ランス再び   作:メケネコ

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エターナルヒーロー

 ランス達は人間の隠れ里で情報を集めていた。

 ハンティの案内もあり、人間の隠れ里は簡単に見つかった。

 ハンティ本人は魔物兵が動き出しているという情報もあり、ランス達と同行する事は出来なかった。

 ウトスカもカラーの身では長旅は危ないという事で、カラーの里へと戻っていた。

「流石ハンティだな。良く世界を把握している。この用意周到さがあったからこそ、カラーは人間に狩られずに生きてこられたのだろうな」

 スラルは地図を見ながら計画を立てる。

 魔軍に見つかるのは極力避け、それでいて痕跡を残さない移動ルートを探していた。

 幸いにも魔軍と出会うことも無く、野良モンスターを蹴散らしながら進んで行く事が出来た。

「それにしても私達と同じく黄金像を探している連中が居るなんてね。本当に何かあるのかしらね」

 レンはこれまで得た情報と、今手元にある黄金像を見て首を傾げる。

 実際にはこの黄金像こそ、とんでもない代物ではあるのだが、1エンジェルナイトに過ぎなかった彼女にはそれが何なのかは分からなかった。

 昇進した今でもこの黄金像の事は全く分からない。

「だったらそいつらも黄金像を持っているかもしれんな。そいつらから奪えれば効率が良いな」

「ランス殿…流石にそれは…」

「それが一番楽だろうが。そういうのは早い者勝ちだ」

 ランスの言葉に日光は難しい顔をするが、否定は出来ない。

 実際にランスは力で物事を解決しているし、それが結果的にではあるが、良い方向に向かってはいる。

 しかし、それはあくまでも結果論なので、日光としてはランスに改めて欲しい所ではある。

(スラル殿とレン殿は全く止める気配は無いですし…)

 スラルもランスと同じく力で物事を解決するようなきらいがある。

 レンに関しては、ランスの事を守ると言っているが、本当にそれ以外の事には興味が無い…と感じている。

「しかしそれ以外の情報が無いというのもな。やはり情報が中々集まらんな」

 スラルは目的の物が見つからない事には苛立っていない。

 もう慣れたものであり、そう簡単に見つからないのは最早経験済みだ。

 だが、それでもランスならば必ず見つけ出せると信じている。

 信じてはいるのだが、スラルには不安が有る。

(…これを見つける事は、必ずしもランスのためになる事なのか?)

 この黄金像を集める事は、決してランスに良い事にはならないという確信に近いものを持っている。

 ランス自身は集める気は満々なので、それを邪魔をしたくないという気持ちも有る。

(ランスに言っても恐らくは聞き入れてはくれないだろう。これを集める事が、魔王を何とか出来る手段の一つだと思っているだろうからな…)

 ランスも冒険者の勘が働いているのか、この黄金像には必ず何かあると確信しているようだった。

(冒険者としてのランスの勘は凄まじい…その本能がこの黄金像に何かを感じ取っているのかもしれないな)

 スラル本人としては、やはりこの黄金像は好ましくない存在に見えた。

 その先に待っているのは良い未来とは思えなかった。

「よーし、まずはその黄金像を探している奴らを襲うか。そいつらが黄金像を持っていれば奪えばいいだけだしな」

「効率はいいわね。こうして探すよりもね」

「まあ…否定はしない」

「えっ」

 ランスの口から発せられた非常識(日光視点で)な言葉には流石の日光も絶句する。

「何を驚いている。それが一番楽だろうが」

「いえ、その…楽とかいう事ではなく、その人達と協力する事は出来ないのですか?」

 日光からすれば当然の事を言っているつもりだ。

 誰かと協力すれば、困難な状況でも切り抜けられる。

 ランスだってそれは例外ではないはずだ。

 だが、ランスの口から出たのは日光からすれば信じられないものだった。

「なんで俺様が協力しなければならんのだ。そいつの中に女が居たら少しは考えてやる。男はいらん」

「そ、そうですか…」

 相変わらずの言葉に日光はそう言うしかなかった。

(相変わらずスラル殿とレン殿はランス殿を止める気配は無い…)

 ランスの行動を止められる存在が居ない…それが日光の悩みだ。

 それが日光の心に迷いを生じさせていた。

 勿論ランスの事は認めているし、強い意志を持っている事も分かっている。

 だが、日光の目的を考えるとどうしてもランスとは相容れない事があるのだ。

(私の目的は…魔王と魔人の殲滅。それが難しいのは分かっていますが、それをしなければ人類に未来は無い…)

 魔王と魔人は人類の敵であり、それは凡そ正しい。

 ただ、日光が接触した魔人が異質なのだ。

(魔人ケッセルリンクはランス殿と親しい魔人…でも、魔人であることには変わりは無い)

 魔人である以上、魔王の命令があれば人類の敵だ。

 それはランスと親しいケッセルリンクであっても例外ではない。

 結局全ては魔王次第なのだ。

(だからこそ…全ての魔人は倒さなければならない。でも…)

 日光は食事をしているランスを見る。

 ランスは絶対にケッセルリンクを殺そうとはしないだろう。

 それ以外にも、魔人を倒す手掛かりと言われているあの魔人サイゼルも。

 だが、自分はどうだろうか…?

 魔人ガルティアと話をして、魔人にも色々とあったのは分かっている。

 しかし、それでも日光にとってはどうしてもやらなければいけない事だという思いもある。

「ああ! アンタ達はあの時の!」

 日光が葛藤していると、ランス達の事を見てこちらにやってくる男が来る。

 男はランス達のテーブルに近づくと、深々と礼をする。

「いやー、旦那達が奴等を潰してくれたおかげで、この町も随分と住みやすくなったよ。色々と問題も出てるけど、何とかやっていってるよ」

「誰だお前。男が俺様に話しかけるな」

 ただ、ランスは当然ながらこんな男の事は覚えていない。

 男はそんなランスにも気分を悪くすること無く苦笑する。

「そいつは悪いね。ただ、アンタ達に耳寄りの情報があるんだ。聞いてくれるかい?」

 男は椅子に座ると、神妙な顔をする。

「黄金像ってのを探してアンタ達はここに来ただろ? こんな時にそんな物を探してるなんて珍しいと思ったんだけど、何とアンタ達と同じように黄金像の事を聞きに来た奴が居るんだよ」

「…それは既に知っている事だ。それが耳寄りだと言う気か?」

 男の言葉にスラルの目が細まる。

 ランスほどではないが、スラルも案外冷たい所がある。

「いやいや、そんな情報じゃないさ。ただ、そいつらが新しいダンジョンを見つけてアタックしてるって話さ」

「何だと!? お前、何故そんな大事な事を言わんのだ!」

 ランスは男に対して怒鳴るが、男は慌てて両手を振る。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ旦那! 俺だってこの情報を掴んだのはつい最近の話さ! 隣町に交易をしに行った時にたまたま聞けたんだよ! 黄金像の事を探してるのが旦那達以外にいたんだって!」

「ダンジョンの攻略か…しかし、ダンジョンとはそう珍しい事でも無いだろう。それなのに何故そんな話をする?」

「それなのさ。その冒険者の連中はかなりの腕利きらしくてよ。俺も顔を合わせる事は出来なかったけど、滅茶苦茶強いって。旦那達にも匹敵するんじゃないかって話でよ」

 男の言葉にスラルの眉が上がる。

 ランスの実力は常軌を逸している強さだが、それを感じ取れる者は少ないだろう。

 なのでランスに匹敵する強さ…と言っても、スラルがそれを感じたのは藤原石丸ただ一人だけだ。

「その凄い冒険者達がまだクリア出来てないダンジョンがあるなら、そこには凄いお宝があるんじゃないかって噂になってたんだよ」

「…成程な。それは確かに興味深いな」

 スラルは男の言葉を聞いて腕を組む。

「ランス。そのダンジョンに行ってみないか? 上手くいけば例の連中から情報を聞きだせるかもしれん」

「そうだな。もしそいつらが黄金像を持ってたら殺して奪えばいいしな」

 相変わらずの物騒な言葉に日光は何を言っていいか分からない。

 唯一ついえるのは、ランスが言っているのは冗談ではなく本気でやるという事だけだ。

(私はどうすればいいのだろう…)

 自分の目的とランスの目的が違うのは分かっている。

 それ故に日光は今の現状を悩んでいた。

 

 

 

 そしてそのダンジョンに突入する。

 生憎とハンティとウトスカは都合はつかないので、今回は不参加だ。

 が、それはランスにとっては勿論好ましい事ではない。

 スカウト技能を持っている者が居なければ、ダンジョンの攻略は難しくなってしまう。

 ランスもそれを分かっており、苦戦は免れないと思っていた。

 だが、それは意外な形で裏切られる事になる。

「なんだこりゃ」

 ランスが見たのはモンスターの死体と、解除されている罠の数々だった。

「先客が居るようね」

 レンは倒れているモンスターを見る。

「それにしても…やるわね。見事な切り口よ」

 その鋭さはランスを上回るだろう。

 破壊力はランスの方が上だろうが、このモンスターを倒した人間は相当な剣の腕前だ。

(藤原石丸には及ばない。でも相当な使い手。ランスとは別のベクトルの強さね)

「これは魔法の跡か。凄いな…我の魔力に匹敵するかもしれん」

 スラルは洞窟内の形を変えてしまう程の威力の魔力を見て感心する。

 人間の中には凄まじい魔力を持っている人間が居る事は知っているが、どうやらこの魔法使いは相当な腕前らしい。

「ではここに居る人達が例の…?」

「そうかもしれんな。相当な腕前だ」

「だったら都合がいいな。ここに黄金像があったら連中をぶっ殺して奪えばいいな」

 ランスの言葉に日光は眉を顰める。

「あの…ランス殿。そんな事をしなくても協力すればいいのでは…」

 そんな日光の額をランスは軽くデコピンする。

「アホか。何度も言わせるな。俺様がそんな事をしてやらなければならんのだ」

「その…人類のためにも…」

 日光の言葉にランスは心底呆れたようにその頭を軽く叩く。

「人類がどうなろうが俺様の知った事ではないわ。まあ可愛い女なら助ける、男とブスはいらん」

「…本気、なんですよね?」

「当たり前だ」

 ランスの言葉に日光の顔が露骨に沈む。

(分かってはいましたが…どうしてランス殿は…)

 日光にとってはランスは初めて見つけた希望だった。

 魔人を相手にその剣で向かっていったあの勇姿。

 魔人を圧倒した剣術。

 欲望に忠実でも、何処までも強い意志を持った姿。

 だが、日光も強くなり己の理想を持つにつれて、ランスの行動にもどかしさを覚えていた。

「ランス、こっちよ」

「よーし、行くぞ」

 レンの言葉にランスはダンジョンを進んで行く。

 そこには先ほどの光景と同様に、モンスターの死体と解除された罠が無数に存在していた。

「かなり大規模な洞窟だな。水まで流れている」

 何処かの川と通じているのか、ダンジョンの内部には橋すらもかかっている。

「たまに思うのですが、こういう橋は一体誰がかけているのでしょうか?」

「ふむ…確かにそれは疑問だな。この橋も結構しっかりしている。確かに誰がこんなものをかけているのかは不思議な事だ」

「そんなに難しく考えなくてもいいと思うけど」

 日光とスラルの疑問にレンは目をジト目にしてある方向を指さす。

 二人はレンの視線の先に指を向けると、

「あいやーあいやー」

「はにほーはにほー。今日も元気に土木作業だよ」

 そこには安全ヘルメットをつけて作業をしているハニー達が居た。

「…ハニーだな」

「…ハニーですね」

「ね。気にするだけ無駄だし考えるだけで無意味よ。だからとっとと行きましょう」

「そうするか…」

 スラルは若干疲れた顔で進んで行く。

 ハニー土木の人知れない作業は続いていくのだが、それを伝える者は誰も居なかった。

 

 

 

 そしてランスが追う先に居るのは―――後にエターナルヒーローと呼ばれる者達だった。

「はあああああ!!」

 ブリティシュの剣がモンスターを貫き、斬り捨てる。

 襲ってくるモンスターの攻撃もものともせず、その盾で逆にモンスター達を跳ね飛ばす。

 そしてバランスの崩したモンスターにカオスがその短刀で止めを刺す。

「ホ・ラガ! サイクロナイト…とダブルハニー!」

「やれやれ…いかに私でも流石にハニーには無力だ。ブリティシュ、ハニーは頼みますよ」

「分かっているさ!」

「では…スノーレーザー!」

 襲い掛かるモンスターの群れをブリティシュ達は難なく倒していく。

 後の世界においても、エターナルヒーローを超えるパーティーは居ないとも言われる、人類最高のパーティーの姿がそこにあった。

 本来はここにJAPANの侍が加わっているのだが、運命の悪戯はその侍にさらなる苦難の道を与えていた。

「カオス! どうしたの!?」

 戦闘中だというのに、周囲を見渡すカオスの姿にカフェの少し怒った声が響く。

 あのカオスが戦闘中にこんな迂闊な行為をするというのが信じられないという事も有る。

「いや…取り敢えずは後だ! カフェ! 連中をぶっ潰すぞ!」

「一人で納得しないでよ。きちんと話してよ」

 カオスはモンスターを相手に大立ち回りを演じ、モンスターの群れは全滅する。

「ふぅ…随分とモンスターの数が多くなってきたね」

「それだけここには重大なアイテムが眠っているという事かもしれませんね。ああ、カフェ。ブリティシュに回復を」

「うん。じゃあ痛いの痛いの飛んでけー」

 どんなに優秀な戦士でも、複数のモンスターが相手では傷はつく。

 なのでヒーラーの存在は絶対に欠かせない。

 ブリティシュを癒しているカフェを見て、ホ・ラガは真面目な顔でカオスの横に立つ。

「カフェの言葉では無いですが、戦闘中だというのに珍しい事をしてましたね」

「儂の背後に立つなよ。お前が背後に立つだけで儂は嫌な汗が出てくるんだからな」

「ですからこうして横に立っています。それで何か有りますか」

 ホ・ラガの顔は何処までも真面目だ。

「見られてる…ような気がしてよ。モンスターじゃねえ」

「…ならば答えは一つ。人間以外はありえないでしょう」

「だから不気味でよ。儂等も色々と人間に恨みは買ってるがよ…その中でも凄まじい嫌な気配がしやがるんだよ」

「嫌な気配…とは?」

「それが分からねえから不気味なんだよ」

 カオスの表情を見て、ホ・ラガも彼が嘘を言っておらず、本気で警戒しているのを悟る。

 好みの男では無いが、その実力はホ・ラガも認めている。

 何しろシーフカオスと呼ばれる、超人的な技能を持った人間なのだ。

 そのカオスが警戒しているのだから、何かしらの脅威が迫っているのは分かる。

「どの辺にいるか分かりますか」

「いや…そこまでは分からねえ。一つ言えるのは、滅茶苦茶気配を消すのが上手い奴だって事だけだ。殺気が感じられねえだけに始末が悪い」

「…どこぞの暗殺集団、なんてことは無いですよね」

「この時代にそんな奴等を育成出来る機関が何処に有るって話だよ。それよりももっと質の悪い奴かもな」

「モンスターの可能性は?」

「モンスターならもっと気配がするはずだ」

「まさかとは思いますが、魔軍だという事は?」

「あんなでかい連中がこんな隠密の仕方は出来ねえよ」

 カオスは嫌な気配を感じる方を睨みながら呟く。

 ホ・ラガの言っている事は勿論軽口だとは分かっている。

 だが、現実にそういう気配を感じるのは事実だ。

 ホ・ラガもカオスがそこまで警戒している事に気を引き締める。

(カオスにしては曖昧ですが、嘘を言う意味は無い。ならば何かが確実に居るのだろう)

「戻りますか。カオス、警戒はあなたに任せますよ」

「分かっとるわ」

 カオスはもう一度気配を感じる所を睨むと、ブリティシュ達の所に戻っていった。

 

 

 そしてカオスの視線の先の柱の裏側―――そこには正にランス達が隠れていた。

「気づかれてるみたいね。具体的な位置までは分からないみたいだけど」

「そのようだな。余程気配察知が上手い奴のようだ」

 レンとスラルは相手の力量を察して感心する。

 気配を消すのは上手い方だと思っているが、相手はこちらを察していたらしい。

「相手は4人。男が3人と女が1人ね」

「女か。美人か?」

「うーん…私はその辺は判断できないわね。ただ、ランスの好みかと言われれば否定するかな」

「なんだ。つまらん」

 レンの言葉を聞いてランスは露骨にがっかりする。

「だったら遠慮はいらんな。奴等が黄金像を手に入れてから不意打ちするぞ」

「その…それはいくらなんでも酷いのでは?」

 ランスの言葉に日光は何とかランスに思い止まって欲しいという願いを込めて言う。

 だが、当然ながらランスにはそんなものは通用しない。

「甘い事を言うな。この世界は弱肉強食だ。弱い奴が悪い」

「…それは違うと思います」

「む、何だ。俺様に逆らうのか」

「それが正しくない事ならば、私は逆らいますよ。あなたは凄い方とは分かっていますが、それとこれとは話は別です」

 ランスは日光の言葉に何も言わない。

「…まあいい。とにかく連中を見張るぞ」

(うーむ、日光も言うようになったな。まあ気にする事でも無いな)

 日光がランスに意見したが、それ自体は別に気にしてない。

 志津香やかなみやマリアも平気で言ってくる事だし、シィルやシーラも同じことを言うだろう。

 ただ、ランスのする事は結果的に上手くいく、それだけの事だ。

「見張ると言っても相手は凄腕だぞ。スカウトでも無い我等がそんな簡単に奴等を尾行出来るとは思えんぞ」

「レンは視力もいいからある程度離れても分かるだろ。まあモンスターも奴等が殺しているし余裕だ余裕」

「…そんな上手くいくかしらね。やってみるけどね」

 レンはランスの言う事に疑問を抱きながらも遠巻きに連中を追う。

 ただ、ランスは一つ忘れていた。

 レンジャーの職にはずば抜けた視力を持っている者もいるという事を。

 実際ランスから見てもポンコツ忍者のかなみですらも、視力は良いという事を。

 

 

 

「…ついて来てやがるな」

「何だい、カオス」

 カオスの言葉にブリティシュが尋ねる。

「いや、やっぱ尾行されてるって話さ。怪しさはあったからちょっとした仕掛けを作ってたけどよ…それにかかったようだな」

「え? そうなの? いつのまにそんな仕掛けをしてたの。カオス」

「仕掛けって言っても大したことはねえよ。ちょっとした音が出るくらいのもんだ。だが逆に不気味だな」

 相手は仕掛けに気づいている気配は無い。

 という事は腕の立つスカウトは居ないという事になる。

 だが、逆に言えばそんなスカウトがいなくてもここまでカオスに対して気配を隠せる奴が居るという事だ。

「どうする、ブリティシュ」

「相手の正体が分からないと言うのは怖いね…こちらに仕掛けてくるのかな」

「それは分からん。だがよ、今まで儂等と揉めた奴等にここまでの奴はいるか?」

 カオスが腑に落ちないのはその部分だ。

 今の時代…GL期でも馬鹿な人間はやっぱり沢山居る。

 そんな連中はブリティシュ達にとっても敵だ。

 勿論何人もの人間とも戦っては来たが、ブリティシュ達はそんな連中など歯牙にもかけない。

 それ程の強さがブリティシュ達にはあるのだ。

「居ないでしょうね。そこまでの組織力があるとも考えにくい。そんな力があるなら人はもっと上手く立ち回れますよ」

「そこまで言うの…?」

 ホ・ラガの皮肉気な言葉にカフェは悲しい顔をする。

 人はそこまで馬鹿ではないと信じたいのがカフェという人間だ。

「襲ってくるとしたら不意打ちかな。出来るならこんな所で人同士で争いたく無いんだけどね…」

「相変わらずお人よしだな、ブリティシュ。そんな連中ばかりじゃ無いのは分かってるだろうが。とにかく進むぞ」

 自分達を尾行している連中は気になるが、それよりも早くここの探索を進めたいというのがカオスの本音だった。

 カオスにとっては人間相手などどうでもよく、その冷たい憎しみは魔人に対して向けられている。

 邪魔をするなら、殺してしまえばいいとさえ思っている。

「じゃあ進もうか。結構進んでるから、そろそろだと思うんだけど…」

 カオスは見事なまでの技術でダンジョンを警戒しながら進んで行く。

 その動きは洗練されており、油断の隙も無い。

 そしてエターナルヒーロー達は最深部らしき所へとやってくる。

 周りを水に囲まれた祭壇の上に宝箱が一つ置かれている。

「…罠かな?」

「少し露骨すぎるような気もしますがね。カオス、あなたの見解はどうですか」

 ホ・ラガの言葉にカオスは慎重に周囲を探る。

「罠…かもしれねえが、それがどういう類なのかはわからねえな。ただ、あるとすればガーディアンの類だとは思うけどな」

「そうかもねー。露骨に広いもんね…」

 周囲に水が流れているが、宝箱が置かれている所は露骨に広い。

 それを見れば誰もが怪しいと思うだろう。

「まさか退くなんて言わねえよな、ブリティシュ」

「当然だよ。僕達はここで立ち止まっている訳にはいかないからね」

 カオスの言葉にブリティシュは覚悟を決めて宝箱へと向かっていく。

 そして中心部に近づいた時、周囲の水が蠢きだす。

「来やがったか!?」

「まさか…この水自体がモンスターという事ですか」

 透き通った水が濁った緑色へと変わり、それがどんどんと集まっていく。

「気持ちわる!」

 その姿を見てカフェは露骨に顔を歪める。

 それは生理的嫌悪感を抱かせるモンスターだった。

「こいつがガーディアンって事だね!」

「まさか…ハニーですか? 巨大なハニースライムといった所でしょうか」

 ブリティシュ達は剣を構える。

「うぽうぽ…はにぽー…」

 その口からは不気味な怨念のような声が響き渡る。

「ハニー…いや、おかゆフィーバー? その中間?」

「はにわフィーバーってか? 冗談じゃねえ!」

 大怪獣はにわフィーバーがブリティシュ達に襲い掛かった。




イブニクル2で何かネタは出来ないかとプレイ
PCが壊れたからイブニクル2のデータも吹っ飛んだのと、気分転換のために
だからペースが遅れるってのは申し訳ないです


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