ランス再び   作:メケネコ

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邂逅

 はにわフィーバー、それはおかゆ病というおかゆフィーバーになってしまう恐ろしい病にハニーがかかってしまった存在。

 このハニーはその病に抗い続けた故に、より強固な存在へと変貌してしまった。

 それこそがはにわフィーバーという新たな存在。

「はにぽー…」

 不気味な呻き声を上げながら、はにわフィーバーがブリティシュ達に襲い掛かる。

「なんだってんだ!?」

 その動きは遅く見えるが、恐ろしく重い。

 その手が地面が振り下ろされると地面が揺れる、それくらいに重い。

「ファイヤーレーザー」

 ホ・ラガの魔法がはにわフィーバーに突き刺さる。

 はにわフィーバーはダメージを受けている様子はあるが、それでも歩みを全く止めない。

「ハニーのような完全魔法耐性は無いようですが…それでも魔法は効き目が薄いですか」

 自分の放った魔法がほとんどダメージになっていないのを見て、ホ・ラガがその端正な顔に厳しい表情を浮かべる。

「はにぽー…」

 はにわフィーバーは苦しみを紛らわすかのようにブリティシュ達に襲い掛かる。

「きゃあ!」

「カフェ!」

 はにわフィーバーの巨大な腕が伸び、カフェへと襲い掛かる。

 ブリティシュはその腕を盾で防ぐが、その衝撃に歯をくいしばって耐える。

(なんて一撃だ…こんな一撃を連発されたらそう持たないぞ)

「この野郎!」

 カオスがはにわフィーバーの腕を斬りつける。

 カオスの想像通り、その刃はあっさりとその体に入っていく。

「チッ! 手応えがねえ!」

 だが、そこからは普段モンスターに対して与えている手応えが感じられない。

 しいて言えばぷりょなどのスライム系に近いが、それとも何か違う。

「カオス! 危ない!」

「あん!? どわ!」

 カフェの言葉にカオスは慌ててその場から飛びのく。

「うひょー! しばくぞー!」

 カオスを襲ったのは緑色のるろんただ。

 普通のるろんたと違って体が大きく、非常に毒々しい空気を纏っている。

「何こいつ!? 体の中にモンスターが入ってるの!?」

 カフェの言葉を肯定するように、その体からは緑色のるろんたが出てくる。

「しばくぞー!」

「ホ・ラガ! 僕とカオスでこいつを叩く! 君はるろんたを倒してくれ!」

「…任せましたよ、ブリティシュ」

 このモンスターには魔法がききにくいと判断し、周りのるろんたをホ・ラガに任せる。

 そして真っ直ぐにはにわフィーバーに向かっていく。

「はあああああ!」

 ブリティシュの剣がはにわフィーバーを斬り裂く。

 カオスよりも剣の扱いに優れているブリティシュの一撃は、確実にモンスターにダメージを与えている。

 だが、相手はかなりの巨体なのでそこまでのダメージは無い。

 それどころか斬った所から再びあらたなるろんたやぷりょが湧き出てくる。

「こいつは…どうやらおかゆ病にかかったハニーのようですね。苦し紛れにこのダンジョンの水の中に入り…そこで色々なモンスターを取り込んだようですね」

「もう! こんな時でも変に冷静なんだから! それよりもどうにか出来ないの?」

「落ち着いて下さい、カフェ。それよりも相手は毒を持っているようです。それこそヒーラーのあなたの出番でしょう」

「あ…そ、そうだね。ブリティシュ! カオス! 気を付けて!」

(しかし…数が多い。これはどうしたものか…)

 ホ・ラガはこの状況を冷静に把握していた。

 まさかこんなモンスターが居るとは思っても居なかった。

 強力なガーディアンが居るとは思ってはいたが、流石にこれは規格外すぎる。

 しかも中途半端におかゆフィーバーへと変わっていっているせいで、ホ・ラガの魔法ですらも効果が薄い。

 更には無数に湧き出てくる緑色のるろんたやぷりょ。

 そして強力な力をもっているはにわフィーバー。

(せめてあと一人…ブリティシュの隣に立つ事が出来る戦士がいれば…)

 カオスも強いが、やはり本職の前衛が居た方が有難い。

 だが、このパーティーについてこられる力が無くてはならないが、そんなものは中々存在するものでは無い。

 ホ・ラガがどうするべきか唇を噛みしめる。

「ホ・ラガ! 来る!」

「しばくぞー!」

 湧き出てきたるろんたがホ・ラガとカフェを襲うべく突っ込んでくる。

「業火炎破!」

 ホ・ラガはそんなるろんた達を炎の魔法で焼き尽くす。

 しかしはにわフィーバーにダメージを与えるたびに、その体からモンスターが供給されてしまう。

 限界があるのは分かるが、もしこの水全てがはにわフィーバーの体なら、一体どれ程のモンスターを取り込んでいるか分からない。

 これではじり貧になってしまう。

「カフェ! ホ・ラガ! そっちに行ったぞ!」

 カオスの言葉通り、はにわフィーバーの体の中から現れたモンスターである、緑色のアインシュタインが襲ってくる。

「カフェ!」

 狙いはカフェのようだが、カフェの意識は完全にブリティシュとカオスに向かっている。

「あ…」

 カフェはホ・ラガの言葉に慌ててアインシュタインに対処しようとするが、その時にはその牙がカフェへと迫っていた。

 その牙がカフェの首筋を襲う―――と思われた時、アインシュタインの体がバラバラになる。

「え?」

 カフェの体は一人の女性の手に抱えられていた。

「大丈夫ですか?」

「え、あ、はい」

 女性の言葉にカフェはそう言うしかなかった。

 同じ女である自分ですらも思わず見惚れてしまう美貌を持った女性が、自分を抱えていたからだ。

「…何者ですか」

 ホ・ラガが厳しい声を投げかける。

 カオスの言葉から誰かが自分達を尾行していたのは知っていた。

 目の前の女性は間違いなくその尾行していた連中の一人だろう。

 タイミングが良すぎるからだ。

「その話は後で。今は目の前のモンスターを倒すのが先です」

 女性―――日光はそのまま刀を構えてモンスターに向かっていく。

「ハッ!」

 そしてそのままモンスターを一閃したかと思うと、モンスターの体が真っ二つになる。

 それを高速で行っているのだ。

「君は!?」

 日光はブリティシュの横に並ぶと、襲い掛かってくるるろんたやぷりょを斬る。

「話は後です。今はこのモンスターを」

「…ああ!」

 日光に敵意が無い事を感じ取り、ブリティシュは改めてはにわフィーバーへと集中する。

「行くぞ!」

 

 

 

 日光が飛び出す少し前―――

「おーおー、丁度いい所にモンスターが居たな」

 ランス達は物陰からブリティシュ達がはにわフィーバーと戦っている所を見ていた。

「何とも不気味なモンスターだ。ハニーとおかゆフィーバーの中間といった所か? しかも体の中にモンスターを取り込んでいる」

 スラルは巨大なはにわフィーバーを見て不愉快そうな視線を向ける。

 ハニーは嫌いだが、おかゆフィーバーも好きではない。

 魔王の時は何とも思わなかったが、こうして視点が人間になるとモンスターの中には嫌悪感を感じさせる者も居る事に気づく。

「あの…本当に助けないのですか?」

「当たり前だろ。ここで弱らせておけば後が楽だろ」

 日光の言葉にランスは当然のように答える。

「それは…」

 ランスの言葉に日光は渋い顔をする。

 ランスの言っている事は冒険者としてはある意味正しい。

 他人の功績を奪うという事は特段珍しくも無い。

 そういう事を防ぐために、ギルドという組織が存在しているのだ。

 ランスが所属しているキースギルドでは、ランスはむらっけが多く、気の乗らない仕事は一切受けないが、その代わり必ず任務を達成する。

 ランスの功績を横取りしようにも、ランスが強すぎるせいでそんな事は出来ないのだ。

 そしてランスは基本的に弱肉強食、弱い奴が悪いと考えている人間だ。

 それはランスが育った環境にも有るのだが、日光はそんな事は全く知らない。

「いいか、別に俺様達はあいつらを助けにきた訳じゃ無い。それを忘れるな」

「でも…同じ人間です」

「…それがどうした」

 ランスの言葉に日光は絶句する。

 日光もランスが男に厳しく、女には優しいのはもう嫌という程知っている。

 だがそれでも…人間同士、協力し合わなければいけない時代に、平然とこんな事を言えるとは流石に思っていなかった。

 勿論ランスより非道な人間は居るだろうし、ランスより外道の人間は居るのは分かっている。

 しかし、目の前の光景を見て平然と見捨てるどころか、漁夫の利を狙っているとは考えもしなかった。

 ただ、ランスのやっている事はLP期の冒険者としては特に間違っていない。

 人同士で諍いが出来る程、LP期というのは魔軍の脅威が少ないのだ。

 何しろLP期において、魔軍が人類に侵攻したのは、カミーラダークと呼ばれるゼスでの争いが初めてなのだから。

「それにしても…あの子供、どっかで見たことが有るような…」

 ランスは改めて目の前の戦闘を見る。

 はにわフィーバーはともかくとして、あのメガネの少女に何処か見覚えがある気がした。

 ちなみに男の方はランスの目には殆ど入っていない。

「あいつらやるわね。人間にしては相当な実力。ランスとも渡り合えるんじゃない?」

「そうだな…一対一でランスが遅れを取る事は無いだろうが、それでも苦戦はするだろう。全員がそれだけの実力が有るのだろうな」

 レンとスラルも戦いを見ているが、助けに行くような様子は全くない。

「…レン殿とスラル殿も助けに行こうとは考えないのですか?」

 日光の言葉にレンは目を丸くする。

「え? 何で?」

 本気で驚いている様子には日光はもう何も言えない。

 彼女には誰かを助けるという考えが希薄なのだが、それは彼女は人間では無いのだから無理はない。

 今はランスを守る事(勘違いだが)を命令されているが、本来は悪魔を駆除するためのエンジェルナイトなのだ。

 そのエンジェルナイトにとっては人間もモンスターも等しく無意味な存在でしかない。

 ランスと共に居る事と、力を失った期間が有ったので少しは人間の事は分かっては来たが、基本的にはランスやその仲間以外には冷淡だ。

「助けるか。奴等は我等の競争相手だ。状況によっては敵対関係になる可能性もある。その相手が弱るのを待つのは基本だと思うがな」

 スラルの言葉は合理的ではある。

 だが、それは合理的なだけであって、そこにある人の感情を完全に無視してしまっている。

「助けられない…と言うのですね。皆様は」

「助ける必要なんぞ無いだろ。連中が死のうが俺様には関係無いからな」

「私は別にどうでもいいし」

「敵と敵の戦いに手を出す必要は無いだろう。残った方を叩けばいい」

 日光はランス達の言葉を聞いて、決意を固める。

(私はランス殿を尊敬しているし、恩も有る…それでも、ここで動かなければ自分が自分でなくなる)

「…申し訳ありません。私は行きます」

 そう言って日光は物陰から飛び出て走っていく。

「あ、コラ!」

 ランスは思わず怒鳴るが、日光は止まることなく走っていく。

「…行っちゃったわね」

「日光のアホが。こうなったら徹底的にオシオキだな」

 ランスとしては、このまま共倒れになれば楽だったのだが、日光の行動がそれを台無しにした。

 ただ、ランスはそれほど怒ってもいなかった。

 もしこの場に居たのがシィルやシーラならば必ず助けに行こうと言ったはずだし、ランスも最終的には折れていたはずだ。

 ランスも鬼畜戦士として名高い男だが、実際にはそこまで非道でも非情でもない。

 どこまでも自分勝手なだけだ。

「彼女の性格上、それも仕方のない事だ。で、どうするランス」

「フン、そんなの決まってるだろうが。日光は俺様の女だからな」

 スラルの言葉にランスも剣を抜く。

 そして日光の後を追おうとした時、スラルがランスのマントを掴む。

「む、何だスラルちゃん」

「いや、水の量が不自然だと感じている。一方はあの不気味なハニーになっているが、反対側が不自然だ」

「あら、本当だ。水が残ってる」

 レンは高く飛び上がると、その戦いの全景を見る。

 スラルの言う通り、確かにブリティシュ達が戦っている方角にある水は全てはにーフィーバーになっている。

 だが、その反対側の水だけは未だに変色もせずに不気味に佇んでいる。

 明らかに不自然ではあるが、生憎と戦闘に夢中な者達は気づいていないようだ。

「ランス、警戒は必要だ。しかも相手には魔法が効果が薄いようだ。だからお前が頼りだ」

「フン、俺様にかかればどうという事は無いわ。行くぞ、お前等!」

「待て。ランス」

 走り出そうとしたランスをスラルが止める。

「む、どうしたスラルちゃん」

「目の前の相手は日光達でも問題は無いだろう。だが、もう一体いると思う。そいつが動き出した後でも問題は無い」

「そうね。見た感じ、日光が加勢すれば問題無いでしょ。JAPANで戦った大怪獣よりは弱いし」

 流石に以前に戦ったダイクウマリュウカイキングや、富嶽よりは弱いのは明らかだ。

 二人の言葉を聞いて、

「まあいい。だったらもう少し様子を見るか」

 ランスは何時でも戦えるように、準備だけをして戦いを見る事にした。

 

 

 

 

「はあああああ!!」

 日光が参戦した事で戦況は大きく変わる。

 何しろ彼女のレベルは50を超えているうえに、剣戦闘LV2を持っている。

 戦士としての実力は確実に上がっているので、相手がどんなモンスターだろうが対抗出来る。

「御無事ですか」

「ああ。それにしても君は…」

「話は後です。今はこのモンスターを倒さなくては」

 ただ、このモンスターは非常に強力なのは分かる。

 以前に戦った大怪獣富嶽と同じくらいに厄介な相手だ。

 あの時は魔人ガルティアの助力も有り、何とか倒すことが出来たが、今回はどうか分からない。

 ランスが居れば勝てるだろうが、日光はそんなランスの静止を振り切ってブリティシュ達を助けに来た。

 ならばランスは頼れない…そう思ってしまっていた。

「はにぽー」

 はにわフィーバーの手が日光に襲い掛かる。

 その手は普通のハニーとは違い、体が溶けかけているせいか伸びてくる。

「危ない!」

 はにわフィーバーの攻撃をブリティシュが受け止める。

 その巨体による一撃をブリティシュは完全に受け止めている。

(凄い…この人のガードの技術、レン殿並だ)

 レンの防御の技術は凄まじい事は日光も理解している。

 レンが更に凄いのは、防御だけでなく剣も強い上に攻撃魔法も回復魔法も使える事だ。

 日光を庇った男はその技術はレンに勝るとも劣らない。

(行ける…!)

 日光は速度を上げてはにわフィーバーを斬りつける。

 その傷口からぷりょやるろんた、アインシュタインといった魔物が出てくるが、その魔物も魔法使いの男が的確に潰していく。

 モンスターを凄まじい速度で倒していく日光を見て、カオスは後方に下がる。

 余裕が出来たので、カフェを守るために下がったのだが、もう一つの目的として日光を見張るためでもある。

(こいつは確かに強いな…だが、何のために姿を現しやがった? こいつは一人じゃないはずだ)

 カオスが感じた視線は少なくとも2、3人は居たはずだ。

 この女がその内の一人かどうかは確信は持てないが、カオスは連中の一味だと睨んでいる。

 その一味の女が自分達に加勢をする理由がカオスには分からなかった。

 だからカオスは日光を警戒し、妙な真似をしたら即座に殺す事が出来る位置取りをしているのだ。

「カオス…あの人、凄いね」

「今は戦闘中だぜ。お前も援護しろよ」

「分かってるわよ。鉄の壁!」

 カオスの指摘にカフェは味方に対して防御魔法をかける。

「相手の体から出てくるモンスターもそろそろ尽きてきたようですね」

 ホ・ラガは、はにわフィーバーの体の中から現れるモンスターが少なくなったのを見て目を光らせる。

 魔法に対して高い耐久力を持ってはいるが、ハニーのように完全魔法防御を持っている訳では無い。

 ならば、相手の魔法防御力を貫通する一撃を放てば良いだけだ。

 ただ、それをやるのならばブリティシュの援護は不可欠、魔法レベル3を持つホ・ラガとはいえ体は人間、目の前の巨体の魔物の一撃には耐えられない。

「さて…氷雪吹雪」

 なのでまずは雑魚モンスターを片付ける。

 普通のるろんたやぷりょ、アインシュタインよりは強いが、それでもホ・ラガの魔法力ならば問題なく倒せる。

 絶大な魔力と知識を持つホ・ラガだからこそ、こうした連続詠唱も可能だ。

 確実に相手を減らしていき、最後には強大な魔法で止めを刺す。

 そのやり方は功を奏し、はにわフィーバーの体内からはモンスターは出なくなる。

 それと同時にはにわフィーバーの巨体もどんどんと小さくなっていき、今はもうデカント程の大きさに縮んでいる。

 それでも十分に大きいのだが、流石に最初の頃の勢いは無くなっていた。

「行ける…!」

 その様子を見て、ブリティシュは一気に攻勢をかける。

 これまでは防御に徹していたが、モンスターが出てこなくなったのを見て勝負を決めにかかる。

 ブリティシュの剣技は凄まじく、はにわフィーバーの体を確実に削っていく。

「はにぽー…うぽうぽうぽ…」

 苦しんでいるのかどうか分からない声がはにわフィーバーから響く。

 もう体の中のモンスターは尽きたようで、斬り口からは緑色の液体しか出てこない。

 毒が厄介だが、それもカフェの強力な魔法で何とかなっている。

「どいてくださいよ。そろそろ行きますから」

 後方から聞こえたホ・ラガの声にブリティシュは日光の手を引いて離れる。

 それを見届けて、ホ・ラガは魔法を放つ。

「白色破壊光線」

 その魔法ははにわフィーバーの体を貫いた。

「はにぽー…」

 そしてはにわフィーバーは断末魔の声を上げながらグチャグチャに溶けていった。

「終わったか…」

 ブリティシュは相手が完全に溶けたのを見て地面に腰を下ろす。

 この相手はそれだけ強力だったし、何よりも毒の影響もある。

「大丈夫ですか?」

「それは僕の言葉なんだけどね…でも君は一体何者なんだい? いてて…カフェ、頼めるかい?」

 毒の影響が少し強くなってきたので、ブリティシュはカフェに回復魔法を頼む。

 それは極自然の行為であり、誰もが強大なモンスターを倒した事での油断があったのかもしれない。

「はーにほー! メガネっ子だぁー! うぽうぽはにほー!」

 突如として反対側の水が盛り上がったかと思うと、そこからはもう一体のはにわフィーバーが現れる。

 それは先程のはにわフィーバーよりもしっかりとした形をしており、言葉もはっきりとしている。

「いじめ甲斐がありがそうな素敵なメガネっ子だぁー! はーにほー! ハニーフラッシュー!!」

「くっ! 炎の矢!」

 ホ・ラガは迂闊にも気を抜いてしまった自分に歯噛みをしながらも魔法を放つ。

 魔法ははにわフィーバーに当たるが、全く効果を示さずに霧散する。

(魔法が効かない…ハニーに近いという事ですか)

 ホ・ラガの推察通りこのはにわフィーバーは、先ほどのはにわフィーバーよりも遅くおかゆ病にかかったハニーだ。

 それ故にハニーの部分を色濃く残しているため、ハニーの持つ絶対魔法防御能力を未だに所持していた。

「あ…」

「カフェ!」

 迫ってくるハニーフラッシュにカフェは思わず立ちすくむ。

 カオスが何とかカフェの盾になろうとするが、毒の影響も有って体が上手く動かない。

 これほど強さを持つはにわフィーバーのハニーフラッシュをまともにくらえば、後衛の人間など一撃で戦闘不能になるだろう。

 ましてやハニーフラッシュは必中、決して避ける事が出来ないのだ。

 カフェはそれでも何とかバリアを出そうとするが、時間が足りない。

 そしてハニーフラッシュが自分に迫ってきた時―――彼女が見たのは美しい金色の髪だった。

「うわ気持ちわる。これって普通のハニーじゃない」

 金色の髪の持ち主から心底嫌そうな声が聞こえてくる。

 その声の持ち主は女性のようであり、驚いている自分の腰を掴むと、そのまま軽い足取りでブリティシュの側に置く。

「そっちはそっちでね」

 驚いているカフェに対して女性はそうとだけ言うと、剣と盾を構えてはにわフィーバーへと向かって行く。

「がはははは! 死ねーーーーー! ラーンスあたたたたーーーーっく!!」

「あいやー!!」

 そして凄まじい轟音と共にはにわフィーバーの頭部の一部が吹き飛ばされる。

 そこに居たのは茶色の髪をした、口の大きい男が笑いながらはにわフィーバーを吹き飛ばしていた。

「ハニワの分際で俺様の前に立った事を呪うんだな」

「え? ボクは別に君の前には立っていない…」

 漆黒の不気味なオーラを放つ剣をはにわフィーバーに突き付け、男はニヤリと笑う。

 はにわフィーバーは崩れていく頭部を何とか押さえようとするが、ハニーの手故に当然ながら届かない。

「ハニー体質を残したモンスターか。流石にこれが相手では我の魔力も役には立たんか」

 そしてもう一人女性が姿を現す。

 黒を基調とした服を纏った銀色の髪をした少女だ。

「ランス、とっとと殺した方が良いだろう。正直見てるだけで不愉快だ」

「当たり前だ。ハニワはとっとと割るに限る。という訳で死ねーーーーーーっ!!」

「り、理不尽だよ! ボクはあそこの薄幸そうな貧乳のメガネっ子にちゃぷちゃぷの水着を着せて、ぶかぶかになった胸元を見て興奮したいだけだったのに」

「やっぱりハニーは碌でもないな」

 男はそのまま剣を構えて飛び上がると、

「とっととくたばれ! ラーンスアターーーーーック!」

 そのまま勢いよく剣を振り下ろすと、その剣から黒いオーラが溢れ、そのままはにわフィーバーを頭部から一刀両断する。

「も、もっと貧乳のめがねっ子をいじめたかった…」

 そしてやっぱり碌でもない事を言い残してはにわフィーバーは粉々に砕け散る。

「フン、雑魚が」

 男はつまらなそうに剣を肩に担ぐと、そのまま自分達を助けてくれた女性の所に向かう。

 そしてそのまま女性の頭をポカリと叩く。

「アホか! もう一体居たのに気づかなかったのか」

「も、申し訳ありません。ランス殿」

 自分を助けてくれた女性…黒髪の女性と金髪の女性、そして銀髪の女性とこの男は知り合いのようだ。

 その様子を見て、カオスは確信する。

 自分達をつけていたのは間違いなくこの男達だと。

「何者だ、てめえら…」

 カオスは何時でも攻撃できるように警戒しながら問いかける。

「フン、貴様のようなブ男に名乗る名前は無いわ。勿体なさ過ぎる。だがそこに中々可愛い子がいるから名乗ってやろう。俺様がランス様だ」

 それがランスとエターナルヒーローの出会いだった。




はにわフィーバーに関しては、
ハニーが居るのは当然の事と、鬼畜王でおかゆ病があるので出しました

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