世界で大きな動きが起きた。
いや、それは本来は取るに足らない小さな出来事だったのだが…確実に時代は動いた。
1人の男が人間牧場を脱走した。
脱走を許した魔軍は、その事実を何とか誤魔化すために行動を起こした。
幸いにもそれは上手くいき、この人間牧場は何事も無く時間は過ぎていった。
その男は何とか人間牧場から抜け出したが、そのうち大病を患い、右半身の触覚以外の感覚が無くなってしまった。
何とか人里へとたどり着いたが、酒場では奴隷として扱われた。
幸いにもその女主人からは優しく扱われ、名前も付けて貰った。
その少年は『ガイ』と名付けられた。
しばらくの間大人しく過ごせていたが、そこに魔人レキシントンが襲来する。
そこから先は―――まだ明らかにはなってない。
「この町に黄金像があるのかい?」
「ああ。聞いた話だとな。ワシもこんな所の地下に人間の里があるなんて思ってなかったけどな」
日光がランス達と別れてから2年…アレからエターナルヒーロー達は黄金像を探し求めていた。
ただ、その道のりは険しく、中々見つかるものでは無かった。
見つかったとしても、自分達が探している物とは違うという事もあるが、彼等は目的のために只管真っ直ぐに進んでいた。
「人間は思った以上にたくましいですから…」
2年が経過し、日光は更に美しい大人の女性に成長していた。
身長も伸び、大きかった胸はアレから更に大きくなり、少女から見事に花開いた。
「しかしこれほどの町が今も残っているとは…正直驚きです」
この町はこれまで見てきた町と比べても非常に活気が有る。
これまで見てきた町は重苦しく、誰もがこの世界を諦めていた。
1日が過ぎる事に感謝し、只管静かに生きていく。
それが人間の世界の当たり前だった。
「若草の会だっけ? その人たちが中心になってるんだよね」
「ああ。何でもジルが魔王になった時から続いて行っているって話だ。眉唾物だけどな」
この町の歴史は長く、あのジルが魔王になった時からこの地下に町を作り、生き延びてきたらしい。
カオスからすれば到底信じられる事では無いが、この町の活気を見ると満更嘘では無いのかもしれないとも思う。
「カオス。ここの中心人物と渡りをつけたと言うのは本当ですか?」
「ああ。ワシ等がこなした依頼の中にここの町の主の依頼があったようでな。この前見つけた聖なる靴下とかいうふざけた名前のアイテムを探していたらしい」
「…ああ、あったね。そんな事」
カオスの言葉にカフェはげんなりした顔をする。
あの時の事は思い出したくも無い。
興奮したハニーがカフェに対して、園児服と靴下を身に着けるように迫って来たのだが、そのハニーは日光によって叩き割られた。
一応その服と靴下を持って来たのだが…その靴下こそが、この町のトップである若草の会のリーダーが依頼していた代物らしい。
「靴下が聖なる物とか…どうなってんのかね」
カオスですらも些かげんなりとした顔をしている。
「まあまあ。取り敢えず行ってみようよ。僕達に会ってくれるって言うんだから」
リーダーのブリティシュも苦笑しながら、この町の一番大きな建物へと入っていく。
そこには沢山の人間が居るが、一番特徴的なのはフルプレートを身に着けた人間が多い事だ。
「…成程、ここが栄えているのも納得いくね」
ブリティシュは鎧の人間を見て感心したように声を出す。
「全員かなりの使い手のようですね。まさかこの時代にここまでの人が揃うなんて…」
日光もその強さを感じ取る。
この町が栄えているというのは、やはり相応の理由が有るという事だろう。
「お待ちしておりました。ブリティシュ様ですね」
そんなブリティシュ達の前に一人の少女が現れる。
「ああ。君は…」
「私はルー・ロスチャと言います。この町を取り仕切っている者の一人です。私達のリーダーである、エドワウ・ロックが皆さんに会いたいと言っています」
ロスチャと名乗った少女は一礼すると、ブリティシュ達を一つの部屋へと案内する。
そこは会議に使われるであろう大きな机が並べられていた。
だが、それ以上に特徴的なのは、まるで神に捧げられているかのように置かれている複数のアイテムだ。
「エドワウ。皆さんをお連れしました」
「ありがとう、ルー。君達が僕の出した依頼をクリアした者達か。私の名前はエドワウ。エドワウ・亜空だ」
その男はかなり高い身長を持ち、青い鎧を身に纏った―――仮面をつけたアフロの男だった。
「…へ、変態」
その容姿を見たカフェは思わず後ずさる。
「フッ…そう言われる事には慣れているよ。甚だ不本意だがね」
エドワウは全く動じもせずに笑う。
「これが聖なる靴下か…成程、確かに聖遺物に間違いないようだ」
「…そうなのか、カフェ?」
エドワウの言葉にカオスが胡散臭そうな顔をする。
聖遺物という言葉もカオスは特に聞いた事も無かった。
「神が残した聖なる力を持っているアイテムが聖遺物っていうらしいんだけど…」
神魔法を使えるカフェも当然知っては居るのだが、まさかこんなアイテムが…ハニーが自分に履かせようとしていた靴下が聖遺物だなんて思いたくなかった。
「君達の望みは黄金像だと聞いたが…本当にそんなものが必要なのかい?」
「ああ。それが僕達の望みだ。君が聖遺物を集めているのと同じようにね」
ブリティシュの言葉にエドワウは苦笑する。
「ああ。僕達の所にも黄金で出来た像がある。何かのためにと取っておいたが…別に黄金を有難がるつもりも無い。持って行ってくれていいさ」
エドワウが合図をすると、メイドが黄金で出来た像を持ってくる。
それは口を押えた猿の形をした黄金像だった。
それを見たホ・ラガの目が光る。
この黄金像は、これまで自分達が集めていた黄金像と同じような空気を纏っている。
何よりも、大きさがこれまで集めてきた黄金像と似ている。
共通点はそれだけだが、それでもこれこそが自分達が見つけ来た物であると確信していた。
「ここはかなりデカい街なのに、金目の物には興味無いってか。珍しいな」
カオスの言葉にエドワウは苦笑する。
「この黄金像に価値がつくのは何時になるか分からないからな…それよりも、身近な目的のアイテムさ」
「何故…聖遺物を集めているのですか」
日光の言葉にエドワウの顔が真剣な物になる。
「フム…君達も金のためにこの黄金像を集めている訳では無いようだ。ならば私も話そう。私達が聖遺物を集めているのは魔人に対抗するためだ」
「!」
エドワウの言葉にエターナルヒーロー達は驚く。
魔人に対抗する、という言葉に驚いたのではなく、魔人に対抗するために意図的に聖遺物を集めている事にだ。
「これは若草の会に伝わる伝説…500年以上前の話ではあるが、聖遺物を用いて魔人を倒した事があるという記録が残っている。勿論、私は500年前に何があったかは分からないから、真偽の程は分からないがね」
「魔人と倒しただと? 馬鹿言ってんじゃねーよ。無敵結界が有る限りは魔人は傷一つつかないだろうが」
エドワウの言葉をカオスが鼻で笑う。
エドワウはそれを気にする事無く、一冊の書物を取り出す。
「言っただろう、真偽の程は分からないと。だが、我が先祖がこの記録を残している以上は信じたい事でもある。この書物こそが、我が若草の会の何よりの宝なのだから」
エドワウの手に有るのは一冊の書物。
それは魔法がかけられているのか、まだそれほど時間が経過していないように見える。
「魔封印結界…その力を使って、かつて1体の魔人を倒したと記録されている」
「魔封印結界? 知らない術ですね」
ホ・ラガが目を細める。
ホ・ラガは魔法においては右に出る者が居ないほどのスペシャリストだ。
勿論、この世界の全ての魔法を知っている訳では無いが、少なくともホ・ラガはそんな術に関しては知らなかった。
「聖なるアイテムを4つ集め、それらを設置しその中央に魔人をおびき寄せる…それだけでも大変だからね。おいそれと使えない術なのだろう」
「そんな術が本当にあるのか…?」
ブリティシュもその技術に対しては少し懐疑的だ。
もし有るのだとしたら、一体誰がその事を知ったのか…それに術の条件がやけに具体的だ。
聖遺物を4つ集めるという事が、その術の難しさに拍車をかけてしまっている。
もし嘘だとしたも、いくら何でも手が凝り過ぎている。
ブリティシュ達は些か懐疑的だが、一人顔色が悪い者が居る。
「どうしたの? 日光さん」
それは日光だ。
日光だけが、魔封印結界という名前に対して特別な態度を取っていた。
日光はエドワウの元へと歩いていく。
そして彼にしか聞こえない声でそっと尋ねる。
「それは…魔王ジルが人間だった頃に書いたとされる本ですか」
「!!」
それを聞いたエドワウの目が仮面の下で細くなる。
「君は何者だい」
そして同じように、他の者には聞こえない声で日光に尋ねる。
「ランス、という名前に聞き覚えはありませんか。それとスラルという名前にも」
「…成程、彼の知り合いか」
エドワウの言葉に日光の顔が悲しみに染まる。
あの時に魔人ケッセルリンクに聞いた事、それは人間の間でも伝わっているのだろう。
恐らくは誰も信じない…だが、この者達はそれを信じている。
という事は、彼等の祖先が魔人トルーマンと戦った者達のなのだろう。
「日光…」
「申し訳ありません…私からはこれ以上は…」
日光の悲しみの顔に、ブリティシュは何も言えない。
日光が仲間になった経緯はかなり特殊で、彼女はある人を裏切ってまで自分達の元へと来た。
勿論彼らは日光の事を信頼している。
自分達を騙せるような性格の持ち主では無いし、何よりも魔人に対しての敵意は本物だ。
だが、そんな彼女にも秘密が有る。
彼女は決してそれを語ってはくれないが、ブリティシュ達はそれを無理に聞き出そうとは全く思っていなかった。
「少しの間ここで休んでいくといい。ここは安息の地…とされているからな」
エドワウは少し寂しそうに微笑んだ。
その夜―――日光はある施設へと入っていた。
本来は咎められるはずなのだろうが、不思議と衛兵たちはそれを止める気配は無い。
まるで自分が来るのが分かっているかのように、自分の存在は無視されていた。
そして日光は導かれるように、昼に入った部屋へと入る。
そこにはやはり昼に出会った人物、エドワウ・亜空が椅子に座っていた。
「やあ。来ると思っていたよ」
「…そうですか」
エドワウの言葉にも日光は硬い表情を崩さない。
「まさかランス殿の事を知っているとは…御仁は元気かな?」
「…あなたも知っているようですね。あの方の事を」
日光の言葉にエドワウは楽しそうに笑う。
「ああ。私はあの人と共に大きな発見をした。ただ、私の発見した事は後世には伝えられないのが残念だがね」
エドワウは一冊の書物を取り出す。
それは昼間にエドワウが持っていた本であり、恐らくは日光も知っている内容の物だろう。
「それは…ジルが書いた物ですか?」
「いいや、これは賢者ジルが書いたものでは無く、我等の祖先であるドロシー・ノイマンとクー・ロスチャが書き記したもの、言わばコピーだよ」
エドワウその書物の魔封印結界について記されたページを開く。
それは確かに日光がかつて見た魔王ジルの日記とは字が違っていた。
「ここには魔王ジルが何故魔王になったのかも書かれている。勿論、それで魔王ジルが許される訳では無い。だが、彼女も一人の女性だったという事が分かるだけだ」
魔王ジルの真実…それこそがランスが冒険を続ける目的。
ジルはかつてはランスの奴隷であり、大切な人だった。
それを取り戻すために、ランスは終わりがあるか分からない冒険を続けているのだろう。
「あなたは…何処でランス殿を知ったのですか?」
「私がランス殿と知り合ったのは、かつてのAL教団の聖地カイズ…私は聖遺物を集めるための旅の途中でランス殿と会った」
カイズとは何の事なのかは分からないが、エドワウがランスと共にその地を訪れたのは嘘ではない、日光はそれを感じ取った。
「そこであった事は私は書物にも残す事は出来ない。ただ、聖遺物と魔封印結界…これだけは後世には絶対に残さなければならない」
「ええ。魔人に対する有効な手段ですから…」
魔封印結界は魔王ジルが人であった時に生み出した、とされている。
実際には、ランスがサテラに使った魔封印結界の事を覚えており、それをたまたま口にしたに過ぎない。
「君はランス殿とはどういう知り合いなのかね? 下世話な話になってしまうが、君は美しい。君ほどの女性ならば、彼が口説いていないはずは無いのだが…」
「それは…」
エドワウの言葉に日光は言い淀む。
(…言えない。私の体はランス殿にいい様にされていたなんて)
日光はランスと共にいる間は激しく抱かれていた。
最初は自分を助けてくれた礼と、自分を鍛えてくれた事に対する礼…というのがほぼ建前だった。
だが、何時の間にかその建前は消え失せ、後になってからは自ら望んでランスに抱かれていた。
その態度こそがランスとの関係を如実に伝えていた。
「失礼、答える必要は無いさ。君がランス殿と共に居ない理由も語らなくていい。ただ、彼の邪魔はしない方が良い。それだけは忠告しよう」
「言われるまでもありません」
日光はランスと敵対する気は全く無い。
道を違えたものの、ランスという一人の人間を今でも尊敬している。
「答える必要は無いが、一応聞いておくよ。君は魔王ジルの真実を何処で知ったのかな?」
エドワウの目が仮面の下で鋭くなったのが分かる。
このアフロの男は一見ふざけた容姿をしているが、その実は一流の戦士なのは分かっている。
何しろあのランスと共に行動を共にしていたと言うのだ。
あのランスがそれを認めたのであれば、この男は相当に腕が立つのだろう。
「………申し訳ありません。もし言えば…ランス殿に迷惑がかかるかもしれません」
「そうか。だったら聞くまい。取り敢えず私が言えることは一つ…君とランス殿の道が再び交わる事を祈るよ」
「何故、ですか」
日光の疑問にエドワウは笑う。
「フフ…君の目がそう言っている。こう見えても私は若草の会の当主の一人、それくらいの人を見る目があるつもりだよ」
「…失礼します」
「ああ。君に神のご加護が有らん事を…」
エドワウの祈りを受けて、日光は部屋を退出する。
そして帰り道で辛い顔を隠す事が出来なかった。
幸いにも夜なので人通りも殆どなく、日光は自分の泊っている宿に戻る事が出来た。
そして自分の部屋へと戻ると、
「お帰り」
「ブリティシュ…」
そこには自分達のリーダーであるブリティシュが待っていた。
「気はすんだかな?」
「………申し訳ありません、勝手な事を」
「いいんだよ。僕達は一緒にパーティーを組んでるけど、それぞれに目的があって一緒に行動しているんだからね」
日光はブリティシュが座っている椅子の対面の椅子へと座る。
「後悔しているのかい? あの人と別れた事を」
「いえ…後悔はしていません」
ランス達と袂を分かったのは後悔していない。
ただ、ランスとは目的が合わなかった、それだけの話だ。
「魔封印結界…日光は知ってたのかな?」
ブリティシュの言葉に日光が目を伏せる。
隠し事が下手な日光の態度では誰にでも分かる。
「そうか…でも君はそれを言わなかった。その理由だけでも教えてくれないか」
日光はその言葉に少し考えるが、ブリティシュ達のために話す事にした。
「完全では無いからです。確かに魔人に対して有効ではありますが、決定打では無い。倒し損ねた後が問題だからです」
「…成程ね。確かにそれならば使うのには躊躇うかな」
「それに…魔法が使えない私にはそれがどういう術なのかは分かりませんでした。伝えようにも、どう伝えていいかも分からないですし…」
「あははは。それもそうだね。僕もどこかで知ったとしても、それがどういう術かなんて伝えられないしね。ホ・ラガなら理解出来そうだけど」
ブリティシュの明るい笑いに日光の顔にも少し笑顔が出る。
「で…それはやっぱりランスという人も知ってたのかい?」
「…はい」
ブリティシュの言葉に日光は素直に頷く。
「じゃあ…彼は何処かで魔封印結界が完全じゃないという事を身をもって知っていた訳か。やっぱり一度話してみたいんだけどね…」
「難しいです。ランス殿の目的を考えても、私達とは決して合わないでしょうし」
「それが分からないんだよね。彼も魔人を倒すという事を目的としているのなら、どうして僕達と敵対するのか…」
「それは…極単純に、ブリティシュが男だからでしょう。ランス殿は好き嫌いが激しいですから」
「個人的な感情かぁ…確かにそれはどうしようもないかもね」
日光の言葉を聞いて、ブリティシュは本当に残念そうにする。
その顔を見て、日光はブリティシュには伝えておかないといけないと確信する。
(この人は本当に信じられる人だ。この人なら…ランス殿とも上手くやれるのかもしれない)
「ブリティシュ…この話は私とあなただけの話にしてくれますか?」
「…他の皆にも内緒なのかい?」
「はい。特にカオスやホ・ラガには…」
カオスとランスは性格的には似ている所が有るが、その根元は違う。
魔人に激しい敵意と殺意を向けるカオスに比べ、方や魔人とも協力するランス…それこそ絶対に相容れないだろう。
ホ・ラガに関しては…残念ながらランスにとってはホ・ラガは殺意の対象だ。
自分もこのパーティーに参加して分かったが、ホ・ラガは男色家だ。
ランスはそっちに関しては激しい拒否反応を示しており、残念ながら相容れる事は絶対に無いと言いきれてしまう。
「…君は何処でその事を知ったんだい?」
「それだけは言えません…本当にそれは言えないんです」
何故自分がそれを知っているかと言えば、それは魔人ケッセルリンクから聞いたからだ。
だが、それだけは言えない…ランスが魔人と繋がっているなど、他の者には絶対に話してはならない。
しかも、ランスとケッセルリンクの繋がりは彼女がカラーの時から続いているのだ。
そんな二人の繋がりを誰かに話す事は日光には出来なかった。
「じゃあ僕は行くよ。日光…無理だけはしないでくれよ」
「…大丈夫ですよ、ブリティシュ」
ブリティシュはそのまま朗らかに笑うと、そのまま自分の部屋へと戻っていった。
日光は自分のベッドの上に腰を下ろし、服を脱ぐ。
その体は少女だった頃から大人へと変わっており、その大きな胸は更に大きくなっている。
「…ふぅ」
この見事な体は女性にとっては羨望の的だろう。
日光は自分が女である事を捨てている…はずだった。
しかし、それは間違っていたと思い知らされていた。
「はぁ…」
今はランスの唇の後は消えているが、ランスに体を求められた頃は、キスマークが日光の体には絶えずついていた。
日光は自分の胸に触れる。
それだけで自分の体に電流が走ったかのような刺激が与えられる。
(私は…耐えられると思っていた。でも…スラル殿の言っている事は本当だった…)
ランスに与えられた快感は、日光の体を侵食していた。
ましてや日光は思春期の少女であった時代をランスと共に過ごしたのだ。
最初はランスを拒否していたが、それも次第にどんどんと無くなっていき、普通にランスに抱かれてしまっていた。
いや、ランスに抱かれるのは普通に嬉しかった。
家族を失った喪失感はあったが、ランス達と共に過ごした時間もまたかけがえのないものだった。
(私の体はランス殿を求めている…)
こうして自分を慰めるのは一度や二度では無かった。
あの大きな手で、自分を抱きしめ、押し倒し、激しく抱く。
日光もそれに応え、口や胸でランスに奉仕をした。
それを思い出しながら日光は自分を慰める。
(…だめ。どうしてもだめ)
だが、それでも絶頂に至るまでにはいかない。
聡い日光はその理由には思い至っていた。
(やっぱり私はランス殿の事が…)
居ないと寂しい、そう思ってしまう。
ランスと別れればその思いも断ち切れると思っていたが、実際にはそんな事は無かった。
むしろより一層心が寂しくなってしまった。
勿論、このパーティーの方が自分の目的に近いのは事実だ。
(ブリティシュの言うように…皆で協力できればいいのに…)
もしここにランス達が居てくれれば…とはどうしても思ってしまう。
それはありえないというのは分かってはいるが、それでも居て欲しいと思うのは誰もが思う願望だ。
今はもう虚しい想像をしながら、日光は自分を慰めていたが、それはランスに与えられる快楽から比べれば格段に物足りない。
こうして日光は満たされぬ思いを今も続けていた。
そして翌朝―――
「随分遅かったじゃねえか、日光」
「日光さんが寝坊だなんて珍しいね」
朝目が覚めてから皆に合流する。
珍しく遅れてきた日光に対し、カオスが軽口を叩きカフェが少し驚いている」
「…申し訳ありません。色々と考える事があって」
「それは昨日あなたがエドワウという者と話していた事に関係するんですか?」
皆に謝る日光に対し、ホ・ラガはずばりと斬りこんでくる。
日光もそれを予測していたため特に動揺は無い。
「ええ。魔封印結界の事で少し」
「それにしても魔封印結界とやらで魔人が倒せるってか。ホントなのかね」
魔封印結界の話が出た事で、カオスがその話に乗ってくる。
魔人に対して人一倍敵愾心を持つカオスとしては、その魔法が気になっていた。
「ホ・ラガも知らなかったんでしょ? だったら本当に使えるかどうか怪しいよねー」
カフェもその魔法に対しては少し懐疑的だ。
そんな力があるならば、人間はもっと魔人に対抗出来てもおかしくは無かったはずだ。
「真偽は分からないさ。でも、それ以上に僕達がやらなければいけない事があるだろう?」
ブリティシュはそう言いながら、黄金像を机の上に置く。
「これで4つ目。まだ世界に同じような黄金像はあるかもしれないけどね」
ブリティシュが黄金像の話を出した事で、皆の意識が黄金像へと移る。
「問題はこれを何処で使うか、だね」
「そうですね。これが何かの鍵にしろ、それを使う場所が必要となるはずです」
「それが分かりゃあ苦労しないだろ」
ホ・ラガの言葉にカオスが舌打ちする。
「そうだよねー。日光さんはあの人達から何か聞いてないの?」
「残念ながら…それが何なのかはランス殿達にも分からないものでしたから…」
正確には元魔王スラルがこの黄金像と関係している。
だが、スラルはその黄金像を断ち切り、新たな手段を模索している。
なのでこの黄金像についてはランス達でも全く把握していないだろう。
「それなのですがね…私もあくまでも聞いただけなのですが、この世界にある場所に巨大な遺跡が有るという話を聞いた事が有ります」
「別に遺跡なんて珍しくもねえだろ」
カオスがホ・ラガの言葉に眉を顰める。
遺跡だの何だのと噂話はあったが、所詮は噂話だ。
そういう話に飛びついて、外れだった事は珍しくない。
「ええ、珍しくは無いですが、それはいつ頃から存在しているのか誰も分からない…とされている場所らしいです。一度向かってみてもいいとは思いますが?」
「ホ・ラガがそう言うなら一度行ってみる価値は有ると思う」
ブリティシュの言葉にカフェと日光が頷く。
カオスはつまらなそうにしながらも、反対はしない。
「じゃあ行ってみようか。その遺跡に」
短いですが、エターナルヒーローに視点を移します
ガイの事は本当に悩んだのですが、ぶっちゃけガイ一人の時の事を描写するのは自分には難しいと判断しました
よってガイの描写はカオスの入手までお預けとします
何時魔人になったのか不明ですが、レイと交戦経験があるみたいなのと、アイゼルとノスと一緒に名前を出しているので同期に近いと判断しました
間違っていたらごめんなさいですね…