が使う事を許可するという事も、自分よりも上の存在の思惑があっての事。
それならば、自分もまた褒美を与える事が許されるはずだと判断した。
「ではランス…私から一つ助言をしましょう」
「え? 良いのですか? クエルプラン様」
クエルプランの言葉にレンが目を見開く。
流石にランスを贔屓し過ぎではないかと思ったのだが、下級の神である自分がこれ以上は口を挟むべきでは無いと思い、直ぐに口を閉ざす。
「この世界には経験値を増加させるアイテムが有ります。ランスも冒険者ならば知っているとは思いますが」
「…そういやそんなアイテムがあったような気もするな」
クエルプランの言葉にランスは少し考える。
昔、そんなアイテムがあったような無かったような、そんな曖昧な記憶だ。
ランスは他の人間よりもレベルが上がりやすいというのが、ランスの強さの一つだった。
だが、今のランスは以前ほどレベルが上がらなくなっている。
それはスラルがランスにほんの少し流した魔王の血が影響しているらしい。
ランスは自分がその恩恵にあずかっているという自覚は無い。
クエルプランの褒美を得るためのレベル上げの障害という事でしかない。
「AL教は知っていますね。その教義に、アイテムの回収というものが有ります。そこで、聖なるアイテムを3つ私に差し出せば、レベルが上がりやすくなるアイテムを差し上げます」
「本当か? 俺様は1個持っているぞ」
「勿論それを私に渡してくれても構いません。とにかく3つ、私に渡してくれればいいですから」
「聖なるアイテムか…」
聖なるアイテムは今のランスには結構重要なアイテムだ。
何しろ魔人へ対抗する唯一の手段が魔封印結界なのだ。
そのためには聖なるアイテムを4つ収集しなければならない。
聖なるアイテムは集めるのが結構大変で、リーザスの主であるリアでも収集するのには時間がかかるだろう。
「クエルプランちゃん。一度に渡してもいいのか? それとも一つづつか」
「合計で3つになれば構いません。一度に渡しても、一つづつでも良いですので」
「そうか。だったら3つ見つけてから考えるか」
クエルプランの言葉を聞いて、取り敢えずランスは聖なるアイテムを三つ…今手元に一つあるので、あと二つを揃える事を決める。
それがあればクエルプランの出した褒美の100レベルまで短縮になるだろう。
流石にあと10年くらい待つのはランスとしては御免だった。
「それでは失礼します」
そう言ってクエルプランの姿が消える。
「ランス殿…いいのですか? 聖なるアイテムを揃える事は魔人への対抗手段なのでしょう。それを三つとなると…」
「構わん。魔封印結界は決め手にはならんからな」
魔封印結界をランスが使ったのは二度。
最初は魔人サテラを相手に使った。
サテラは魔人の中でも新参者で、実力的にはそこまで高い魔人ではない…らしい。
あの時はガーディアンのイシスによって邪魔されたが、サテラには有効だったと言っても良いだろう。
もう一体は魔人トルーマン。
あの時は聖なるアイテムが途中で壊れ、トルーマンを倒すには至らなかった。
その時は聖なるアイテムを三つ用意し、もう一つをエンジェルナイトのレンで補った。
ただ、それでも魔封印結界は力づくで破られてしまった。
それを考えると、ランスとしては魔封印結界は魔人に対して有効だが、決定打にはならないという事だ。
勿論その有効性は認めてはいるが、現状では使うのはちょっぴり不安というのが感想だった。
「ランスの言っている事は分かる。あの時もバスワルドの力が無ければ結局は魔人を倒す事は出来なかったからな」
スラルはランスの言っている事が良く理解出来る。
「手段の一つと考えておくのが妥当だろう。恐らくは魔封印結界は魔人四天王級には通じないだろうからな…」
魔人トルーマンはスラルが見てもそこまで強い魔人ではなかった。
スラルが知っている魔人がカミーラ、ケッセルリンク、メガラスといった強者だという事もあるが、それでも魔人の実力は少しは分かっているつもりだ。
「…確実性に欠けるという事ですか?」
「ダメージは与えられる。問題は魔封印結界を抜けられた後だな。それをどうにか出来なければ止めは刺せないという事だ」
スラルの言葉に日光は複雑な顔をする。
日光にとっては魔封印結界は希望だった。
だが、その希望がそれを使った張本人から否定されたとなると、やはり気分が落ちてしまう。
「とにかくこのダンジョンを進めるぞ。何かいいアイテムが有りそうだからな」
ランスはやる気を持ってダンジョンを攻略する。
久々に手応えのあるダンジョンに巡り合えて、ランスとしてもやりがいがある。
しかも仲間は極上のいい女、それでランスのテンションが上がらなければ嘘というものだろう。
「がはははは! 死ねーーーーーッ! ラーンスあたたたーーーーっく!!」
ランスの剣が光り輝き、凄まじい衝撃波が連続でモンスターに襲い掛かる。
衝撃波に襲われたモンスターは身体がバラバラになるほどの威力だ。
「うわーーーーー…ランスさん、本当に強いですね。簡単にモンスターを倒せるんですから」
「感心するのは良いが、罠の探索を頼むぞ。お前しかスカウト技能を持ってないんだからな」
「はーい。私は私の仕事をしまーす」
スラルの言葉にウトスカが周囲を警戒する。
罠があればそれを解除し、隠し通路等があればそれを探す。
日光はモンスターが全て倒れても警戒を解かない。
いつ不意打ちが来るか分からない状況なので、常に神経を尖らせている。
(私が役に立つのはこれくらいですから…)
事冒険に関しては日光はランス達の足を引っ張っている自覚がある。
なので自然にモンスターへの警戒は自発的に日光が行っていた。
幸いにも日光にはその手の才能があったようで、これまでのモンスターの奇襲は日光が看破している。
「そんなに神経尖らせなくてもいいわよ。この辺はもう大丈夫よ」
「ええ…でも私はそれしか出来ないので…」
「肝心な所で倒れられても困るわよ。少しは力抜きなさい」
レンの言葉に日光は力を抜く。
確かにあまり気張りすぎては肝心な所で役に立たなくなるだろう。
いくらランス達が強いといっても、モンスターの数が多ければ危なくなる。
その時に動けなければ何にもならない。
「大丈夫ですよー。先を進みましょう」
罠を解除したウトスカの言葉に従い、ランス達は進む。
モンスターの強さは相変わらずで、サイクロナイトやライデン、ドラゴン女や最強魔女といった強力なモンスターが群れを成して襲ってくる。
だが、ランス達は全くひるまずに進んでいく。
どれくらい地下に潜っただろうか、下に降りた時に大きなモンスターが現れる。
「ストーンガーディアンか!」
ランス達の前に現れたのは、ストーンガーディアンだ。
だが、そのストーンガーディアンはこれまでのストーンガーディアンとは違い、頭部が二つある奇怪なストーンガーディアンだ。
「どうやらこいつがボスのようだな」
ランスはようやくボスが現れたことに俄然やる気が出てくる。
疲労はあるが、それ以上にテンションが上回る。
「ストーンガーディアンの変異種のようだな。だが、問題は無いな。行くぞ!」
スラルの氷の矢がストーンガーディアンに当たるが、ストーンガーディアンはびくともしない。
「この程度では傷一つつかないか。ランス、お前の一撃が頼みだな!」
制限装甲という厄介な力を持つストーンガーディアンだが、このストーンガーディアンの変異種はその装甲がより強化されているようだ。
しかし、その程度ではランスとレンの攻撃は決して止められないだろう。
「では…行きます!」
日光もストーンガーディアンに向かって走る。
その刀でストーンガーディアンを斬るが、流石にその硬さは今の日光でも傷つけるのは容易ではない。
しかし、
「がはははは! とっととくたばれ! そして経験値になるがいいわーーーっ!!」
ランスの一撃はそうではない。
その一撃はストーンガーディアンの硬い装甲でも構わずに斬る―――いや、打ち砕く。
ストーンガーディアンの体の一部が砕け、ストーンガーディアンから怒号が上がる。
「スノーレーザー!」
「ライトボム!」
そこにスラルの魔法とレンの魔法が集中して当たり、ストーンガーディアンの巨体が揺らぐ。
「うわ…凄い…」
ウトスカはランス達の戦いに見惚れてしまっている。
ランスの強さもそうだが、スラルとレンの強さもずば抜けている。
何よりも、スラルもレンも完全にランスに合わせる事が出来ている。
阿吽の呼吸とでも言えばいいのだろうか、ランスもスラルも互いに互いが何をするか分かっている、そんな感じだ。
レンもランスとの連携は抜群であり、それが個人の強さを更に引き立てている。
日光も本気のランス達の動きには見惚れるしかない。
人間もここまで戦えるという事を感じさせる戦いだ。
勿論こんな事が出来るのは並外れたランス達にしか出来ないのは分かっている。
だがそれでも、日光にとってはランスの強さは憧れなのだ。
「終わりだ! 死ねーーーーーッ!!」
そしてランスの剣がとうとうストーンガーディアンを完全に打ち砕いた。
剣で斬っているにも関わらず、ストーンガーディアンの体は鈍器で殴られたかのように崩れていく。
「フン、雑魚が」
ランスが剣をしまうのを見て、日光はストーンガーディアンの死体を見る。
ストーンガーディアンの欠片を拾い、日光は冷や汗が出てくる。
(相変わらず…ランス殿の剣は分からない)
ランスの剣はまるで鈍器で相手を殴りつけたかのように、相手を滅茶苦茶に砕いている。
これだけ見れば、ランスには剣は不釣り合いでは無いかと思える程だ。
だが、ランスの剣は日光から見れば異質だった。
(あれほど乱暴な剣に見えるのに…その切れ味は恐ろしく鋭い)
日光がストーンガーディアンの欠片を二つに割る。
それは日光が自分の力で割ったのではなく、ほんの少し動かしただけで二つに分かれたのだ。
その切断面は恐ろしく鋭く、別れた欠片を繋ぎ合わせると、その切断面が何処か分からなくなるほどだ。
ランスはその刀身で相手を打ち砕きながら、その余波がこれほどまでの切断面を作りだしているのだ。
(まさに不条理、ランス殿でしかありえない事だ)
自分がどれだけレベルを上げようとも、決して真似出来ない何かがそこにはあった。
「おい行くぞ日光。次がお宝だからな」
「あ、はい」
日光はストーンガーディアンの欠片を地面に置くと、そのまま皆について行く。
「いいアイテムが有ればいいのだがな」
「心配するな。こういう時は目的の物が見つかると相場は決まっとるんだ」
スラルの不安をランスが笑いながらかき消す。
そう、こういうダンジョンには必ずいいものが眠っている。
それがランスの経験則だ。
そしてランス達が歩みを進めていくと…
「あいやーあいやー。今日の分のノルマは終わったよー」
「こっちも終わったよー。でも、今の世界でこのノルマって意味あるのかな…」
そこは素晴らしい程に黄金色に輝いている部屋。
まさに宝の山、と言っても良い程のお金が積まれている。
「…何かこの光景前にも見たことがあるぞ」
ランスはこの光景に何か嫌な予感がしてくる。
「…何だあれは」
スラルもげんなりした様子でその光景を見ている。
「いや、何でこんな所にハニーがいるのよ」
レンも不審な顔を隠しもせずに目の前の光景を見ている。
「えーと、ハニー造幣局って看板有りますけど…ここ、何なんですか?」
ウトスカの言葉にランスの顔がどんどんと無表情に変わっていく。
そしてそれはついに爆発した。
「ふざけるな貴様らー!」
何のことは無い、このダンジョンはハニーがこの世界の通貨を作っている場所だったのだ。
黄金は黄金でも別の黄金
ハニーの使いすぎには注意しないといけないなぁ…