ランス再び   作:メケネコ

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サイゼルとの再戦

 1級神人類管理局ALICEはため息をついていた。

「…本当に何にも無いのよね」

 人類と魔物の地獄、それを創造神が喜んでいるのだから問題は無い。

 ALICEとしても人間が苦しむのは非常に面白かった。

 面白かった―――が、同時に退屈な日々でもあった。

 自分の手足と言えるAL教が機能していない。

 カイズは魔王によって破壊され、法王にも何の地位も権力も存在しない。

「クエルプランをからかいに行ったけどスルーされるし…」

 魂管理局であり、自分と同じ1級神であるクエルプランは非常に忙しいようだ。

 挑発しにいったのだが、クエルプランはこっちには全く興味が無いようだった。

 なのでALICEはこの時代を楽しみつつも、退屈を味わうしか無かった。

「あの人間に関われないし…」

 ALICEには忌々しい人間が1人いる。

 それはセラクロラスの力で時代を移動しているランスという人間だ。

 創造神はその行動を楽しんでいるらしく、手出しはするなという命令をしていた。

 本来であれば自分が手を出すのではなく、バランスブレイカー認定をしてAL教を動かす所だが、そんなものは存在しない。

 しかもカイズの試練とやらもとんでもない手段でクリアし、破壊神ラ・バスワルドの力を手に入れようとしている。

 それもALICEにとっては面白くない。

 勿論自分以外の神が決めたことだし、何よりも自分よりも遥かに上である神が決めたことなので異議など挟めない。

 ただ、面白くないというのがALICEにとっての事実だ。

「…そうだ」

 ALICEは何かを思いついたのか、その美しい顔に邪悪な表情を浮かべる。

「試練、か。だったらこれくらいしてもいいわよね」

 女神ALICEの目には、天満橋でランス達を待っている魔人サイゼルの姿があった。

 

 

 

 魔人サイゼル―――以前にランスが戦ったことのある魔人。

 最初はゼスで、次はGL期で。

 氷を使う魔人であり、魔人でも数少ない空を飛べる魔人であること。

 それが本気になってランスに襲い掛かって来る。

 それは非常に脅威なのは間違いない。

 だが、ランスはそれでも余裕の表情を崩さなかった。

 それがサイゼルには癇に障り、最初から全力で倒すつもりだった。

「死になさい!」

 サイゼルがクールゴーデスを構えた時、

「おーっと! 待った! こんな所でそんなのをぶっ放していいのか!」

 ランスの声がサイゼルに届く。

「フン! 調子のいいこと言ってるんじゃないわよ!」

 ランスの声を無視してサイゼルが全力で砲撃をしようとした時―――

「魔人は魔王から人間を殺すのを止められてるんだろ! それを破るのか!」

 その言葉が一瞬サイゼルの動きを止める。

 だが、

「何言ってんのよ! 一人や二人死んだくらいで分かる訳ないでしょ! ましてや今は魔王はこの世界に居ない!」

 すぐに今の状況を思い出し、ランスを嘲るかのように笑う。

 そしてクールゴーデスを発射しようとする。

「そうかそうか! 何千万人も殺しても誤魔化せるのか! お前は相当口が上手いんだな!」

 だが、ランスの言葉にクールゴーデスから魔力が霧散する。

「…は?」

 そして思わずポカンとした顔になってしまう。

「え…? 何言ってるのよ!? 何千万を殺すだなんて…殺すのはお前達だけよ!」

 そんなサイゼルの言葉にランスは何時ものように笑う。

「こんな所でそんなモノをぶっ放したらこの橋が落ちるに決まってるだろうが! そうしたらJAPANの人間は全滅するぞ!」

「は…? あ、ええええええええ!?」

 ランスの言葉にサイゼルは目を白黒させる。

 何しろここでクールゴーデスを放てば、その威力で天満橋が壊れるとランスは言っているのだ。

 そうすればJAPANの人間は全滅する。

 いくらなんでもJAPANが丸ごと消滅すれば誤魔化すなんてことは出来ない。

 魔王ジルは自分の言いつけを破った魔人を決して許さないだろう。

 そうなれば最後、自分は魔王によって殺される…いや、もっと酷い目にあわされるかもしれない。

「がはははは! お前は俺たちを倒せるかもしれんが、お前も確実に死ぬぞ!」

「こ、この卑怯者!」

 頭を抱えて目をぐるぐるさせたサイゼルが思わず叫ぶ。

「こっちが何も出来ない空から攻撃してくるお前に言われたくはないわ! やーい、卑怯者ー」

 ランスの口撃に日光は何も言うことは出来ない。

「…まさかこんな手段で魔人の攻撃を防ぐなんてね」

「こんなのはランス殿にしか思い浮かびません。というよりも常人の発想ではないでしょう」

「しかも効果覿面というのがな…こんなやり方で魔人を脅迫するとは思いもせんわ」

 ブリティシュ達はランスのとった作戦に呆れるやら感心するやら、複雑な顔をしている。

 ランスがこの手段を取ったのはやはりJAPANでの戦いの経験からだ。

 魔人ザビエルが禁妖怪石爺を使ってJAPANそのものを滅亡させようとした時、ランスは天満橋が落ちるとJAPANも滅亡させることを知った。

 そして今の時代は魔王ジルの時代、そのジルの圧政はケッセルリンクからよく聞かされている。

『人間を殺すな』という魔王の命令。

 それが一人二人ならジルも気にしないかもしれない。

 だが、それがJAPANという島一つ丸ごとなれば話は別だ。

 そんなことをすればジルがどう出るか、それが分からない魔人達ではないだろう。

 何しろ魔王ジルは人にも魔物にも容赦が無い魔王なのだから。

 そしてサイゼルもまさかこんな方法で自分を脅迫してくる人間が居るなんて考えもしない。

「がはははは! どうするサイゼル! このまま逃げ帰るか!? 俺はそれでも構わんぞ。まあその場合はハウゼルにこの事をしっかりと言うがな」

「ちょ、ちょっと! ハウゼルに余計なこと言うんじゃないわよ! あの子は関係無いでしょあの子は!」

「ハウゼルの仇とか言ってきた奴が何を言ってやがる! それにハウゼルとはきちんと合意の上でやったぞ。和姦だ和姦。しかもラブラブだぞ」

「いい加減なことを言うなー! ぶっ飛ばすわよ!」

 二人の行動はいよいよ子供の口喧嘩レベルにまでなってきている。

 それを見てブリティシュは本当に複雑な顔をするしかなかった。

「魔人は凄い恐ろしくて恐怖の存在なんだけど…その魔人をこんな形で脅迫するという発想はホ・ラガにも出来ないだろうね」

「この世界が広くても、こんなことをするのはランス殿だけです」

「ある意味天才の発想だとも思うがの…いや、狂人の言葉と言うべきか」

「さっきからやかましいぞ。どんな手段を取ろうが、勝てばそれでいいんだ」

 外野の言葉にランスも流石に言い返す。

 そして上空で悩んでいるサイゼルを見てあと少しだと確信する。

 何しろサイゼルは非常に頭に血が上りやすい存在だ。

 その上、カオスを持っているランス相手にも最後まで油断をしていた。

 それこそがランスがサイゼルに付け込める所の一つだ。

「がはははは! ハウゼルがこれを知ったら何と言うだろうな。まあ根が真面目なあいつのことだからお前を慰めると思うがな」

「ううううううう!」

 ハウゼルならば本当に慰められそうで、そしてそれを見透かされているのが非常に腹立たしい。

 まるで本当にハウゼルのことを知っているような言葉に、まさかハウゼルは本気でこの男に抱かれたのではとも思ってしまう。

 それはそれで許せないし、あんな夢を自分に見せ続けたランスが許せない。

 だが、こんな所で全力を出せば間違いなくJAPANは崩壊し、その結果は言うまでもないだろう。

 魔王ジルという見えない恐怖がサイゼルの思考を奪ってしまっていた。

「それとも遠距離攻撃でしか俺を倒せんか? まあそれも当たり前だな。それにお前にそんな度胸は無いしな」

「やってやろうじゃないのよ!」

 サイゼルは額に怒りのマークを滲ませながら怒鳴る。

 そして本当に天満橋の近くに降りてきてしまった。

(…とうとう自分に有利なフィールドすら捨てたぞ)

(そうさせるのがランスのやり方よ。ま、効率的だし問題無いでしょ)

(狡猾な奴じゃな。まあそれくらいなければ藤原石丸と渡り合うことなど出来んじゃろ)

 ブリティシュ達がひそひそ話をしていると、サイゼルがクールゴーデスを構える。

「氷漬けにしてやるわ。ランス…特にアンタはね!」

 そしてクールゴーデスから凄まじい光が放たれる。

「フン!」

 ランスはそれを身をひるがえして避ける。

 クールゴーデスは魔法による攻撃ではないので必中ではない。

 だが、当たればランスでも一撃で凍り付く程の威力を持っているのは、既にゼスでランス自身で味わっている。

「がはははは! そんな見え見えの攻撃が当たると思っているのか!」

 ランスの挑発にサイゼルはランスを強く睨む。

「だったらこれならどうよ! スノーレーザー!」

 魔法は絶対命中。

 なので必ずランスに命中する。

「はっ!」

 魔法に関してはレンの持つ強力な防御能力で防ぐ。

 完全にダメージを防げる訳ではないが、レンもまた人を超えた存在、魔人の魔法を受けても倒れることはない。

 高いガードLVも持つので、物理も魔法も広い範囲で防御をすることが出来る。

 サイゼルは自分の魔法を防いだのを見て唇を歪める。

 それは苛立ちに満ちており、明らかに機嫌を悪くしていた。

「ああもう! 面倒くさいわね!」

 クールゴーデスを使えばもっと高威力に、そして広範囲に攻撃をすることが出来るのだが、流石にそれをすると天満橋を壊してしまうかもしれない。

 もうそうなればJAPANは崩壊し、そこに居る人間も間違いなく滅亡し、自分はジルから酷い目にあわされるだろう。

「だったら連中を橋から突き落とす!」

 サイゼルは翼を羽ばたかせてランス達に向かって行く。

 ランスはそれを見て日光を構える。

 まずはサイゼルの無敵結界を斬らなければ、サイゼルにダメージを与えることが出来ない。

「落ちなさい!」

「がはははは! わざわざそっちから来たか!」

 ランスは日光を構える。

 サイゼルは無敵結界があるので無警戒に突っ込んでくる。

 ランスはニヤリと笑い居合の構いを取る。

「…!」

 その時サイゼルは背筋が異常に凍る。

 サイゼルは完全に人間相手など余裕だと思っていた。

 それは別にサイゼルが特殊なのではなく、大抵の魔人はそうだ。

 例外なのはランスのことを知っている魔人や、魔人ガイが人間だったころに戦った者達だろう。

 しかしサイゼルはそんな経験も少ないし、生来の油断をする性格もある。

 だからこそ、ゼスでの戦いの時も魔剣カオスを持っているランスに対しても油断をしまくっていたのだから。

「やば…」

 サイゼルは嫌な予感から直前で体を止めようとするが、その動きは魔人最速のメガラスよりも遥かに遅い。

「遅いな!」

 ランスは日光を抜刀する。

 その踏み込みの速度は凄まじく、サイゼルはそれに反応できなかった。

「とーーーーーっ!!」

 ランスの居合斬りがサイゼルの無敵結界だけでなく、その体をも傷つける。

 流石に魔人の肌は完全に斬れることはないが、それでもサイゼルの体を傷つける。

「っく!」

 サイゼルは橋の上を転がりながらも何と立ち上がる。

 その脇腹からは血が流れており、ランスの居合が魔人をそこまで傷つけたのだ。

「フン、少しは躱せたか」

 ランスは日光を鞘に納めると今度は背中から魔剣ハデスを取り出す。

「行けるな。スラルちゃん」

「ああ。ジルの影響下でも、簡単な付与なら出来るからな」

「ならいい」

 サイゼルは斬られた脇腹を押さえながらランスを睨む。

「何がどうなってるのよ…!」

 自分の体が傷つけられたことにサイゼルはまだ信じられなかった。

 こんな『痛み』を受けたのは生まれて初めてだ。

 ハウゼルとの諍いで怪我くらいはしたことはあるが、その時は傷も素早く治っていた。

 だが、あの人間に斬られた傷は治る気配が無い。

「何だお前。魔人の無敵結界を斬れる武器のことも知らんのか」

 そんなサイゼルにランスは呆れたような顔をする。

「まさかそんな…! アンタがそんなのを持ってるなんて…!」

 無敵結界を破る武器のことは当然知っていた。

 だが、サイゼルの中ではそれはあのガイの持つ魔剣カオスだけのはずだった。

 まさか魔人の無敵結界を斬れる剣が二振りあるだなんて聞いたこともなかった。

(じゃあハウゼルが負けたって言うのも!?)

 ハウゼルが負けたのは卑怯な目にあったのと、素直なハウゼルが無敵結界を解除したからだと思っていた。

 サイゼルも妹が負けた時のことなど聞きたくもなかった。

 ハウゼルが気にしているかもしれないと気を回したつもりだった。

 まさかそれがこんな結果を生み出すとは、サイゼル自身も思っていなかった。

「フン、このままお前を倒してオシオキセックスじゃー!」

「ふざけるんじゃないわよ…!」

 サイゼルは傷を押さえながらも何とか宙を舞う。

 動くたびに傷は痛むが、それでも戦えないという程ではない。

 そしてサイゼルは自分をこんな目に合わせた人間を見逃すつもりはない。

(こうなったら…まずは一発ぶちかます!)

 この傷の礼として、橋を破壊しない程度に威力を抑えたクールゴーデスを放とうとした時、

「はあっ!」

「っ!」

 サイゼルを激しい電撃が襲う。

 その衝撃は先程のランスから受けた一撃に比べれば遥かに弱いが、それよりも無敵結界が完全に破られたことをサイゼルは驚く。

 そして集中力を失いそのままフラフラと橋へと落下しそうになるのを必死におさえる。

「ホワイトレーザー!」

 だが、そんなサイゼルを見逃さずレンの放った魔法がサイゼルに突き刺さる。

 先程の電撃を上回る衝撃にサイゼルは歯を食いしばって耐える。

 空中で態勢を崩してしまい、再び天満橋に落ちてしまう。

 そしてそれを見逃さず、二人の男がサイゼルに向かってくる。

「サイゼルは俺様の獲物だ! 手を出すな!」

「戦いはランスに任せるさ! 僕の役目はガードさ!」

 サイゼルは何とか飛び上がろうとするが、それを許さずにランスが襲い掛かって来る。

「フンッ!」

 ランスの斬撃は凄まじく、何とか避けたサイゼルも冷や汗が出てくる。

 事実、ランスの攻撃が自分に大きなダメージを与えたので、サイゼルとしてもこれ以上ランスからの攻撃を受ける訳にはいかない。

「この…! 氷の矢!」

 サイゼルは魔法でランスを攻撃するが、

「はあっ!」

 ブリティシュがランスの盾となりその攻撃を受け止める。

 普通のモンスターと違いその威力は非常に高い。

 だが、流石はエターナルヒーローと呼ばれる英雄、魔人の魔法でも防いで見せる。

「がはははは! 今降参したら痛い目を見ないで済むぞ!」

「ふざけてるんじゃないわよ…!」

 ランスの剣が届く前にサイゼルは何とか宙に舞う。

 脇腹に傷はあるが、それでも空を飛べないということはない。

 そして空を飛ばれては剣士であるランスでは手が出せない。

「また空か。これだから飛べる魔人は面倒くさい」

 魔人メガラスは攻撃は接近戦なのでこちらに近づいてくる。

 だが、魔人サイゼル、そして魔人ハウゼルは魔法と飛び道具を使って襲ってくる相手だ。

「っ! 傷が治らない…」

 脇腹から流れる血は止まる気配は無い。

 魔人は再生能力にも優れており、少々の怪我ならば直ぐにでも治ってしまう。

 事実レンから受けた傷はもう消えている。

 だが、日光でつけられた傷は癒える様子が全くない。

 それがサイゼルの頭を更に混乱させていた。

「空ならば落とせばいい! 雷撃!」

「エンジェルカッター!」

 空に飛んで何とか一息入れたいサイゼルだが、そこに更に魔法が飛んでくる。

「くっ!」

 それが普通の人間の放つ魔法ならばサイゼルも気にならないだろう。

 だが、レンとお町の放つ攻撃の威力はサイゼルの予想を遥かに超えている。

 それもそのはず、エンジェルナイトのレンと、妖怪王お町の放つ威力は並の人間など相手にもならない。

 サイゼルには致命傷にはならないが、それでも鬱陶しいことには変わりはない。

「ああもう! うるさいわね!」

 次々に飛んでくる魔法をサイゼルはバリアを張って防ぐ。

 何とか反撃をしたいのだが、脇腹の傷の痛みから中々集中出来ない。

 もしこれが戦闘経験が豊富な魔人ならば簡単に態勢を立て直せただろう。

 しかし、サイゼルは魔人の中でもまだ若い魔人だ。

 戦闘経験もカミーラ等の魔人と比べればどうしても低い。

 一度混乱をするとどんどんと沼に嵌ってしまう、それがサイゼルの弱点でもあった。

「流石は魔人。我の雷ではダメージにはならんか」

「地面に引きずり降ろさないと駄目ね」

 遠距離攻撃が出来るのはレンとお町の二人だけだ。

 しかし、流石に魔人を相手にするには威力が足りない。

「ランス。お前の攻撃は届かないのか」

 スラルの言葉にランスは考える。

「うーむ…流石に遠いな」

 サイゼルの姿はランスから見ればかなり遠い。

 空間を斬る一撃は確かに遠距離攻撃が出来るのは間違いないのだが、あそこまで距離があると流石に届かない。

 メガラスのようにこちらに近づいてくるのなら話は別だが、流石にハウゼルやサイゼルのように空から遠距離で攻撃してくるなら話は別だ。

「魔人サイゼルに対する対策だったのですけどね」

「あんなに遠くから攻撃してくるとは流石に思わなかったわ。前は結構こっちに近づいてきたんだがな」

 ゼスとの時はカオスが届く範囲にまで近づいてきたが、今回は慎重になっているのか近づいてこない。

 ただ、ここまで遠いと相手の攻撃もこちらには届きにくいだろう。

 魔法ならレンがある程度防げるし、手元の武器を使っての遠距離攻撃も使っては来れない。

 サイゼルは目の前のランスよりも、この場に居ない魔王ジルを恐れているのだから無理はない。

「ですがランス殿。実際あの魔人の攻撃で天満橋が壊れるなんてことがあるんですか?」

 日光はランスの言葉の真意を聞いてみる。

 確かにこの橋が落ちればJAPANは落ちるだろうが、そんな簡単に壊れるということはあるのだろうか?

 もしそうならJAPANは本当に危険な立地ということになる。

「心配するな。そんな事は出来んからな」

「まあそんな簡単に壊れぬだろう。魔人の攻撃で壊れるくらいならJAPANはもっと早くに落ちていてもおかしくないからな」

 ランスの言葉にスラルも剣の中で頷く。

 ランスからの作戦を聞いた時はスラルもその内容に呆れたが、確かにランスの言う通りでもあると納得した。

 魔王ならともかく、魔人の攻撃で簡単に壊れるような橋なら、もっと昔に何か問題が起きていてもおかしくはないのだ。

 事実、魔人ザビエルも直接この橋を壊すようなことは出来なかった。

 禁妖怪石爺を使い、尚且つ大きな時間をかけてようやく落とすことが出来るのが天満橋なのだ。

 ランスは上空を見ながら刀を構える。

 レンとお町の攻撃を受けてサイゼルはバランスを崩すが、それでも中々地面に落ちては来ない。

 だが、相当イライラしていることは間違いない。

 何しろたかが人間相手にここまで苦戦させられているのだ。

 元々が短気な性格なのも後押しし、サイゼルはとうとうキレた。

「この…調子に乗るのもいい加減にしなさい!」

 サイゼルの目に再び青い炎が宿り、魔人の気配が濃厚になる。

「むっ!」

「これは…来るわね」

 お町とレンはサイゼルはサイゼルの強大な魔力を察知する。

「来るわよ!」

「ここでこそ、我が身に付けた力を発揮する時じゃな」

 二人はサイゼルの攻撃に備える。

「絶対零度!」

 それはLV2技能が必要な氷の魔法。

 名前の通り、絶対的な冷気がランス達を襲い掛かる。

「光の壁!」

「はっ!」

「くっ!」

 レンは魔法で、お町は陰陽術で壁を作る。

 ブリティシュはと言うと盾を構えてランスを庇う。

「はぁ…これでどうよ」

 サイゼルは自分の放った猛烈な威力な魔法の跡を見る。

 ただ、自分がこれ程の魔力を込めて放ったというのに、橋には全く影響が無いようだった。

(…何よ、そんな簡単に壊れないじゃない、この橋)

 橋が壊れなかったことにサイゼルは安堵する。

 そしてあの人間達はどうなったのかと思った時、凄まじい炎がサイゼルを飲み込んだ。

「当たったか?」

「ああ。間違いなく当たった。急ぐぞ」

 ランスの持つハデスが強烈な紅い光を放っている。

 魔人ハウゼルとセックスをしたことで得た力。

 いや、剣の変化と言った方が正しいか。

 炎の力を剣に宿し、それを放つことが出来る。

 放てるのは炎だけなのだが、あのハウゼルの放つ砲撃を思わせる力がある。

 ランス達は落ちていったサイゼルを追って走っていく。

 サイゼルはかなりの距離を吹き飛ばされたらしく、とうとう天満橋を渡り切った。

 そしてそこにはクールゴーデス構えて、何とか立っているサイゼルの姿があった。

 その体には火傷が無数にあり、荒い息をつきながらランスを睨んでいる。

「この…なんであんたがハウゼルみたいなことしてんのよ」

「フン、そんなの俺がハウゼルとセックスしたからだろうが。あいつの力が俺様に宿ったのだな、うん」

「くっ…」

 サイゼルは突然のことで大ダメージを負ったようで、もう戦うことすらも難しいらしい。

 脇腹からは未だに血が流れており、これ以上戦うのはもう不可能なのは明らかだ。

 いや、戦えるだろうが勝つのは難しい、そんな状況だ。

「負けを認めるんだな。今なら軽めのおしおきセックスで許してやるぞ」

「…馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ」

「だったら前の言葉通りカオス…は無いから、日光をおまえのあそこにぶち込むかな」

 ランスは日光をサイゼルに向ける。

 サイゼルは青い顔をしてランスを見ている。

「…とんでもないことを言わないでください。私にそんなことをさせないで下さい」

「冗談だ。お前も一々本気にするな」

 ランスは無造作にサイゼルに向かって行く。

 もうサイゼルがどんな動きをしようが、今のランスならば対応できる自信があった。

 自分の勝利は揺るがない、そんな自信の動きにサイゼルが強い目でランスを睨む。

 だが、そんなものはランスには何にも役に立たない。

 そのまま戦いが終わると思われた時―――

『そんな簡単に負けてもらっちゃ困るのよね』

「え?」

 サイゼルの脳裏に一人の女の声が響く。

『少しは力を取り戻しなさいな。ラ・バスワルド』

「ラ・バスワルド…? 何言ってんのよ! 私はそんな名前じゃ―――」

 サイゼルがそう叫ぼうとした時、サイゼルの目のハイライトが消える。

 それと同時に、異質な空気がランスに襲い掛かる。

 ランスもその空気を敏感に感じ取り、最大限の警戒を持ってサイゼルに向かって構える。

 そしてサイゼルがゆっくりと宙に浮く。

「我は破壊を司る神、バスワルド」

 その声はこれまでのサイゼルの声とは全く違う無機質な声。

「我を呼び出したのは貴様か?」

 サイゼル―――いや、ラ・バスワルドの声は何処までも無機質に響き渡った。




ランス10風に言うならば、サイゼルはいきなりカオスの重症マークを背負わされた状態
なので楽に戦えているという感じです

しかし本編は氷系魔法は不遇だな…
絶対零度ってランス本編で出てきたっけなあ
ゼットンと雷神雷光、白色破壊光線と黒色破壊光線はあるけど氷系はなあ
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