ランス達が魔人を倒した後―――カラーの里ではちょっとした宴会が繰り広げられていた。
カラー達がきゃあきゃあ言いながら騒いでいる。
中にはランスに対して熱い視線を向けている者も居る。
なので、ランスは当然の事ながらいい気分になっていた。
「ランスさんすごーい! 本当に魔人を倒しちゃうなんて!」
「がはははは! 俺様なら当然だ!」
ウトスカがきゃあきゃあ言いながらランスにジュースを注いでいる。
それ以外のカラーも明るい笑顔で笑いながら酒を飲んだり、食事を取っている。
「あんまりハメを外すんじゃないよ。また魔物が襲ってくる可能性はあるんだから」
「「「「はーい」」」」
ハンティの言葉にカラー達は一斉に返事をするが、それを何処まで聞いているかは分からないだろう。
ただ、ハンティもカラー達の気持ちが分かるので、苦笑するだけで何も言わない。
「やれやれ…まさか本当に魔人を倒せるとはね。聖刀の力、本物だって事かい」
そして食事をしているランス達の元へとやってくる。
「だから言っただろうが。魔人の無敵結界を斬れると」
「…半信半疑って言葉があるだろ。なまじ私は無敵結界を長い間見てきたからね」
そう言うハンティの顔には苦いものが有る。
実際、ハンティは非常に強い力を持っていながらも、魔人の無敵結界の前には無力だ。
いや、無敵結界が無くてもハンティ一人では魔人を倒す事は難しいだろう。
魔人とはそれほどまでに強い存在なのだ。
「そんな事よりも、お前もようやく仇が討てたな」
「…はい。これで父も母も…そして兄もゆっくり眠れると思います」
ランスの言葉に日光は静かな様子で答える。
「…もっと喜ぶかと思ったが」
「勿論喜んでいますよ。ですが…まだ魔人によって苦しめられている人達が居ますから」
「相変わらず堅い奴」
ランスの言葉にブリティシュは苦笑する。
「それが日光だからね。でも、これで魔人を倒せる事が出来た。そうなると、ホ・ラガ達の事も気になるんだけどね…」
ブリティシュとしては実は内面は複雑だ。
日光から全てを聞かせて貰った身としては、他の仲間達がどうしているのか気になってしまう。
(皆も動いているのだろうか…)
そんな思いに駆られるが、流石に今の状況で探しに行くのは難しいだろう。
それよりも、ランス達と共に魔人を倒していく方が良いのでは無いかと思っている。
「魔人を倒せはしたが…相当に弱い魔人だったな。流石に昔のケイブリスよりは強いが…アレを魔人の基準にはするなよ」
魔人を倒して喜んでいるブリティシュに対してスラルが釘を刺す。
「他の魔人はやっぱり強いのかい?」
「ああ。特にカミーラとケッセルリンク…そしてメガラスだな。古参の魔人の中でも別格だ」
魔人カミーラはドラゴンの魔人にして、魔人の中でも最強格だ。
昔は怠惰で怠け癖が凄かったが、今のカミーラには強い覇気が有り、相当に強くなっているだろう。
ケッセルリンクは魔人としての才能があったのか、その力をどんどんとつけている。
一応昼には弱体化するという弱点は有るが、逆に言えば夜の間は無敵に等しいだろう。
そして魔人メガラスは世界最速の魔人。
それだけでメガラスは魔人の中でも上から数えた方が圧倒的に速い魔人なのだ。
「そうか…僕達も魔人とはそこまで戦った経験が無いからね。君達の意見に従うさ」
「フン、俺様ならば余裕だ余裕」
ランスは口ではそう言うが、実際には魔人の強さを良く分かっている。
ケッセルリンクに限っては敵対する事は無いだろうが、カミーラは本気でランスの事を狙っているので注意が必要だ。
何しろ、カミーラとの遭遇率が非常に高いのだから、警戒しておく必要は有る。
メガラスに関しても、過去に戦った時はランスでも勝てる気がしなかった。
あの時は相当なハンデも有ったが、今の状況でも正直真正面から勝てるかどうかは怪しい所だ。
一流の戦士であるランスはそれを敏感に感じ取っていた。
「じゃあ次はメディウサって奴を倒すの?」
「そうだな。日光があれば無敵結界は破れるからな。油断している所をずっぱりとやればいい」
レンの言葉にランスは頷く。
そもそもの目的は、カラーを容赦なく惨殺したメディウサという魔人を倒す事だ。
イゾウは別にランスにとってはどうでもいい存在でしか無かったのだ。
「それと魔人ハウゼルと魔人サイゼルか。日光はあるが、そちらの方が我は気になる」
「うーむ…」
スラルの指摘にランスは悩む。
何しろ魔人サイゼルとはまだやっていない。
ゼスで戦った時は、口だけで済ませて見逃してやった。
犯している時間は無かったし、流石にあの時は忙し過ぎた。
それを考えれば、ランスにとってはメディウサよりもそっちの方が重大なような気がして来た。
「少しの間は大人しくするのもいいんじゃない? 魔人が死んだことで他の魔人も警戒するかもしれないし」
「…むしろ喜びそうな奴等がいそうだがな」
レンの言葉にスラルはため息をつく。
これまでランスと戦ってきた好戦的な魔人…特にレキシントンやレイは喜び勇んでランスを探すだろう。
ただ、この広い世界で出会う確率が相当に低いだけだ。
幸いにも、レイもレキシントンもそしてカミーラもランスがカラーの里に居る事は知らないだろう。
ケッセルリンクがそれを漏らす可能性は極めて低い。
「まあそんな事はどうでもいい。お前達も少しは楽しめ」
真面目な話は終わりだと言わんばかりにランスは注がれたジュースを飲む。
その日の宴会はこの時代にしては盛大に終わりを告げた。
その夜―――ランスは魔法ハウスのベッドの上で、日光と共に居る。
「がはははは! これでお前も仇を討てたな!」
「はい。父と母…そして兄の無念を晴らせました」
「それも俺様のおかげだな」
「ランス殿には感謝しています。ありがとうございます」
日光はベットの上で三つ指をついてランスに礼をする。
「うむ、俺様のおかげだな。感謝しろ」
ランスは胸を張って答える。
「感謝しています。ただ色々と言いたい事は有りますが」
日光はランスの性格に関しては、やっぱり苦言を呈する。
勿論自分が言った所でランスが変わるとは思わないが、それでも誰かが言ってやらなければならない事だと自分に言い聞かせている。
「で、どうだった。俺様が持っている時と、お前が持っている時は何か違うか?」
ランスの言葉に日光は目を丸くする。
ランスの事だから、部屋に連れ込まれた時点ですぐさま抱かれるものだと思っていたのだ。
だからこそ、日光は密かに体を清めていたのだ。
それなのに、ランスは実際には真面目な顔で聞いてきたのは流石に意外過ぎた。
「そうですね…威力ならばやはりランス殿が持っていた方が有るでしょう。ランス殿の方が私よりも剣の腕前が上ですから」
「それだけか」
「後は…単純にランス殿が直接手に持っていた方が力が増してました。それはハッキリと言えます」
日光はそれはハッキリと自覚していた。
ランスが握っていた方が、切れ味は圧倒的に上だった。
自分が握っても問題は無いだろうが、対魔人戦ならばランスが握った方が良い可能性も有る。
恐らくは、それが自分とランスの『相性』なのだろう。
ブリティシュが握っていた時とは全く違う力を改めて感じていた。
「じゃあお前のやる気次第って事か。まあお前はあの馬鹿剣とは違って真面目だからな」
ランスが思い返しているのが、あの口が悪くて常にエロい事を言っている馬鹿剣だ。
あの剣は魔人が相手じゃ無いとやる気が無い…まあそれでも強い剣である事は間違いは無い。
ただ、あの馬鹿剣よりも日光の方が遥かに気分が良い。
「はあ…」
日光はランスが何を言っているのか分からないので、困惑するしかない。
「まあそんな事はどうでもいい。やるぞ」
ランスは日光を押し倒す。
日光は特に抵抗する事も無く、ランスの事を受け入れる。
あっという間に服を脱がされ、その見事な肢体が露になる。
「…ランス殿」
「そういやジャパンの奴はみんな俺様に殿をつけるな」
「ジャパンの者ならそうですね…敬称ですから、仕方ない事だと思いますが」
「あいつは名前で言っているのにか」
ランスの目に日光は目を丸くするが、直ぐに苦笑してランスを抱きしめる。
「私にとってはブリティシュはリーダーですから…でも、ランス殿は私にとっては尊敬する方です」
「うーむ…何か距離感を感じるが…」
「それはランス殿のこれまでの行いもあるかと。でも…」
日光はランスの口に自分の唇を重ねる。
(私はあなたの前では女になってしまう…)
その言葉を口にはしない。
自分はもう人間では無くなったので、人間として生きているランスとはずっと一緒にはいられない。
だが、それでも今はランスの温もりを感じたかった。
そして二人はベッドの上で濃厚に絡み合う。
「っっ! あ、はぁ…」
ランスに子宮を突かれるたびに日光の体が跳ねる。
二人の体は汗に濡れ、ベッドのシーツに大きなシミを作っていた。
日光の股間からはランスによって流し込まれた皇帝液が伝っている。
体を完全に火照らせた日光は、ランスに必死にしがみ付いて快感に耐えていた。
耐えていると言っても、既に日光は何度も達しており、本人だけが必死に耐えていると思い込んでいるだけだ。
その証拠に、日光の足はランスの腰に回されて、その精を逃すまいとしていた。
「よーし、もう一発行くぞ」
「は、はい…何度でも…」
「がはははは! とー-----っ!!」
そして再びランスのハイパー兵器から皇帝液が日光の子宮に注ぎ込まれる。
日光は体を震わせながらそれを受け入れる。
日光の体から力が抜け、ランスはハイパー兵器を一度引き抜いた。
「今日は随分と積極的だな。前は俺様にされるがままだったのにな」
「…そ、そうでしょうか」
ランスの言葉にも日光はぼんやりとした様子で答える。
「間違いないぞ。ただ慣れてきただけじゃなくて、お前も気持ちよくなろうとしている動きだったぞ」
これまで幾人もの女性と肌を重ねてきたランスには分かる。
日光もセックスに対して積極的になっていた。
勿論彼女にはテクニックなんてものは無い。
ただ、その拙いながらも一生懸命に快楽を得ようとしているのは、ランスとしても眼福だった。
「お前も気持ち良かっただろ」
「…はい」
ランスの言葉に日光は潤んだ瞳で頷く。
日光にとって、今のセックスは本当に最高に気持ち良かった。
ランスのテクニックという問題では無く、日光の心が既に受け入れている…そんな感じがした。
これも家族の仇を討てたから…そして、相手がランスだからなのかもしれないと思い、日光は更に顔を赤らめる。
「それでいい。セックスは気持ち良くなるものだからな。だが、お前だけ気持ち良くなるのはいかんな」
ランスはそのまま日光の口元にハイパー兵器を突き付ける。
何度も出したというのに、ランスのソレはまだ硬くそそり立っている。
日光はそれを見て、荒い息をつきながら、ソレに舌を這わせる。
最初は軽く舐めていき、ハイパー兵器の全体を綺麗にする。
(私…嫌じゃない…)
男性器を舐めているというのに、今の日光には抵抗感が全く無い。
それどころか、ランスのハイパー兵器を見てもっと気持ち良くしてほしいとさえ思っている。
同時に、自分もランスを気持ち良くしたいと思う。
「あの…立ってもらってもいいですか?」
「構わんぞ」
日光の頼みにランスは立ち上がると、日光は膝立ちになって躊躇いなくハイパー兵器を咥え込む。
相変わらずランスのモノは大きいが、それでも日光はランスを気持ちよくすべく口を使って愛撫する。
そこにはテクニックは無いが、一生懸命さは伝わる動きだった。
(日光も俺様の女になったな。うむ、あの時はどうなるかと思ったが、こうなる運命だったのだな)
日光は夢中でランスのハイパー兵器を刺激する。
その光景にランスは満足しながら、ランスは一晩中日光とセックスを続ける事となった。
魔人が敗れる―――その衝撃は特には魔人の間では話題にはならなかった。
意外と思われるかもしれないが、そもそも魔人同士の争いでも命を落とす事は珍しくない。
煩わしいという理由で、ジルが魔人同士の殺し合いを禁止しているだけだ。
魔人が倒された事は、一部の魔人には逆に戦意を高揚させた。
そして魔人の王である魔王ジルは―――
「フ…ククククク…そうか、動いたか…」
魔王はこの事態に楽しそうに笑っていた。
それは特に感情を表に出さず、機械的に魔物の処刑を行っている魔王には似つかわしく無い笑み。
邪悪な笑みで有りながらも、この瞬間を待っていたと言わんばかりの笑みだ。
死んだ魔人はジルが想定していた魔人では無いが、そんなものはジルにとっては誤差の範囲内だ。
いや、正確にはジルにとってはどんな魔人が死のうが、そんな事はどうでもいいのだ。
「だが…二つか」
死んだ魔人は2体。
何れもジルが魔人にした存在では無く、魔血魂を飲み込んで新たに魔人となった存在だ。
「一方は間違いなくランス…だが、片方は違うか…」
片方は間違いなくランスが倒したと確信している。
だが、もう片方に関してはジルとしても想定外の事だ。
しかも、ランスはまだバスワルドの力をモノにはしていないだろう。
だとすると、何らかの理由で魔人を倒せる何かが生まれたという事だ。
ジルとしても完全に予想外な流れだが、だからと言ってこの状況を何とかしようとは思っていない。
「…好きにさせるとするか。ランスが狙うのは間違いなくメディウサなのだからな」
ジルは酷薄な笑みを浮かべると、何時ものように魔物の処刑を行う事にした。
魔人が死んだ、この事実は魔人には脅威では無く、楽しみを与えた。
「魔人が死んだか。まあ俺にはどうでもいいが…さて、どっちに行くかな」
この状況を楽しんでいるのが魔人レイだ。
元々戦い―――いや、誰かと競い合う事が好きな男だ。
ランスとも戦いたいが、ランス以外にも魔人を倒せる奴が居るのであれば、そいつとも戦いたいと思うのは当然だった。
「死んだのは二体…一方はランスだろうな。だが、ランス以外にも魔人を殺せる奴が居るって事だ」
ランスと戦えるのは二分の一。
だが、レイにとってはそれもまた楽しみだ。
どっちと当たろうが、自分が楽しめるのだから。
「西と東か…こいつはこれで決めるとするか」
レイは一枚のコインを取り出す。
それはこの世界の共通の通貨だ。
「表が東で裏が西…運で決めるというのもいいもんだな」
レイは親指でコインを弾く。
そしてコインが地面を転がった時、レイの目に入ったコインは―――
「表、か。東の方を探してみるか」
こうしてレイは自分の直感を信じて、東の方を回る事となった。
ただ、それはランスからは離れる事になるのだが、それはまた別の話。
「クカカカカカカ! イゾウが死におったか!」
「そうだね。魔人が死んだなんて一大事だね」
魔人レキシントンは魔人が倒された事を喜んでいた。
レキシントンには仲間意識など無い。
そこにあるのは、ただ『暴れる』という一点のみ。
だからこそ、この状況はレキシントンにとっては『面白い』だ。
楽しみが増えたという事はレキシントンにとっては良い事だ。
「で、どうするんですか? レキシントン様」
二人の全裸の使徒の言葉に、レキシントンはニヤリと笑う。
「そりゃヤルに決まってるだろうが。こんな楽しい事を見逃せる訳がねえだろうが」
「それでこそだね、レキシントン」
「きゃー! レキシントン様かっこいい!」
ジュノーとアトランタの声にレキシントンは気を大きくして笑う。
「今日は宴会だ! 酒だ! 酒をもっと持ってこい!」
魔人レキシントンは魔人が倒される事を楽しみにしていた。
まさしく戦闘狂、鬼の魔人は何時の時代も変わらなかった。
「カミーラ様…魔人が人間に倒されたようです」
「…そうか」
魔人カミーラは専用の玉座の上で、ワインを嗜みながら使徒七星の言葉を聞く。
気の無い返事に聞こえるが、実際にはカミーラの口元には笑みが浮かんでいるのを七星は見逃さない。
「七星、それってもしかしてあの人間が…?」
七星と同じく使徒であるラインコックが不安そうな顔で聞く。
その言葉に、七星は少し難しい顔をしていた。
「気になるのか…七星」
「はい…倒された魔人は2体ですから」
カミーラは七星の言葉に眉を顰めた。
倒された魔人が1体だと言うのであれば、ランスが魔人を倒したとカミーラは疑いもしない。
事実、カミーラはランスが魔人を倒している事を知っている。
「え? それってどういう事? あの人間以外に魔人を倒せる奴が居るって事?」
「恐らくは。片方は間違いなくランス殿でしょう。ですが、もう片方は見当もつきませぬ」
七星としてもこの情報を聞いた時は戸惑った。
魔人が倒されるという事は七星にとっては驚くべき事では無い。
だが、それが一度に複数とあっては困惑するのは当然と言えた。
「情報を集めろ」
「はっ」
カミーラの言葉に七星は恭しく一礼する。
(カミーラ様…凄い機嫌がいい。魔人が倒されたのに…)
主であるカミーラは現状を非常に楽しみ、そして喜んでいる。
少々退屈だった時代がようやく動いたのだ。
(さて…ジルはどう動くかだが…いや、奴は動かぬか。ならば、私は私で好きに動くとしよう)
カミーラは何処までも楽し気にワインを飲んでいた。
「ケッセルリンク様。魔人イゾウがランス様によって討たれました」
「そうか、ご苦労」
シャロンの報告にケッセルリンクは嬉しそうに微笑んだ。
「例の力を無しに魔人を討ったか…ならば、スラル様の書物は本当だったという事か」
ケッセルリンクはあの時の遺跡で出会った人間を思い出す。
人間にしてはかなり強い一団だったが、間違いなくあの中の人間がスラルと同じ道を辿ったのだろう。
「エルシール。スラル様の書物を全て処分しろ。誰の目にも入ってはならない」
「かしこまりました。ケッセルリンク様」
主の命令にメイド長のエルシールが了解する。
「え…? 処分してしまうのですか?」
それに驚いたのがバーバラだ。
まさか、ケッセルリンクの主であるスラルの残した書物を処分するとは思っても居なかった。
「ああ。スラル様自身が必要無いと判断したものだ。私達の手元に置いておく必要も無い。確実な処分が必要だ」
「も、申し訳ありません、ケッセルリンク様」
バーバラは慌てて謝るのをケッセルリンクが手で制す。
「謝る必要は無いよ。さて…問題はここからの動きなのだが…問題が有るのだろう?」
「はい。倒された魔人は2体…1体はカラーの森の付近で討たれたイゾウです。ですが、もう1体の方は分かりません」
ケッセルリンクはイゾウがカラーを狙っている事に気づいていた。
気づいてはいたが、どう動こうか迷っていた。
カラーを狙うという行為は止めさせたいが、だからといって自分があまり表に出過ぎるのも都合が悪い。
だが、幸いにも魔人イゾウはランスに討たれて死んだ。
これはケッセルリンクにとっては朗報だった。
「ランスさんはメディウサを狙うと言ってましたからねー。ハウゼル様の事も有りますから、当分カラーの森から動かない気もしますねー」
「加奈代の言う通りだ。ランスが次に狙うとすればメディウサだ…だとすると、もう一体の魔人を倒した存在はランスにとっては追い風か…」
魔人の目は魔人を倒した者の目に行くが、それが二つに分かれる事になる。
勿論、直接動く魔人はそう多くは無いだろう。
好戦的なノス、レイ、レキシントン辺りは間違いなく動くだろう。
そしてランスを狙うカミーラも間違いなく動く。
「他の魔人の動向も気にはなるが…いや、直接動くのはそうは居ないか」
ケッセルリンクとしては一番不安要素があるのがカミーラだ。
何しろカミーラとランスには奇妙な縁がある。
自分もそうだが、カミーラが動くところにほぼ必ずランスが居る。
これは最早偶然では済まされない、運命的なモノを感じてしまう。
「如何致しますか? ケッセルリンク様」
パレロアの言葉にケッセルリンクは考える。
表立っての支援は出来ないが、使徒を動かす事でランスを助ける事は出来る。
ジルもそんなケッセルリンクの動きには気づいてはいるだろうが、特に何かを言ってくる事も無い。
ジルはあえてランスを泳がせている…ならば自分が余計な事を言ったりやったりする必要は無い。
「ひとまずは…ランスをハウゼルに引き合わせたい所だな。サイゼルとは交戦したようだが、ハウゼルとは殺し合いにはならないだろうからな」
「そうですねー。ハウゼル様は本当にお優しいですから」
「加奈代…その辺りは君に任せる。私はその手の謀はランスのようにはいかないからな。私が変に手を出すと余計な事になるかもしれん」
「了解しました。まあランスさんの事ですから、あっさりハウゼル様を騙しそうな感じもするんですけどね」
加奈代の言葉に使徒達は『あーっ…』という感じで頷く。
何しろ魔人ハウゼルは非常にお人好しな性格をしているから、ランスのような人間にはコロッと騙されそうだ。
勿論それはランスが魔人と対抗できる力があっての事なのだが。
「さて…確実に時代が動いた。かつて私がランスと共に魔人を倒した時とは比べ物にならない程にな」
ケッセルリンクは新たな時代の到来を感じ取る。
その顔は不安とも新たな希望ともとれる複雑な表情をしていた。
そしてランス達が動く前に、一人の魔人が動き始める。
「この本の続きを持つ人がこの辺に居るんですね…」
それは翼を生やし、赤い服を纏った美しい女性。
「…何とか平和的に受け取れればいいんですけど」
魔人でありながら、相手から奪うという発想が出てこない優しい魔人。
魔人ラ・ハウゼルがランスの元に迫ってきていた。
次はメディウサでは無くハウゼルとなりました
これも予定通り…ですので、メディウサ戦はもう少しお預けとなってしまいます
まあハウゼル戦はランス10での戦いからもうアレな事になるんですけどね…
どう考えてもシリアスにはならないんですよね