ランス再び   作:メケネコ

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破壊神の半身

 破壊神ラ・バスワルド。

 それは魔王以上の力を持つとされる、この世界が穢された時にその全てを破壊して浄化する神。

 だが、それは思った以上に扱い難く、神達もバスワルドをどう使うかを悩ませていた。

 その時、創造神が今のGL期を気に入りそれを生み出した魔王に褒美を与えるように言った。

 それを受けた神々はラ・バスワルドを二つに割り、それぞれを魔王に与えた。

 それが魔人ラ・ハウゼルと魔人ラ・サイゼルの二人であった。

 ただ、ジルはそれを褒美などとは思っていない。

 むしろ神から与えられた巨大な爆弾として、その存在を警戒している。

 いつ二人が神としての神格を取り戻すのか。

 その場合この世界はどうなるのか。

 しかし、それとはまた別のベクトルで気になる事もあるというのも事実だった。

 

 

「我は破壊神ラ・バスワルド…我を呼んだのはお前達か」

 魔人サイゼルの感情むき出しの声とは違う、無機質な声が響く。

 その感情の無さに、日光、ブリティシュ、お町は目の前の魔人が本当に先程と同じなのか疑問を覚える程だ。

 だが、ランスは全く態度を変えない。

「違うぞ。お前が勝手にそうなってたんだぞ」

「………」

 ランスの言葉にサイゼル―――いや、バスワルドが無言になる。

「というか俺はサイゼルと戦ってたのに何でお前が出てくるんだ」

「知らぬ」

 ランスの文句にもバスワルドはそう返してくるだけ。

「で、どうするんだ。まさかお前がやるとか言わないよな」

「………」

 その言葉に再びバスワルドは無言になる。

 その無言にランス以外の者はハラハラするしかない。

 相手の力がそれほど不気味だと感じ取っていたのだった。

 バスワルドは少しの間無言だったが、その周囲の気温がどんどんと下がっていく。

「我は破壊の神。我が現れたからには破壊を行使する」

「…結局これか」

 バスワルドの言葉にランスは少しうんざりしながら剣を構える。

 折角サイゼルを倒したというのに、もっと厄介な奴が出てきてしまった。

(こうなったらサイゼルにはおしおきとして数発はやらんと気が済まんな)

 実際は全く関係無いサイゼルに対しての苛立ちをぶつけながら、実際にはランスはかなり警戒している。

 前にラ・バスワルドと戦った時はカミーラ、ケッセルリンク、メガラスといった強者が居ながらもバスワルドには全く勝てる気がしなかった。

 ただ、魔人達は連携が全く出来ていなかったので、実力を発揮していたとは言い難かった。

 それを抜きにしても、ラ・バスワルドは非常に恐ろしい相手だった。

「ランス。相手はラ・バスワルドだが、恐らくは以前のような力は無いとは思うぞ」

「そうか?」

「ああ。あの時のラ・バスワルドは完全な神だったが、今のラ・バスワルドはハウゼルとサイゼルに分かれた上に、魔人という制約がついている」

「弱くなっているという事か」

「その通りだ。破壊の力も使えるかどうかも怪しい所だ。だが、神格は本物だ。油断だけは絶対にするなよ」

「当たり前だ。それにここでサイゼルをぶっ倒せばおしおきセックスが出来るからな」

 ランスはニヤリと笑うと、ハデスを手にバスワルドを見る。

 相手がサイゼルなのだから、炎の付与がされたこの剣が有効だと判断した。

「来るがいい」

 バスワルドの言葉にランスが動く。

 バスワルドは宙に浮いてはいるが、空高く羽ばたいているという事は無い。

 ランスの剣が十分に届く範囲だ。

「がはははは! お前を倒しておしおきセックスじゃーーーー!」

 その剣はまさに神速と呼ぶに相応しい一撃だ。

 

 ガンッ!

 

 だがそれはバスワルドの前のバリアに弾かれる。

 そのバリアはサイゼルやハウゼルが使っていたバリアより遥かに硬い。

「む」

「氷の矢」

 そしてバスワルドの放った魔法がランスに突き刺さる。

「うおっ!?」

 氷の矢とは思えない威力にランスは呻く。

 初球の魔法だというのに、ドラゴンの加護を装備しているランスにすらもダメージを与えたのだ。

「何という威力だ…! 高い魔法防御力を持っているランスに対し、初級魔法でここまで傷つけるとは…!」

 スラルもその威力には驚くしかない。

 サイゼルも氷の魔法の威力が高かったが、バスワルドはそれ以上の力がある。

「だが、破壊の力は使ってこない…いや、使えないと言った方が正しいのだろうな」

「フン、だったらサイゼルが少し強くなっただけだ」

「そう言い切れるお前が異常なのだがな」

 ランスが態勢を整えるのと同時に、

「エンジェルカッター!」

「雷撃!」

 レンとお町の攻撃が突き刺さる。

「…全く応えておらんな」

「桁違いの魔法防御力ね」

 二人も苦い顔をする以外に無い。

 サイゼルの時よりも遥かに強くなっているのは明らかだ。

「ランスに頼る以外に無いか」

「そうね。間違いなくランスの…日光の攻撃は魔人という制約がついているバスワルド様には有効だし」

 レンがあのバスワルドの事を『様』づけした事にお町は不思議そうな顔をする。

 だが、今はそれは関係無いとして集中する事にする。

「来るがいい。人よ」

 バスワルドの無機質な顔と無機質な声が響く。

「うぐぐ…何だこりゃ。攻撃がきいとらんぞ」

 ランスがハデスでバスワルドを攻撃するが、その攻撃に全く応えている様子は無い。

「何か特別な障壁でもあるというのか。いや、ランスの持つ剣が効いていないというのか」

 日光の攻撃は届いているが、ハデスによる攻撃に意味が無いように思える。

「レン! 炎の魔法を使ってみてくれ!」

 スラルの言葉にレンは不思議そうな顔をするが、

「ファイヤーレーザー!」

 その言葉通りに炎の魔法を放つ。

 魔法は絶対に命中するので、バスワルドも避ける動作が全く無い。

 それだけでなく、魔法バリアすら使う様子も見せない。

 そしてレンの放つファイヤーレーザーがバスワルドに直撃する。

 だが、その炎はバスワルド相手にダメージを与えている様子が全く無い。

 それを見てスラルはランスの剣の中で舌打ちをする。

「やはりか」

「どういう事だ、スラルちゃん」

「バスワルドには炎と氷の二つの属性の効果が無いという事だ。そして今ハデスには炎の効果が付与されている。だからバスワルドにダメージを与えられないという事だ」

「何て面倒くさい奴だ。だったら炎は止めて違う属性で行くぞ」

「ああ。そこは我に任せろ…と言いたいが、少し時間がかかる。それまで死んでくれるなよ」

「誰に言っている」

 ランスは日光を構える。

 いくら高い耐性を持っていたとしても、魔人に対して特効の日光ならば話は別だ。

「行けます、ランス殿」

 日光も相手が魔人という事も有りやる気は十分だ。

 ランスも日光ならば問題は無いと判断しバスワルドに斬りかかる。

「スノーレーザー」

 バスワルドもランスの動きを察知して魔法を放ってくる。

「ぐぅっ!」

 その射線上にブリティシュが割って入る。

 盾を構えて防御をするが、その威力はやはり非常に高い。

 歯を食いしばってブリティシュは耐える。

 盾防御LV2を持っているとはいえ、魔人の使う魔法の威力は桁違いだ。

 それでもブリティシュが耐えられるのは、彼がそれだけの力を持っているからだ。

 そしてランスはそんなブリティシュの陰からバスワルドに接近する。

 日光ならばバスワルドにもダメージを与えられる。

 ランスは日光でバスワルドの体を斬る。

 バスワルドは戦闘に関しては無頓着のようで、ランスの攻撃を避けずにその体から血が出る。

 だが、それでも大したダメージになっているとは思えない。

 バスワルドは顔色一つ変えずにランスを見る。

「氷雪吹雪」

 そして容赦なく魔法を放ってくる。

「うげ」

 魔法の威力はやはりサイゼルを大きく上回っている。

 神が半分になり、なおかつ魔人となる事で弱体しているにも関わらず、その力はやはり異常とも言える。

「ランス、長期戦は不利だ。早く決着をつけなければいけない」

「だったらスラルちゃんも早く付与とやらをしろ! このままじゃ持たんぞ!」

 レンが回復魔法を使うがいずれはジリ貧となるのは明らかだ。

「分かってる!」

 ランスは速攻をかけるべくバスワルドに斬りかかる。

 バスワルドはランスの攻撃を避けるような素振りは見せないが、同時に深手を負うことも無い。

 ランスが本気で斬りかかっているのに、バスワルドはそんなのはお構いなしにこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 魔法以外にもただ腕を振るっているだけなのに、それを止めた腕が痺れる程だ。

 ただただ単純に生命体として人間を遥かに超越している。

 その力を持って襲い掛かって来るのだから、ランスとしても焦りが出てくる。

 バスワルドは他の魔人と違い、ダメージを与えても全く応えていないからだ。

 魔人も生命体で有り、大ダメージを負えば動きが鈍るし、精神的にも動揺もする。

 勿論中には最初から最後まで変わらないノスのような魔人も居るが、バスワルドは人型で有りながらその様子が全く無い。

「全く…! どうしてバスワルド様が出てくるのよ…!」

 レンはランスの隣に立つと、ランスの攻撃に合わせてバスワルドに攻撃をする。

 人を遥かに上回るレンだが、それは相手も同じ。

 神格が遥かに高いので、レンも中々ダメージが与えられない。

 破壊の神特有の破壊の力こそ使ってこないが、攻撃は非常に激しい。

 防御に関しては無頓着ではあるが、それでも非常に硬い。

「シベリア」

 更にはこの強大な魔力から放たれる氷の魔法。

 使ってくるのは氷の魔法と、単純な物理攻撃…その二つだけでランス達は追い詰められていた。

 お町も必死に防御術で援護するが、疲労が濃くなってくる。

 いくら強くなったといっても、お町は圧倒的に経験が不足していた。

 それでも持ち前の妖怪王としての力を使い何とか食らいつく。

「この…!」

「氷柱地獄」

「ぐう…!」

 だが、次々に放たれる強力な魔法を畳みかけられ、とうとうお町が倒れる。

 それを見たランスは怒りを露にする。

「お前ー! 許さん!」

 ランスは怒りで更に苛烈な攻撃を加える。

 だが、バスワルドの防御力は異常であり、有効打を与えられているようには見えない。

「ランス殿! あの技を繰り出すしか無いです!」

「そう簡単に出来るか!」

 日光の言葉にランスは怒鳴り返す。

 その言葉に日光も歯噛みするしかない。

 確かにランスの技は非常に強力だ。

 しかし、まだまだ完成とは言い難いのでそんな簡単に出来る事では無い。

 日光もそれを自覚している。

 自分が役に立てない事に日光は歯噛みするしかない。

「ぶっ飛ばす!」

 ランスの動きが変わり、より明確な殺意を持ってバスワルドを攻撃する。

 普段であれば相手が女なら殺さないようにするが、この相手はそんな事は言ってられない。

 殺すつもりで戦わないとこちらがやられる。

 ランスは凄まじい速さで斬りつける。

 バスワルドは無表情のままだが、ランスの速度はどんどんと素早くなっていく。

「凄い…!」

 ブリティシュはランスの動きを見て目を見開く。

 一本の刀のはずなのに、それは無数の刀で斬りつけているようだ。

 その刃にはブリティシュですらもどう参加していいか分からない程だ。

「ランス! 準備が出来たぞ!」

「遅いぞスラルちゃん!」

 スラルの声に合わせて、ランスがハデスを抜く。

「ライトニングレーザー!」

 スラルの声が響き、ランスの持つ剣が光り輝く。

 そこからは細かな稲光が放たれ、明らかに雷の力が宿っているのが分かる。

 そしてランスはその剣と日光を交互に持ち替えながらバスワルドを斬りつける。

 それは以前にブリティシュが味わった攻撃だが、その時よりもより洗練されている。

 しかもその剣は強烈な電撃が纏っているのだ。

 だが―――それでもやはりバスワルドは化物だった。

「ぐ…」

 ランスもそれを嫌という程分かってしまう。

 一流の戦士であるランスの直感が、目の前のバスワルドに対して有効打になっていないと語り掛けているのだ。

 それでもランスは攻撃を止めない。

 ここで攻撃を止めれば、強烈なバスワルドの魔法に襲われるだろう。

 バスワルドの魔法はそう何度も受けられるものでは無い。

「スノーレーザー」

 ランスの攻撃の合間にも関わらず、バスワルドの強烈な魔法がランスに襲い掛かる。

 相手は魔法を使っているというのに、ランスの攻撃でもその詠唱を止める事は出来ない。

「ランス!」

 レンがランスの前に立ち、バスワルドの魔法を受け止める。

 そしてランスはレンに庇われたまま、凄まじい勢いで日光を抜刀する。

 その時、初めてバスワルドの表情に変化が起きる。

 ランスの放った居合は空間を斬り、レンの向こう側に居るはずのバスワルドに届いたのだ。

 バスワルドから血が飛び散るが、それでもやはりバスワルドは止まらない。

「絶対零度」

 そして放たれるバスワルドの強烈な魔法。

「ランス殿!」

 それがランスとレンだけでなく、ブリティシュすらも飲み込んでいく。

 凄まじい氷の嵐が収まった時―――ランスはその嵐の中から抜け出す。

 ランスが一歩踏み出した時、その手に有る日光をバスワルドに向かって投擲する。

 その出来事にバスワルドも驚いたのが、その動きが一瞬鈍る。

 それは以前にサイゼルの体を貫いたのと同じように、バスワルドの体に突き刺さる。

「ラーンスあたたたー-----っく!!!」

 バスワルドの体が一瞬怯んだのを見逃さず、ランスの一撃がバスワルドに突き刺さる。

 だが、当然の事ながらバスワルドはその攻撃で倒れない。

 二人の間で凄まじい衝撃波が生じ、二人はそれぞれ吹き飛ばされる。

 バスワルドは空中で姿勢を整え、ランスに向けて攻撃を加えようとする。

 が、その時バスワルドの背後から刀が突き刺さる。

 それは聖刀日光を構えた日光本人だった。

 ランスの手から離れ、刀の姿を維持できなくなったが、同時に自分自身で攻撃をする事が出来るようになった。

 日光はそのまま刀を捻ろうとした時、強烈な刺激を受けて吹き飛ばされる。

 それはバスワルドの手だ。

 無造作に放たれた腕がそれだけで日光を弾き飛ばしたのだ。

 そして日光が作った一瞬の隙―――それを見逃すランスでは無い。

「くたばれ!!!」

 ランスは全身に力を込めてハデスを握る。

 自分の力を自覚してから初めて出す本気の本気に、自分自身の体が軋む気がする。

 だが、それでもランスはこの一瞬にかける以外に方法は無かった。

 それが例え自分のレベルを犠牲にしようとも、やるしかない以上はランスは必ずやる男だ。

「ラーンス…あたたたたーーーーーっく!!!」

 それはランスが日光を使った居合でしか得られなかった感覚。

「これは…」

 スラルはその波動に剣の中で目を見開く。

 ランスの剣の周囲が明らかに歪んでいるのだ。

 日光でしか出来なかった空間すらも斬る技を強引にこの剣で発動させているのだ。

「とーーーーーーっ!!!」

 ランスの剣が勢いよく振り下ろされ、初めてバスワルドがその攻撃に対して反応を見せた。

 その手からはこれまで使って来た氷の力とは全く違う。

 その力はバスワルド本人の腕すらも傷つけるが、そんなのはお構いなしだ。

 そして二人の破壊の力がぶつかり合い、その衝撃がランスの体をも傷つける。

 その破壊の力の余波がランスを襲おうとしたとき、誰かがランスの体を強引に引きはがす。

「お町!」

 ブリティシュの声が響く。

 ランスの体を強引に引きはがしたのはお町だった。

「おい! お町!?」

「もう一撃だ。それしか無いぞ」

 そういうお町だが、その腕は破壊の力の余波のせいか、血塗れなだけでなくその骨まで見えてしまっている。

 ランスは態勢を立て直すと、そのままランス同様に破壊の力の余波を受けているバスワルドに向かって行く。

「こいつで終わりだ! 超鬼畜アターーーーーック!」

 先程の自分の剣の感覚をそのままに、再び体が軋みながらもランスは己の必殺技を放つ。

 ランスアタックを連続して放つだけでなく、破壊の力を撒き散らしながらバスワルドに襲い掛かる。

 そしてバスワルドもその動きには完全にはついていけなかった。

 破壊の力と共に雷の力も放たれ、バスワルドの周囲を削り、地面を抉りながら凄まじい電撃がバスワルドを覆う。

 そしてとうとうバスワルドはその一撃で倒れて動かなくなった。

「…やったか?」

「そういうセリフは止めろ」

 スラルの言葉にランスは軽口を叩くが、その手から剣を落とす。

「あだだだだだ!」

「ランス! その腕は…」

 剣の中からランスの腕を見てスラルの顔が歪む。

 ランスの腕は明らかに折れてしまっており、その指先からは大量の出血が見られる。

 まだ未完成の技を、それも刀では無い剣で放ったので、その反動がランス自身を襲ったのだ。

 人の身では扱うには分不相応とも言える技は、使い手ですらも傷つける。

「ランス! ヒーリング!」

 動けないランスを見て、何とか立ちあがったレンがランスに回復魔法をかける。

「俺よりお町を何とかしろ」

「心配無用だ、我はこの程度では死なん」

 お町も血まみれでありながら何とか立ち上がる。

「日光、大丈夫かい」

「…ええ。ブリティシュ、あなたもご無事で何よりです」

 日光も頭部から血を流しながらも何とか立ち上がる。

 ブリティシュはそんな日光に手を貸すと、ランス達の所に歩いて行く。

「…ランス殿」

 ランスの手を見て日光の顔が沈む。

 確かにランスの技は凄まじかったが、それがランスの体自身を傷つけたのが分かる。

「あーしんど…だが、倒したぞ!」

 傷が癒えたランスは倒れているバスワルドの所へ向かう。

 ランスが上からバスワルドの顔を覗き込んだ時、閉じられていた目が見開かれる。

「………何が起きたってのよ。っていうか体痛いし! いったあああい!」

 突然飛び起きたサイゼルが体の痛みに叫ぶ。

 そんなサイゼルを見てランスは、

「レン。こいつも治してやれ」

 呆れながらレンにそう言うしか無かった。

 

 

 

 ???―――

「なんだ…結局切り抜けたか。つまらないの」

 ランス達とバスワルドの戦いを見ていたALICEは詰まらなそうに顔を歪める。

 折角干渉してラ・サイゼルの中に眠っているバスワルドの因子を目覚めさせたのだが、結果はALICEの望んだものにはならなかった。

 2級神としての破壊の力が使えると思ったのだが、どうやらそう上手い事にはならなかったようだ。

 結果、ただ単純に魔人サイゼルが強くなっただけの結果に終わってしまった。

 最後は破壊の力の一端を見れたが、あんなものは本来のバスワルドの力とは程遠い。

 どうやら神の実験は思った以上にバスワルドの力を削いでしまっていたようだった。

「まあ…悪い結果にはならなかったか。これくらいの干渉なら出来るって事みたいだし」

 ALICEの顔が邪悪に歪む。

 あの人間に干渉する事は禁じられているが、直接干渉をしないのであればある程度は自由にやれるらしい。

 尤も、その手段は大きく限定されるだろうが、それでも何も出来ないよりは遥かにいい。

「色々と楽しめそうだからこれはこれでいいか」

 ALICEは次にどんな事をしてやろうか、それを想像して楽しそうに笑った。

 

 

 

 ???―――

「はぁ…」

 ALICEと同じようにランスの戦いを見ていたクエルプランは安堵のため息をつく。

 ALICEがバスワルドに干渉したようだが、どうやら上手く切り抜ける事が出来たようだ。

 ただ、相当に無茶はしたのは間違いない。

「何故私はここまで安堵しているのでしょう…」

 自分の変化に胸を押さえながらも、ランスが無事だった事を素直に嬉しく思ってしまう。

「ですが…ALICEは少々やり過ぎでは無いでしょうか。確かに直接干渉した訳では無いようですが…」

 人類管理局の仕事と言われればそれまでなのだが、クエルプランとしては行き過ぎなような気がしないでもない。

 ただ、自分は完全に管轄外なのでALICEに何かを言う権利は無いのだ。

 だが、それでも心にモヤモヤしたものをクエルプランは抱えていた。

 そう考えていると、クエルプランの前に一人の神が現れる。

 その神の存在にクエルプランは少し驚いて眉を上げる。

「ラグナロク。珍しいですね。あなたが私の元へと来るなんて」

 クエルプランの前に現れたのは同じ第一級神であるラグナロクだ。

 ラ・バスワルドの直属の上司でもある存在だ。

「クエルプラン、お前はあの人間のレベル神をしていたな」

「ええ」

「今回の件、我等が神は非常に喜んでいる」

「そうですか」

 ラグナロクの言葉にもクエルプランは特に態度を変えない。

 これがALICEなら至福の喜びを感じていただろう。

「褒美を与えても良いとの事だ。無論、お前の権限…レベル神の権限において」

「宜しいのですか?」

「構わぬ。あくまでもレベル神の権限の範囲においてだ。方法はお前に一任するとの事だ」

「そうですか…分かりました。次に呼び出される時までに考えておきましょう」

 クエルプランの言葉にラグナロクは特に返事をする事も無く消えていく。

 一人残ったクエルプランだが、レベル神の褒美というものに頭を悩ませていた。

 その時、クエルプランはランスの望みを思い出す。

「…ランスは私から得られるレベル100の褒美を望んでいる。ならば、その手助けくらいは…しても良いのかもしれませんね」

 クエルプランは少し考えると、すぐさま自分の仕事を始める。

 少しの時間サボってしまったので、その遅れを取り戻すべく魂の管理を始めるのだった。




非常に悩みましたがこの辺が落としどころだと思いました
最初は鬼畜王バスワルドを参考にしようと思いましたが、
ぶっちゃけステータスだけならリスより少し弱いくらいだったので駄目だと思って大分弱くなりました
まあステータスだけだったらカイトの方がヤバイし…
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