「本当に直るんだな」
ランスは日光を片手にいつもの様に笑う。
「…知りません」
対する日光は憮然とした声で言葉を返す。
ランスの言う通り、本当にセックスしたら日光が直ったのだ。
カオスがノスに折られた時は、カオスがセルを相手にエロい事をしたら直った。
それと同じようにエロい事をしたら日光も直るのではないかとセックスをしたら本当に直った。
ただ、日光はそれに納得していないのか機嫌が悪そうだ。
「ううう…酷いですランスさん…」
ハウゼルは真っ赤な顔で自分の体を抱いている。
まさかの4Pの突入で、あられもない姿を皆に晒してしまった。
「…酷いというのはボクの言葉だと思うんだけどね」
ブリティシュはその顔に若干の諦めの表情を浮かべている。
「あはは…悪いわね。でも起きてたらランスに殺されてたと思うわよ」
「…彼は本当にそんな事で人を殺すのかい?」
レンの言葉にブリティシュは戦慄する。
だが、生憎とランスは本当にそんな事で人を殺しかねない人間でもある。
「それよりも問題はスラル殿でしょう」
日光は人の姿を取ると、そのままランスと少し距離を取る。
先程の行為はやはり日光を少し怒らせていたようで、顔を真っ赤にして怒っている。
「ああ。今の我はあまり役に立たないな。付与は出来るがそれ以外の事がな…外にも出られないから本も研究も出来んのが難点だな」
「せっかくスラルちゃんとセックスが出来るようになったというのに…また振り出しに戻ってしまったではないか」
自分の剣を持ってランスは呻く。
長い時間をかけてスラルとセックスが出来るようになったのに、また元の状態に戻ってしまった。
しかも外にも出られないと言うのであれば、美少女であるスラルの容姿すら見る事が出来ない。
それはランスにとっては非常に良くない事だ。
「ジルの影響だろうな…魔王の呪いとも言うべきか」
「魔王の呪いか…」
魔王の呪いと聞いてランスはシィルの事を思い出す。
JAPANでシィルは魔王リトルプリンセスによって氷漬けにされた。
パステルの力も有って一瞬だけ呪いは解けたが、その後はヘルマンで魔王の呪いを解くアイテムを見つけるまではそのままだった。
…実際にはシィルの呪いは解けては居なかったのだが、当のランスもシィル本人ですらその事を知らない。
知っているのはクルックーのみだ。
「まあ何とかなるだろ」
「何とかなる? スラル程の力を持つ魔法使いなんて見つかるもんじゃ無いわよ」
気楽そうなランスにレンが突っ込む。
実際、スラル程の力を持つ魔法使いなんて長い歴史上そう居るものでは無い。
「一応僕に心当たりはあるんだけど…」
ブリティシュの言葉に日光が難しい顔をする。
「無理ですよ、ブリティシュ。彼とランス殿は絶対に行動を共に出来ません」
「…やっぱり?」
日光の言葉にブリティシュはため息をつく。
ブリティシュのかつての仲間…ホ・ラガならばスラルの代わりにはなれるだろうが、間違いなくランスとの相性は最悪だろう。
カオスよりも悪い…というよりも、ホ・ラガの性癖にランスが耐えられるはずが無い。
「レン。我が持ってたクリスタルリングはお前が使ってくれ。お前なら問題なく使えるだろう」
「それは別にいいけど」
レンはスラルの纏っていた服と一緒に回収したクリスタルリングを手に取る。
カラーのクリスタル製のリングで、持ち主の魔力を飛躍的に高めてくれるアイテムだ。
スラルとは手の大きさが違うにも関わらず、クリスタルリングはあっさりとレンも装備出来る。
「これからどうするんですか?」
ハウゼルが心配そうに聞いてくる。
正直自分がジルに見つかっているかどうかは分からない。
ハウゼル自身にも不安はあるが、それ以上にランス達の方が心配だ。
「カラーの所に戻るしか無いだろうな…ウトスカの事も知らせなければならない」
スラルの言葉にランスの顔が少し不機嫌になる。
彼女を助け出す事が出来ないのはランスにとっても痛恨の極みだ。
だが、今から戻っても恐らくはもう間に合わないだろう。
「フン…まあリディアにも教えてやらんといかんだろうな」
ランスもカラーの里に戻るのは賛成なのだが、
「それよりここは何処だ」
周囲を見渡してげんなりする。
明らかに人間界とは違う光景が広がっていた。
「すみません…うしに任せて一直線に走っていたもので…」
御者台から一体のまじしゃんが謝りながら降りてくる。
「あ、中身はまじしゃんだったのか」
魔物スーツにはそれぞれモンスターが入っており、ハウゼルの部下の中身はまじしゃんだったようだ。
「ちょっと色々とありまして…」
まじしゃんは顔を真っ赤にしながら頬をかく。
(言えない…皆さんのセックスを見て興奮してましただなんて口が裂けても言えない…)
自分の上司で有り、自分を救ってくれたハウゼルが人間とセックスしているのを見て興奮してました、そんな事が知られればどんな目に合うか分からない。
なのでまじしゃんは必死にそれを隠そうとする。
幸いにも、優しくてそういう所に鈍いハウゼルは気にもならなかったのだが。
「ここはメディウサ様の城から西に行った所ですので…カラーの森はあちらの方ですね」
まじしゃんは指を刺すが、流石にここからでは何も見えない。
ただ、真っ直ぐにそこに行こうにも中々行けるものでは無いだろう。
「だったらうし車で行くのがいいわね。ハウゼルが乗ってれば大丈夫でしょう?」
レンの言葉にハウゼルは頷く。
「はい。私が乗ってれば誰も何も言っては来ないとは思いますが…」
ハウゼルには不安な事が有る。
問題なのはやはり魔王ジルだ。
魔人は魔王には逆らえないので、もしあの場に自分が居たたのがばれたら…という事を思わなくもない。
可能性は低いとは思うが、その低い可能性が当たってしまったらもうアウトだ。
「魔人である私がこれ以上一緒に行動するのは避けた方がいいと思うんです。皆さんをカラーの里にまで送ったら、私は一先ずケッセルリンクさんに会いに行こうかと」
「む、そうか。お前はいい女だから俺様と一緒に居ればいいが…ジルの事も有るからな」
ランスも魔王と魔人の関係は嫌というほど理解している。
何しろあのケッセルリンクがナイチサの命令に逆らう事が出来ずにランスと戦ったのだから。
「そうだな。そこそこ出会うくらいの距離感が一番だろう。深入りし過ぎても都合が悪い」
「そうですね。それに姉さんが何をしているか分からないし…」
ハウゼルのもう一つの懸念が姉のサイゼルだ。
多分サイゼルは自分がエッチしたのに気づいているだろう。
その場合、短気で直情的な姉がどうするか…ハウゼルには予想がつきすぎる。
「そうだ、サイゼルだ。次はサイゼルだな、うむ」
サイゼルの事を思い出し、ランスは次のターゲットをサイゼルにする。
それは思い付きだが、ランスの思い付きは何だかんだその思い付きが上手くいくのだから不思議なものだ。
「まずはペンシルカウに行って休むか。よーし、じゃあ行くか」
ここからカラーの里は距離はあるだろうが、ハウゼルが居れば魔物に関しては問題は無いだろう。
ランスがそう考えていた気、
「やほー。ランスー」
気の抜けた声が聞こえてくる。
「あ、セラクロラス」
ランスに声をかけてきたのはランスがこうなっている原因、聖女の子モンスターのセラクロラスだ。
「ちょっと力溜まって来たから、今回は上手く行くと思うよー。じゃあてやぷー」
「あ、おい」
ランスが何かを言う前に、ランス達の姿が消える。
その光景を見てハウゼルは目を丸くする。
突如としてランス達の姿が消えたのだから無理は無い。
「ハ、ハウゼル様!?」
「え? ラ、ランスさん!?」
ハウゼルは周囲を見渡すが、ランス達の姿はもう何処にも無い。
そしてそこに現れた謎の少女の姿も無かった。
「ど、どうしましょうハウゼル様!?」
「ど、どうしましょうと言われても…どうしましょう?」
ハウゼルは焦るが、とにかく居なくなったのならばハウゼルに出来る事は無かった。
「…とりあえずケッセルリンクさんに会いに行きましょう。もしかしたら、何かを知ってるかもしれませんし」
「ケ、ケッセルリンク様ですか…」
「ええ。行きますよ、行動は早くした方がいいですからね」
そう言ってハウゼルはうし車に乗り込む。
まじしゃんも慌てて御者台に乗るが、うし車はまだ動いてくれる気配は無い。
「あのー…ハウゼル様」
「…そうですね、少し休憩しましょうか」
ハウゼルはランス達から貰った本を手に取る。
「それに…すぐ会える気もします。変わった夢も見ましたし…」
そのままハウゼルは本に集中し始めた。
ランス達がメディウサの所に乗り込んでから数日…カラーの里では重苦しい気配が漂って来ていた。
それは勿論ランス達が戻ってこないからなのだが、特にリディアは毎日祈っているだけに仲間のカラーからも心配されている。
だが、その心配はついに終わりを告げる事となる。
「戻りました! ウトスカが戻ってきました!」
森の警備をしていたカラーの一人が嬉しそうにペンシルカウ中に知らせる。
それを聞いたリディアは祈るのを止め、真っ先にウトスカの元へと向かう。
ウトスカは女王であるインデックスの元へ向かったようで、リディアも直ぐにインデックスの元へと向かう。
「ウトスカさん! ランスさん達は!?」
女王の家に行き、真っ先に声をかける。
「やほやほー。久しぶり…って事も無いよね。リディア」
そこに居たのはウトスカ一人で、ランス達の姿は無い。
「あの…ランスさんは?」
「それについてもね…始祖様が戻ってきてから話しても良いかな? 皆もそれでいいよね?」
ウトスカの所に来たのはリディアだけでなく、ペンシルカウの重鎮も集まっている。
その上で、ハンティが戻ってきてから話すと言う。
勿論カラー達には異存はない。
始祖であるハンティに報告するのは当然だからだ。
「やれやれ、私も運がいいのか悪いのか…たまたまっていうのは凄いね、ホント」
その時、突如としてハンティの声がする。
「始祖様!」
「戻ったよ、インデックス」
女王であるインデックスの声にハンティはひらひらと手を振る。
「で、聞かせて貰えるかい? 何が起きたか」
そして真剣な表情でウトスカの目を覗き込む。
「はい。と、言っても正直私も何が起きたのか理解が追い付かないんですけどねー」
ウトスカは自分が見た事を全て話す。
ランス達が魔人メディウサに呪いをかけたこと。
その直後に魔人カミーラが乱入してきた事。
その場に魔王ジルが現れた事。
そして…自分がランス達を逃がすためにした事の全てを。
誰もがウトスカの話に聞き入り、ハンティも難しい顔をして眉間を指でトントンと軽く叩いている。
「じゃあその後はランスの姿は見てないんだね?」
「私もてっきりランスさん達は戻ってきているものだと思ったんですけどね…」
ウトスカも残念そうに声を出す。
自分の事を一番心配しているのは間違いなくランスだ。
同時に、ウトスカの命はもう無いと思っているのもランスだろう。
何しろ魔王と相対したのだ、普通は殺されていても当然だ。
「…まああいつなら大丈夫だろうさ。ここに姿を現さないって事は、多分セラクロラスに会ったんだろうね」
ハンティはランスの事情をケッセルリンクから聞いていし、過去にランス本人とも会っている。
なのでまた時代を飛ばされたのだろう。
次に現れるのがいつかは分からないが、必ずここに戻って来るだろう。
「しかし本当に魔人を呪ったか…それがどうなるかはまだ分からないけどね」
呪いの結果がどうなるかは未知数だ。
それに関しては運を天に任せるしか無いが、魔人に呪いが通用したという事はカラーという種族として大きな意味が出来た。
「しばらくの間は魔物の動きに注意しないと駄目だね。インデックス、あんたはその辺を徹底させなよ」
「はい、始祖様。私も女王としての責務を果たします」
インデックスはハンティに一礼すると、自分の側近に指示を出す。
「ああ…それとこの事は記録に残しておいてもいいけど、ランス達の名前は残さないように」
「あ、はい。分かりました」
ハンティの指摘にインデックスは一瞬驚くが、直ぐに頷く。
始祖である彼女にはきっと何か重大な未来が見えているのだろう。
それが不老の彼女が出した結論ならば、インデックスとしてもそれに従うのは当然だった。
(次に会うのは何年後か…カラーの女王にだけはこの事は徹底させないとね)
これからの長い時代、カラーが人間に対してどう接していくのかは分からない。
ただ、今後数百年は良い関係に戻れるとは思えなかった。
それでも、あの男だけは話は別だ。
(あいつがカラーの未来の鍵になるのかねえ…それが泥船にならないようにしないとね)
ハンティはカラーの未来を守るため、必死に頭を巡らせていた。
「ケッセルリンク! 呪いを…私の呪いを解いてくれよ!」
魔人ケッセルリンクの元へと来た魔人メディウサの第一声がそれだった。
当のケッセルリンクは突然訪れてきたメディウサに対して冷たい視線を向ける。
ハッキリ言えば、ケッセルリンクはメディウサの事が嫌いだった。
魔人らしい魔人と言えば確かにそうなのだが、女を毎日のように殺し、そして元とは言え同胞でカラーを殺したこの女を殺してやりたいのが本音だ。
だが、メディウサはジルのお気に入り…という話をケッセルリンクは全く信じていないが、だからと言ってそれでもメディウサを手をかける程短気でも無い。
「突然やってきて随分な物言いだ」
ケッセルリンクの声は底冷えする程に低いが、メディウサは構ってられないと言わんばかりにケッセルリンクに迫る。
「いいから早く! あんたなら解けるだろう!?」
カラーというのは呪いに長けた種族で有り、ケッセルリンクの出身の種族でもある。
なので、メディウサが同じ魔人であるメディウサを頼るのはある意味当然だった。
「フン…これまで好き勝手にやってきたお前が随分な物言いだ」
ケッセルリンクの言葉には嫌悪感が凄いが、メディウサはもう形振り構っていられない。
その呪いはメディウサの体を蝕んでいるのだ。
「しかも呪いの内容が女に性的興奮を抱けなくなっただと? 私を馬鹿にしているのか」
「本当なんだよ!」
メディウサの呪いの内容を聞いたが、それは非常にバカバカしい呪いだった。
ただ、ケッセルリンクは同時にその呪いが誰によってかけられたものかを正確に理解していた。
こんな呪いを思いつくのは間違いなくランスだ。
だが、同時にメディウサはそんな呪いをかけられるほど、カラーから恨まれてしまったのだ。
それは呪いには疎いケッセルリンクにも分かる。
(フン…ランスにやられたか)
勿論相手はランス以外にはありえないだろう。
魔人相手にそんな事を出来るのはランスくらいだろう。
「カラーの呪いで私の所に来たのならお門違いだな。私は呪いに関しては畑違いだからな。私は呪いに関しては疎いからな」
「そんな…」
ケッセルリンクの言葉にメディウサは絶望的な顔をする。
「それに、女に性的興奮を抱けなくなったらどうだと言うんだ」
「そ、それは…」
メディウサはケッセルリンクの言葉に二の句が継げなくなる。
メディウサが女を抱けなくなった…言い換えれば犯し殺す事が出来なくなったという事はケッセルリンクにはどうでもいい事だ。
それこそ全く関係無い事だ。
「と、とにかく…何とかしておくれよ!」
あまりにも必死な態度のメディウサにケッセルリンクは冷笑を浮かべる。
「お前の呪いはカラーの呪いだ。お前が呪いを受けたのは自業自得だ。それに…私にはその呪いを解く事は出来ない」
「どうして! 魔人四天王だろう!?」
「魔人四天王だろうと出来ないものは出来ない。それに…」
ケッセルリンクの目が細くなる。
「お前の呪いは濃すぎる。そこまで呪いが濃いと、恐らくはかけた本人ですら解呪が出来ないだろう」
「そんな…」
メディウサは絶望的な顔をする。
あの戦いが終わった後、メディウサは何が起きたのか分からなかった。
分かったのは、自分の城が滅茶苦茶になっていたのと、誰も居ない事だった。
魔物隊長を含めた魔物兵全てが逃げてしまっていた。
勿論メディウサは魔人なので、魔物牧場から魔物兵を調達する事は出来た。
ジルも一々そんな事までには口出しもせず、魔人の好きにさせている。
なのでメディウサは自分の城を直させ、その後であの人間達への怒りを爆発させる。
しかし…長い間、メディウサの傷は再生しなかった。
へびさんの魔人であり、高い再生能力を持っているはずの自分の傷が癒えたのは、あの戦いから3日以上経ってからの事だった。
ようやく体が治った所で、早速人間に対して怒りをぶつけようとした。
人間牧場から密かに人間を連れ出し、犯し殺そうとした時だ。
(…あれ?)
怯えと絶望でこちらを見てくる人間に対し、メディウサは全く心が動かされなかった。
自分に有った加虐心が全く刺激されず、目の前に居る女を女として認識出来ないような気がしたのだ。
それを気のせいだと思ってメディウサはその女を犯し殺した。
が、その最中にあったのは喜びでは無く、鬱陶しさだった。
女の悲鳴が騒音にしか聞こえない。
あれほど楽しみだった人間の絶望の悲鳴は逆にメディウサをイライラさせる結果になった。
そして怒りのままに、その人間の腹を破った時、メディウサに猛烈な痛みが襲った。
魔人であるはずの自分に、凄まじい痛みが走った事にメディウサは悶え苦しんだ。
まるで鋭い牙によって股間の蛇を噛まれる痛みが断続的に続き、メディウサはその痛みにベッドの上で泣き叫んだ。
その痛みが治まったのは次の日で、メディウサは混乱するしか無かった。
気のせいだと思い、別の人間を犯し殺した時、全く同じことが起きた事でメディウサは理解した。
あの時の人間が言っていた『呪い』の意味を。
そしてメディウサが向かった先が、カラーの魔人であるケッセルリンクの元だ。
だが、その結果はメディウサの望む答えでは無かった。
「諦めるのだな。その呪いを解く事は私には出来ない。いや、現存のカラーでも恐らくは無理だろう」
メディウサは茫然として何も言う事が出来ない。
「どうしても解きたければ…ジル様を頼る事だ。尤も、無様に人間に呪われた貴様をジル様が助けるとは思えんがな」
ケッセルリンクの指摘にメディウサは体を震わせる。
言われるまでも無く、メディウサをジルが助ける訳が無いのは分かっている。
あの時の非常に冷たい目…自分は気に入られていると思っていたのが、実際には何も思われてはいなかった。
それどころか、まるで自分がこうなる事を魔王が望んでいたのではないか…そんな風にも思ってしまう。
「とにかく、私にはどうする事も出来ん…だからと言って、カラーに手を出せば…その時は私がお前を殺す」
「!」
ケッセルリンクの本気の殺意を向けられ、メディウサは背筋が寒くなる。
これまでケッセルリンクを犯してやりたいと思っていたが、そんな事が消え去るくらいの本気の殺意を向けられた。
「分かったなら失せろ。正直私はお前がここに居る事すら腹立たしい」
「…わ、分かった」
メディウサは震えながら逃げるようにケッセルリンクの前から去っていく。
その様子にケッセルリンクは不快そうに眉を顰める。
ケッセルリンクはメディウサの事を嫌っており、その本人が自分の所に呪いを解いて欲しいと言ってくるのは不愉快でしか無かった。
「ケッセルリンク様…」
メディウサが消えてから少したってから、シャロンが主に声をかける。
それ程までに主の怒りは凄まじかった。
「ああ…すまないね、シャロン。それよりも…本来の客人を呼んでくれ」
「はい。ケッセルリンク様」
主の言葉にシャロンは一礼すると、本来の客を呼んでくる。
「…申し訳ありません、ケッセルリンクさん」
本来の客人とはラ・ハウゼルの事だった。
ランス達が消えてから直ぐに訪ねようと思ったのだが、大量にある本に心を奪われてしまい、もう一冊だけ…と思ううちに時間が経ってしまった。
まさかメディウサと訪問がかち合うとは思っていなかったので、ハウゼルは取り敢えず邪魔にならないように別の場所で待っていた。
「いや、構わない。むしろ君に対して申し訳ないくらいだ」
ケッセルリンクは微笑むと合図を送る。
バーバラと加奈代が現れ、それぞれに紅茶を差し出す。
ケッセルリンクが合図をすると、紅茶をいれた使徒二人が去っていく。
「さて…どういう用件かな」
ハウゼルは紅茶を一口飲むと、真剣な顔でケッセルリンクを見る。
「ランス…という人を知っていますね?」
「ふむ…唐突だな」
唐突に斬り込んでくるハウゼルにケッセルリンクは内心で笑みを浮かべる。
どうやら上手くランスと出会わせる事に成功したようだ。
「魔人メディウサを呪ったのは彼の力です。そして…ランスさんと共に居たスラルという方が言っていました。あなたに聞けと」
スラルの名前が出た事に、ケッセルリンクは真剣な表情を浮かべる。
「私にそれを聞くならば…覚悟は出来ているのだろうな」
ハウゼルはケッセルリンク…魔人四天王の迫力に押されながらも、ハッキリと彼女の目を見る。
「ええ…私も色々と覚悟を決めています。ジル様が魔王となった理由も知りましたし。あなたがその場に居た事も…」
目を伏せるハウゼルを見て、ケッセルリンクはため息をつく。
ジルが魔王になった時に彼女はその場にいた。
その事を知っているのならば、ランス寄りの存在なのは間違い無いだろう。
「君は…ランスに協力する気はあるか?」
「はい。私は私自身のために、あの人に協力をするつもりです」
「そうか…ならば話そう。私とランスの関係を」
ケッセルリンクは自分が知っている事を話す。
ランスとの出会い、そして自分が魔人になった事…そして魔王ジルの事。
それを聞いてハウゼルは目を伏せる。
やはり魔王ジルの出来事は痛ましい話だ。
「そんな事が…だからあなたはランスさんに協力をしているんですね」
「ああ。私がカラーの時からの付き合いだからな…」
ハウゼルは一度紅茶を飲み干すと、顔を赤くしてケッセルリンクを見る。
「それで…その…ランスさんから聞いたのですけど、あなたともその…エッチな事を…」
その言葉を聞いてケッセルリンクは呆れたようにため息をつく。
「そんな事まで話したのか…あいつは。まあ間違ってはいない。私とランスはそういう関係…いや、違うな。君が本当に協力してくれるなら、私も本音を話すべきだろう」
ケッセルリンクも紅茶を飲み干すと、その白い肌を赤らめる。
「私はランスの恋人だ。カラーの頃からな…」
「そ、そうなんですか!?」
ケッセルリンクの告白にハウゼルは目を白黒させる。
「そうだ。だからあいつに協力している。君はどういう理由で…いや、それは聞くまい」
態々聞く事も無粋だと思い、ケッセルリンクは話を終わらせる。
「それで、ランスは消えたのだったな?」
「はい…私の目の前で唐突に。変な子供が居たはずなんですけど…それも消えてしまって」
「それは心配ない。ならば、ランス達が現れるのはこれから何年…いや、何百年後になるか」
「そんなに…」
「ああ。だが、必ず現れるはずだ。それまでに色々と考える時間はある。特に君の姉の事もな」
姉…サイゼルの話が出て、ハウゼルは苦笑する。
「まだ出会えていないのか?」
「世界を飛び回っているようで…その内会いに来てくれると思うんですけど」
「そうか。色々と大変だろうが…それは君に任せるしか無いだろうな」
「不安は色々と有りますが」
「とりあえずはこの話はここまでで良いだろう。それよりも少し話をしないか? こうして君と共犯者になったのだからな」
ケッセルリンクの言葉にハウゼルは微笑む。
「そうですね…魔王様に逆らうなんてとんでもない事ですよね」
「フフフ…だが、それがジル様…いや、人間ジルのためなのだからな」
再び時間が飛びます
ガイに関してですが、サラッと流す感じになると思います
何があったか全く不明ですし、書くと話が無駄に長くなりそうなので