ランス再び   作:メケネコ

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新たな必殺技

 魔人カミーラの城―――魔人四天王であるカミーラの城はやはり豪華で華麗な城だった。

 そこは魔人ケッセルリンクとは対照的だろう。

 その優雅な城に二人の魔人が酒を酌み交わしている。

「…カミーラ、一体いつまで私を引き留めるつもりだ」

「構わんだろう…特に何か有る訳でもあるまい」

 ケッセルリンクの言葉にカミーラが返す。

 その言葉にケッセルリンクは苦笑しつつもワインを口にする。

「本音は?」

「ただの嫌がらせだ」

 ケッセルリンクはその言葉にも更なる苦笑を浮かべるだけだ。

 そんな事だろうとは思っていたが、むしろこれくらいで済ませてくれるなら恩の字だろう。

「気づくか」

「貴様が浮ついていただけだ」

 カミーラの指摘にケッセルリンクは目を見開いて驚く。

 自分ではそんな態度を取っているつもりは全く無かったが、カミーラにはそれが分かるらしい。

「それで…奴は何をしている」

「お前なら伝えても良いだろう。あいつには珍しく己を鍛えているよ。お前に負けたのがよっぽどこたえたようだな」

「フン…ジルの邪魔が無ければランスは我が使徒となっていたものを…」

 カミーラは前の事を思い出しその顔を歪める。

 決定的なチャンスではあったが、それは自分の主である魔王によって砕かれてしまった。

 だが、それは魔王と魔人の絶対的な主従関係なのでどうする事も出来ない。

 どんなに理不尽であっても魔王の命令は絶対なのだ。

「しかし奴がな…それでどうだ」

「それは教えられない。というよりも、私が口で説明をした所で理解など出来ないだろう。ランスの使う技はそういうモノだ。我々がパイアールの持つ技術を分からないように」

 ケッセルリンクの言葉にカミーラは唇を吊り上げる。

 その言葉で全ては十分、カミーラにとっては相手が強い方が狩り甲斐があるというものだ。

「それよりも…私は『奴』の方が気がかりだがな」

 ケッセルリンクが口に出した『奴』という言葉にカミーラも不快そうな顔をする。

「ガイ、か」

 魔人筆頭ガイ…それはジルに戦いを挑み、そして魔人にされた元人間。

 だが、魔人としては強大で、カミーラとケッセルリンク、そしてノスをも上回る現時点で魔人最強の存在だ。

 普段はノスと共にジルの側に立っているが、あの男にはノスと違いジルへの忠誠など皆無だろう。

 そしてジルもそれを理解したうえでガイを側に置いている…そんな感じもする。

「あいつは不気味だ。ある意味でランスよりも底が知れない男だ」

 ケッセルリンクはガイとの交流は皆無だが、あの目が好きになれなかった。

 時には自分の体を舐めまわすような視線を向ける事もあれば、冷徹な目で自分を見てくる事がある。

 その二面性がケッセルリンクには何よりも不気味だった。

「あの男は本当にジル様に仕えているのか…それすらも分からぬ」

「フン。ジルがどうなるとも思えんがな」

 カミーラはジルが嫌いだが、同時にその力、そして残虐性は認めている。

 徹底的に魔物を苦しめる構図を作り、その中で更なる階級を生み出し世界を地獄に変える。

 その手際は見事と言わざるを得ない。

 同時に全ての魔人を己の手足としか思っておらず、使えなければあっさりと処分するような所はカミーラは嫌いでは無い。

 そのくせ、一部の魔人からは崇められている…実に魔王らしい魔王とカミーラは思っている。

 アベルやスラル、ナイチサに比べればずっといい。

「ケッセルリンク、ランスに言っておけ。次こそ必ず貴様を使徒にするとな」

「毎度の事だから伝える必要があるかどうか疑問だが…まあ伝えておこう」

 

 

 

「ランスあたたたーーーーっく!!」

 ランスの一撃がモンスター達を吹き飛ばす。

 その一撃は相変わらず強力だが、ランスの顔は満足していない。

「少し…揺らいだか? 一日で一体何が起きた?」

 ランスの剣が若干普段と違う事に気づいたスラルが声をかける。

「ああ。バスワルドがまた出てきた。俺様の大切な宝を取られたが…」

「…それがあの朝の奇声か」

 朝のランスの声を聞いて本気で驚いたスラルだが、まさかまたバスワルドと会っていたとは流石に思っていなかった。

 ランスの剣の中にバスワルドの魂の欠片があるのは分かっている。

 恐らくはそれが作用してランスを不可思議な空間に連れ去ったのだろう。

「で、バスワルドから何を教わった」

「別に教わってはおらんぞ。あいつが適当に色々やってたからそれを見てただけだ。まああいつの体は良い体をしてたがな」

 ランスは夢の中でのバスワルドの感触をしっかりと覚えている。

 人型で女性の姿をしているだけあり、その姿は美しく柔らかかった。

 色々とやり方を見ては居たが、やはりそう簡単に出来るようなものでは無い。

 だが、ランスは実際には確かな感触を感じてはいた。

「俺の必殺技はやはりカッコよくなければいかん。確かスラルちゃんも必殺技を持ってただろ」

「ああ…ソリッドブラッドだな。ただ、魔王だった頃よりも大幅に威力は落ちてるがな…恐らくは魔王だった頃の1%もあるまい」

「必殺技というからにはどんな距離からでも相手を倒せなければいかん。俺様に足りないのはこれだ」

「お前は剣士なのだから接近戦は当然だと思うが…」

 ランスの言っている事はスラルにとっては滅茶苦茶だ。

 人間である以上、魔人のような芸当は決して出来ない。

 魔法が使えないガルティアには体内で飼って居るムシのサポートが、ドラゴンの魔人であるカミーラには強力なブレスがある。

 レキシントンのように近接一辺倒の魔人も居るが、そもそものスペックが違い過ぎるので比較にならない。

「破壊光線とかあるだろ、魔法使いには。それなのに俺にそれと同じような必殺技が無いのがおかしかったんだ」

「魔法と剣を同等レベルに語ってるお前が我からすればおかしいのだが…」

 魔法使いであるスラルには、ランスの言っている事は相当に頭がおかしいのが分かる。

 我儘というか無理難題というか…とにかく相当に無茶苦茶な事を言っている。

「そもそも破壊光線…白色にしろ黒色にしろ、あれだけの威力を持つ魔法を使うという事は、それ相応に時間がかかるものだぞ」

「そんなのは分かっとるわ。だが今の俺ならば出来るのだ。それに俺様は剣LV3とかいうやつなのだろう。だったらあのバカと同じくらいの事は出来て当然だ」

「…そのバカとは誰の事だ」

「そんな事はどうでもいい。とにかく、今の俺様ならば同じような…いや、もっと強い技が出来るはずだ」

 ランスは剣を持って意識を集中させる。

 バスワルドの放った力の中でランスが一番分かりやすかったのが、ランスも良く知る破壊光線系の魔法のような攻撃だ。

 とにかくそれが一番分かりやすい攻撃だった。

 何だかんだ言って、魔法というのは詠唱を完了させさえすれば、強力な攻撃になるのは間違い無いのだ。

 ランスの側には常に高い魔法力を持った志津香が居たので、魔法の有用性は当然知り尽くしている。

「とにかく誰も出来ない事をやるからこそ意味があるのだ。それが俺様に相応しい」

 ランスは剣を見ながら考えている。

 そんなランスを見て日光はその側に立つ。

「ランス殿」

「何だ日光」

「少し気になったのですが…ランス殿は二刀流では戦わないのですか? ランス殿の技量であれば問題無いと思いますが」

「二刀流…面倒くさいからいらん。そんな事をしなくても俺様は強いからな」

 ランスの性格上、二刀流等というある意味面倒くさい事はしない。

 ようは相手を倒すだけの一撃を叩きこめばいいのだ。

 冒険者であるランスは、軍人であり騎士でもあるリックやロレックスとは違う。

「ランスの性格上二刀流は難しいだろう。そもそもそんな小手先の技が必要だとも思わないからな」

 スラルもランスに二刀流は合わないと思っている。

 何よりも恐ろしい速度で剣と刀をスイッチする、ランスだけにしか出来ない技を磨く方が良いと思っている。

「そうだ。下らん技術などいらん…とは言わんが、アレは技術だけでどうなるもんでもないからな」

 ランスは剣を背中に納めると、そのまま刀を高速で抜き放つ。

 離れた所にあったはずの岩が抉られるように爆散する。

「こっちは出来るんだがな」

「不思議なものですね…ランス殿が得意な剣で出来ず、慣れていない刀で出来るのですから」

 日光もランスの剣の腕前には困惑するしかない。

 慣れているはずなのに使えない、慣れてない方なら上手くいく。

 そんなアンバランスさに日光は何を言っていいか分からない。

「ランスさんが使い慣れていないからでは無いでしょうか」

「パレロアか」

 剣を振るっているランスの所にパレロアがやってくる。

 その手にはバスケットが有り、彼女はそこからサンドイッチと飲み物を取り出してランスに渡す。

「刀に関してはランスさんは慣れていないからこそ、自由にやれているのではないでしょうか」

「そういやそんな事も言ってたな」

 ランスはサンドイッチを食べてから、飲み物で流し込む。

 相変わらず彼女の料理は口にあう。

 おふくろの味とも言うべきか、プロの料理人に比べて美味いという事は無いが、不思議と安心させる味だ。

「根本的に剣を崩す…難しい所だな。特にランスの剣は洗練されている…とは言い難い。だが、それでも相手を倒す事に関してはずば抜けている」

 スラルも多くの剣の使い手を見てきたが、ランスのような剣の使い手は見た事が無い。

 ランスに唯一並び立てるとしたら、やはりあのJAPANの帝…藤原石丸だけになるだろう。

「まあ俺様なら問題無い。いざとなったらまたバスワルドの奴に会えばいいだけだしな。あ、だがなぁ…」

 バスワルドに渡す対価は貝。

 それはランスにとっては大切な宝物で有り、他の誰かにプレゼントするなど殆ど無い。

「対価が貝、か。全く不思議な神だ。だが、お前にとっては大切なのだからな」

 スラルとしてもランスの気持ちも分かる。

 貝に価値を見出してはいないが、それでもランスにとっては宝だ。

 それを差し出せと言われれば誰だって葛藤するだろう。

「とにかく、何となくだが出来そうな気がするな」

 初めてのランスアタックは上手くいかなかった。

 悩みに悩んで完成させたが、その技があってこそ魔人ノスや魔人カミーラを倒してきたのだ。

 それを上回る技を編み出すのだから、悩んでも当然だ。

「お前がそう思うならそれでいいと思う。正直お前の剣に関しては我は何も言えん」

「そうですね。ランス殿の剣はランス殿にしか分からないですし」

 ランスの技は例え剣を使い手でも分かるものでは無い。

 ただ、ランスは確実に成長していった。

 

 その夜―――ランスは日光とのセックスを終え、自分の剣を見ていた。

 ベッドでは日光が幸せそうな顔で蕩けている。

「で、スラルちゃんはまだ出てこれんのか」

「ああ。これはジルの呪いと言ってもいいな。正直出る事は叶わないな。魔法すらも上手く扱えん」

「やっぱり不便だな…」

 スラルが居ない時間も大分過ぎたが、やはり普段いる者が居ないと非常に不便に感じてしまう。

 スラルはランスがこれまでの冒険の中でも間違いなく一番強い魔法使いだ。

 魔力だけならばミラクルやアニスの方が上だろうが、スラルには彼女達には無い肉体的な強さがある。

 元魔王だからか、その肉体の強度はかなり高い。

 下手をすればランスにすら匹敵するかもしれない強度を持っている。

「スラル殿は…やはりまだ?」

 ランスとスラルの会話が聞こえたのか、日光が少し気怠い様子で起き上がり、ランスに寄り添うようにしてランスの剣を覗き込む。

「ああ。まあ魔王の呪いだから仕方が無い」

「魔王の呪い…」

 魔王という言葉に日光は複雑な顔をする。

 魔王は確かに倒すべき敵だ。

 しかし、魔王ジルが魔王になった…されてしまった経緯を知っているだけに複雑だ。

 何しろジルは魔王になりたくて魔王になったのではなく、無理矢理魔王にされてしまったのだから。

「スラルちゃんも何とかせんといかんな。またスラルちゃんとセックスしたいしな」

「…お前は変わらんな」

 スラルは悪い気はしないが、同時に呆れもする。

 ランスの思考は本当にエッチの方に向いているからだ。

 まあ、そうで無ければランスでは無いだろう。

「で、日光。お前はジルと会ったらどうするつもりだ」

「え?」

「お前、魔王は絶対に倒すと言ってただろ。その場合俺と戦う事も辞さない気じゃ無いだろうな」

「…ランス殿には感謝しています。でもそれとこれとは話は別です。私にとっては魔王も魔人も倒すべき相手です」

 日光は毅然と言い放つ。

「相変わらず頑固な奴だな。だったら俺に逆らえないように徹底的に調教してやる」

「私の決意は変わりません。私の目的は魔人を、そして魔王を倒す事ですから」

 ランスは日光の目を見る。

 その目はかつて復讐を誓っていた志津香と同じく、揺ぎ無い決意が感じられる。

(…そういやこいつはこんな奴か)

 この手のタイプはランスがいくら言ってもダメなタイプだ。

 悪く言えば頑固、良く言えば意志が強い。

 そういうタイプに外野があれこれ口を挟んでも正直あまり意味は無い。

 日光はかつてランスと共に行動しながら、己の意志を貫くためにランスの下を離れた事もあるからだ。

「ジルは必ず俺様の奴隷に戻す」

「私は…魔王ジルを必ず倒せると信じています。そのために人をやめましたから」

「フン、魔人の事となるとお前もカオスと変わらんな…まあ、あいつみたいにうるさく無いからいいが」

 ランスが魔人を倒す時に使っていたカオスも女好きでありながら、女の魔人に対しては容赦が無い。

 魔人を斬り刻むのが好きと公言している通り、女の魔人でも躊躇う事無く殺せるだろう。

 ただ、自分では殺せないというだけだ。

「まあお前の行動は無駄になるがな。ジルは必ず俺様が何とかするからだ」

 そんなランスの言葉に日光は微笑む。

「でしたら…必ず実行してください」

「がはははは! そのためにはお前を俺様抜きでいられないようにしてやるわ!」

 こうしてランスは再び日光と体を重ねるのだった。

 

 そしてケッセルリンクが不在のまま数日が経過し―――

「スーパーランスアターーーック!」

 ランスの剣が鈍く黒い光を放つ。

 剣から放たれたナニかが目の前の木々を飲み込んでいく。

 その光景を見てランスは満足そうに笑う。

「がはははは! ついに出来たぞ!」

 ランスの想像の通り、強烈なレーザーと錯覚させるような衝撃が放たれた。

 それを見てランスは得意気に笑うが、それを見ていた者は呆れたように口をポカンと開けている。

 どちらかと言えば言葉も出ないと言った方が正しいのかもしれない。

「いや、これは…何と言うか…凄いね…いや、凄いを通り越してるなあ」

 ブリティシュはランスの必殺技が放たれた跡を見て冷や汗を流している。

「…これが本当に人が出来る技なのでしょうか」

 日光も新たなランスの技には驚きよりも脅威が襲ってくる。

「凄いわね…これがLV3の力か。バランスブレイカーという言葉も頷けるわね」

 レンは違う所で感心している。

 長い歴史の中でも数えるほどしかいないLV3技能。

 ただ、それが必ずしも良い方向に向かうとは限らないのだ。

 時にはその技能が自分自身をも締め付けるものだ。

「これがお前の理想か…確かに高いな。逆に言えば、お前がこれほどの力を必要とするという事でも有るが」

 スラルも感心と驚きの入り混じった言葉を放つ。

「がはははは! 俺様の新必殺技が完成したな」

 ランスの必殺技、それはまさに破壊光線級の力で周囲を薙ぎ払っていた。

「空間を斬る…そしてその斬られた空間が破壊を伴う力を持って走っていくか。やれと言われても誰も出来んな」

 その必殺技をスラルは冷静に分析するが、恐らくは口で言っても誰も理解は出来ないだろう。

 それほどまでに滅茶苦茶で意味の分からない技だ。

「スラル、あんたこんなの分かるの?」

 レンの呆れたような口にスラルは剣の中で肩をすくめる。

「分かる訳が無いだろう。ただ、我はランスの剣の中に居るから何となく直感で言っているだけだ」

 スラルも分かっているようで実際には何も分かっていない。

 だが、恐らくはこれこそがバスワルドの破壊の力を参考にしたランスの技なのだ。

 ランスがこれで完成というのなら本当にこれが完成なのだろう。

 正直自分では…いや、この世界の誰にもランスの技に的確な助言が出来るものは居ない。

 それが例え魔王であった自分でも、ランスの剣に何かを言う事など出来ないだろう。

 この男の剣とはそういうものだ。

「凄いですね…ランスさん。それが正解なのですか?」

「二刀流などという面倒くさい事は必要無いからな。これでいいんだこれで」

 ランスの左手には剣だけが握られている。

「ランスさんおめでとー! 今日はパーティーでもしますか?」

「そうだな。だが、ただのパーティーではだめだぞ。ぐふふ」

 素直に喜んでいる加奈代の尻をランスが揉む。

「ダメですよー。今はお触りは禁止です。それにまずはケッセルリンク様に言うのが一番だと思いますよ」

 加奈代は優しくランスの手を払う。

 まずは主であるケッセルリンクが第一だ。

 何しろ彼女が一番ランスの事を心配しているのだから。

「だけど…本当にどういう原理なのだろう。ホ・ラガが居たら分かるかもしれないけど」

「ランス殿にホ・ラガは決して会わせてはいけないと思います。それよりも…ランス殿の剣は本当に速いですね」

 ランスの手元がどういう風に動いているのかは見えていた。

 だがそれも一瞬、戦闘には全く影響ないレベルの速さと言っても良い。

「刀で空間を斬り、剣でその空間の歪みを飛ばすとでも言えばいいか…全く、理不尽にも程があるな」

 スラルはようやくランスがやった事が分かった。

 ただ、分かったのはやはり動きだけで、何故そうなるのかは全く分からない。

「問題なのはレベルよね…ランス、クエルプラン様を呼んだら?」

「そうだな…レベルが上がったかどうかも気になるからな。戻ったら呼ぶか」

 ケッセルリンクの城の近くとはいえ、他の魔物や魔人が動いていないとは限らない。

 そんな所で眩しいくらいに光るクエルプランを呼ぶのは流石に止めておきたい。

「はあ…しかしお主は本当に凄いの」

 お町は少し目を輝かせてランスを見ている。

「がはははは! お前も俺の女になるんだからな」

「お前の強さは認めよう。じゃが、お前の器までは分からんな」

「何だお前。魔人を倒したらやらせてくれると言ってたではないか」

 ランスの指摘をお町は鼻で笑う。

「フン、我は自分を安売りはしないのじゃ。お主という人間を見極めたい」

 そう言うお町の顔は真剣だ。

「我は妖怪王…お前達よりも遥かに年上となった。じゃからこそ、お前という人間を知る必要がある」

「…いや、十分に知ってるんじゃない? この男、確かに強いけど最低の男だと思うんだけど」

「何だと」

 バーバラの言葉にランスが軽く睨む。

 まあランスもこういう言葉はもう慣れっこだ。

 それこそかなみや志津香に何度も言われてきた言葉だ。

 その二人ももう自分の女なのだからもう問題無いのだ。

「まあ最低である事は否定しない。だが、藤原石丸と渡り合い、あの黒部殿がお前を友と認めた。我は黒部殿がそこまでお前を認めた理由が分からぬのでな」

「黒部、か」

 黒部の名前が出た事で、スラルは少しだけ沈んだ声を出す。

 別れてからもう1000年は経っているが、復活の兆しは無い。

「だったらお前も黒部の奴を超えるんだな。お前はまだまだ黒部には及ばんぞ」

 ランスの言葉にレンは少し驚く。

「珍しいわね。ランスが男の事をそこまで評価するなんて」

「あいつは安全圏の奴だからな。まあ便利な奴だった」

 ランスはそう言うが、実際には黒部の事を認めていた。

 男に対しては冷淡で使い捨ても平気でやる上に、殺す時は全く躊躇わずに殺す。

 そんなランスだが、一目置いている男も存在する。

 それがランスと付き合いの長いリック、共にゼス、そしてヘルマン革命を成し遂げたパットン。

 不思議と話が合ったガンジー。

 そして…ランスが友と認めた織田信長。

 ランスの中では黒部もまたそのラインに達する程の仲になっていたと言ってもいい。

「黒部さん…懐かしいです」

「エルシールはその妖怪王と共に戦った事があるんでしたね」

「はい、シャロンさん。凄い戦いでしたが…最後はレキシントン様との戦いで…」

 エルシールも黒部の事を思い出し、懐かしい顔をする。

 外見は恐ろしい姿だったが、それでも話しやすい妖怪だった。

 不思議とランスとは気が合ったようで、二人で色々と楽しんでいたのは記憶に残っている。

(あのランスさんが男の人…人じゃないけど、気が合うなんて思ってもいなかったから)

「とにかく、我は我でランスを見極める。お前も我が欲しければ本気で来るのだな」

「俺様は何時でも本気だぞ」

「…嘘つきが」

 最後の言葉は誰にも聞こえない声で口の中で呟く。

 実際にランスが見ているのは自分の奴隷であるジルなのだろう。

 それだけ彼女が大切な存在…それはお町も分かっている。

 ただ、この男にそこまで思われる、そんな彼女が羨ましいと思ってしまった。

「それよりも戻るぞ。俺様も自分のレベルが気になるからな」

 鬼畜アタックを放った時のような体の痛みは無いが、もしかしたら経験値が減っているかもしれない。

 こればかりはレベル神を呼んで確かめるしかない。

 ランス達が城に戻った時、そこには主であるケッセルリンクが何時の間にか戻って来ていた。

「お、ケッセルリンク。お前、いつ戻って来たんだ」

「昨日…いや、今日の深夜だよ。お前達がダンジョンに遠征しているようだったからな。邪魔をするのは悪いと思ってな」

「ケッセルリンク様…体調は大丈夫なのですか? まだ夜には時間が有りますが」

「大丈夫だよ、シャロン。君も知っているだろう? これを持っていれば昼間でもそんなに力は落ちない」

 ケッセルリンクの手には普段彼女がしていない、豪華な装飾が施された手袋がある。

「ケッセルリンク様も普段からそれを着けていれば…」

「バーバラ、それは許されない事だ。これはカラーである私が…ランスと共に向かった場所で手に入れた物だ。魔人である私が普段からこれを着ける事はありえない」

 主の言葉にバーバラは少し不服そうな顔をする。

「お前も律儀だな。そういう所はお前らしいと思うが」

 スラルも苦笑する。

 昔から彼女のそういう所は変わらない。

「これを着けるのはランスが居る時…そして共に戦う時だけだ。それ以外でこれを着ける事は決して無い」

 ケッセルリンクがランスと共に手に入れたアイテム…自分がランスの運命の女と言われた時だ。

 だからこそ、ランスと共に戦う時以外にこれを着ける気は全く無かった。

「さて…上手くいったようだな」

「分かるか」

「ああ…お前の顔がそう言っているよ。どうする? まだ私と特訓するか?」

 ケッセルリンクの言葉にランスは少し考える。

 そして考えて―――

「ジルの所に行くぞ」

 その言葉に誰もが息をのむ。

 魔王に挑む…それは魔物に属する者からすれば無謀の一言に過ぎない。

 だが、それでもランスは行くだろう。

 それがランスという男だからだ。

「そうか…ならば私も止めまい」

 ランスの意志が固いのを見て、ケッセルリンクも覚悟を決める。

「だがその前にやる事がある」

「ほう…それは?」

「当然セックスじゃー!」

 ランスはケッセルリンクを抱き上げると、そのまま彼女を連れて消えていく。

 そんなランスを見てシャロンは笑う。

「本当に変わらないですね、ランスさんは」

「それは決して誉め言葉では無い気がしますけど…」

 バーバラは呆れた顔でため息をつく以外に無かった。




ガチャは悪い文化
いや、400連ならまだマシなのか…?
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