「ハウゼル様…」
「分かってる。でも、どうする事も出来ない…」
ランス達を待っているハウゼルだが、今の状況に体を震わせていた。
その原因はここ一帯を覆う凶悪なプレッシャーだ。
魔人カミーラがここに突撃してきたのは知っているが、その後で魔王の気配が現れた。
その後でカミーラは何処かへと行ってしまった。
「まさか魔王様が来るなんて…」
「ジル様が…どうして」
魔王ジル…それは全ての存在の恐怖の象徴であり、この世界の絶対的な支配者。
魔人と魔物は魔王の命令には絶対服従、逆らう事は許されない。
中にはますぞえという魔王の命令にも全く動かない奴も居るが、ますぞえは例外中の例外だろう。
「あそこで何が…」
魔王の気配が濃いあの場所で、一体どのような惨劇が繰り広げられているのか…ハウゼルには想像もしたくなかった。
そんなハウゼルの思いとは余所に、そこは濃厚な淫臭が漂っていた。
本来の主であるメディウサはゴミのように転がされ、他には人間達が身動きも出来ずに倒れている。
そして周りには人が倒れている中、そのベッドでは淫靡な光景が繰り広げられていた。
ランスはジルを後ろから激しく突いていた。
ジルは枕に顔を埋めながらあえいでいる。
傍から見たら異様な光景なのだが、当の本人であるランスは割と真剣だった。
勿論いい女とエッチできるのは良いが、その抱いている相手がこの世界最強の存在である魔王なのだ。
前のようにジルを倒した時とは状況は違い、ランス達の生殺与奪権を完全に握られてしまっている。
勿論ランスとしては本当に楽しんでエッチをしているのだが、相手が魔王となると中々上手くは行かない。
「いいぞ…ランス。もっと激しく…」
「がはははは! もっとだな!」
ジルの言葉にランスはより激しく腰を動かす。
(うーむ…ヤバイぞ。流石の俺様も疲れてきたぞ。というかこいつの体の具合が良すぎるぞ)
美女とエッチ出来るのは嬉しいが、ランスも体力の限界がある。
もしこのまま続けても、魔王と人間では比較にならない。
これが人間のジルならばランスは何度でもイかせる事が出来るだろうが、魔王の体はやはり極上だった。
かつてランスはジルの体を、童貞ならば触ってるだけで絶頂を迎える体と称した。
その体は今でも変わりなく、ランスも気を抜けばあっという間に搾り取られるだろう。
「がはははは! 行くぞ! とーーーーーっ!」
「んんっ!」
ランスは皇帝液を吐き出し、そのままジルの体に覆いかぶさるように力を抜く。
一度射精するだけで体力を吸い取られるようだ。
「あーーーーえがった…」
ランスはそのままジルの上で力を抜く。
女性の上にのしかかる体勢となるが、ジルは魔王なので全く重さを感じていない。
むしろランスと密着出来て安心するくらいだ。
「フフフ…ランス、私のモノになればこの快楽を永遠に得られる…それでも拒否をするのか」
ジルはランスと体を入れ替えると、その体に甘えるようにランスの胸板に頭をこすりつける。
「魔人になれってか。それは嫌だ。俺様は魔人になる気は無い」
「人であれ魔物であれ誰もが魔人になる事を望む…それなのにお前はそれを望まぬ。変わった奴だ」
ジルの目が輝き、ランスの頬を撫でる。
そんなジルを見て、熱かったはずのランスの体が少し冷える。
その目は先程までにランスに抱かれていたジルのものではなく、魔王ジルの目だった。
瞳の中心が紅く輝き、その気配が変わっていく。
「ククク…貴様は本当に面白い…」
ランスの頭を掴むと、そのまま唇を重ねる。
先程のような優しいキスではなく、ランスの全てを奪うかのような激しいキス。
「むぐぐ」
ランスは何とか逃れようとするが、ジルはランスの頭をしっかりと掴んで唇を離さない。
しばらくの間激しい口付けをしてたが、数分たったからようやく解放される。
「どうしても…我のモノには…ならないというのか」
「…当然だ」
ジルの一人称が『私』から『我』へと変わる。
ランスはその変化に気づき冷や汗をかく。
(うーん…本格的にヤバイぞ)
これまでの中でも格段にヤバイ事にランスは冷や汗が激しくなる。
本気で魔人になる気は更々無いが、もしかしたらそんな事を言っている場合では無いのかもしれない。
ランスとしてもいよいよ覚悟を決めなければならないのかと本気で焦っている。
「嫌がる…お前を無理矢理モノにするのも…良いかもしれんな」
ジルの口調が以前ランスが戦った魔王ジルの口調に変わっていく。
そして先程の空気がより重くなり、ランスですら眩暈がしそうになる。
喉がからからになり、先ほどのセックスの余韻が吹き飛んでしまいそうだ。
「ケッセルリンクの…前で…お前を…我のモノにするのも…良いか」
ジルは邪悪に笑うと、そのままランスのハイパー兵器を撫でる。
ランスは魔王のプレッシャーを受けながらも、そこだけは大きく硬くなっている。
その辺りはもう流石ランスと言っても良いだろう。
ジルはそのままランスの上にのしかかると、そのままハイパー兵器を飲み込んでいく。
「我のモノになりたくなければ…抵抗しろ…そうすれば…お前は魔人にはならない」
そのまま笑いながら腰を使う。
「…本当だろうな」
ランスとしては信じられない。
魔王は世界の支配者、人間との約束など守る事などありえない。
実際、ランスも平気で約束を破るタイプの人間なので、魔王ジルの言う事は簡単に覆されると分かっていた。
「…考えてやろう…そう言ったら…どうする?」
唇を歪めて笑うジルに、ランスは体で返答する。
「っん!」
そのランスの回答にジルは甘い声を上げる。
「だったらまずはやってから考えるか。がはははは! 折角魔王とセックス出来るなら色々な事をせんとな!」
「ククク…本当に…面白い…人間だ」
そしてランスは本気で魔王ジルとセックスをする。
それはまさに人間にとっては命がけのセックスであると言えた。
勿論ランスにはそんな気持ちは無く、ただ魔王ジルを抱けるからセックスをしているだけだ。
ただジルを抱くのではなく、何と魔王に奉仕をさせるという図々しさだ。
だが、このランスの行動こそが功を奏した。
人間だった頃からジルは性的関係はランスとしか結んでいなかった。
確かに魔王の極上の体はあったが、性知識は乏しかった。
なのでランスは自分主導でセックスを行う事が出来る。
「んっ…んっ…」
ジルは寝転がるランスのハイパー兵器を咥えている。
そこには何の技術も無いが、魔王が自分に奉仕をしているという事はランスの気分を高めていた。
「おー…いいぞ」
ランスの声が聞こえていないように、ジルはランスのハイパー兵器を舐めるのに夢中になっている。
確かにプロの技に比べれば拙いが、その口内は異常にまでに気持ちがいい。
その冷たい体も今のランスには中々いい刺激だ。
ジルは拙い技術でありながらも懸命に奉仕をしているのが分かる。
「よーし、行くぞ。全部飲めよ」
「んんっ…!」
そして口に放たれる皇帝液をジルは躊躇う事無く飲み干す。
ランスが本気で気持ちよさそうにしているのに、ジルも楽しそうに笑う。
「魔王を相手に…好き勝手する…」
ランスは好き勝手いしているが、ジルは逆に面白いと思っていた。
魔王相手にここまでするのは逆に『魔王ジル』にとっても新鮮だった。
魔王としてのジルにとっては全ての魔人は駒でしかなく、自分に忠誠を誓うノスも正直どうでもいい存在だ。
「抵抗しろと言ったのはお前だろうが。だから抵抗してるだけだぞ」
「そうか…これが…お前の抵抗か…ならば…次は私が好きにする」
ジルは薄く笑うと、ランスを押し倒してハイパー兵器を自分に納める。
何度味わっても極上の感覚にランスは呻くが、それはジルも同じだった。
「ああ…やはり…何度味わっても…いい」
うっとりとした声でジルは呟く。
そしてゆっくりと体を上下させる。
やはりテクニックも何も無いが、魔王の体だけでランスは気持ち良くなる。
「我のモノになれ…ランス」
「ことわーる! 俺様は誰のモノにもならん!」
「そのつよがり…いつまで…続く?」
ジルは笑いながらランスの上で動く。
それはただ本能で動いているだけなのだが、やはりそれだけで異常なまでに気持ちいい。
ランスは何とか耐えているが、やはり体力の差は非常に大きく、これまで何度も自分で動いていた分体力がつきかけていた。
まさに命がけのセックスだが、ジルはそんな事は気にせずに動き始める。
(流石に疲れてきたぞ。やっぱり具合が良すぎるぞ…何回もやってるのに一向にへばる気配が無いしな…)
ランスとしてもやっぱりセックスは気持ちいい。
これが人間ジルなら最初の一発でヘロヘロになり、二回三回と続けばランスに許しを請うはずだ。
そんなジルをまだいじめるのがランスの楽しみだったが、立場が逆転しそうになる。
勿論ジルも気持ちよくなっているだろうが、魔王の体力の前にはランスの方が先にへばってしまう。
何とかジルをいかせようと、ランスはその胸に手を伸ばす。
ジルはそんなランスを見て笑うと、そのままランスの好きなようにさせながら動く。
ランスも下から激しく突こうとするが、流石に疲れているせいか上手いように動けない。
「あ」
そしてランスは思わず間の抜けた声を出す。
何とか射精しないように気を付けていたのだが、とうとうジルより先に絶頂を迎えてしまった。
ジルはそれを見て笑って見せる。
「先に…出したな」
「待て。今のはノーカンだ。無しだ無し」
「ダメだな…我はお前達に人間に…譲歩した。もう…必要無い」
ジルはそのままランスに覆いかぶさるように肌をこすりつけ、ランスの唇を奪う。
その目に有るのは以前のリーザスの時のような目。
ランスを逃がさないと言わんばかりの目を向ける。
「お前は魔人になる…そうすれば…お前はもっと強くなる…もっとセックスも…出来る」
ジルの本気の目にランスは背筋が凍る。
この目こそ、あの時のジルの目と同じだった。
異空間でランスを逃すまいとした執着の目。
あの時はシィルが居たのと、ランス自身がジルよりも強かったら逃れられたが、今のジルは100%の魔王なのだ。
流石のランスも本気の本気でヤバイと思い始めた時、
「失礼しまーす!」
のんびりとした声が響くと共にジルに向けて何かの刃が突き刺さる。
突き刺さると言っても勿論魔王の肌にその刃は刺さらない。
ジルは鬱陶しそうにその刃を突き付けた者を見る。
それはカラーのウトスカだった。
その手には大きな鎌が握られている。
「何の…つもりだ………!?」
ジルは鎌が触れた事で体が震える。
「これは…?」
「む…」
ランスはウトスカが持っている物を見て悟る。
それこそ、大まおーが持っていた悪魔の鎌だった。
以前にスラルが消滅しようとしている時に、彼女の魂を引っ張ったのがその鎌だった。
「来い!」
ランスはそれを理解すると、自分の剣を呼び寄せる。
そしてウトスカの鎌の先端の方の斬るように動かす。
「う…ぐ…」
ジルは不快そうに胸を押さえると、ランスが何かをしようとする前にレンが飛んでくる。
レンと共にブリティシュも動いており、ブリティシュは折れた日光を手に持っている。
レンはランスをその胸に抱くように、その部屋の隅へと移動する。
それにブリティシュが続くと、レンが叫ぶ。
「ウトスカ!」
「はい!」
ウトスカが壁の一部を押すと、レンとブリティシュの足元が開く。
「ブリティシュさん!」
そしてブリティシュに向かって手に持っていた鎌を投げ、そのまま別のボタンを押す。
ブリティシュは大きく目を見開く。
レンとブリティシュの体が開いた穴に落ち、その体が水に落ちる。
水は勢いよく流れており、ランス達はそのまま流されていく。
だが、ウトスカだけはその場に残ったのだ。
残ったウトスカはもう一つのスイッチを押すと、ランス達の通った穴が閉まる。
そして残されたのは魔王ジルと、ただのカラーであるウトスカ、そして今でも気絶しているメディウサだけとなった。
急流に流されているランスは、流されながらも怒鳴り声を上げる。
「おい待て! ウトスカが残っているぞ!」
「いいから! 暴れないでよ!」
レンは暴れるランスをしっかりと掴む。
ランスは尚も暴れようとするが、水に流されているという事とレンの力があって動く事が出来ない。
そして水の流れが失われないようにレンは魔法を放つ。
「ホワイトレーザー!」
レンの魔法は壁を壊し、水が外へと流れだす。
そしてその水の出口が近づき、ランス達は勢いよく弾き出される。
「うわあああああ!?」
これにはブリティシュも驚くが、その体の落下が急に無くなる。
「…え?」
ブリティシュは誰かが自分を掴んでいるのを見て驚く。
自分の体を掴んでいるのは当然もう一人の人物であるレンだ。
だが、その背中には透き通った純白の翼が存在していた。
「彼女は…」
ブリティシュの手の中にある日光もレンを見て驚く。
「落とすんじゃないわよ」
レンは短くそう言うと、今でも待機してくれているうし車を見つける。
そして勢いを殺さぬままうし車の中へと着地する。
「出して!」
「え?」
「いいから早く!」
「出しなさい!」
「は、はい!」
レンの言葉に魔物兵は驚いた声を出す。
そこをハウゼルが素早く指示を出し、魔物兵は急いでうし車を走らせる。
そのままうし車は真っすぐに走り出す。
「レン! ウトスカが残ってるだろうが!」
「分かってるわよそんなの! でも、そうする以外に何かある!?」
「むぐぐ…」
ランスの怒鳴り声に負けない勢いでレンが言葉を放つ。
こうなる事はレンも分かってはいたが、それでもこうするしか無かった。
これでも正直魔王の追撃を逃れられるかどうか分からない。
レンはジルに見つからない事を祈りながら、うし車の中で唇を噛みしめていた。
メディウサの城から離れた、LP期における魔物の住む土地でうし車は歩みを止めた。
うしが限界に達したので、それ以上動く事が出来ないのだ。
「おいいい加減放せ! ウトスカがまだ残ってるだろうが!」
うし車が止まり、ようやくランスは口を開ける。
レンの強力な力で押さえつけられればいかにランスでも動けるものでは無かった。
「無理。どれだけ時間が経っていると思ってるのよ」
「そんなの知った事か!」
ランスは尚も暴れるが、レンはランスを力強く抱きしめて離さない。
「いいから! ここであんたが突っ込んで死んだらウトスカのやった事が意味が無くなるでしょう!」
レンの一言でランスから少し力が抜ける。
ランス自身、ウトスカはもうどうにもならないという事を理解しているのだ。
そう、世界はそんなに甘くは無いのだと。
「ランスさん…厳しい事を言うようですけど、魔王様が動くと言うのはそういう事です。誰にも、どうしようもないんです」
ハウゼルの申し訳なさそうな声を聞いて、ランスも冷静になる。
「…それより服を着せろ。濡れたままだから寒いぞ」
「ああ、悪いわね。でも鎧は壊されちゃったけどね」
レンはランスから離れると、回収していたランスの服を渡す。
ランスはそれに着替えると、姿が見えないスラルに声をかける。
「大丈夫か。スラルちゃん」
「ああ…幸いにも消滅してはいない。だが、問題はあるのだがな…」
剣の中からスラルの苦い声が聞こえてくる。
「何だ。問題って」
「ここから出られん。IPボディを使って肉体を得る事が出来ないのだ」
「何だと!?」
スラルの声にランスは愕然とする。
折角スラルの肉体を用意し、思う存分セックスが出来ていたというのに、スラルはランスの剣の中から出てこれないと言うのだ。
「恐らくは…ジルの力を影響を受けたからだろうな。魔法による援護も出来ない。幸いにも付与の力までは失われていないがな」
「むぅ…それはいかんな」
スラルの言葉を受けてランスも呻く。
何しろスラルは並の魔法使いよりも遥かに強い。
それこそランスが知る世界でも有数の魔法使いである、魔想志津香やマジックを超えていると言っても良い。
魔力だけでなく、その肉体の強さも魔法使いとは比較にもならない。
そんな彼女が文字通り手も足も出なくなったと言うのは大きな損失だ。
「それと…大丈夫か、日光」
「何とか生きています。ランス殿…私を握ってくれませんか? ブリティシュは気を失っているので…」
ランスはもう一人の重症者である日光を見る。
ブリティシュは気絶しているのか、うし車の中で横たわっている。
それでも日光を手放さなかったのは、彼の意思の強さの表れなのかもしれない。
ランスはブリティシュの手から日光を取ると、日光が光り輝いたかと思うと人間の体になる。
「おお、本当に大丈夫なようだな」
「はい…ですが、折れてしまっていますのでこれからどうすればいいか…」
まさか魔王にへし折られるとは思っても居なかった。
もしかしたら聖刀日光としては終わりなのかもしれない…日光がそう危惧していると、
「がはははは! こうして人間の姿になれるなら問題無い! 俺様が直してやろう!」
「直す…ですか?」
突然の言葉に日光は思わず首を傾げる。
「うむ、あの馬鹿剣もエロい事をしたら治ったからな。きっとお前もそうだ。うむ、間違いない」
「…え?」
ランスは着替えたかと思うと、直ぐに服を脱いで全裸になる。
そこにはそそり立ったハイパー兵器がある。
魔王ジルと散々セックスをしたのに、ランスのそこはまだまだ元気のようだった。
「あ、あのー…ランスさん?」
流石にこんな状況で下半身を大きくさせているランスにハウゼルは思わず目が点になる。
「ちょうどいい、君も来い」
ランスはハウゼルの手を引くと、彼女の服をあっという間に脱がせる。
「きゃ、きゃああああ!」
ハウゼルは思わず両手で体を隠すが、ランスはお構いなしにハウゼルと日光を押し倒す。
そして日光の服を脱がせると、そのまま二人の体を愛撫する。
「…相変わらずねえ。でもそこもアンタらしいわね。うじうじするよりもそっちの方がいいと思うわよ」
レンは気絶しているブリティシュに毛布をかぶせ、端っこの方に転がす。
そして服を脱ぐとそのままランスに抱き着く。
「がはははは! 今日はこのまま4Pと行くか!」
「ちょ、ちょっとランスさん!?」
「ランス殿! そ、その…私はこういうのは…」
ハウゼルと日光の抗議を無視して、ランスはそのまま3人の体を存分に味わった。
そしてそれを見ていた魔物兵は、
「うわぁ…この人間、本当にハウゼル様とエッチしてる…」
その魔物スーツの中で顔を真っ赤にしてその光景を覗き見していた。
「…貴様」
「あはははは…ランスさん凄いなあ。こんな相手とセックスしちゃうんだから…」
ジルはランスが消えた事にやや茫然としていたが、直ぐに目を細めてウトスカを睨む。
魔王に睨まれただけで自分の死を覚悟する。
それ程までに魔王の迫力は圧倒的だった。
しかし意外にも覚悟していた死は来ない。
(…もしかしてすっごい拷問されて殺されちゃうのかな。あーあ…ランスさんとセックスしたかったなあ…)
ウトスカは目を瞑るが、何時までたってもジルが何かをしてくるという事は無かった。
ウトスカは目を開くが、ジルはただ真っ直ぐに自分を見てくるだけだ。
「フン…まあいい…どうせ…今ランスを…魔人にするつもりは…無かった」
ジルは消えたランス達を追う事も無く、悠然と微笑む。
むしろこうした事を喜んでいるような様子だった。
「…殺さないんですか?」
「殺す…? ククク…貴様程度を…殺した所で…何も意味は無い…」
ジルはウトスカを掴むとその目を覗き込む。
ウトスカは心底恐ろしかったが、何も言えない。
ウトスカを離すと、ジルはカミーラが明けた穴から外を見る。
ランスが何処に消えたかは分からないが、実際には見逃したようなものだ。
もしジルが本気ならそもそもあんな事は起きてはいない。
(そう…ただ魔人にするだけなら…何もこんな…面倒な事を…する必要は無い…)
世界の全てはジルの思うがままに進む…それが魔王という事だ。
(命は…宿らぬか…)
何度もランスと性交をしたが、自分が妊娠した気配は無い。
魔王が妊娠するかどうかは分からないが、あの男ならばと思う何かが有る。
「まだ…早い」
そう、自分には永遠の時間が有る。
ナイチサの言葉では、魔王の寿命は凡そ1,000年。
それ以上では自分の後継者を探す必要がある…ナイチサがそうしたように。
だが、ジルはそれを拒否し永遠の魔王でいるために『神』に願いを叶えて貰った。
それを思えば今逃してもどうという事も無い。
「人の身で…神の力を…使う…それがどういうものか…私に見せろ…その時こそお前はこのジルの魔人となる」
神から与えられたラ・ハウゼルとラ・サイゼル…これらをジルは密かに警戒している。
魔人となった故に力が大きく制限されているが、何の拍子でそれが解除されるか分からない。
だが、ランスはハウゼルと接触し、新たな力を手に入れたのは分かっている。
そしてその力を使い、必ず自分の元に再びやって来ると。
「消えるがいい…貴様がそのまま無傷のままに戻れたなら…貴様の運がいいという事だ」
ジルはそう言ってそのままカミーラが開けた穴に消えていく。
一人残されたウトスカはジルのプレッシャーが無くなったことに思わず安堵のため息をつく。
「流石に死んだかと思ったなあ…ランスさん達が逃げてくれればいいと思ってたけど…もしかしたらその必要は無かったかも」
世間一般の魔王のイメージとは大分違った印象を受けた。
もっと冷酷で、生きるもの全てを嬲り殺しにする凶悪な魔王だと思っていた。
勿論恐ろしさはあったが、それ以上に『女性』だったという印象を受けた。
「まあ…それを伝えるにも私が生き延びないといけないんだけど…」
一人残された自分がここから生きて出られるか、それは本当に運だ。
まだ気絶しているメディウサがいつ目覚めるかも分からない。
「…じゃあ早速逃げましょう。カラーの森までは遠いけど…それこそ運ね」
でも、ウトスカは密かに自分は大丈夫では無いかとも思っていた。
何故なら、自分は魔王に見逃されたのだから、その運はまだ尽きていないとポジティブに考えていた。
「ランスさん達の後を追っても上手く逃げれるか分からないし…レンさんも居ないし、どうなるか分からないからここは止めとこう」
だからと言って、このまま出入口から堂々と逃げられるとも思えない。
暫く考えた後、ウトスカは魔人カミーラが開けた穴と、そこらへんに散らばるロープを見る。
「うん、ここから逃げましょ」
ウトスカはロープを片手に鼻歌交じりでここから脱出するために工作を始めた。