ランス再び   作:メケネコ

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魔人メディウサ

 1人の男が酒場で酒を飲んでいる。

 人間の隠れ里には酒場もあれば娼館も有る。

 魔人や魔物から隠れながらも、人はある意味逞しく生きていた。

 酒場にはマスターが居るが、声をかけてこないのは男にとっては有難かった。

(やっぱ酒は人間の作るやつの方が美味いな。まあ魔物にそんな繊細な作業が出来るとも思えないからな)

 男の名前は魔人レイ。

 かつては人間であり、今は魔人をやっている。

 だが、そんなレイも魔人である事を隠してこうして人間の世界を回っていた。

 戦う事が好きなレイは、今は一人の人間を探している。

 その情報を集めに人間の隠れ里に来ているのだが、中々情報は集まるものでは無かった。

(あの男…隠れながら移動してるのか? まあそれが正しい判断か。こんな状況でもある意味堂々としているのはあいつくらいか)

 レイはランスの事を思い出し好戦的な笑みを浮かべる。

 あの時戦った男もいいが、やはり自分が戦いたいのはランスだ。

 何でも有の戦いこそが自分が望む戦いだ。

「こんな所に居たんですか」

「やれやれ、探しましたよ」

 レイの隣に二人の男が座る。

 1人は金髪の絶世の美青年、もう一人はレイも知らない男だった。

 だが、レイはその男が誰なのか直ぐに分かった。

「アイゼルとジークか。何しに来やがった」

「フフ…あなたのように酔狂な事をするのも一興だと思いましてね」

「私はアイゼルの付き添いですよ。それと情報の収集に来たらたまたまあなたの姿を確認しましてね…」

 魔人アイゼルと魔人ジーク。

 この二人はレイと近い時期に魔人になったので割と親しかった。

 レイに酒を注いでいたマスターの目が少し虚ろになっている。

 間違いなく、アイゼルの洗脳魔法を受けたのだろう。

「で、目当ての者とは戦えたんですか?」

「フン…」

 アイゼルの言葉にレイはつまらなそうに答える。

 それこそがレイがあれからまだ戦えていないのを物語っていた。

「こちらにカミーラ様が来てたはずですが、あなたは会っていないのですか」

 もう一人の青い髪の男…変身したジークの言葉にレイは複雑な顔をする。

「会った。まあもう一方の方に行ったみたいだけどな。ただ、またこっちに来るような気もするんだけどな」

「そうですか…しかし魔人が二人も討たれたのは由々しき事態だと思うのですがね。ジル様はその辺りはどう考えているのやら…」

「さあな。姉御の考えなんて誰も分かんねえよ。ノスの野郎だって実際は何も知らないだろうよ」

 魔王ジルの側近ノス…魔人四天王の一人であり、現在最強クラスの魔人の一人だ。

 ドラゴンの魔人だが、レイ達新参者の魔人はそのドラゴンの姿は見た事が無かった。

 一度レイは戦いを挑んだが、軽くあしらわれてしまった。

「そういえば面白い人間に会いましたよ。レイ、あなたの言っていた通りのね」

「…お前、まさか会ったのか」

「ええ。メディウサの城の近くで。無謀ともいえる行動をしていましたが…フフ、中々興味深い」

 アイゼルはその時の事を思い出し思わず笑ってしまう。

「あいつ…メディウサの所に行ってたのか」

「ええ…捕らわれたカラーの少女を救うためにね。驚きましたが…実行して見せた。まさかそれ程の人間が居るとは正直思っていなかったもので」

 アイゼルの言葉にレイはある意味納得していた。

(まああいつの性格からいったらそうするか。って事はカミーラはそれを知ってて向こうに行ったって訳か)

 カミーラも結構好戦的な性格で、レイもカミーラとぶつかった事がある。

 当然ながらレイは蹴散らされたが、カミーラはレイの命は奪わなかった。

 興味が無い、と言われればそれまでだが、レイとしては助かったとも言える。

「メディウサの所にですか…しかしカラーに手を出したとなるとケッセルリンク様が動いてもおかしくは無いと思いますが」

「メディウサはジル様のお気に入り…ケッセルリンクにも釘を刺している可能性はある」

 ジークとアイゼルは二人で話して納得しあっているが、レイは違う。

 ケッセルリンクとランスの関係は知っているが、特にそれを誰かに話そうとは思っていない。

 レイにはレイなりの矜持というモノがあった。

 ただ暴れていた頃とは違い、世界を見て魔王を見た。

 その経験がある意味レイにプラスに働いていた。

「で、お前等もこっちに来たって事は探しに来たって事だろ」

「ええ。魔人を倒した人間…非常に興味深い」

「私は純粋に情報を集めて魔王様に報告するためですよ。魔人の無敵結界を破る力…脅威と言えるでしょう」

 相変わらずジークは真面目だが、それが魔人のくせに紳士と呼ばれる所以だ。

 誰にでも礼儀正しく、魔人として忠実に行動する。

 レイから見ても十分に『紳士』たる魔人なのだろうと思う。

「そんな事よりも少し酒を楽しもうか。たまには良いだろう」

「ケッ! 男が集まって酒を飲んだって楽しめねえよ」

「フフフ…たまにだから良いでしょう。永遠に時間があると言ってもこの時間はこの時にしか存在しませんからね」

 こうして同期の魔人3人は人間の里で密かに酒を飲むという、非常に珍しい事をしていた。

 

 

 

「で、どうするんじゃ、ガイ」

「…さあな。とにかく魔王を殺す。それがお前の目的なんだろ」

 人間の里の宿でガイは体を休めていた。

 魔人レイと戦ってから数日、幸いにもアレから魔人と遭遇する事は無かった。

 ガイも人間には違いないので、魔人と連戦にならなくて助かったとも考えていた。

「そうじゃな。魔人を殺す事が今の儂の生き甲斐じゃからな…ま、お前と居るとエロエロだから満足しておるがの」

 カオスは下品な笑い声を出す。

 ガイはそんなカオスに顔を顰める。

 確かに魔人の無敵結界を斬る事が出来るが、この下品な部分には言いたい事が山ほどある。

「お前さんも十分に楽しんでおったろ」

「そういう所が下品なんだ。全く…こんなのに頼らなけりゃならんとはな」

 ガイは娼館で女を抱いてきた。

 このカオスは厄介な剣で、そのテンションによって切味が左右される。

 それは持ち主である人間が重要で、常にエロい空気ならばカオスもそれだけ攻撃力が増す。

 ガイは二重人格で有り、そのおかげで禁術と呼ばれる魔法をデメリット無しで使える。

 その内の裏の人格は後世でランスに似ていると結構な魔人が評価しているだけあり、エロに関しては結構…いや、かなり貪欲だった。

 ただ、今は表の人格なのでエッチな事にはそんなに興味は無い。

 女性を抱いたのは正直義務感に近い。

「魔人レイといったか…厄介な魔人だったな」

 ガイはこの前戦った魔人レイを思い出す。

 最初の魔人はあっさりと倒す事が出来たが、それは魔人が油断していた事が大きかった。

 魔人の無敵結界は絶大で有り、それこそが魔人の強さの大半を占めているだろう。

 それ故に無敵結界が作動しなかった時のあの魔人の狼狽え方は尋常では無く、結局ガイに対して成す術なく倒された。

 だが、あの魔人レイは全く違った。

 無敵結界に全く頼らず、そして油断など全くせずに自分を襲ってきた。

「…まあ昔から変な魔人じゃとは思っておったよ。儂も人間の時に一度魔人レイと遭遇したからの」

「そういう事は先に言ってくれ。だったら対処できたかもしれないだろ」

 ガイの指摘にカオスは肩をすくめるかのように剣の鍔を動かす。

「無茶言うな。儂がレイと会ったのは一度だけで、しかもレイは儂等なぞ眼中に無かったからのう」

 カオスは過去を思い出す。

 黄金像を探していた時に出会ったのが魔人レイだ。

 だが、そのレイは自分達と対峙していた人間だけを狙っていた。

 その人間も異常なまでに強く、それこそ剣だけならばガイをも上回るだろう。

 ただし、ガイはそれ以上に凶悪無比な魔法があるので、総合的には圧倒的にガイが上だろう。

「まあいいさ。魔人は誰だろうが倒す…魔王もな」

「そうしろそうしろ。まあお前ならやれるからな」

「フン」

 ガイは舌打ちすると、そのままベッドに横になった。

 彼がジルの元に辿り着くためにはまだ時間が必要だった。

 

 

 

 

「ああ…面倒くさい。全く、魔物兵は何をしてたのかしらね。これはオシオキね」

 オシオキの言葉にメディウサはサディスティックな笑みを浮かべる。

 メディウサの言うオシオキとは、ランスのような女性を犯す事とは違う。

 まさに命を奪われる事なのだ。

 その笑みにブリティシュと日光は怒りを覚える。

 それはこの部屋の惨状を見てからずっとだ。

 無造作に転がる複数の女の死体。

 そのどれもが尋常ではない殺され方をしていた。

 この魔人こそ、まさに人を苦しめる魔人の象徴のような物だ。

「でも…こーんなに綺麗な女を連れてきたんだから、許そうかしらね」

 メディウサは服を着ると、二つの武器を手にする。

 それはメディウサの愛用の剣である安珍と清姫。

「わざわざ殺されに来るなんて馬鹿な人間ね。まあ…そんなに望むのならば存分に嬲り殺してあげるわ。そうね…1ヶ月は死ねないくらいにね」

 メディウサの気配が膨れ上がり、それは魔人としての気配を完全に開放した本気の姿だ。

「フン、どうせお前も口だけの雑魚なんだろ。だったらとっとと死ねー-----っ!!!」

 ランスは凄まじい速度でメディウサに接近する。

「え?」

 メディウサは本気を出したとはいえ、それでも完全に油断をしていた。

 そもそもメディウサにとってはこれは戦いでは狩のつもりだった。

 その油断と慢心がランスの行動に対応出来なくさせていった。

「とー-------っ!!!」

 ランスの剣がメディウサの無敵結界に当たる。

 その衝撃でランスとメディウサは互いに吹き飛ばされるが、それに驚いたのはメディウサだ。

 無敵結界があるのでダメージは無いが、その衝撃までは防ぐ事が出来ない。

 ただ、それでも魔人に対してそこまでの衝撃を与えるのは不可能だろう。

 だが…世界はそれを可能にする存在を生み出していた。

 かつてザビエルすらも苦戦させた藤原石丸、そして魔人相手に32年もの激闘を繰り広げた闘神。

 そして…世界が生み出してしまったもう一人の怪物ともいえる人間、ランス。

 それらの例外…無敵結界が無ければ魔人を倒せる英雄は存在しうるのだ。

 その英雄が今正に目の前に存在して居る事にメディウサは気づいていない。

 それもランスだけでは無い、ブリティシュと日光という英雄がこの場に居るのだ。

「よくもカラーを虐めてくれたな。お前は絶対に許さんぞ」

 ランスの迫力ある顔にメディウサは一瞬のまれそうになるが、それでも無敵結界はこの男の剣を防いだことを思い出し余裕の笑みを浮かべる。

「あら…そんなにカラーの事で怒るなんてね。だったら次はもっとカラーを狙おうかしら」

 メディウサはランスを挑発するようにサディスティックな笑みを浮かべ、ランスに向けてその剣を向ける。

 その時にメディウサの前にレンが立ちふさがり、その二本の剣を盾で受け止める。

「こっちもいいわね…アンタはどんな声で鳴いて命乞いをするのかしらね」

「生憎とそんな事は絶対にあり得ないわね。だからさっさと死になさい」

 レンはそのまま盾に力を込めてメディウサを弾く。

 自分が人間に力負けをした事に驚くメディウサだが、その余裕の顔は変わらない。

 どれだけ力が有っても、無敵結界がある限りは自分は絶対に負けないのは分かっているからだ。

 メディウサの剣がランス達に襲い掛かる。

 剣の腕はそこまででも無いのだが、それでも相手は魔人、基礎のスペックが違い過ぎた。

 それでもレンとブリティシュが相手の攻撃を防げるのは各々の技量が高いからだ。

 レンはエンジェルナイトかつガードレベルと魔法による防御能力。

 ブリティシュは盾レベル2という凄まじい力。

 それらの力が魔人の攻撃を防いでいた。

「がんばるわねえ…でもこういうのはどうだい」

 その時、メディウサから魔法が放たれる。

 それはただの火爆破だが、魔人が唱えればそれは凄まじい威力になる。

「くうっ!」

「くっ!」

 その魔法に巻き込まれてブリティシュと日光が吹き飛ばされる。

「回復の雨!」

 すかさずレンが魔法を唱えて二人の傷を癒す。

 そんなレンを見てメディウサはジロリとレンを睨む。

「…あーあ、本当に面倒くさいわね、あんた達。中途半端に強くたって苦しむだけだっていうのに」

 メディウサはランス達を見て呆れた声を出す。

 人間など魔人にとってはオモチャも同然だ。

 ただ、そのオモチャが魔人に反抗するとなると流石に腹が立ってくる。

 それはあまりにも身勝手で傲慢だが、正しく神の望んだ魔人としての行動だった。

「フン、その中途半端な存在すらも蹴散らせないお前は何なのだろうな。見た所、お前は魔人としては下の方だろう?」

 そんなメディウサに対し、スラルが挑発するように嘲笑する。

 実際、スラルの目から見てもメディウサはそこまで強いとは思えなかった。

 何しろスラルの時代にはカミーラ、メガラス、ケッセルリンクといった圧倒的な強者が居たのだ。

 NC期で戦ったトルーマン、そしてついこの前に倒したイゾウ、それらと比べても遜色ない強さでしかない。

「…言うじゃない。下等な人間風情が」

 そしてメディウサはその言葉に憤った。

 メディウサは自分の強さに興味は無い。

 有るのはただ可愛い女をいたぶり殺すだけ、それがへびさんという女の子モンスターから魔人になったメディウサの本質だった。

「決めた。あんただけは特別惨たらしく殺してあげる。子宮も肛門も完全に食い尽くしてやるわ」

 メディウサはスラルを睨むと、その股間の蛇が蠢き始める。

 その動きをスラルが注視していると、

「ファイヤーレーザー!」

 突如としてメディウサから魔法が飛んでくる。

「フン!」

 だが、スラルはどんな攻撃が来ても対処出来るように既にバリアをはっていた。

 魔人の魔法の威力はやはり凄いが、それでもあのレッドアイに比べれば威力は格段に低い。

「俺様を無視するんじゃねえ!」

 ランスはメディウサに突っ込み、その剣を振るう。

 やはり無敵結界にランスの剣は防がれる。

 だが、ランスはそれでも何度も何度もメディウサに攻撃をしかける。

 最初はメディウサにとってはそれは無駄な努力でしかなった。

 無力な人間を嘲笑い、そしてこの男の前で女達を嬲り殺しにし、この男の絶望を見てやろうと思った。

(…何なの? コイツ…!?)

 しかし、今ではそんな笑いすらも出てこなくなっていた。

 ランスの攻撃を受けてメディウサが後退する。

 その顔は引きつっており、目の前の人間の存在が信じられないといった顔をしている。

「エンジェルカッター!」

「スノーレーザー!」

 そしてレンとスラルの魔法がメディウサを襲う。

 ダメージは無いが、その威力は明らかに人間を超えていた。

「ランスさん! 足音が聞こえる! 魔物兵が来る!」

 その時、ウトスカがこちらに近づいてくる魔物兵の気配を察知する。

 意外と近くにまで迫っていたらしく、ランスが蹴り飛ばした扉を見て驚愕する。

「メディウサ様! 一体何が…ぐぎゃああああああ!」

「メディウサ様…ぐぎゃあああああ!」

 メディウサの部屋に入って来るなり、魔物兵は日光によって一刀両断にされる。

 日光の居合は魔物兵すらもあっさりと倒すまでに成長していた。

 レンはその様子を見て、

「ブリティシュ! 日光! 交代! 私が魔物兵を引きつける!」

 メディウサの部屋の扉の近くまで行くとそのまま魔物兵の死体を蹴り飛ばす。

 かなりの重量があるはずの魔物兵の死体は簡単に転がっていく。

「ランス! 援護する!」

「私も!」

 レンと入れ替わりでブリティシュと日光がメディウサを攻撃する。

(ランス殿…そろそろ行くべきでは?)

(まだだ。今回は一発でこいつに呪いをかけるだけの一撃を与える必要がある)

 日光の小声にランスも小声で話す。

 メディウサはランス達の力に驚いてはいるし、油断もしているだろう。

 だが、それでも一撃で致命傷を与える程の隙を晒している訳では無い。

 今回はランスがメディウサの無敵結界を斬るのではなく、日光に斬らせる事を予定している。

 そのためには、日光の最初の一撃でメディウサにかなりのダメージを与え、精神的に動揺させる必要がある。

 その後でランスの一撃でメディウサに特大の呪いをかけるのだ。

 ただ倒すだけでなく、カラーの無念をこのメディウサにぶつけなければならないのだ。

「この…うざったい!」

 メディウサが舌打ちしながらランス達に攻撃を加える。

 確かにランス達はメディウサに対して有効打を与えられない。

 だが、同時にメディウサもまたランス達に有効打を与えられずにいた。

「がはははは! やっぱりお前はスラルちゃんの言う通り魔人としては下だな」

 ランスの嘲笑にメディウサは露骨に顔を歪める。

「人間風情が!」

 そしてメディウサの股間の蛇がうねったかと思うと、蛇が猛烈な勢いでランス達を薙ぎ払うように襲い掛かって来る。

 これこそメディウサの必殺の一撃だ。

 剣も魔法も技能レベル1なので、メディウサは必殺の一撃を持っていない。

 だが、この股間の蛇の一撃は非常に強靭だ。

 これこそがメディウサの生命線であり、彼女の本気の一撃だった。

「ぐあ!?」

 流石にその一撃には耐えられなかったのか、ブリティシュはまともに吹き飛ばされる。

「調子に乗るんじゃないよ…!」

 メディウサは忌々しそうに目の前の獲物と思っていた者達を睨む。

 だが、吹き飛んだはずのブリティシュは直ぐに起き上がる。

「大丈夫ですか! ブリティシュ!」

「ああ。何とか防御できたさ。それよりも厄介な攻撃を持っているな」

 魔人メディウサの攻撃方法はその手に持った二つの剣以外にも、魔法がある。

 そして今見せた股間から生えた蛇の強力な薙ぎ払い。

 特に蛇の一撃はリーチも長く、剣以上に恐ろしい一撃だ。

「がはははは! 死ねーーーーーっ!! ラーンスあたたたーーーーーック!!!」

 ブリティシュを吹き飛ばし気を抜いたのか、その隙を見逃さずにランスの必殺の一撃がメディウサに突き刺さる。

 勿論それはメディウサの無敵結界に阻まれる。

 が、それでも吹き飛んだのはメディウサの方だった。

 鈍器で殴られたような衝撃にメディウサの顔は完全に引きつっていた。

 無敵結界は相手の攻撃を完全に防ぐが、その衝撃は防げない。

 だが、そんなのは普通はありえなく、相手が弾き飛ばされて本人には全く影響がないのが当たり前だった。

 それなのに、無敵結界を持っている自分が吹き飛ばされるなどありえないはいはずだった。

「フン、やはり無駄に硬いな。無敵結界は」

 ランスはニヤリと笑う。

 スラルの言う通り、魔人メディウサはこれまで戦ってきた魔人の中でも大したことの無い魔人だ。

 これまで戦ってきた魔人は一癖も二癖もある奴等で、ランスもそれなりに苦戦してきた。

 メディウサは攻撃方法は厄介なモノでは無い。

 剣と魔法という非常にオーソドックスな攻撃しか出来ないのならば、今のランスにとってはごく普通の魔人にしか過ぎなかった。

「この…調子に乗るんじゃないよ…!」

 メディウサは信じられないといった顔をしていたが、ランスの言葉を受けて激怒して立ち上がる。

 だが、メディウサも内心では非常に苛立っていた。

(この人間…本当にうざいわね…女を殺すところを見せるために生かしておいたけど…もういいや)

 ここでメディウサは決心する。

 本当はこの生意気な男を生かしておいて、ここに居る女たちを嬲り殺しにするところを見せつけるつもりだった。

 しかしそれももう面倒くさくなった。

 こうなったらただ自分の楽しみを優先出来ればいいと考えた。

「本当に苛立たせてくれるわね…でもそれももう終わり。もう飽きたから消えなさい」

 そういうメディウサの空気が変わる。

 ランスはそれを敏感に感じ取る。

 ただ、ランスはこれまでにメディウサが見せていない攻撃を知っていた。

 それこそが以前にリディアを助けた時の最大の報酬だった。

「消えなさい!」

 メディウサの目がギラリと光る。

 普通ならばそのメディウサの眼力から目を離せないだろう。

 だが、ランスという人間は違った。

「ほれ」

「え」

 ランスはブリティシュの後ろに隠れる。

 ランスを視線で追っていたメディウサの視線は自然とブリティシュに向かう。

 ブリティシュもメディウサから視線を外す訳にもいかず、その目をまともに見てしまった。

 するとブリティシュの体が石に変化する。

「おお、本当に石に変わるんだな」

「って何をやってるんですかランス殿!? どうしてブリティシュを盾に!?」

「いや、何となく。がはははは! やーい間抜け間抜けー」

 ランスはげらげら笑いながら石化したブリティシュを蹴る。

 ただ、普通に石を蹴っている感触だけが帰って来る。

「…いや、アンタ何やってんの?」

 自分と戦っているはずのランスの行動にメディウサも困惑する。

 この男は一体何なんだという思いが強くなるが、とにかく厄介な奴が1人減ったのならそれでいいだろう。

「ランス…お前という奴は。ウトスカ、頼むぞ」

 スラルは呆れながらウトスカに声をかける。

「はーい。あ、レンさん戻ってきてくださいね。これをこうしてと」

 ウトスカが扉をいじってると、破壊されたメディウサの部屋の扉から更に扉が現れる。

 それはメディウサが人間を逃がさないために作った石の扉だが、こうすれば余計な奴を入れないための檻とも化す。

 それを見たレンは呆れながら石化したブリティシュの所に向かう。

「はい、状態解除」

 そして魔法を使うと、ブリティシュの石化があっさりと解ける。

「え?」

 その光景を見てメディウサは茫然とする。

 まさか自分の切り札である石化がこんな簡単に解除されるとは思っても居なかった。

「…酷くないかい? ランス」

 ブリティシュは流石にランスをジロリと見る。

 自分は確かに皆の盾だが、まさかこんな形で盾にされるとは思っても居なかった。

「今だ日光! やれ!」

 その突然の言葉にも日光は見事に反応をした。

 茫然とこちらを見ていたメディウサに対して不意打ちをしかける。

 メディウサはそれに反応できなかったが、それも魔人が無敵結界を持つゆえの当然の事だっただろう。

 もしメディウサが外界の情報を持っていれば、メディウサが怠惰で無かったら結果はきっと変わっていただろう。

 だが、生憎とメディウサは自堕落な生活を崩す事は無かった。

 そして何よりも、戦いに関して全く興味が無い奴でしか無かった。

 パリン、と音を立ててメディウサの無敵結界が斬られる。

 その勢いのまま、日光の手にある『聖刀日光』がメディウサの腕を斬り裂いていた。

「スノーレーザー!」

 そしてスラルの魔法がメディウサに直撃し、メディウサが吐血する。

「え…? な、何で…」

「がはははは! これでお前も終わりだ!」

 ランスの剣が紅く輝き、その剣が高熱のため周囲の空間が揺らいで見える。

 そしてランスの剣にかけられた呪術がその力を発揮する。

「お前が殺したカラーの呪いを受けやがれ! ラーンスアターーーーーーーック!!」

 自分がダメージを受けた事が信じられないメディウサは全く反応出来なかった。

 そしてランスの剣は、メディウサの股間の蛇を斬り飛ばす。

 勢いよく血飛沫が飛び散るのを、メディウサはまだ信じられないという目で茫然と見ているしか出来なかった。




あっさりとメディウサと戦っていますが、まあ種が分かればこんなものかなあと
設定だけ見たらメディウサはどうしてもアレフガルドのおまけ感が凄いんですよね
まあヘイトを集める悪役としては凄いキャラがたっていると思います
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