ランス再び   作:メケネコ

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恐ろしい敵

「カミーラ様。ケッセルリンク様をお連れしました」

「そうか」

 

 七星の声にカミーラは改めてケッセルリンクを見る。

 最初に出会ったのはランスを殺そうとしていた時…その時に自分に魔法を当てたのがこのケッセルリンクだ。

(ふむ…やはり普通のカラーとは少し違うか)

 カミーラは値踏みをする様にケッセルリンクを上から下まで見る。

 スラルが自ら魔人とした存在…ただし、その経緯は死にかけている所をスラルが救う形で魔人になったと聞きている。

 カラー出身だけあって、非常に美しい姿をしている。

 大きく開いた胸元だけが、若干カラーらしくないという所だろうか。

 

「警戒する必要は無い。お前をどうこうするつもりは無い。無論あの男もな」

 

 ケッセルリンクの態度は警戒心に満ち溢れている。

 こうして相対しているだけでも、魔人カミーラの強さが嫌というほど分かってしまうからだ。

 今の自分ではどうやっても勝つ事は出来ない…それだけの力の差を感じさせられている。

 ケッセルリンクは魔王スラルから『ランスを害するのを禁じている』とは聞いてはいたが、それでもこの魔人の存在感は圧倒的だ。

 今の自分とはまさにレベルが違う。

 

「…何の用だ」

 

 自分では冷静に答えたつもりだが、やはり相手への警戒からか声が固くなってしまっている。

 

「あの男…ランスの事を知りたいだけだ。お前が一番知っていると聞いている」

 

 カミーラの問にケッセルリンクは驚く。

 使徒へと誘っているのは聞いてはいたが、まさか自分にランスの事を聞いて来るなど思ってもいなかった。

 

「私が話すと思うか? ランスを殺そうとしたお前に」

「話すだろうな。スラルからも『話しても構わない』と言われているのだろう」

 

 カミーラの言葉にケッセルリンクは無言になる。

 確かにカミーラの言うとおり、スラルからはランスの事をカミーラに話しても良いと言われていた。

 ケッセルリンクは、スラルは意図的にカミーラと競う会う形でランスを取り合っていると感じていた。

 そしてスラルはそれを楽しんでいるとも。

 

「…分かった。何が聞きたい」

「最初からだ…お前があの男と出会ってからのな」

 

 ケッセルリンクは頷くと、これまでのランスとの事を話し始めた。

 

 

 

「以上がランスの今までの事だ。最も、それ以前の事は知らないがな」

「そうか…」

 

 カミーラが聞いたランスの事は、カミーラにとっても中々に興味深い事であった。

 カラーとの出会いと、モンスターとの戦い。

 悪魔という存在がこの世界にいるのは知っているが、その悪魔から剣を受け取った事。

 そして魔人に無敵結界を使わせずに倒した事。

 ケッセルリンクは今現在知りえている事を話した。

 無論、自分とランスの間にあった事だけは伏せてだが。

 

「それを聞いてお前はどうするつもりだ」

 

 ケッセルリンクの言葉は何処までも固い。

 この気まぐれとも言える行動を取るドラゴンの魔人が何をするか、ケッセルリンクには皆目検討もつかない。

 ドラゴンの山に行ったとは聞いているが、一体何故そんな事があったのかも気になる。

 

「単にランスの事が知りたかっただけだ…それ以外の他意は無い」

 

 カミーラは僅かに唇を持ち上げ笑っている。

 ケッセルリンクの目から見ても、それは一番最初に見せた冷笑ではなく、楽しげな笑みである事は分かる。

 

「しかし…お前はランスを己の使徒としないのか?」

「!」

 

 そして唐突に飛んでくるカミーラの言葉にケッセルリンクは言葉に詰る。

 彼女とてランスを使徒にする事は考えなかった訳ではない。

 しかし、自分を救ってくれたスラルの事を考えると、どうしてもそれを言い出す事は出来なかった。

 それにランスが自分の使徒となる事など、あまり想像出来なかったという事もある。

 

「まあいい…聞きたい事はそれだけだ」

 

 カミーラはそうと言うと、既にケッセルリンクから興味を失ったようだった。

 

「…わかった」

 

 ケッセルリンクもそうとしか言えずに、カミーラの前から立ち去る他無かった。

 

 

「ランスを使徒に、か」

 

 魔人になって日が浅いケッセルリンクではあるが、使徒という存在について考えなかった訳では無かった。

 魔王スラルからも使徒の話を聞き、作ってみてはどうかと勧められはしたが、自分が一番最初に思い浮かんだのがランスだった。

 しかしランスはそのスラルが魔人に勧誘している相手…自分の命を救ってくれた方が求める人材故に、ランスを使徒とするのは諦めていた。

 それにランスが自分の下につくなど考えられなかったし、何よりもランスが魔人となれば自分と対等になる、と考えていた。

 だが今は、最初にランスを殺そうとしていたカミーラが、ランスを使徒にしようとしている。

 

「私はどうするべきか…」

 

 勿論自分ではあのカミーラを止める事は出来ないし、肝心の魔王自体がカミーラに好きにして良いと言っている。

 心情的にはスラルの味方をしたいのだが、同時にランスの味方もしてやりたい。

 だが流石にランスを逃がす事は出来ないし、カミーラを止める事も出来ない。

 

「だが…ランスならばどんな選択をしたとしても後悔も何も無いのだろうな」

 

 それを思うとケッセルリンクは笑みを浮かべる。

(そうだ。例えどのような答えが出るにしても、私は受け入れるだけだ)

 それが例えランスとの別れが来るとしても、それは仕方の無い事だ。

 

「願わくは一緒に居れる事を願うがな」

 

 

 

 ランス達が気絶した翌朝、

 

「うーむ、酷い目にあったぞ」

「私、まだ口の中が痛い」

 

 翌朝、目覚めたランスとレダは口直しのフルーツを口にしていた。

 程よく甘く、酸味がきいており目覚めには丁度良かった。

 

「一体あれは何だったのかしら…口に入れただけで気絶するなんて初めてよ」

「この世界にもあんな物を作れる奴がいるんだな」

 

 ランスは今ここに居ない香姫の団子に匹敵するモノがある事に戦慄していた。

 しかも彼女の団子のように、七色のタレがかかっていなかった分タチが悪い。

 

「まったく…誰が作ったのだ、あんなもの」

「そうよね、あれも才能の一つよね。私は欲しくないけど」

 

 ランスとレダが一息ついていた時、

 

 ド──────ン!!

 

 突然の揺れと共に衝撃が走る。

 

「む、何だ?」

「凄い揺れたけど…地震じゃ無いわね」

 

 レダには何か魔術的な要素を感じ取る事が出来た。

 

「でも…凄い強い魔力を感じたわ。それこそ魔人級の力よ」

「うーむ…」

 

 ランスはためしに扉に手をかけるが、実にあっさりと扉は開いた。

 

「おっ、開いたぞ」

「何かあったみたいね」

 

 本来であればこの扉は中からは開ける事は出来ない。

 どうやら特殊なロックがかけられているらしく、エンジェルナイトのレダの力を持ってしても開ける事は出来なかった。

 ランスの剣ならば壊せるかもしれないが、見張りの存在や、ここを訪ねてくる魔人達のせいで実行に移す気にはなれなかった。

 2人は少しだけ開けた扉から外の様子を見る。

 本来はここには魔物隊長クラスのモンスターが立っていたはずだが、今はそのモンスターも存在しない。

 どうやら先の衝撃で別の場所に移動したようだ。

 一度ランスは扉を閉めると、

 

「レダ、この前の道は覚えとるか」

「勿論よ。私が忘れる訳ないでしょ」

「ならいい。この混乱に紛れて逃げるぞ」

「大丈夫なの? 逃げてる所を見られればアウトよ」

「こんな機会はめったにこないぞ。だったら動ける時に動くのは当然だ」

「まあそうね」

 

 確かにランスの言う通り、魔王の城から脱出するチャンスなどそうある事では無いだろう

 ならばこの状況を上手く利用するのが一番良いと判断する。

 

「幸い武器だけはあるからな。今しかないぞ」

 

 ランスの武器は、ランスが望めば手元に戻ってくるため、取り上げるだけ無駄と判断されたようで取り上げられていない。

 レダは自分の武器防具はいつでも用意できる。

 エンジェルナイトとしての力は弱っていても、どうやらこの力だけは失われていないようだ。

 

「じゃあランス…」

「うむ…行くぞ!」

 

 ランスが勢いよく扉を開けようとしたとき、突如として外から扉が開けられる。

 ランスは勢い余って、その扉を開けた人物の胸元に顔を埋める形になる。

 

「おお…この感触は」

 

 ランスはその素晴らしい感触を堪能する。

 その胸元に顔を埋めながら、その胸を堪能する。

 そんなランスを横目に、レダは青い顔をしていた。

 何故なら、ランスが顔を埋めている相手がカミーラだったからだ。

 

「…何をやっている、ランス」

「ん…? おわ! カミーラ!」

 

 ランスは慌てて離れるが、カミーラには特に怒りの表情は見られなかった。

 レダはその様子に安堵し、ランスはいきなり出鼻を挫かれた事に眉を顰める。

 カミーラはランスとレダの姿を一瞥し、笑みを浮かべる。

 

「逃げようとしていたか。だが惜しいな…」

「むぐぐ…」

 

 流石のランスも今のカミーラから逃げられるとは思っていない。

 実力差もさることながら、やはりカミーラが無気力でない事が一番大きい。

 

「それよりも付き合え。何か面白い事があったようだ」

 

 カミーラはランスの腕を掴むと、無理矢理引きずっていく。

 

「いだだだだ! 分かった! ついて行くから離せ!」

 

 カミーラは素直にランスの腕を離し、悠然と歩く。

(やっぱり違和感が凄いな…これがあのカミーラだとは)

 以前ならば体に触れただけでもこちらを殺しそうな視線だったが、今のカミーラには以前と違い凄い余裕がある。

 どうしても以前のカミーラのイメージが強いランスとしては、そんなカミーラに戸惑いを覚えはするが、同時に喜びもある。

(しかしこの状況はいいぞ…胸を触っても特に怒ってはいなかったからな。上手くいけばヤレるかもしれんぞ)

 そう思うと俄然やる気が出てくる。

 ランスは新たに決意を秘めて、カミーラの後についていく。

 

 ド──────ン!!

 

「うお!」

「こ、これは…!」

 

 先程よりも音が大きくなり、同時に妙な声も聞こえてくる。

 それにも関わらず、カミーラは全く動じずに歩いていく。

 そしてカミーラが扉を開けたとき──―カミーラの体は炎に包まれた

 

 

 

 カミーラがランスの元を訪れる前…

 

「あー…最近は暇になってきたな。まあその分強くなる時間が出来るのはいい事だけどよ」

 

 宝物庫でケイブリスは一人鍛錬を続けていた。

 何しろケイブリスは最弱なので、レベルを上げるためにはやはり地道な訓練しか無いのである。

 魔王スラルのおかげで無敵結界が出来たのはいいのだが、それでも外で武者修行等を行う気概がケイブリスには無かった。

 これはかつての魔王アベル、そして現魔王であるスラルから学んだ事…臆病な事は悪い事ではない。

 いや、生きていく上では臆病で、そして慎重であってこそ正しいのだと。

 

「最近スラルはここに来なくなったな…まあいいんだけどよ」

 

 やはり魔王は恐ろしい存在だ…万が一にでも敵に回す事などありえない。

 だからこそ真っ先に服従を誓い、魔王の無茶ぶりにも耐えてきているのだ。

 そしてこの宝物庫の管理こそが一番楽であり、安全だと考えていたのだが…生憎と話はそう上手くはいかなかった。

 何しろ自分は魔人最古参…知りたくもない知識もあったし、何よりも魔血魂の在処をある程度知っていたのが仇となった。

 そのせいで自分はこの大陸を走りまわされ…大半が回収された時には既に250年ほど経過していた。

 

「まったく…俺じゃなくてメガラスを頼れよな」

 

 同じ魔人であるメガラスならばもっと手早く回収が出来たはずだ。

 それなのに何故か自分が駆り出される…中には魔血魂を飲み込み、新たな魔人として生まれた奴もいたので、その時は命からがら逃げだして魔王に報告するという事も多々あった。

 しかしそのおかげでカミーラと話す事もあったから、それはそれで嬉しかった。

 

「カ、カ、カ、カミーラさん…」

 

 魔人カミーラはケイブリスにとってはまさに憧れの存在だ。

 あの美しい姿を一目見てからケイブリスはカミーラに夢中だった。

 生憎と、自分はカミーラには見下されているが、いずれは強くなってカミーラを手に入れたいという欲望を抱くようになった。

 が、しかし…

 

「それにしてもスラルが見つけてきた人間…カ、カ、カ、カミーラさんに使徒に誘われるだとぉ…畜生!」

 

 ケイブリスは力任せにその辺に置いてあった壷を蹴る。

 それだけでは飽き足らず、その壷に目がけて何度も拳を入れるが、その壷はびくともしない。

 

「あ…やば…」

 

 そこでケイブリスはこの壷はスラルが持ってきたものだという事を思い出す。

 

「こ、壊れてないかな…」

 

 怒りで我を忘れて思わず魔王の宝物に手を出してしまったが、幸いにも傷は一つもない。

 ケイブリスは安堵のため息をつきながら、その壷を丁寧に磨く。

 万が一にも自分のやった事が露見してはならない…気まぐれで魔王に殺されては、今までの自分の努力は水の泡だ。

 

「ふぅ…焦ったぜ。万が一もないようにしないとな」

 

 ケイブリスは何度も傷が無いかを確認し、手にした布巾で壷を磨いていく。

 

「まーおー…」

「うん? 何だ?」

 

 突如として聞こえてきた間延びした声にケイブリスは首を傾げる。

 周囲を見渡すが、ここには自分以外には誰もいない。

 

「誰もいないよな…?」

 

 ケイブリスは再び壷を磨く作業に戻るが、

 

「まーおー」

「いや気のせいじゃねーぞ!?」

 

 確かに声は聞こえてくる。

 しかし周囲には誰もいないという状況が、ケイブリスを混乱させていた。

 

「ま、まさか…」

 

 ケイブリスは恐る恐る声の聞こえて来たところ…自分が今磨いている壷を見る。

 いつの間にか壷がカタカタ震え、ケイブリスの小さな手には押さえる事が出来ない。

 そして先程聞こえてきた妙な声は、間違いなくこの壷から鳴り響いている。

 

「や、やばい!」

 

 ケイブリスは何とかしようと、必死に壷にしがみつくが、それはケイブリスの小さな体を嘲笑うかのように大きく震えていく。

 そして、ポンッ! という気の抜けた音と共に、その壷から妙な生き物(?)が飛び出す。

 全身ピンクの体に、大きな黒いマントを身につけ、その手には巨大な白い鎌が握られている。

 そして額には白い角が生えており、まるで獣のような耳がついている。

 

「…ヘッ、驚かせやがる」

 

 ケイブリスはその存在を見て安堵する。

 最初は驚いたが、今改めて見ると何の威厳も迫力も感じられない。

 まるで点のような黒い目は、どこか愛嬌すらも感じさせられる。

 何よりも、その体の大きさが小さい。

 今のケイブリスとほとんど変わらぬ大きさだ。

 

「おいお前! ここをどこだと思ってやがる! ここは魔王の宝物庫だぜ! 死にてぇのか!」

 

 自分より強いものには媚び、弱い奴には散々威張り散らすのがケイブリスである。

 最も、今の現状ではケイブリスより弱い奴など、そうはいないのだが。

 目の前のピンクの物体はキョロキョロと辺りを見渡すと、

 

「まーおー!」

「うおっ!」

 

 突如として辺りに響くような大声を出したかと思うと、その体がどんどん膨れ上がっていく。

 その体はすでにケイブリスの大きさを軽く超え、ケイブリスが普段見上げているカミーラの体よりもどんどん大きくなっていく。

 

「あ、あの…」

 

 ケイブリスの言葉を無視するように、ピンクの物体の体はまだまだ膨れ上がり、とうとう宝物庫に頭をつくまで大きくなるが、それでも膨れ上がるのは止まらない。

 宝物庫の壁を壊し、縦にも横に大きくなったときには、既にその大きさはドラゴンにも匹敵する大きさになっていた。

 

「まお?」

 

 ピンクの物体──―大まおーは首を傾げてケイブリスを見る。

 ケイブリスは冷や汗をかきながら、昔と同じ様に…即ち土下座体勢に入る。

 

「あの…話し合いましょ?」

 

 大まおーの返答は口から吐き出される炎だった。

 

 

 

ド──────ン!!

 

「な、なんだぁ?」

 

 魔王城に轟音が鳴り響いたとき、魔人ガルティアは何時もの様に食事中だった。

 スラルからは、もうランス達を監視する必要は無いと言われていたので、今はこうして一人で食事の時間を満喫していた。

 そこで聞こえたのが凄まじい轟音…まるで何かが爆発したような音にガルティアは眉を顰めた。

 今日は生憎と、スラルはメガラスと共に魔王城の外へ出ていた。

 だからこそ自分が魔王城を任されていたのだが…

 

「どうしたってんだ」

 

 流石のガルティアも食事を止め食堂から出ると、慌しく魔物隊長が走り回っていた。

 

「おう、どうしたんだ?」

「ガ、ガルティア様! 分かりません! 突如として宝物庫から轟音が…」

「宝物庫?」

 

 宝物庫は魔王スラルの宝が眠っている場所であり、そこはケイブリスが任されていた場所だ。

 これまでケイブリスは何も問題を起こした事は無いし、スラルも危険なアイテムはそれ相応の場所で処分をしていたはずだった。

 

「しゃあねえな。俺が行くか!」

「た、助かります! ガルティア様!」

 

 魔物隊長は跪くと、すぐさま行動を開始し、パニックになっている魔物達をまとめていく。

 ガルティアはそんな様子を尻目に、宝物庫に向かって走り出す。

 そして宝物庫に向かう廊下の角に差し掛かったとき、突如として真っ黒い塊がガルティアの方に飛んでくる。

 

「おわっ!」

 

 ガルティアは慌てて黒い塊を受け止めると、その黒い塊は息も荒くしてガルティアを見る。

 

「ガ、ガルティア…さん」

「…ケイブリスか? どうした?」

「あ、あくま、が…」

「あくま?」

 

 ケイブリスはそれだけを言うと気を失う。

 

「お、おいケイブリス!?」

 

 ガルティアはケイブリスを揺するが、ケイブリスはピクリとも動かない。

 無敵結界があるので、傷は無いのだが衝撃は防げないため、それで気を失ったようだ。

 

「なんだってんだ?」

 

 ガルティアが首を捻ったとき、自分の中のセンサー虫が急激に危険を知らせる。

 これはあの時の、ティラノサウルスの非ではないくらいの危機感をガルティアに感じさせる。

 すると、この広い魔王城に、

 

 ドスン! ドスン!

 

 という大きな足音が聞こえてくる。

 

「デカントか何かか?」

 

 ガルティアが改めてその角を曲がると、そこにはピンクの悪魔が居た。

 ガルティアも思わず見上げるほどに大きな体、そしてそれに反比例するかの様な可愛らしい顔。

 

「まお?」

「お、おう」

 

 ガルティアは思わず返事をするが、返ってきたのはやはり炎だった。

 

「あっち! って無敵結界があるのにか!?」

 

 それは確かな熱さとしてガルティアに襲い掛かる。

 魔人には無敵結界があり、本来であればダメージを負う事などありえないはず。

 しかし目の前の妙な存在は間違いなく自分の無敵結界を貫通とまではいかないが、それで防ぎ切れぬ熱さを感じさせてきた。

 

「ってあぶねぇ!」

 

 その手に握られている鎌が勢いよく振り下ろされると、その鎌はあっさりと壁を切り裂き、地面に突き刺さる、

 

「おいおい…洒落にならねぇぞ!」

 

 ガルティアはケイブリスを片手に勢いよく走り出す。

 この狭い空間では相手の攻撃を避ける事が難しい。

 相手の攻撃が完全に防げる保障が無い以上、ここでの戦闘はガルティアにとっては不利過ぎた。

 その巨体故に動作が鈍いかと思い後ろを見るが、

 

「嘘だろ」

 

 相手はその辺の壁を吹き飛ばしながらガルティアを追ってくる。

 運悪く遭遇した魔物達はその巨体によって潰されるか、炎に焼かれて消滅する。

(あそこで無いと戦えないな)

 ガルティアはある場所を目掛けて走り出す。

 そしてどれくらい走っただろうか、一際大きな扉…デカントクラスの魔物ですら潜り抜けられる大きな扉を開けると、ケイブリスを使徒に運ばせ敵と相対する。

 そこはかつてカミーラがランスを殺そうとした場所であった。

 生憎と曇ってはいたが、魔人であるガルティアには関係は無い。

 

「さて、と」

 

 ガルティアはハワイアンソードを引き抜くと、目の前の敵を睨む。

 まるで緊張感の無い顔をしているが、その力は非常に強大なのが嫌でも分かる。

 

「始めるか」

「まーおー!」

 

 ガルティアの声に応えるように大まおーが声を上げると、両者は一斉に動き始めた。

 




ちょっとペースが遅くなってきた上に、話が進まないので早く話を進めるべく頑張ります
大まおーの元ネタはまあ問題なくわかりますよね
ちなみに非常に強いです
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