ランス再び   作:メケネコ

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ハウゼルの葛藤

「あー…無駄に疲れた気がするぞ」

「そうですよねー。アレだけ戦っても報酬何も無かったですからねー」

 カラーの隠れ里に戻ったランス達は大きくため息をつく。

 もう日は落ち、人類は明日生きているために震えている中、魔法ハウスは煌々とした明かりに包まれ快適な空間を維持している。

 ダンジョンの攻略は完了したと言っても良いのだが、何も得る物は無かった。

 しいて言えば経験値は稼げただろうが、有用なアイテムは何も見つからなかった。

 トラップ的なダンジョンでしか無かったのだ。

「大変だったな。せめて我がランスの剣の中に居ればもっと楽だったとは思うが…」

 話の詳細を聞き、スラルも残念そうな顔をする。

 悪魔の事もそうだが、自分がランスの側に居られなかったのが一番悔やむ所だ。

 魔人であるハウゼルが居た事で、自分は今回は必要無いと思っていたのだ。

「お前のようにトラブルに巻き込まれやすい男から離れるのは得策では無いな。全く…お前はどこででもトラブルを巻き起こす」

「私は悪魔を倒せて良かったけどねー」

 レンは気楽そうに言う。

 ウトスカとリディアはレンに何かを言いたげだが、レンは口元に指を寄せて二人に口止めをする。

 二人は顔を見合わせて頷き合う。

 それほどまでに、全力を出したレンの力は凄まじかった。

 同時に、あの背中かから生えていたあの翼が美しかった。

「でもそんなダンジョンがあったなんて知りませんでした…私達も世界を見てきましたが、そんな洞窟の話は聞いた事もありませんでした」

 世界を旅していたエターナルヒーローでもそんなダンジョンの存在は知らなかった。

「そうだね。もし誰も帰らないダンジョンがあるんだったら、もっと有名になっていてもおかしくはないよ。何だかんだ言っても魔人に対抗しようとする人は僕達だけじゃ無かった」

 ブリティシュ達以外にも魔人の支配を何とか退けようとした人は大勢いる。

 ただ、力が無ければ意味が無い…力があったからこそ、ブリティシュ達はこの世界の理を変える力を手に入れたのだ。

「うーん…これ、私の予想になるけど言っていい?」

「何だレン。心当たりがあるのか」

「心当たりというかね…そこって元々悪魔が人間達を誘い込むためのダンジョンだったと思うのよね」

「人間を誘い込む?」

 日光の言葉にレンは頷く。

「例えばこのダンジョンには凄い宝があるとかね。そういう餌で釣って、人を呼び込んでから殺す…そういうやり方をしてたと思うのよね」

「…この時代にか?」

 レンの言葉にスラルが首を傾げる。

「多分なんだけど、これって前の魔王の時代からあったんだと思うんだよね。悪魔って結構慎重だから…それこそ何百年でも待つ事も厭わないし」

「なんだそりゃ。それじゃあそいつは魔王が変わった事すら知らんという事か」

「私の勝手な予想だけどね。それこそ少しは人間達も訪れてたから、悪魔もその場所から移動しなかったと思うのよ。もしくははぐれ悪魔か…もうそれを確かめる方法は無いけどね」

 真相はランスが倒したあの悪魔しか分からないだろう。

「ふーん。まあどうでもいいな」

 ランスは心底どうでもいいかのように言葉を放つ。

「確かにそうだな。もう死んだ奴の事を考えても無意味だろう。とにかく少し休むことだ。ランス、リディアの事は我とブリティシュに任せて休んでいろ」

「それは構わんぞ。俺様もちょびっと疲れたからな。今日は寝る」

 ちょびっととは言うが、悪魔との戦いはランスにとっても結構疲れた戦いだった。

 やはり悪魔の強さはその辺のモンスターとは別格で、今回の事もハウゼルが居なければもっとピンチに陥っていただろう。

「じゃあ今日は解散ですねー。じゃあランスさんもお休みなさーい」

「おう」

 ウトスカの言葉にランスはひらひらと手を振りながら自分の部屋へと向かって行く。

 誰も女を誘わなかったところを見ると、本当に疲れていたのだろう。

「じゃあ僕も今日は寝る事にしよう。明日は僕が彼女のレベルアップに付き合うよ」

「うう…お手柔らかに」

 ブリティシュも自分が寝床にしている場所へと戻っていく。

 ウトスカとリディアもそれに続き、残ったのはスラルとレンと日光とハウゼルだ。

「さて、我は我で色々と研究もあるからな。そろそろ部屋に戻らせてもらおう」

「私も寝るわ。特に疲れてはいないけどやる事もないし」

「私も部屋に戻らせて頂きます」

 スラル達も各々自由な時間を使う事にする。

 そんな中、ハウゼルがスラルに話しかける。

「あの…あなたに話があるのですけどいいですか?」

「我にか? 別に構わんが…」

「その…出来ればランスさんと3人で話したいのですが…」

 ハウゼルの申し出にスラルは眉を動かす。

 まさかランスと自分の3人で話したいと言ってくるのは予想外だった。

「私はいいわよ。どうせスラルが後で話してくれるでしょうし」

「私も構いません」

 レンと日光は気を使ってくれてるのか、こちらに遠慮してくれる。

 ハウゼルは二人に頭を下げると、そのままスラルと共にランスの部屋の前に行く。

 そしてノックをするが、特に返事は無い。

「もう寝てしまったのでしょうか?」

「流石に速いと思うがな…入るぞ、ランス」

 返事も待たずにスラルはランスの部屋へと入っていく。

 ハウゼルも遠慮がちにその後ろに続く。

 当のランスはと言うと、自分の剣を前に複雑な顔をしていた。

「何だお前等。俺様は入っていいぞとは言わなかったぞ」

 ランスはベッドに立てかけてある剣をじっと見ていた。

「すまないな。だが、ハウゼルがお前と我に話があるそうだ。彼女の言葉ならお前も拒否しないだろう」

「その…申し訳ありません」

 スラルは遠慮なくベッドに座るランスの横に座る。

「珍しいな。お前が自分の剣をじっと見ているなんて。そもそも女を誘わない日が有る事が不気味だ」

「フン、俺様にだってこういう日くらいある。で、話とは何だ」

 ランスはハウゼルをジロリと睨む。

 少々機嫌が悪いのは分かったが、ハウゼルにはどうしても聞かなければならない事があった。

 ハウゼルは椅子に座ると、ランスの見ている剣を見る。

「今日…私は不思議な光景を見ました」

「ランスと居ると常に不思議な光景を見れると思うが…一体何を見た」

 スラルの言葉にハウゼルはどこまでも真剣な顔で剣を見ている。

「…ジル様です。でも魔王のジル様じゃない…普通の人間のジル様のようでした」

 ジルの名前が出た事で、ランスはより不機嫌になる。

「あの悪魔の火炎流石弾…それからランスさんを守ったのはジル様のような気がしまして」

 ハウゼルの言葉にスラルは目を見開く。

「何? そんな事があったのか。だったら我に話してくれればいいものを」

「やかましい。言ったってどうにもならんだろうが」

 ランスの言葉は少し硬い。

 やはりジルの事を触れられるのは、ランスとしてもあまりいい気分はしなかった。

「居るんですね? その剣の中にジル様が…魔王としてでは無く、人としてのジルが」

 その言葉にランスは答えないが、それこそが答えのようなものだ。

 スラルは一度ため息をつくと、

「ランス。一度見せればいい。彼女だって覚悟を決めてお前を訪ねたはずだ。それに、ジルを何とかしたいのはお前の何よりの目的のはずだ」

「フン。好き勝手いいおって。まあいい、だったら見せてやる。スラルちゃん、いいな」

「ああ。ソウルブリング!」

 スラルが呪文を唱えると、スラルの姿が消えて一つの小さな人形がベッドに上に落ちる。

「これは…?」

「これはIPボディ…これがあれば我は肉体を持てる。この状態でもある程度は戦えるが、戦闘力は格段に落ちる」

 そして現れる霊体のスラル。

「さて…ではやるか」

 スラルはそう言うと、ランスの剣の中に消えていく。

「成程…こうやって私と戦ったんですね」

 ランスの言う通り、これは確かにアイテムと言えばそれまでだろう。

「さて…ソウルブリング」

 剣の中からスラルが呪文を唱えると、ベッドの上のIPボディが人の姿を取る。

「! ジル様!」

 その姿を見てハウゼルが跪く。

 そこにあったのは間違いなくジルの姿だったからだ。

「魔王じゃない。ここにあるのはジルの魂の欠片に過ぎない」

「あ…そうですよね…」

 魔王ジルは魔王城に居る。

 このジルからはあの恐ろしい程の魔王の気配が一切感じない。

 それに、彼女の両手両足はあの黒い手足では無く、普通の人間の手足をしている。

 ただ、ジルはその顔に何の表情も浮かべておらず、動く気配も喋る気配も無い。

「欠片だけだから、自分で動く事も喋る事も出来ない…だが、ジルは確かにここに居る」

「分かります…私は彼女がランスさんを守るのを見ました。小さな魔法バリアでしたが、確かにランスさんを守るのを…」

「全く…とっとと動いて俺様の役に立て」

 ランスはジルの頭を乱暴に撫でるが、ジルは全く反応しない。

 何の感情も見せず、虚ろな目でされるがままになっている。

「ソウルブリング」

 スラルが魔法を唱えると、ジルの姿が消える。

 そしてスラルがランスの剣から出てくると、もう一度同じ魔法を唱える。

 すると先程のスラルの体が現れる。

「…そういう事なんですね。だからあなたは…ジル様を、人間のジルを取り戻すために…」

「フン、俺様の奴隷の分際で世界の支配者になるなど生意気だ」

 ランスの言葉にハウゼルは苦笑する。

 口ではそう言っていても、ランスにあるのは揺ぎ無い決意なのが分かったからだ。

「で、それを確認したかっただけか」

 ランスはやっぱり不機嫌な声でハウゼルを睨む。

 誰だって触れられたくない事はある、ランスにはそれがジルだっただけの事だ。

「…それも有ります。それよりも、あなたは私に何を望みますか」

「あん?」

 ハウゼルの言葉にランスは面食らう。

 ハウゼルの態度は非常に真面目で、真剣な顔でランスを見てる。

 もし変な言葉を返せばそれこそ取り返しのつかない事になりそうな真剣な顔で。

「言っただろうが。俺様は…」

 ランスはデートと言いかけるが、そこで言葉を飲み込む。

 真剣な表情をしているが、その中身は実は笑っていた。

(チャーンス。何だか知らんが、ハウゼルがその気になってる…ような気がするぞ。ここは慎重に言葉を選ばなければならんな)

 ウトスカとの会話を思い出し、ランスはハウゼルがどういう言葉を望んでいるか、それを真剣に考える。

(こいつはクソ真面目そうだからサテラと同じような事は駄目だな。思い出せ俺様。あの本はどんな本だった)

 詰まらないからという理由でランスはその本の内容を忘れていた。

 だが、いい女が目の前に居て何となくだがやれそうな空気を出しているのを見て、ランスの頭はフル回転する。

(えーと、確かそうだ。色々とあったが…あ、そうだ。こういうのだった)

 ランスはその行為を思い出す。

 本の内容の中で、ランスが覚えていた事…それは、女を口説くときに使えそうだと思っていた行動だ。

 女を口説くための手法ならばランスは喜んで覚える。

(確かこうだったな)

 ランスはベッドから腰を上げると、そのままハウゼルへと向かって行く。

 そして真正面から真剣な表情でハウゼルの目を覗き込む。

 ハウゼルはそんなランスから顔を背ける事無く、真剣な目でランスを見ている。

「俺様が欲しいのはお前だ」

 ランスの言葉にハウゼルは真剣な目でランスを覗き込む。

「嘘じゃ無いぞ。俺様にはお前の力が必要なのだ」

「魔人…だからですか?」

「別にお前が魔人だから必要なんじゃない。お前がハウゼルだから必要なのだ」

 二人のやり取りを見て、スラルは内心でガッツポーズをする。

(何だか知らんが、二人の距離が急激に縮まったきがするな。我は今日は居ないほうがいいな)

 スラルはそのまま音もたてずにそそくさと部屋から出ていく。

 どうせ自分の出来る事はもう終わったのだから。

 そんなスラルに気づく様子も無く、二人は真正面から見つめ合っていた。

「まどろっこしいな。立て、ハウゼル」

「え」

 ランスはハウゼルを無理矢理立たせると、そのまま壁にまで進む。

 ハウゼルの背中が壁に当たり、ランスの手がハウゼルの顔の横の壁にドンと強く叩く形になる。

「俺様にはお前が必要だ。だから俺様のモノになれ」

「え、えーと…」

 ハウゼルは内心では非常に慌てていた。

(ま、まさかこんな事になるなんて。で、でもこれってあの時の小説と同じ…)

 ランスは意識してやってはいないが、奇跡的にハウゼルが憧れたシチュエーションになってしまっていた。

 故意にやっているかハウゼルには分からないが、ランスの顔は非常に真剣だ。

 それもそのはず、ランスは真剣にハウゼルを口説いているからだ。

「わ、私があなたのモノになったからと言って、魔王をどうにか出来るとは思えませんけど…」

「そんなのやってみないと分からんだろうが。最初から出来ないからやらないという奴はただの負け犬だ。出来なかったら出来るように考えれば良いだけだ」

「それでも出来なかった…?」

「出来ない事を今から考えるのは無駄な事だな。俺様はどんな手を使ってもジルを取り戻す。そのためにもお前が絶対に必要、それだけだ」

 ランスの顔が迫ってきているのを感じ取り、ハウゼルは内心で心臓がバクバクになっている。

(ちょ、ちょっとこんな光景いいなあって思っていたけど、まさか魔人の私にそんな事を出来る人なんて居ないと思っていたのに…)

 しかもランスの言葉には嘘偽りが無いのが分かる。

 つまりはランスは本気でこの言葉を言っているのだ。

 どれだけ困難だろうが、必ずやり遂げる、そのためには何だってするという決意が感じられる。

「わ、私にどう協力して欲しいというのですか」

「俺様に抱かれろ」

 ハウゼルの言葉にランスは直球を斬り込んできた。

(え、ええええええ!?)

 あまりにもストレートな物言いに流石のハウゼルも動揺する。

 まさかここまで真っ直ぐに言い切るとは思ってもいなかった。

 エッチな人間だとは思っていたが、まさか魔人である自分にまでここまで言い切るなんて想像もしない。

「だ、抱く事とジル様の事と何が関係あるのですか」

 自分を抱くという事がランスに協力する事になるとは全く思えない。

 この疑問は当然の疑問だった。

「うむ、それが関係あるのだ。実はある神様からの試練でな。とある魔人の姉妹を倒してエッチをすれば凄まじい力が解放されるというのだ」

「は、はあ…」

 ランスの言葉にハウゼルは困惑する。

「だから俺様はお前と決闘したのだ。その結果俺様が勝った訳だが、俺様の目的はお前とのデートだけでなく、お前とエッチをする事もあったのだ、うん」

 ランスはハウゼルが困惑している間に一気に畳みかける。

 少々強引だが、ハウゼルのようなタイプはこうして一気に行くのが良いと感じた。

(それに何となくだが、こいつは俺様の事を嫌ってないような気がするんだよな、うん)

 ハウゼルは非常に真面目なタイプ故に、騙されやすい奴だととも感じた。

 それはランスとの決闘に律儀に応じた彼女を見れば明らかだ。

「え、エッチ…ですか」

「当たり前だ。それくらいも無しに魔人とタイマンなんてする訳が無いだろう」

「そ、そうですけどね。やっぱり物事には順序が…」

「そんなのはもう踏んだだろう。君と出会い、戦って、デートもした。ほら、順調だろう」

「え、えーと…それはちょっと違うような…」

 ハウゼルが言葉を濁すと、ランスの顔がハウゼルに近づいてくる。

「俺様は本気だ。試練抜きにお前を口説きたいし、エッチもしたい。お前はかわいくていい女だしな」

「あ、有難うございます。で、でも突然そんな事言われても…」

「突然始まるのが出会いだろうが。お前は俺様と劇的な出会いをしたし、戦いもした。そして一緒に戦った。それだけでも十分だろうが」

「う、ううぅ…」

 ランスの言葉は無茶苦茶だが、頭が少々オーバーヒート気味なハウゼルには覿面だった。

 これまでハウゼルが見た本でも、出会いというのはいつも突然だった。

 だが、そんな突然の出会いが主人公の運命を変え、物語を作っていったのだ。

 それは創作でも現実でも変わらないという事を、ハウゼルは身をもって思い知らされた。

 そしてもう一つ、ハウゼルには凄いデジャブがあった。

 それはハウゼルが時折見る淫らな夢。

 サイゼルも同じような夢を見ているようだが、その内容は日によって変化している。

 ある日は無理矢理犯されたり、ある日は優しく抱かれたり、ある日は調教されたりとその内容は色々だった。

 そして今のハウゼルの状況は、その中の夢の光景と瓜二つだった。

「あ、あのですね。す、少し離れてくれると…」

「嫌だ。お前がしっかりと答えを出すまでは離れんぞ」

 ランスの顔が少しずつ迫ってきており、その鼻が触れるか触れないかの距離にまで近づいてくる。

 そして、その鼻が触れた時、ハウゼルは思わず目を瞑った。

 それを見てランスはすかさずその無防備な唇に自分の唇を重ねる。

(うひょ~。柔らかいなー。それにしてもこいつ全然堅いな。こいつは間違いなく処女だな、うん。恋愛経験なんて有る訳ないな)

 ハウゼルの乙女ちっくな態度を見てランスは確信する。

 もう一押しで、ハウゼルは折れると。

 だが、その一押しは慎重に行かなければならないと危惧もしている。

 この魔人は怒らせると非常に怖いタイプで、もし失敗すれば協力は得られないかもしれない。

 しかし、そんな事は許されない…全ては自分の奴隷をこの手に取り戻すために。

「ほれ、こっちにこい」

 普段のランスならここでディープキスをしてから体に手を伸ばしていたかもしれないが、それを何とか押さえてベッドに向かう。

 ハウゼルは誘われるままにベッドに座る。

「で、お前はどうしたいんだ」

「え?」

「ジルの事を聞いてお前はどうしたいんだと聞いとるんだ」

「あ、そ、そうですね」

 ハウゼルは一度深呼吸をする。

 心臓は非常に大きく脈打っているが、それでも冷静になって言葉を放つ。

「わ、私としてはあなたに協力をしてもいいと思ってましゅ」

「…そ、そうか」

(噛んだ…)

(噛んでしまいました…)

 ハウゼルが言葉を噛んでしまった事で少し気まずい空気が流れる。

「う、うむ。で、協力していいとはどれくらいまでだ」

「その前に…あなたは本当にジル様…人間のジルを取り戻したいのですかか?」

「当たり前だろうが。あいつは俺様の奴隷だ。奴隷のくせに主人の俺様より偉くなるとは許せんだろうが」

 ランスはハウゼルの太ももを撫でる。

「ううう…」

 ハウゼルは顔を真っ赤にしながら耐える。

 これから自分がどうなるのか…それが分からないほどハウゼルは世間知らずでは無い。

「ほ、本当に私とその…エッチな事をしないと駄目なんですか」

「ダメだな。だから俺様はお前が拒否しようと、絶対にエッチをする。だが、俺様としてもお前を無理矢理襲うのは御免だからな」

 自分の体に触れてくるランスから離れようとするが、ランスは力強い手で逃してくれない。

 いや、もしかしたらハウゼル本人が心から拒否をしていないのかもしれない。

「………う~」

 ハウゼルは特別に顔を真っ赤にすると、意を決したようにランスを見る。

「わ、私は処女です。や、優しくしてくれますか」

 その言葉にランスはにんまりと笑みを浮かべる。

「おう、勿論だ。セックスは楽しんでやるものだからな。優しくしてやる」

 ランスはそのままベッドにハウゼルを押し倒す。

 そこには真っ赤な顔のまま目を瞑っているハウゼルの姿が有る。

(バスワルドは抱いたが全くの無反応で楽しくなかったからな。まあアソコの具合は良かったが…感情が無いと面白く無いな)

 ラ・バスワルドは抱いててあまり面白くは無かった。

 だが、ハウゼルはこうして真っ赤な顔で少し震えている。

 それがランスにとっては非常にそそられる。

「心配するな。思いっきり優しく可愛がってやるからな」

 

 

 

 大陸東部―――そこではまさに人外の争いが繰り広げられていら。

「オラアアアアアアア! 吹っ飛べ!」

 レイの凄まじい電撃がガイを襲う。

 しかしガイは全く慌てること無く、レイの電撃をバリアで防ぐ。

「チッ、やるじゃねえか…まさかアイツ以外でここまでやりやがる人間が居るなんてな」

 レイは口は悪いが、実に楽しそうに笑っている。

 最初は外れだと思ったが、予想を大幅に上回る奴がまだこの世界には居たのだ。

「しかも本当に無敵結界を斬れるんだな。ヘッ! 楽しくなってきやがった」

 レイは本当に楽しそうにしながら体から稲光を放つ。

 対するガイは少し荒い息をついている。

「チッ…ヤバイの。こいつは無敵結界を斬られた事に全く動揺しとらんわい」

 カオスは無敵結界が無くても全く態度を変えないレイに驚く。

 レイはかつて一度だけ見た事があったが…その時も無敵結界を使わずにあの男と戦っていた。

 つまりは、無敵結界を頼った戦いを全くしないで戦う事をこれまでやっていたのだろう。

 その証拠に、レイの動きは滅茶苦茶でありながらもガイの剣の動きを見切っていた。

 ガイも凄まじい剣の腕前を持っているが、それではレイは止まらなかった。

 そして厄介なのがその体質。

 常に電撃を身に纏っているせいで、迂闊に近づくとその電源によるカウンターを喰らう。

「ガイ。こいつは魔法で行くのが正解じゃぞい」

「分かってる。だが、その隙を中々くれない…」

 ガイもこの魔人を相手には魔法で攻めるのが良いとは思っている。

 何しろ魔法は必中な上、魔法レベル3を持つ上に様々な禁術をデメリット無しで使えるガイは戦い方として魔法使いよりなのだ。

 ただ、その得意の魔法を使うためにはまずはカオスで無敵結界を斬らなくてはならない。

 そうしなければどんな禁術だろうが意味は無い。

「行くぜ!」

 レイの怒号と共に、天から雷が落ちてくる。

 もう一つ厄介なのが、この天から落ちてくる雷だ。

 最初にレイと戦っている時は気づかなかったが、時間が経つにつれてどんどんと天候が曇っていき、ついには天から雷が落ちてくるようになった。

 レイはその雷を自在に操る事が出来る。

 天から落ちる雷を防いでいるうちに、レイが雷光を纏った拳でガイに襲い掛かる。

 ガイはそれをカオスで防ぐが、最大限に溜められた雷光がガイの肌を焼く。

 その鋭い痛みに顔をしかめながら、ガイはレイに向けて剣を放つ。

 レイの戦いはまさに喧嘩と言っても良いが、問題なのはやはりその防御だ。

 まるで剣士と戦う事を想定しているかのように、粗削りな我流ながらも防御技術が存在していた。

 カオスもガイも魔人は無敵結界頼みの戦いをし、油断をしていると思っていたが、レイは違った。

(まずいな…)

 こうも接近されては魔法の詠唱が出来ない。

 魔法の詠唱をしながら戦えない事は無いが、流石にこの魔人に対しては無謀過ぎる。

 そうなるとやる事は唯一つ、撤退だ。

 今無理をしてこの魔人を倒す必要は無いのだ。

 相手の戦い方が分かっていれば、どうとでも付け入る隙は出てくるというものだ。

 ガイがそう考えていた時、突如としてレイがガイから視線を外す。

 ガイはそれを好機と判断する。

「氷の矢!」

「っ!」

 ガイの放った魔法がレイに突き刺さる。

 流石に魔法レベル3を持ち、カラーのクリスタルなどで力をブーストした魔法の威力は強大だった。

 ガイはそのまま一気に遁走する。

 レイはそれを追わなかった。

 何故なら、ガイ以上に厄介な存在を上空に見つけたからだ。

 その厄介な存在がレイの近くに降り立つ。

「何しに来やがった。カミーラ」

 降りてきたのは魔人四天王であるカミーラだ。

「ランス…では無かったか」

 レイはランスの名前が出た事で完全に戦闘態勢を解く。

 逆立っていた髪が降り、天を覆っていた雷雲も霧散していく。

「ああ。だが無敵結界を斬れるってのは本当だ」

 レイは傷ついている自分の腕を見る。

 そこからは血が流れており、傷の治りも遅い。

 これはあの剣によって傷つけられたもので、魔人の再生能力すらも殺されていた。

「アイツじゃ無くて残念か?」

 レイの言葉にカミーラの気配が濃厚になる。

 それは間違いなく怒りによるもので、流石のレイもそれには降参と言わんばかりにカミーラと距離を取る。

「だとすると…もう片方か」

 カミーラは怒りの気配を消すと、その顔に笑みを浮かべる。

 久しく狩りたい思う相手が居なかったが、どうやらランス以外にも強い人間が存在するようだ。

 カミーラはそのまま宙に浮かぶと、そのままレイの前から消えていく。

 どうやらカミーラはこちらとは別の方を探すようだ。

「じゃあ向こうがランスって訳か…? まあどっちにしろ楽しめそうだぜ。ああ…でも姉御の事はどうするかね」

 レイとしては魔王ジルの事は気に入っている。

 自分を魔人にしたという事も有るが、絶対的な実力者として、レイはジルに尊敬の念さえ覚えていた。

「今カミーラとケッセルリンクを敵に回す事もねえか…ま、あいつとはどうせ嫌でも会うだろ」

 レイは楽しそうに笑うと、今戦った人間を探すべく歩き始めた。

 が、途中で血が流れている腕を見る。

「…その前にこっちか。ま、無いよりはマシだな」

 レイはそう言うと懐から包帯を取り出して腕に巻く。

 あまり器用では無いので、中々不格好だがそれでも無いよりはマシだ。

「人間の所に行って本格的に治療をするのもアリか」

 レイの価値観の変化が、彼に柔軟な行動を取らせることになっていた。

 レイはそのまま適当な場所を目指して歩いて行った。




ゲームではエールはAL大魔法で無敵結界を壊してますが、こちらでは斬らなければいけないという事にします
以前は無敵結界を中和出来たりしてましたが、最新設定では斬らないといけないみたいですし

ガイに関しては本当に難しいですが、こんな感じです
圧倒的な強さで魔人を蹴散らせるような強さは無いようにしています
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